「行けます」と答えそうになった土地で、私たちは新設をお勧めしませんでした|ホテル立地調査の実績

「行けます」と、当社のチームが答えそうになった瞬間がありました。

新たにホテルを開業する候補地として、依頼者から託された一つの土地。最寄り駅には一定の人の流れがあり、近隣には大型の集客施設や複数の都市開発計画が予定されています。人の往来の予感だけを見れば、賑わいの気配は十分に揃った土地でした。多くの開発の現場では、これだけの材料が並べば「進めましょう」という判断に傾くものです。

けれども、当社が一つずつ指標を解きほぐしていくと、評価は静かに反転していきました。最終的に当社が依頼者にお伝えしたのは、「この土地でのホテル新設は、お勧めしません」というはっきりとした結論でした。賑わいの予感はあった。しかし、宿泊需要の構造と採算試算が、別の方向を指していたのです。

賑わう商店街を行き交う人々
人の通りはある。けれども、その人たちが「泊まる理由」は別にある──多くの住宅エリアが抱える構造です。
OVERVIEW
依頼者
ホテルの新設を検討していた事業者
対象地域
都市近郊の住宅エリア(鉄道駅周辺・複数の都市開発計画が進行中のエリア)
業務内容
ホテル立地調査(需要源泉分析/競合・ポジショニング分析/業態・価格帯・ハード要件別の存立可能性評価/採算試算・出店可否の進言)
当社の役割
中立的な第三者の専門家として、調査全体の設計、需要源泉の抽出と検証、類似ケース比較、現地・口コミ調査、採算試算、出店可否の意見提示までを担当
主な成果物
立地調査報告書/「当該地でのホテル新設は推奨しない」とする当社の進言/推奨しない根拠(需要源泉の不在・採算ギャップ・推奨業態の三面からの説明)
もたらされた成果
採算の悪い投資の回避/他候補地の再検討/事業計画の前提整理
20件超乗降客数が類似する
類似駅との比較
約0.02病床数と客室数の
決定係数(R²・相関なし)
20pt見込み稼働率と
損益分岐点の距離
推奨せず当該地でのホテル新設に対する
当社の進言

01.「行ける」と読める材料は、確かに揃っていた

当社が依頼を受けた時点で、依頼者の手元には、いくつもの安心材料がありました。最寄り駅には日々まとまった人の流れがあり、近隣には大型の集客施設や、複数の都市開発・大型施設の整備計画が進行中。人の流れと施設の集積、双方の点で、開発の検討材料としては手応えのある土地に見えました。依頼者がこの土地をホテル新設の候補地として有望視されていた判断は、決して的外れなものではありません。

ただ、当社がこれまで多くの開発のご相談を受けてきた中で、もっとも慎重に扱ってきたのが、この「人の流れがある」という見え方の安心です。駅前で人が大勢乗り降りすることと、その人たちが近くのホテルに一泊することの間には、見た目以上に深い溝が横たわっています。通勤・通学で毎日往来する人は、その日のうちに自宅へ帰っていくからです。

そこで当社は、依頼者の見立てを共有しつつも、調査の出発点を「この土地は立地が良いか」という問いから、「この土地には、人が泊まる理由があるか」という問いへと置き換えることにしました。立地の良し悪しは、変えようがありません。けれども、泊まる理由があるかどうかは、データで確かめることができます。

当社のチームが心の中で「これなら行けるかもしれない」と最初に傾きかけたのも事実です。しかしその予感は、検証の一段一段で、少しずつ姿を変えていきました。

02.「泊まる理由」を、一つずつ数えてみる

当社がまず取り組んだのは、ホテルの宿泊需要を生み出す源泉を、網羅的に棚卸しすることでした。ビジネスの短期滞在、長期滞在、観光、医療、スポーツ、教育、冠婚葬祭、インバウンド──宿泊の動機になりうる項目を二十数種類に分解し、対象エリアにそれぞれの源泉が存在するかを、一つずつ確かめていきました。

結果は、思いのほか厳しいものでした。

需要源泉の棚卸し(抖粋)
需要の種類対象エリアでの見込み
企業訪問・官公庁訪問・総会・学会(ビジネス短期)
工事関係者・商業施設の催事・イベント関係者(ビジネス長期)
自然・レジャー・歴史・文化・買い物(観光)
大型集客施設の催事・イベント(スポーツ・エンタメ)
人間ドック・研修等(医療)
修学旅行・結婚式・法事(教育・冠婚葬祭)
個人旅行・ツアー・視察(インバウンド)

大半の項目に、当社は「✕」を付けざるを得ませんでした。対象エリアは典型的な住宅エリアで、昼間人口と夜間人口がほぼ同じ。エリア外から訪れる人は極めて少なく、近隣には遠方のビジネスマンを引き寄せる企業集積も、観光客を呼ぶ施設もほとんどありませんでした。確かな「○」が付いたのは、近隣の大型集客施設で催事がある日の需要、ただ一つだったのです。

人は通る。けれども、その人たちが「泊まる理由」は、この土地にほとんど存在していませんでした。
データとグラフを囲む議論の情景
乗降客数も、病床数も、交通量も。一見もっともらしい指標を、一つずつデータで検証しました。

03.交通量も、病床数も、需要を語らなかった

「✕」が並んだとはいえ、当社はそれだけで結論を出すことを避けました。賑わいの予感を支えていた個々の指標を、本当に宿泊需要と結びつくのか、一つずつ数字で検証する必要があったからです。検証したのは、立地を語るときに誰もが口にする三つの指標──鉄道の乗降客数、近隣病院の病床数、そして高速道路インターチェンジの通過台数でした。

はじめに、最寄り駅と乗降客数がほぼ同じ水準の類似駅を全国から二十数件選び、それぞれの周辺にホテルが何室あるかを並べてみました。

FIG.01

駅の乗降客数と、周辺ホテルの客室数

02505007501000-500-300-100+100+300+500本ケース客室数(室)駅の乗降客数(基準値からの差・人/日)

乗降客数がほぼ同じ水準の類似駅を並べても、周辺の客室数はゼロから八百台後半まで大きく散らばりました。人の通りの多さと、泊まり客室の数の間に、明確な関係は見て取れません。

図を見て、当社のチームに小さなどよめきが起きました。乗降客数がほとんど同じ駅を並べても、周辺の客室数はゼロから八百台後半まで、見事なまでにばらばらだったのです。客室数が多い駅を一つずつ確かめてみると、そこには工場の集積や、企業・行政機関の集中といった、明確な「泊まる理由」が必ず存在していました。乗降客数そのものは、宿泊需要を何も説明していなかったのです。

次に検証したのは、医療需要でした。「大きな病院があれば、見舞いや入院、人間ドックの需要でホテルが成り立つ」というのは、もっともらしく聞こえる仮説です。そこで、相応の規模の病院を広く集め、その近隣の客室数との関係を調べました。

FIG.02

近隣病院の規模と、周辺ホテルの客室数

020040060080010001200特大R² ≒ 0.02客室数(室)近隣病院の規模(病床数)

「大きな病院があれば、見舞い・入院・人間ドックの需要でホテルが成り立つ」というのは、もっともらしく聞こえる仮説です。しかし大規模病院を広く並べても、周辺客室数との相関はほぼゼロ(R²はおよそ0.02、相関なしと判断できる水準)でした。

結果は、回帰直線の傾きがほとんど水平に近い、相関なしの散布図でした。決定係数(R²)はおよそ0.02。大規模な病院の隣に客室がほとんどない地域もあれば、病院規模が同程度でも客室数が大きく異なる地域もありました。病院の規模は、ホテルの存立をほとんど決めていなかったのです。

高速道路インターチェンジの通過台数も、同じでした。一日に大量の車両が通過するインターの周辺に客室がゼロという地域がある一方で、通過台数が少なくとも工業団地に近いインターには、ホテルが集積していました。通過台数の多さではなく、その先に工場という「泊まる理由」があるかどうかが、ホテルの有無を分けていたのです。

乗降客数も、病床数も、通過台数も、それ単体ではホテル需要を説明しませんでした。立地を語る言葉の多くは、賑わいの予感を裏づける根拠にはならなかったのです。

この一連の検証から、当社の見立てははっきりと傾きました。この土地で見込めるのは、近隣で続く工事関係者や、大型集客施設での催事に伴う関係者といった、極めて細い長期滞在需要のみ。観光・ビジネス出張・医療・インバウンド・修学旅行といった他の宿泊動機は、いずれも実体として存在しませんでした。

けれども、ここで結論を出すのは早計でした。細い需要であっても、新設するホテルで受け止められるならば、出店は成立しうる。残る問いは、その細い需要に対して、現実の経済性がどう答えるか──それが、当社の検証の最終段階でした。

04.競合の口コミが、語っていたこと

数字の上での見立てを、現実の宿泊者の声で裏づける段階に進みました。当社は、近隣の競合ホテル群について、価格・写真・口コミ・導線という指標を横断的に読み込み、宿泊客が実際に何を目的に泊まり、何に不満を抱いているのかを丁寧に拾い上げました。ホームページの印象は実際と異なることが多いため、口コミは現場の手触りを知る貴重な情報源になります。

口コミを束ねていくと、当社の見立てを裏づける像が、はっきりと浮かび上がってきました。

競合ホテルの口コミから見えたもの
宿泊の目的口コミから読み取れた声(要約)
大型イベント関連近隣の集客施設でのイベントを目的とした宿泊が一定数
ビジネス・出張「出張でたまに使うが、まわりに宿泊施設がなく困っていた」という起点の声
不満(食事)周辺に飲食店が少なく、夜の食事に困るという声が目立つ
不満(駐車場)車利用が前提だが、駐車場が不足しているという声が多い

口コミは、いくつもの大切なことを教えてくれました。第一に、この地域の宿泊需要の中心は、観光でもビジネス出張でもなく、近隣の大型集客施設で催事のある日と、車で訪れる長期滞在だということ。第二に、宿泊客の多くが「周辺に飲食店がない」「駐車場が足りない」という、立地そのものに由来する不便を口にしていたこと。これは、この土地でホテルを開くなら、食事と駐車場をホテル側で補わなければ成り立たない、という設計上の制約を意味していました。

需要は、確かにゼロではない。けれども細く、しかも構造的な不便を抱えている。ここまで来て当社は、最後の検証に進みました。この細い需要を仮に取りに行ったとき、現実の経済性として、新設するホテルは黒字を確保できるのか。これを採算試算で確かめなければ、依頼者に責任ある進言はできなかったからです。

05.採算試算が示した、構造的な赤字

依頼者が新設として構想していたのは、二百室を超える規模の宿泊施設でした。電子レンジや冷蔵庫に加えてミニキッチンを備え、中長期滞在に適したコンパクトな仕様で、対象エリアで取り得る長期滞在需要を取り込もうという狙いがありました。この構想を対象エリアに当てはめたとき、年間でどれだけの宿泊収入が見込め、その水準で黒字を確保できるのか──当社は、この問いに対する答えを、慎重に組み立てていきました。

見込める稼働率の上限はどこか

まず、対象エリアで現実的に取りに行ける稼働率の幅を見積もりました。確認した条件は次のとおりです。一つ、明確な需要源泉は催事と長期滞在の二つに限られ、年間を通じて需要が薄い日が多数を占める。二つ、既存供給は飽和に近く、駅前にはすでに複数の同種ホテルが稼働している。三つ、新規参入のためブランド認知も顧客基盤も持たない状態から立ち上げることになる。四つ、客室単価は周辺競合と同水準までしか引き上げる根拠が見当たらない。

これらを踏まえて当社が試算した想定稼働率は、弱気シナリオで三割台半ば、中立で四割、強気に見ても四割台半ばが現実的な上限でした。需要そのものは存在しても、すでにある供給がその大半を吸収しており、新規参入者が取りに行ける余地は限られていたのです。

黒字確保に必要な稼働率はどこか

次に、同規模のビジネスホテルが黒字を確保するために必要な稼働率を確認しました。建設投資、内装・設備投資、開業準備費という新設に伴う初期投資の重さ、加えて毎期発生する固定費(賃料あるいは土地建物の減価償却、人件費、水光熱、本部管理費)に対して、客室単価と変動費率の関係から逆算される損益分岐点稼働率は、同規模ビジネスホテルの業界目安として概ね六割を超える水準にあります。新設の場合、初期投資の償却負担が長期にわたって損益を圧迫するため、現実にはこの水準のやや上を見るのが妥当でした。

両者を一枚の図に並べたとき、見えてきたのは、はっきりとした距離でした。

FIG.03

採算試算──見込み稼働率と損益分岐点稼働率のギャップ

0%10%20%30%40%50%60%70%80%中立 40%弱気35%強気45%A. 対象エリアで見込める想定稼働率レンジ60〜65%B. 同規模ビジネスホテルの損益分岐点稼働率帯(業界目安)構造的赤字ゾーンギャップ 約15〜20ポイント客室稼働率(%)

対象エリアで現実的に見込める稼働率は、強気に見ても四割台半ば。一方、同規模のビジネスホテルが黒字を確保するために必要な稼働率は、業界目安で六割を超えます。両者の間には十五〜二十ポイント前後の距離があり、開業初年度から複数年にわたって構造的な赤字が見込まれる──それが採算試算の到達した結論でした。

強気のシナリオで見ても、見込み稼働率は損益分岐点稼働率に対して十五ポイントから二十ポイント前後の不足。これは開業初年度に偶然訪れるような誤差ではなく、需要の構造と供給の現状から導かれた、複数年にわたる構造的な距離でした。仮にこの土地でホテルを新設したとすれば、初年度から数年にわたって毎年一億円を超える赤字が見込まれる──それが採算試算の到達点でした。

採算ギャップの原因は、運営努力で埋められる種類のものではありませんでした。需要の天井そのものが低いところに、新規ブランドの認知不足による稼働率の下押しと、新設に伴う重い初期投資の償却負担が重なっていたからです。値下げで稼働を取りに行けば客単価が一段下がり、その分だけ損益分岐点稼働率がさらに上に逃げていく。出口のない循環でした。

需要の構造と、施設の経済性。二つの検証が、同じ結論を指していました。この土地にホテルを新設すれば、構造的な赤字が、数年にわたって続く──。
中長期滞在を想定したホテル客室
ミニキッチンを備えた、中長期滞在向けの仕様。依頼者が構想されていた業態も、採算の壁の前では十分には機能しませんでした。

06.「この土地でのホテル新設は、お勧めしません」と進言する

調査の最終段階で、当社が依頼者にお示しした結論は、明確なものでした。

当該地でのホテル新設は、推奨しない。理由は二つ。一つ、対象エリアには宿泊需要を支える明確な源泉が乏しく、立地を語る指標もホテル需要との相関を示さなかった。二つ、仮に細い需要を取りに行ったとしても、新設するホテルの経済性は構造的な赤字を抱える形にしかならなかった──。当社は、この二つの根拠を一つずつ書面に落とし、依頼者に丁寧にお伝えしました。

正直に申し上げれば、当社の収益という観点からは、「進めましょう」とお伝えするほうが望ましかったかもしれません。実行段階に進めば、事業計画の策定、設計、開業準備、運営支援と、関与の幅は広がっていきます。けれども、採算の合わない投資を進めれば、最終的に痛みを引き受けるのは依頼者である──この一点だけが、当社の判断軸でした。

ホテル開発の業界には、紹介手数料や仲介報酬を主たる収益源とする業者も少なくありません。そうした構造の下では、案件を前に進めるインセンティブが先に立ちやすく、「行けます」と背中を押す力が強く働きがちです。当社はオペレーターとの取引関係を持ちつつも、特定の業者の代弁者ではなく、中立的な第三者性のある専門家として、依頼者の利益最大化を最優先する立場で関与することを、創業以来貫いてきました。だからこそ、賑わいの予感のある土地であっても、採算が合わないなら合わないと、はっきりお伝えできるのです。

この土地には、確かに賑わいの予感がありました。けれども、賑わいの予感と、ホテルの採算性は別のものでした。そして、その違いを依頼者の手前で見抜くことこそが、専門家としての私たちの仕事だったのです。

─── ある土地の話、として読まれているかもしれません。けれども

本記事をお読みになりながら、ご自身が検討中の出店・移設・業態転換の話と重ねた方も、少なくないのではないかと思います。「見た目の材料は揃っているのに、どこかスッキリしない」という感覚を抱えたまま意思決定に進むのは、上位の経営判断でもっとも難しい部類の仕事です。

当社は本件のような立地調査だけでなく、事業計画の策定、リノベーション計画、新規開発の伴走まで、観光・宿泊産業の課題に幅広く伴走しております。次の章では、本記事をお読みくださっている読者層ごとに、どのようなご相談があり、当社がどう関与してきたかを整理いたします。

07.進めなかったことで、依頼者が得たもの

当社の進言を受けて、依頼者は当該地でのホテル新設を見送られました。「進めない」という意思決定は、目に見える成果が出にくいぶん地味に映りますが、その内実は、開発の現場ではむしろ稀少な種類の価値です。本業務によって依頼者が得たものは、次のように整理できます。

数億円規模の赤字投資の回避

仮に当該地でホテル新設を進めていた場合、初年度から複数年にわたって毎年一億円を超える投資赤字が見込まれました。建設投資や開業処理を含めれば、描画されていた損失規模はさらに大きく、見送りによる赤字回避効果は調査費用の何倍にも及んだと考えています。

需要に適う立地の再検討という選択肢

依頼者が構想していた中長期滞在型の仕様と需要との関係が丁寧に整理されたことで、「この業態・価格帯が活きる立地はどこか」という逆方向の検討軸が手に入りました。明確な長期滞在需要を持つ工業地帯近接エリアなど、他の候補地の検討に軸足を移せるキッカケとなりました。

定量的な根拠を手元に置いた社内説明の土台

「交通量も人口も十分、だから進める」と説明しかけていた社内検討に対し、「この指標と宿泊需要には相関が見られず、採算試算も赤字を示した」という、重要な意思決定を説明できる第三者レポートが手元に残りました。

今後の出店検討に使える採算見極めの型

「人の通り」ではなく「泊まる理由」と「採算ギャップ」で見るという評価の型が、以降の他候補地の検討にもそのまま底本として使えるようになりました。個別案件を超えて使える、判断軸そのものが残っています。

「行きます」と背中を押す調査は、依頼者にとっても短期的には心地よく響くものです。ですが、その先に控えているのが採算の合わない開業であるならば、本当の意味で依頼者の役に立ったとは言えません。「進めない」という結論こそが、もっとも大きな価値だった──そう実感したお仕事でした。本調査は、当社が中立的な第三者性のある専門家として、何度も繰り返してきた仕事の典型の一つです。

街路を行き交う人々
「行ける」と「やめる」の間、定量的な根拠で意思決定の土台を作ることが、専門家としての仕事だと考えています。

08.こんなご相談を、これまで頂戴してきました

本記事のような立地調査に限らず、観光・宿泊産業の開発・移設・業態転換に関するご相談は、立場の異なるさまざまな方からお預かりしています。代表的な五つの立場と、よく頂戴するご相談の輪郭を、参考までに整理しておきます。

ホテル・旅館の移設・新規開発を検討されている方

人の通りはある土地だが、本当に宿泊需要があるのか確証がない。投資の前に、進めてよいかを判断できる根拠が欲しい。

対象地の需要源泉分析、類似地・類似施設との比較、競合・ポジショニング分析、業態・価格帯・ハード要件別の存立可能性評価まで、中立的な第三者の立場で、出店可否の意思決定に耐える調査を整えます。

不動産デベロッパー・投資家・金融機関の方

保有する遅择地や取得候補物件でホテル開発を検討しているが、その地域に本当に需要があるのか、投融資判断の根拠が手元にない。

対象地のフィージビリティスタディ、需要量推計、競合分析、適正客室数・適正単価・収支シミュレーションの作成。中立的な第三者としてのレポートにより、社内稟議や投資委員会で使える資料をご提供します。

既存のホテル・旅館を経営されている方

現在地での経営が見通せず、移設や業態転換も選肢に入ってきた。だが、見うんの土地や業態が適切かは判断がつかない。

現状の事業診断、業態転換の事業性評価、移設先候補の立地評価、施設の仕様と需要の適合性の検証まで。「この施設に合う立地はどこか」という逆方向の視点も含めて、選択肢の棚卸しを丁寧に整えます。

他業種から宿泊事業へ参入を検討されている方

所有する土地や建物を活かして宿泊事業を始めたいが、その場所でどの業態・価格帯が成り立つのか、判断する視点がない。

立地・需要源泉の診断から、業態・価格帯・ハード要件の適合性評価、事業計画・収支計画の策定まで。宿泊業に不慎れな方でも、意思決定のプロセスに沿って必要な分析をご提供します。

自治体の観光振興・地域振興ご担当の方

地域にホテルを誘致したいが、そもそもこの地域に宿泊需要があるのか、事業者に示せる定量的な根拠が欲しい。

地域の宿泊需要の現状診断、誘致すべきホテルの業態・規模の提示、事業者に提示できる定量的アウトプットの作成まで。議会や関係者への説明に耐える形で整えます。

もし以上のいずれかが、ご自身や所属組織の現在の状況に近いと感じられましたら、次の章でご紹介する業務メニューも参考にしていただけるかもしれません。

09.立地調査という仕事の核心

本業務を通じて当社が用いている、ホテル立地調査の型は、次のように整理できます。新規開発・移設・業態転換のいずれにおいても、繰り返し用いてきた五段階のプロセスです。

PHASE 01
「泊まる理由」を棚卸しする

ビジネス・観光・医療・スポーツ・インバウンドなど、宿泊の動機になりうる需要源泉を二十数種類に分解し、対象エリアにそれぞれが存在するかを一つずつ確かめます。

PHASE 02
類似ケースの鑑に映して、指標の妥当性を検証する

交通量・人口・医療規模など、一見もっともらしい指標を、類似駅・類似施設との比較で検証します。指標が本当に需要を説明しているかを、データで見極めます。

PHASE 03
競合のポジショニングと口コミを読み込む

OTA等の公開データから、周辺ホテルの客室数・価格帯・口コミ評価を網羅的に取得し、ポジショニング図を作成。価格・写真・口コミ・導線の四つの視点で、現場の需要と不満を拾い上げます。

PHASE 04
採算試算で「黒字化の見込み」を評価する

見込める需要を取りに行ったときに現実的な稼働率と、同規模ホテルの損益分岐点稼働率を並べ、赤字ギャップの有無を見極めます。仕様・価格帯と立地を、別々にではなく組み合わせで評価することが要論です。

PHASE 05
白黒をつけず、意思決定に使える形で提言する

「行ける」「やめる」の二択を無理に下さず、成立の条件と、追加で確かめるべき論点を明示します。中立的な第三者として、事業者が自ら判断できる土台を整えることを重んじます。

このプロセスの本質は、象徴的な一つの指標や、もっともらしい見た目の賑わいに頼らず、「泊まる理由があるか」「その需要に業態が合っているか」という本質で意思決定の土台を作ることにあります。当社は、このために調査業務をお引き受けしています。

10.ご相談いただける業務メニュー

当社が観光・宿泊産業向けに提供している業務のうち、本記事のテーマに関わるものを、ご相談の進め方の見当がつくよう整理しました。「自分の状況なら、どこからご相談できるか」をイメージしていただくための、ごく簡易な見取り図です。

LOCATION RESEARCH

ホテル立地調査

本記事と同種の業務です。需要源泉の棚卸し・類似ケース比較・競合分析・業態・価格帯・ハード要件別の存立可能性評価まで一貫して実施します。

こんな場面で
出店・移設したい土地に、本当に需要があるか確かめたいとき
主な成果物
立地調査報告書、存立可能性評価、候補地の考察
進め方
初回相談で目的と制約を整理 → ご提案 → 実施
FEASIBILITY STUDY

フィージビリティスタディ

立地調査を一歩進め、需要量推計・適正客室数・適正単価・収支シミュレーション・投資回収計画まで、投資判断に耐える形で整えます。

こんな場面で
投融資判断や社内稟議に耐える定量根拠が欲しいとき
主な成果物
調査報告書、収支シミュレーション、投資判断資料
進め方
初回相談で目的と制約を整理 → ご提案 → 実施
BUSINESS PLAN

事業計画策定支援

新規ホテル開発、移設、業態転換など、具体的な事業を立ち上げる際の収支計画・投資回収計画・運営計画を策定します。

こんな場面で
構想を、投資判断に耐える事業計画へ落とし込みたいとき
主な成果物
事業計画書、収支シミュレーション、投資判断資料
進め方
初回相談で構想の段階と制約を確認 → ご提案 → 着手
RENOVATION PLAN

リノベーション・業態転換計画

既存施設の改修・業態転換に向けて、現状診断・改修方針・投資計画・投資回収シミュレーションを作成します。

こんな場面で
既存施設の改修・業態転換を、回収の見通しとともに検討したいとき
主な成果物
現状診断書、リノベ計画書、投資回収シミュレーション
進め方
初回相談で施設の状況と方向を確認 → 現地視察を含むご提案

いずれも、案件の規模・複雑度・関係者の数によって関与の形を柔軟に調整しています。「自分の案件はどのメニューに当てはまるか分からない」「複数にまたがっている気がする」というご相談も多く頂戴しており、その整理自体を初回相談でお手伝いしています。

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株式会社アルファコンサルティング 代表 青木康弘
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初回相談(60〜90分・無料・オンライン可)では、お手元の構想や課題を整理し、当社がどう関与できるかをその場でご一緒に考えます。特定の業務に絞った形ではなく、本記事のテーマに沿うご相談であれば、次のような論点を扱うことができます。

  • 検討中の立地・物件に、「泊まる理由」があるかの見立ての整理
  • 類似ケース・類似案件の参考事例のご紹介
  • 想定スキーム(立地調査・FS・事業計画・リノベ等)のラフな見当と進め方
  • 次のアクションへ進むうえでの優先順位の整理

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