多角化の設計図|本業の隣に三つの収益の柱を立てた事例(結婚式場運営企業)

晴れの日を演出する仕事に、長く携わってきた会社の話です。

ある地方都市で複数の結婚式場を運営し、二百名を超える社員が働く、地域でも名の知れた企業でした。ところが感染症の拡大によって、ある時期には月の売上が前年同期比で九割近く落ち込む事態に陥ります。組単価も、参加人数の制限によって三百万円台から二百万円を割る水準まで沈みました。けれども、ここで安易な縮小に走ることはせず、経営者の方は私たちにこう言いました。「この会社が、本業の隣で食べていける構造を、一緒に設計してほしい」と。

結論から申し上げます。再生の鍵は、新しい何かを始めることではありませんでした。自社がすでに持っている資源の輪郭を、もう一度引き直すこと──マーケットを三層で読み、強みを別の市場へ運び直す換金の道筋を描き、競合の空白に陣を張り、経営者の思いごと一枚の設計図に束ねる。その作業が、本業の隣に三つの新しい収益の柱を立てる多角化の足場を作りました。

披露宴会場へ歩み入る新郎新婦(イメージ)
長く晴れの日を演出してきた会社が、磨いてきた料理ともてなしを、婚礼の外へどう運ぶか──物語はここから始まります。
※写真はイメージです。事例の施設とは関係ありません。
OVERVIEW
依頼者
地方都市で複数の結婚式場を運営する企業(地域・固有名は非開示)
施設規模
複数の独立型式場・二百名を超える社員を擁する中堅企業
ご相談の背景
感染症拡大による婚礼・宴会の急減。あわせて、かねてより縮小が続く婚礼市場という構造的な逆風
業務内容
マーケット分析/経営資源の換金ロジック設計/競合ポジショニング/事業計画への統合/資金調達計画の組み立て支援
当社の役割
三層のマーケット分析、強み→市場の換金マッピング、価格×体験価値の競合ポジション設計、思いを織り込んだ段階的収益設計、リスク想定と備えの設計
主な成果物
多角化の設計図(マーケット分析・換金マッピング・ポジショニング・収益計画を一枚に統合)/事業計画書/資金調達計画
到達点
本業の隣に三つの新規事業(体験型レストラン/大規模施設向けケータリング/自社商品のEC)を立ち上げる構造の確立

※ 守秘の観点から、地域・固有名・業態の細部は伏せ、数値は施設が特定されない範囲に調整しています。設計の方向性と比率の動きは、実際の取り組みに基づいています。

▲9最も厳しい時期の
月次売上(対前年)
15%5年後に新規事業が
占める売上比率
▲18%他社新規参入比の
経費率差(参入障壁)
3期目新規事業の
営業黒字化時期

01.「戻る危機」と「戻らない危機」を見極める

多くの会社は、本業が落ち込むと「嵐が過ぎるのを待つ」判断をします。けれどこの会社の経営者の方は、冷静でした。婚礼の市場は、少子化や価値観の変化によって、この二十年ずっと縮み続けてきた。感染症は、その長い下り坂を一気に早送りしたにすぎない。つまり、待っても元の景色には戻らない──そう見定めていたのです。当社が最初に行ったのは、この経営者の方の見立てを、データで裏づけることでした。

同時に、当社が丁寧に受け止めたのは、この会社が何を守りたいかでした。長い歴史のなかで掲げてきた、品格と社会との関わりを大切にする理念。かつての震災のとき、延期の費用を会社が引き受けてでもお客様に寄り添い、ほとんどのキャンセルを防いだという矜持。そして、いま働く二百名を超える社員の雇用と、長年支えてくれた地元の食材店や生花店との取引──。

守りたいものは、設計の「制約条件」になります。雇用を守り、地元との取引を続けたまま黒字化できる構造は何か──それが、設計図に与えられた最初の条件でした。

02.設計図① ─ マーケットを三層で読む

「飲食をやろう」では設計になりません。どの需要が、どこに、どれだけあるのか。当社はマクロ・業態・商圏の三層に分けて、取りに行くべき需要の在りかを一点に絞り込みました。

第一層 ─ マクロ:市場全体の方向を確かめる

外食の市場全体は、長期で拡大基調にあり、なかでもレストラン業態は底堅く推移してきました。まず「沈んでいく船ではない」ことを確認します。

第二層 ─ 業態:逆風下で伸びる需要を探す

ここが転換点でした。感染症で外食全体が打撃を受けるなかでも、「記念日」を目的とした来店は、前年比で1割以上伸びていたのです。不要不急の外出が控えられる時期だからこそ、誕生日や記念日といったハレの日には、人は身近な相手と特別な時間を過ごしたいと考える。ファストフードや居酒屋の客単価は下がる一方で、ディナーレストラン業態の客単価は前年を上回って推移していました。この一点が、進むべき方向を指し示します。婚礼で「特別な一日を演出してきた会社」と、見事に重なる需要だったからです。

第三層 ─ 商圏:数字で需要量を推計する

方向が定まったら、出店候補エリアにその需要が「どれだけあるか」を推計します。この商圏は、近隣の他都市と比べて一世帯あたりの外食消費が全国平均の約1.9倍という、突出して外食に支出する土地でした。当社は、車で十分の一次商圏に住む約十四万世帯に、一世帯あたりの外食支出額を掛け合わせて、洋食外食市場をおよそ年間四十億円規模と算出。さらに、隣接する大規模施設のケータリング需要を、想定来場者数(年間十数万人)×利用率二割×単価五千円で見積もり、年間およそ一億五千万円規模の市場と推計しました。

FIG.01

マーケットを三層で読み、需要を一点に絞り込む

①マクロ ─ 外食市場全体は拡大基調 レストラン業態は長期で底堅く推移 ②業態 ─ 逆風下でも「記念日需要」は伸びている 記念日目的の来店は前年比で1割以上の伸び ③商圏 ─ この土地は外食消費が突出して高い 世帯当たり外食支出は全国平均の約1.9倍 取りに行く需要を特定 記念日 × 高単価 × この商圏

市場全体(マクロ)→ 伸びる需要(業態)→ この商圏での需要量(ミクロ)と層を下りながら絞り込み、「記念日 × 高単価 × この商圏」という取りに行くべき需要を特定しました。

需要は「ある/ない」で語るものではありません。「どこに、どれだけ」を金額で押さえて初めて、事業の規模も、投資の上限も決められます。
記念日のディナーで乾杯する人々(イメージ)
逆風のなかでも、記念日やハレの日の需要は底堅い。その需要は、晴れの日を演出してきた会社と深く重なっていました。
※写真はイメージです。

03.設計図② ─ 資源を「換金ロジック」に変える

需要の在りかが定まったら、次は「自社の何で、その需要に応えるか」です。当社は、建物・料理・人材・サービス・仕入れ・人脈といった資源を、「余力があるか」と「他社より強いか」の二つで一つずつ評価しました。けれど、棚卸しはそこで終わりません。本当の問いは、その強みが、どの市場でお金に変わるのかです。

強みを、どの市場で換金するか
この会社の強み運び直す先と、収益化の道筋
大量・同時に高品質な料理を出す厨房能力大規模施設のケータリング。競合の小規模厨房では応えられない需要を独占できる
晴れの日を演出するノウハウ体験型レストランのライブ感。記念日需要に直結する
生産者直接・一括の仕入れネットワーク原価率を競合より低く保ち、手頃な価格でも採算が合う
平日に稼働していない厨房セントラルキッチン化し、眠っていた時間を収益に変える
引き出物への高い評価ECで全国へ。式後のお客様を生涯顧客に変える

この設計から、見過ごせない経営上の含意が一つ生まれました。これらの資源をすべて活用できるため、同じ事業を他社が一から立ち上げる場合に比べ、経費率をおよそ18%低く抑えられるという試算です。これは単なるコスト優位ではありません。裏を返せば、他社が同じ事業を新規で始めても高コストで採算が合いにくいということ──つまり、この会社にとっての参入障壁になるのです。「自社にしか割に合わない事業」を選ぶ。これが、多角化を成功させる勘どころでした。

新規事業の多くが失敗するのは、自社にない強みで勝負するから。逆に、自社にしか持てない強みで戦える場所を選べば、競争はぐっと有利になります。

こうして、三つの柱が「強みの運び先」として形をとりました。

PILLAR 01 ─ 体験型レストラン

人の集まる大型の拠点施設に、異国の食文化をテーマにした体験型レストランを出店。料理人が目の前で仕上げるライブ感で、記念日需要に応えます。

PILLAR 02 ─ 大規模施設向けケータリング

隣接する数千人規模のホールへ、セントラルキッチンから料理を届ける。平日に眠っていた厨房を、収益を生む装置に変えました。

PILLAR 03 ─ 自社商品のEC

料理長監修の品や地元食材を全国へ。式を挙げたお客様との一度きりのご縁を、生涯のお付き合いへと広げます。

三本柱を貫く設計思想

いずれも、ゼロから始める競合には真似できない既存資源の上に立つ事業です。「自社にしか割に合わない」場所に陣を張りました。

地中海風シーフード料理の盛り合わせ(イメージ)
異国の食文化をテーマにした体験型レストラン。料理長の腕と婚礼仕込みの演出力が、記念日需要に応える一皿になります。
※写真はイメージです。

04.設計図③ ─ 競合の弱みに、自社を置く

良い需要には、必ず競合がいます。勝てる場所は、競合がそろって手薄にしている空白地帯。そこへ自社を置けるよう、価格と体験価値の二軸で陣地を設計しました。

出店エリアの競合店を一軒ずつ調べると、共通の傾向が見えてきました。ディナーの中心価格は一万五千円から二万円と高く、限られた客層だけを相手にしている。個室は狭く、大人数には対応できない。多くは郊外型で車がないと行きにくく、予約は電話が中心──。これらは裏返せば、競合がそろって満たせていない条件です。

そこで当社は、自社の陣地をディナー一万円前後 × 高い体験価値・大量対応力という空白地帯に定めました。競合より手頃な価格で出せる根拠は、設計図②で描いた仕入れの強みと、新たな土地取得が不要で初期投資を抑えられること。そこに、婚礼仕込みのライブ感と大量対応力、駅前の立地と予約のしやすさを重ねる。競合が一店も立っていない場所に、陣を張ったのです。

FIG.02

競合ポジショニング ─ 空白地帯に陣を張る

価格 高 価格 低 体験価値・大量対応力 → 既存の競合店 ディナー1.5万〜2万円 少人数・予約しにくい 自社の陣地 一万円前後 × 大量対応 競合が一店も立っていない空白地帯

競合は「高価格・少人数・予約しにくい」一帯に集中していました。その対極にある「手頃な価格 × 体験価値 × 大量対応 × 駅前 × 予約しやすさ」の空白地帯に、自社を置きます。

もう一つ、設計で慎重に避けた落とし穴があります。結婚式の会社が飲食へ進むとき、料理人を掛け持ちさせれば人件費が浮くように思えます。けれど、ご相談を受けてきたなかで、この「相性の良さ」が裏目に出る場面を、私は何度も見てきました。

多角化の落とし穴 ─ 相性の良さが、なぜ裏目に出るのか
典型的な期待実際に起きること
料理人を新旧事業で掛け持ちさせれば人件費が浮く仕込みと提供のタイミングが重なり、結局は余分に人を抱え込む
既存厨房と新店舗で食器・食材を共用すれば原価が下がる運搬距離が長いと、運搬コストと時間が削減効果を上回ってしまう
サービススタッフを兼務させれば教育コストが浮くシフトの硬直化で、繁忙の波に対応しきれなくなる

だからこそ、相乗効果を曖昧な期待のままにせず、「誰が、いつ、どの持ち場に立つのか」というシフトのレベルまで落として検証する。この事業では、仕込みを一カ所に集めるセントラルキッチン化と、運搬距離を最小化する立地選定で、この落とし穴を構造的に避けました。

「相性の良い多角化」ほど、シフトのレベルで検証しないと裏目に出る。期待で進めず、設計で避ける。

05.設計図④ ─ 思いと数字を、一枚に統合する

需要・資源・競合の分析を、最後に一つの収益計画へ束ねます。このとき、章01で受け止めた「守りたいもの」が計画の前提として効いてきました。ここが、書類作成と設計の決定的な違いです。

三つの柱を同時に立ち上げるのは現実的ではありません。そこで、初年度は立ち上げに集中し、段階的に売上を積み上げて、3期目に新規事業全体での営業黒字化を目指し、5年後には新規事業が全社売上の約15%を占める──という時間軸で収益を設計しました。客数と単価、原価率、人件費を一つずつ積み上げ、いつ・どれだけの利益が出るのかを、月次のレベルまで描いていきます。結果として、付加価値額は5年で年率約47%の伸びを見込む計画にまとまりました。本業の婚礼を立て直しつつ、その隣に新しい収益の柱を着実に積み上げる構図です。

FIG.03

段階的収益設計 ─ 既存事業の回復と、新規三本柱の積み上げ(概念図)

既存事業(婚礼)新規事業新規事業の利益
改善前 1期目 2期目 3期目 4期目 5期目 3期目に新規事業の営業黒字化 5年後 新規事業 約15%

既存事業を回復させながら、新規事業を段階的に積み上げる構造。3期目に新規事業の営業黒字化、5年後に新規事業が全社売上の約15%を占める計画にまとめました。縦軸は方向性のみを示しています。

このとき、章01で受け止めた「雇用を守る」「地元との取引を続ける」という思いが、計画の前提として組み込まれました。婚礼のスタッフが新規事業の接客や調理も担う仕組みを設計し、人を減らさずに固定費を吸収する。地元からの仕入れは、むしろ新規事業で増やす。数字の都合で思いを切り捨てるのではなく、思いを満たしたまま成り立つ数字を探す。それが、この設計の最も難しく、最も価値のある部分でした。

さらに、需要の見込み違い、運営経費の上昇、資金繰り、災害時の事業継続といったリスクを事前に洗い出し、それぞれに備えを用意しました。うまくいく前提だけでなく、つまずいたときの逃げ道まで描く。これがあって初めて、計画は「絵に描いた餅」から「実行できる設計図」になります。本業が大きく落ち込んだあとの再投資ですから、自己資金や借入だけでは初期投資をまかないきれず、当時利用可能だった公的支援の活用も、財務的な制約を解く一つの手段として計画に組み込みました。ただ、これはあくまで計画を前に進めるための手段の一つにすぎず、骨格はあくまで「自社の資源で採算が合う構造」のほうにあります。

当社がお渡ししたのは、提出用の書類ではありませんでした。需要・資源・競合・思い・数字・リスクを一枚に束ねた、多角化を現実に動かすための設計図です。本業の隣にもう一つの収益の柱を立てるとは、こうした一連の設計を経て初めて、実現できる仕事だと考えています。
設計図と付箋を囲んだ打合せ(イメージ)
需要・資源・競合・思い・数字・リスク。ばらばらの要素を一枚に統合したとき、構想は実行できる設計図になります。
※写真はイメージです。

06.設計図が一枚にまとまったとき、変わったもの

需要・資源・競合・思い・数字・リスクが一枚に統合されたとき、経営の景色は静かに変わりました。それまでは「何から手をつければよいのか分からない」状態だったものが、「何を、いつ、どの順番で動かせばよいか」が見えている状態へと、確かに変わったのです。

設計図ができたあと、月次の経営会議で参照される資料が変わりました。これまで決算書の数字を眺めるだけだった時間が、三本柱それぞれの進捗、計画との差異、見えてきたリスクをどう手当てするかを議論する時間へと組み替わったのです。経営者の方が下す判断も、感覚や経験だけに拠るものから、設計図の数字と前提に照らした判断へと、土台が確かなものになっていきました。

もう一つ、見落とせない変化がありました。金融機関との会話の質です。それまで「コロナで売上が落ちた、なんとか持ちこたえている」という後ろ向きの話に終始していた面談が、設計図ができたあとは「本業の隣に、こういう収益の柱を、この時間軸で立ち上げる計画です」という前向きな話で進むようになります。同じ会社、同じ財務状況でも、外部に説明できる構造を持っているかどうかで、相手の評価はまるで変わる。これは多くの会社が見落としがちな点です。

設計図は、社内の判断を整えるだけでなく、社外との会話の質まで変える。一枚にまとまっているということが、それ自体で経営の体力になります。

そして、本業の婚礼そのものにも、副次的な好影響が生まれました。多角化の設計の過程で、自社の強みを言語化し、競合のなかでの自社の位置を見直したことで、本業の打ち手もより研ぎ澄まされていったのです。多角化を考えるという作業は、本業を見直す最良の機会でもある──これは、当社がさまざまな会社で繰り返し目にしてきたことでした。

この会社に欠けていたのは、新しい事業のアイデアでも、行動力でもありませんでした。欠けていたのは、自社が持つものと、向かうべき場所と、そこへの運び方を、一枚の絵として束ねる──多角化の設計図そのものだったのです。

07.この設計が、その会社に残したもの

数字の改善以上に大きかったのは、会社の内側に「自分たちで新しい収益を作れる」という手応えが戻ったことでした。設計図ができたことで、何をいつ判断するか、どの数字を月次で見ていくか、リスクが現れたら誰がどう動くかが、はっきりしました。多角化は当社の手を離れても続く性質のものになります。残せたものを、四つの側面から整理します。

本業の隣に、収益の柱を

マーケット分析・資源の換金設計・競合ポジションを噛み合わせ、本業の婚礼を立て直しながら、その隣に三つの新しい収益源を立ち上げる構造を作りました。

強みを守ったまま

長年磨いてきた料理力と演出力を捨てるのではなく、別の市場へ運び直しました。雇用も、地元との取引も維持したまま、新しい事業を成立させる設計です。

判断の物差し

需要をどう読み、強みをどこに置き、競合の何を避けるか──多角化の判断軸が共有財産として残りました。次の新規事業や投資判断にもそのまま使える設計の型です。

次の一手の足場

三本柱の段階的な収益設計が完成したことで、設備投資・人員配置・追加の事業展開を、選択肢として比較検討できる状態になりました。

本件の本当の意義は、新規事業を立ち上げたことそのものではありません。本業の構造的縮小という長期の逆風を見据えたうえで、自社の強みが活きる別の市場を選び抜き、そこへ運び直す設計の型を、この会社が手にしたこと──それが、これからの経営判断の足場になります。地味ですが、決定的に重要な変化だったと考えています。

新しい景色を望む高台(イメージ)
設計の型を手にしたとき、会社の前には新しい景色が開けます。本業の隣に立てた収益の柱が、これからの経営判断の足場になります。
※写真はイメージです。

─── ある結婚式場の話、として読まれているかもしれません。けれども

本記事をお読みになりながら、ご自身の会社や、継いだ事業の現状と重ねた方も、少なくないのではないかと思います。本業の市場が長期で縮んでいる、新規事業を考えたいが何から手をつければよいか分からない、構想はあるが数字として成り立つか確信が持てない──いずれも、構造を一枚ずつ分解してみなければ、答えの見当がつきにくい種類の課題です。

当社は本件のような多角化・新規事業開発の設計だけでなく、経営改善・収益構造の再設計、事業計画策定、リノベーション計画、早期段階での事業再生まで、観光・宿泊・サービス業の課題に幅広く伴走しております。次の章では、本記事をお読みくださっている読者層ごとに、どのようなご相談があり、当社がどう関与してきたかを整理いたします。

08.こんなご相談を、これまで頂戴してきました

本記事のような多角化・新規事業開発のご相談は、立場の異なるさまざまな方からお預かりしています。代表的な五つの立場と、よく頂戴するご相談の輪郭を、参考までに整理しておきます。

本業の市場縮小に直面している経営者の方

業界そのものが長期で縮んでいる。本業を守りながら、本業の隣にもう一つの収益の柱を立てたい。何から考え始めればよいのか。

マーケットの三層分析から入り、自社の経営資源を換金ロジックに置き換え、競合の空白地帯を見極め、思いと数字を一枚の設計図に統合します。流行りの業態を勧めるのではなく、自社の強みが最も活きる事業の方向性をご一緒に絞り込みます。

受け継いだ事業の、次の一手に迷う経営者の方

先代から継いだ事業の先行きに不安がある。守るべきものと、変えるべきものの境目を、第三者の目で整理してほしい。

経営判断ほど、身内には相談しにくいものです。特定の業者と利害関係を持たない第三者として、自社が何を持っていて、それがどの市場でお金に変わるのかを丁寧に棚卸しし、判断の物差しを整える形でお手伝いします。

新規事業の構想はあるが、成否を見極めたい方

やりたいことはある。けれど、需要は本当にあるのか、数字として成り立つのかを客観的に確かめてから動きたい。

商圏需要を金額で推計し、客数・単価・原価・人件費を積み上げた収支シミュレーション、競合分析、リスク想定までを一冊の事業計画書にまとめます。「需要がある気がする」を「数字で語れる需要」に変える工程に伴走します。

守りたいものを、犠牲にしたくない方

従業員の雇用、地元との取引、受け継いだ理念。それらを守ったまま成り立つ事業の形を、一緒に探したい。

「守りたいもの」を計画の制約条件として最初に組み込み、それを満たしたまま黒字化できる構造を設計します。数字の都合で思いを切り捨てるのではなく、思いを満たしたまま成り立つ数字の組み方を一緒に探します。

受け継いだ施設・不動産の活用に悩む方

宿や施設だけでなく、飲食・物販・不動産活用まで含めて、資産の可能性を広く検討したい。

現状診断、選択肢の棚卸し、各選択肢の事業性評価を整理します。観光・宿泊だけでなく、飲食・サービス業まで含めた事業構造の読み解きができる立場から、意思決定の前提を揃えるお手伝いをします。

もし以上のいずれかが、ご自身や所属組織の現在の状況に近いと感じられましたら、次の章でご紹介する業務メニューも参考にしていただけるかもしれません。

09.多角化を設計する仕事の核心

本業務を通じて当社が用いている、多角化の設計の型は、次のように整理できます。観光・宿泊・サービス業の業態を問わず、本業の隣に新しい収益の柱を立てたいご相談に対して、繰り返し用いている五段階のプロセスです。

PHASE 01
守りたいものを、設計の制約条件として受け止める

経営者の理念、雇用、取引先、これまで築いてきた信用。これらを「数字の都合で切り捨てるもの」ではなく、「計画の前提として組み込むもの」として最初に位置づけます。

PHASE 02
マーケットを三層で読み、需要を一点に絞り込む

マクロ・業態・商圏の三層に分け、「沈まない市場」「逆風下でも伸びる需要」「この商圏での需要量」を順に確かめます。「金額で語れる需要」を特定するまで、層を下りていきます。

PHASE 03
自社の強みを、換金ロジックに変える

余力と強みの二軸で資源を棚卸ししたうえで、「その強みがどの市場でお金に変わるか」の道筋を一本ずつ描きます。「自社にしか割に合わない事業」を選ぶことが、参入障壁になります。

PHASE 04
競合の空白地帯に、自社を置く

価格と体験価値・対応力の二軸で競合をマッピングし、競合が手薄にしている空白地帯を特定します。多角化の落とし穴(シフトの硬直化・運搬コスト)は、設計の段階で構造的に避けます。

PHASE 05
思いと数字を、一枚の設計図に統合する

段階的な収益シミュレーション、雇用・取引先を維持する仕組み、リスク想定と備えまでを一冊にまとめます。「絵に描いた餅」から「実行できる設計図」へと束ねる工程です。

このプロセスの本質は、奇抜な打ち手ではありません。自社が持っているものを正確に見極め、それが最も活きる場所へ静かに運び直すこと──そこに尽きると考えています。当社は、このために多角化のご支援をお引き受けしています。

10.ご相談いただける業務メニュー

当社が観光・宿泊・サービス業向けに提供している業務のうち、本記事のテーマに関わるものを、ご相談の進め方の見当がつくよう整理しました。「自分の状況なら、どこからご相談できるか」をイメージしていただくための、ごく簡易な見取り図です。

MARKET ANALYSIS

マーケット分析と、需要の特定

本記事の設計図①にあたる業務です。マクロ・業態・商圏の三層で市場を読み解き、商圏需要を金額で推計します。「進むべき方向」を数字で固める工程です。

こんな場面で
新規事業の方向を見定めたい。需要が本当にあるのかを数字で確かめたい
主な成果物
市場の三層分析、商圏の需要量推計、取りに行く需要を絞り込んだ方針書
進め方
初回相談で対象市場と仮説を確認 → ご提案 → 分析・推計の実施
RESOURCE STRATEGY

経営資源の棚卸しと、換金ロジックの設計

本記事の設計図②にあたる業務です。自社の何を活かせるか、それがどの市場でお金に変わるかを、強み→市場の換金マッピングとして描きます。

こんな場面で
自社の強みを見極め、それが活きる事業の方向を絞り込みたい
主な成果物
資源の棚卸し表、強み→市場の換金マッピング、参入障壁の見極め
進め方
初回相談で自社資源を確認 → ご提案 → 棚卸し・マッピングの実施
POSITIONING

競合分析と、ポジションの設計

本記事の設計図③にあたる業務です。価格と体験価値の二軸で競合をマッピングし、自社が陣を張るべき空白地帯を特定します。多角化の落とし穴の構造回避も含みます。

こんな場面で
良い需要に競合がいる。どこなら勝てるのか、自社の陣地を定めたい
主な成果物
競合の価格・性能分析、ポジショニング設計、運営設計の整合性検証
進め方
初回相談で競合状況を確認 → ご提案 → 分析・ポジション設計
BUSINESS PLAN

思いと数字を統合した、事業計画・資金計画

本記事の設計図④にあたる業務です。守りたいものを犠牲にせず、金融機関の前に出せる事業計画へ統合します。自己資金・借入を中心とした資金計画の組み立ても含みます。

こんな場面で
構想を、金融機関の前に出せる計画として一冊にまとめたい
主な成果物
段階的な収益シミュレーション、事業計画書、資金調達計画
進め方
初回相談で構想と前提を確認 → ご提案 → 計画策定の伴走

いずれも、案件の規模・状況・緊急度によって関与の形を柔軟に調整しています。「自分の場合はどのメニューに当てはまるか分からない」「複数にまたがっている気がする」というご相談も多く頂戴しており、その整理自体を初回相談でお手伝いしています。

※ 当社は特定の金融機関・運営会社・建設会社と利害関係を持たない、独立した立場の専門家です。いずれの工程でも、依頼者の利益を最優先に、中立的な第三者として関与します。

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事業計画の作り方、業績不振の打ち手、業態別の利益率、リノベーション計画など、本記事の前後で参照される実務記事をご用意しています。お問い合わせの前に、当社の関心や視点を確認いただくのにご活用ください。

事業計画の考え方を見る

新規事業の多くが失敗するのは、自社にない強みで勝負しようとするからです。流行を追っても、その分野の人材もノウハウも仕入れの伝手も自社にはない。逆に、自社にしか持てない強みで戦える場所を選べば、競争はぐっと有利になります。多角化の設計とは、需要のある場所を見つけ、自社の強みがどこで利益に変わるかを見極め、競合の空白に陣を張り、それらを経営者の思いごと一枚の設計図に束ねる仕事です。書類を整えるのではなく、設計図を描くこと。それが、本業の隣にもう一つの収益の柱を立てる仕事の核心だと考えています。

株式会社アルファコンサルティング 代表 青木康弘
FOR HOTEL & RYOKAN OWNERS

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初回相談(60〜90分・無料・オンライン可)では、お手元の状況や課題を整理し、当社がどう関与できるかをその場でご一緒に考えます。特定の業務に絞った形ではなく、本記事のテーマに沿うご相談であれば、次のような論点を扱うことができます。

  • 本業の構造的縮小に対する見立てと、多角化の必要性の整理
  • 自社資源の棚卸しと、活かせる市場の方向感のすり合わせ
  • 類似案件の参考事例・想定スキームのラフなご紹介
  • 次のアクション(マーケット分析・事業計画策定等)へ進むうえでの優先順位の整理

ご相談の際に、決算書・試算表・既存の事業構想メモなど、お手元の資料を共有いただけると、初回相談の密度が高まります。まだ何もない段階でのご相談も歓迎しております。

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