銀行担当者が旅館・ホテルに抱きやすい五つの誤解 ― 融資・経営指導との向き合い方
こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。弊社はホテル・旅館の新規開業から再生まで幅広く支援していますが、仕事の性質上、銀行とやりとりする機会がとても多くあります。銀行は建設・運営資金の提供者として欠かせない存在です。しかし、担当者が必ずしも宿泊業の収支構造に詳しいとは限りません。業界への理解が乏しいと、融資や経営指導の場面で実態に合わない判断をされ、後々の取引に響くこともあります。本記事では、銀行の担当者が旅館・ホテルに抱きやすい五つの誤解と、その解きほぐし方を整理します。あわせて、2026年に入って強まった金融機関の融資姿勢の変化にも触れます。
はじめに ― 銀行員は、なぜ宿の実態を読み違えるのか

銀行の担当者は、多くの業種を横断的に担当します。製造業も小売業も不動産業も、同じ物差しで見ようとする傾向があります。ところが旅館・ホテルは、装置産業でありながらサービス業でもあるという、特殊な収支構造を持っています。客室数で売上の上限が決まり、設備投資の負担が重く、季節で需要が大きく振れる。この特性が理解されないまま指導を受けると、善意のアドバイスがかえって経営を苦しめることになりかねません。
大切なのは、銀行員を敵視することではありません。担当者がどんな前提で、どんな立場から発言しているのかを理解し、こちらから業界の実態を正しく伝えることです。本記事を、銀行との対話を建設的なものにするための手引きとしてお使いください。
この記事を読むとわかること
- 1銀行担当者が旅館・ホテルに抱きやすい五つの誤解とその実態
- 2銀行が融資審査で見ている指標(債務者区分・債務償還年数)の中身
- 32026年に強まった金融機関の融資姿勢の変化と、その背景
- 4担当者の発言の「裏側」を読み、建設的に対話する方法
- 5銀行に業界の実態を正しく伝え、味方につけるための準備
目次 タップで開閉
本記事の業界数値は、特記のない限り日本旅館協会「営業状況等統計調査」によります。審査基準や金融行政に関する記述は、金融庁の公表資料および各種報道を参照しています。
銀行が融資審査で見ている指標

誤解を解く前に、まず銀行が何を見て融資を判断しているのかを押さえておきましょう。銀行は融資先を、財務内容や返済能力に応じて「債務者区分」で格付けします。正常先・要注意先・要管理先・破綻懸念先などの区分で、上位ほど低金利・長期返済などの好条件で借りやすく、下位になると新規融資が見送られたり、担保の追加を求められたりします。
この格付けの判断で重く使われるのが、債務償還年数です。借入金を、毎年の返済原資(税引後利益+減価償却費)で何年かけて返せるかを示す指標で、一般に次のような目安で見られます。
【図表K-1】債務償還年数と債務者区分の目安
| 債務償還年数 | 区分の目安 |
|---|---|
| 10年以内 | 正常先(健全) |
| 10〜15年 | 要注意先 |
| 15〜20年 | 要管理先 |
| 20年超 | 破綻懸念先 |
区分の呼称・基準は金融機関により異なる。10年は法的基準ではなく慣行。なお不動産担保のある融資では20年以内を一つの目安とすることもある。出典:各種の融資実務解説をもとに整理。
青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)
ここで知っておいてほしいのは、旅館・ホテルは設備投資が重い装置産業なので、この目安をそのまま当てはめると、ほとんどの宿が不利に見えてしまうということです。実際、宿泊・飲食業の債務償還年数は他業種より長いのが普通です。だからこそ、担当者が一律の物差しで「年数が長すぎる」と言ってきたとき、業界特性を数字で説明できるかどうかが、対話の分かれ目になります。次章から、その具体例を一つずつ見ていきましょう。
→ 物差しを押さえたところで、最も多い誤解、インバウンドへの過度な期待から見ていきます。
進捗:第1章/全8章 ■□□□□□□□ 12%
誤解① インバウンドで売上が大幅に伸びる
訪日観光客の動向は連日報道されるため、銀行との面談でも話題になりがちです。「御社ももっとインバウンドに力を入れて、借入をきちんと返せるようにすべきだ」という趣旨の指導を受けるケースも見られます。
しかし実際には、インバウンドの効果は地域によってまだら模様です。業容拡大や資金繰り改善に成功した宿がある一方で、立地によっては売上への上乗せをほとんど期待できない地域もあります。協会調査の外国人比率は会員施設に偏っており、全国平均で見れば外国人は延べ宿泊者の1割前後にとどまります。恩恵は、立地と客層によって極端に偏在しているのです。










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担当者にインバウンドを勧められたら、その場で否定する必要はありません。地域への入り込みの見通し、海外向け営業や多言語の受け入れ態勢を整える費用、そこから見込めるメリットとデメリットを整理して、書面で示すのが得策です。「やみくもに飛びつかず、自館にとって採算が合うかを冷静に検討しています」という姿勢こそ、銀行が本来評価すべき経営判断です。期待を裏付けのないまま事業計画に織り込むと、未達のときにかえって信用を失います。
→ 次は、銀行が最も誤りやすい、借入の返済能力をめぐる誤解です。
進捗:第2章/全8章 ■■□□□□□□ 25%
誤解② 売上の何倍もの借入を完済できる


旅館・ホテルは、客室数で売上と利益の上限がおのずと決まります。そのため、いまの規模で借入を完済できるかどうかは、比較的容易に見当がつきます。新築の施設を除けば、現実的に完済できる借入は売上の1.2〜1.5倍が限界です。2倍を超える借入の返済は極めて困難で、売上の3倍以上あれば、営業利益率10%を誇る高収益の宿でさえ経常赤字に陥ります。完済どころか日々の資金繰りに苦しみ、いずれは法的整理や私的整理を選ばざるをえなくなります。
【図表K-2】売上に対する借入の倍率と返済の現実味(横軸:売上倍率)
新築施設を除く一般的な目安。客室数で売上上限が決まる旅館・ホテルでは、借入が売上の何倍かを見れば完済可能性がほぼ判断できる。
ところが、銀行の審査部門や企業支援部門の担当者が宿泊業の収支構造に疎かったり、自分の在任中に手間のかかる稟議を出したくなかったりする場合には、売上の2倍以上の借入があっても、完済を前提とした事業計画の提出を求めてくることがあります。










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「御社はもっと頑張れるはずだ」という指導の裏には、金融支援(債務の圧縮や条件変更)を先送りしたい思惑が見え隠れすることがあります。私が見てきた現場では、担当者の価値判断は局面によって変わります。返済を続けてもらう段階では「もっと返せるはず」と言い、いざ抜本的な再生に踏み込む段階では現実的な数字を受け入れる。発言の意図を読み、先送りされそうだと感じたら、見栄を張らずに実態どおりの計画を出す覚悟も必要です。実現できない計画は、未達のたびに信頼を損ないます。
→ 次は、人材をめぐる定番のアドバイス、番頭役についての誤解です。
進捗:第3章/全8章 ■■■□□□□□ 38%
誤解③ 優秀な番頭役を得るべきだ
銀行担当者が経営者によく口にする助言に、「優秀な番頭役を作りなさい」があります。オーナーや女将と現場の橋渡し、部門間の調整を担う番頭役がいれば、得られる効果は確かに大きい。しかし、実際にそうした人材に恵まれている宿は、ごく一部です。
番頭役を期待して業界OBを採用しても、既存の幹部との折り合いに苦労する。幹部候補と見込んだ若手が次々に辞めてしまう。こうした悩みを抱える宿が少なくありません。とくに、銀行の指導で人件費を削り待遇が悪化した宿では、番頭役どころか、日常業務をこなすスタッフの確保にすら苦労しているのが実態です。










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一人の名番頭を探し当てるのは、宝くじのようなものです。それよりも、平均点以上のスタッフに一人でも多く、長く勤め続けてもらえる職場環境と待遇を整えるほうが、はるかに確実で効果的です。人が定着すれば、採用と教育のコストが下がり、サービスの質も安定します。番頭役は「育つ」ものであって、「採ってくる」ものではない。私はそう考えています。
→ 次は、事業計画でしばしば軽視される、設備投資をめぐる誤解です。
進捗:第4章/全8章 ■■■■□□□□ 50%
誤解④ 設備投資はコントロールできる
金融機関向けの事業計画では、修繕費や資本的支出を少なめに見積もることが多くあります。返済計画を成り立たせるために必要な利益額は決まっているため、売上や諸費用は必要利益から逆算して予算化されます。売上・食材原価・人件費・水道光熱費・送客手数料などは過去の実績と大きく乖離させるわけにいかないので、結局修繕費が調整弁にされてしまうのです。
ところが現実には、設備投資支出こそ最も予算コントロールが難しい費用です。空調・給排水・ボイラーの交換部品が生産終了していれば修理は効かず、高額の取り替えが必要になります。無理な返済計画を組んでいると、こうした突発的な支出で資金繰りが破綻するリスクがあります。










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もう一つ知っておいてほしいのが、銀行担当者の設備投資への姿勢が、局面で正反対になることです。返済を続けてもらうリスケの段階では、担当者の使命は在任中の債権回収を最大化することなので、設備投資を抑えてその分を返済に回すよう求められます。ところが、債務圧縮を伴う再生プランの段階になると、宿を成功事例として見せたい思いから、設備投資はむしろ前向きに検討されます。同じ銀行でも、局面で評価が逆転する。だからこそ、銀行や会計事務所が作った計画でも鵜呑みにせず、予想外の設備投資があっても資金繰りが回るかを、必ず自分で検証してください。
▶ 関連記事:設備投資の三本柱 ― 投資判断と資金計画
▶ 関連記事:老朽化したホテル・旅館の建て替え・改装の進め方
→ 五つ目は、最も指導されやすく、最も弊害も出やすい経費削減の誤解です。
進捗:第5章/全8章 ■■■■■□□□ 62%
誤解⑤ 経費は徹底的に削減すべきだ


銀行担当者から厳しく指導される項目の筆頭が「経費削減」です。あらゆる支出を点検して抑えることで利益を生むという考え方は正しいのですが、やり方を間違えると、かえって売上を落とす原因になります。とくに弊害が出やすいのが、人件費と広告宣伝費です。
人件費は経費に占める割合が大きいため、長く削減の標的にされてきました。人員整理や賃金カットは短期的な利益改善には効きましたが、その結果、宿泊業から優秀なミドル層が流出し、従業員が高齢者と若者ばかりという宿が目立つようになりました。賃金水準が近い飲食・サービス業では、都市部の募集時給が1,000円を優に超え、人材の獲得競争が激化しています。「宿のスタッフは低賃金でも仕方ない」は、もはや通用しません。
広告宣伝費も削減されてきた費目です。費用の重いテレビ・ラジオを取りやめるのはやむをえないにしても、まったく広告を使わずに自館を知ってもらうのは、いまや非常に困難です。ユニークな取り組みで取材を呼び込み無料で知名度を上げる宿もありますが、それが自館で通用するとは限りません。
着眼点
削るべきでない二つの費目
人件費 ― 今後の人手不足に備え、ベースアップの予算を確保しつつ、従業員動線の改善やIT投資で少人数でも回る仕組みに見直すのが望ましい方向です。
広告宣伝費 ― 売上に対して最低1%程度は確保したいところです。販売促進費も予算化できれば、目玉料理やイベントの開催にもつながります。いずれも「売上アップ施策の一環」として、銀行に意図をよく理解してもらいましょう。










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経費には、削ってよいものと、削ると将来の売上を削るものがあります。人件費と広告宣伝費は後者の代表です。銀行に経費削減を求められたとき、すべてを一律に削るのではなく、「これは売上を生むための投資だから維持します」と説明できる費目を仕分けておくこと。その仕分けと根拠こそが、経営者の腕の見せどころです。
▶ 関連記事:経費削減完全ガイド ― 人件費・経費を構造から見直す
→ ここからは、2026年に入って強まった金融機関の融資姿勢の変化を見ていきます。
進捗:第6章/全8章 ■■■■■■□□ 75%
2026年、強まる融資姿勢 ― 金融庁の警告


ここまでは普遍的な誤解の話でしたが、本章は足元の重要な変化です。2026年2月、金融庁が全国の地方銀行に対し、不動産業への融資増加を懸念して警告したことが報じられました。複数の報道によれば、金融庁は不動産業向け融資の割合が高い地銀十数行にヒアリングを実施し、リスク管理態勢に改善の余地がある先が複数見つかったとされます。
具体的に指摘されたのは、主に二点です。一つは、融資全体に占める不動産業向け融資の上限(融資限度額)を設定していないこと。もう一つは、地価下落などの不測の事態が経営に及ぼす影響を調べる「ストレステスト」の活用が不十分なことです。金融庁は地銀との意見交換の中でこうした懸念を文書で伝え、「リスク管理態勢の高度化」に努めるよう促したとされています。
【図表K-3】2026年2月 金融庁が地銀に指摘した主な点
① 融資限度額の未設定
不動産業向け融資の割合に上限を定めていない地銀があった
② ストレステストの活用不足
地価下落など不測の事態が経営に及ぼす影響の検証が不十分
→ 金融庁の対応
懸念を文書で伝達し、「リスク管理態勢の高度化」を要請。場合により立ち入り検査も視野
背景には、金利上昇や不動産価格の下落で返済が滞り、不良債権が膨らむ事態を未然に防ぐ狙いがあるとされる。出典:共同通信ほか各種報道(2026年2月)。
この動きは、直接には不動産業向け融資が対象です。ただし、宿泊施設は多額の不動産(建物・土地)を担保に大型の融資を受ける業態であり、銀行のリスク管理が厳格化すれば、旅館・ホテルへの新規融資や借り換えの審査にも、波及的に影響しうると考えておくべきです。なお、これは命令ではなく「リスク管理態勢の高度化の促し」であり、近年の金融庁は金融機関の自主性を重んじる対話型の姿勢に変わっている点も、あわせて押さえておきたいところです。










青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)
大切なのは、銀行の担当者もまた、上から厳しく見られている当事者だと理解することです。金融機関には「金融庁や審査部の厳しいチェックの中で、苦労して格付けを維持し、折り返し融資に対応している」という思いがあります。融資が渋くなったとき、それを担当者個人の冷たさと受け取るのではなく、銀行が置かれた環境を理解したうえで対話すると、関係は壊れません。
こうした環境だからこそ、経営者の側が、業界特性を踏まえた説得力のある計画を、数字とストーリーで示せるかどうかが、これまで以上に重要になります。銀行が安心して支援できる材料を、こちらから用意するのです。
→ 最後に、銀行を敵ではなく味方につけるための、具体的な準備を整理します。
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銀行を味方につけるための準備
五つの誤解と金融行政の変化を踏まえ、銀行を味方につけるための準備を整理します。
準備1:実態に即した計画を出す。理想から逆算した計画ではなく、自館の実力から積み上げた、達成できる計画を示します。達成可能性こそが、信頼の土台です。
準備2:経費を「守る費目」と「削る費目」に仕分ける。人件費や広告宣伝費など、売上を生む費目は維持する根拠を添えて説明します。一律削減を求められても、仕分けの論理で対話します。
準備3:業界水準との比較資料を用意する。人件費率・債務償還年数・原価率などを業態の目安と並べ、自館の数字が業界特性によるものだと示します。担当者の一律の物差しに、業界の物差しで応えます。
準備4:設備投資の備えを織り込む。突発的な修繕・更新が起きても資金繰りが回るか、余裕をもった計画かを自分で検証しておきます。
準備5:経営者保証の扱いを把握する。個人保証を当然と思い込まず、経営者保証ガイドラインの要件に照らして、保証を外せる余地がないかを確認します。詳しくは次節で解説します。
「経営者保証は当然」も、見直されつつある
もう一つ、知っておいてほしい変化があります。これまで旅館・ホテルの融資では、経営者個人が連帯保証人になるのが当たり前でした。代表者だけでなく、女将やご子息、親族が個人保証を差し入れている例も少なくありません。しかし、こうした経営者保証への依存は、近年見直されつつあります。全国銀行協会と日本商工会議所が策定した「経営者保証に関するガイドライン」、そして国が進める「経営者保証改革プログラム」により、一定の要件を満たせば、経営者保証なしで融資を受けたり、すでに差し入れた保証を見直したりできる可能性が出てきました。
【図表K-4】経営者保証を外せる可能性につながる3要件
① 法人と経営者の分離
資産の所有やお金のやりとりが、法人と経営者で明確に区分・分離されている
② 財務基盤の強化
法人のみの資産・収益力で借入返済が可能な財務基盤が整っている
③ 適時適切な情報開示
金融機関に対し、財務情報を適時適切に開示している
3要件の全部または一部を満たすと、経営者保証なしの融資や既存保証の見直しを検討できる可能性がある。ただしガイドラインは法的拘束力のない自主的なルールで、保証を外すかどうかの最終判断は金融機関に委ねられる。出典:中小企業庁・全国銀行協会の公表資料をもとに整理。










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かつては、家業の旅館を継ぐと同時に、先代の連帯保証も背負うのが当たり前でした。事業がうまくいかなくなったとき、個人保証が事業再生や廃業の足かせになる例を、私は数多く見てきました。連帯保証人制度の見直しは、こうした弊害を改善する大きな一歩です。とくに法人と個人のお金がきれいに分かれていること、これが第一歩になります。
ただし、ガイドラインは法的な強制力のない自主ルールで、保証を外すかどうかの最終判断は金融機関に委ねられます。「ガイドラインがあるから外せて当然」と一方的に求めるのではなく、3要件を満たす財務体質を整えたうえで、根拠を持って相談することが大切です。これも、銀行に言われるまま受け入れるのではなく、制度を知って自分から動く一例です。










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銀行は、敵ではありません。業界の実態を正しく理解してもらえれば、これほど心強い味方はいません。問題は、その実態を伝える言葉と数字を、経営者の側が持っているかどうかです。私たちは特定の金融機関と利害関係を持たない独立した立場から、事業計画や財務シミュレーションの作成、業界水準との比較資料づくりをお手伝いしています。金融機関との交渉そのものを代行するのではなく、経営者が自分の言葉で、自館の実態を説明できるように支える。それが私たちの役割です。
進捗:第8章/全8章 ■■■■■■■■ 100%
よくある質問
Q銀行担当者に「インバウンドに力を入れろ」と言われました。どう答えるべきですか?
Aその場で否定せず、地域への入り込み見通し、受け入れ態勢を整える費用、見込めるメリットとデメリットを整理して書面で示すのが得策です。自館の立地で本当に採算が合うのかを冷静に検討する姿勢こそ、評価されるべき経営判断です。
Q借入が売上の2倍を超えています。完済前提の計画を求められたら?
A旅館・ホテルが完済できる借入は売上の1.2〜1.5倍が限界で、2倍超の返済は極めて困難です。完済前提の計画を無理に作っても達成できず、未達のたびに信用を損ないます。担当者の意図を読み、必要なら実態どおりの計画を出す覚悟も大切です。
Q債務償還年数が10年を超えています。融資は受けられなくなりますか?
A10年は慣行上の目安で、設備投資の重い宿泊業では超えるのが普通です。不動産担保がある場合は20年以内を目安とすることもあります。絶対値より、年数が短くなる方向に動いているか、業界特性を数字で説明できるかが重要です。
Q2026年の金融庁の警告で、旅館・ホテルへの融資は厳しくなりますか?
A直接の対象は不動産業向け融資ですが、宿泊施設は不動産を担保にした大型融資が多く、波及的に審査が慎重になる可能性はあります。命令ではなくリスク管理の促しですが、説得力ある計画の準備が、これまで以上に重要になります。
Q銀行に経費削減を強く求められています。どこまで応じるべきですか?
A経費を「削ってよいもの」と「削ると売上を削るもの」に仕分けてください。人件費と広告宣伝費は後者の代表で、削りすぎると人材流出と集客力低下を招きます。維持する費目は、売上を生む投資だと根拠を添えて説明しましょう。
Q担当者の指導が業界の実態に合っていないと感じます。どう接すれば?
A担当者を敵視せず、業界特性を数字で示して理解を求めるのが基本です。銀行員も上から厳しく見られている当事者です。争いを仕掛けると溝が深まります。業界水準との比較資料を用意し、建設的に対話することで、銀行は味方になります。
Q融資の経営者保証(個人保証)は、外すことができますか?
A可能性はあります。経営者保証ガイドラインでは、法人と経営者の資産分離・法人のみで返済可能な財務基盤・適時適切な情報開示の3要件を満たせば、保証なしの融資や既存保証の見直しを検討できるとされます。ただし法的強制力はなく、最終判断は金融機関次第です。要件を整えたうえで根拠を持って相談しましょう。
用語集 ― 銀行融資に関する主な用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 債務者区分 | 銀行が融資先を返済能力に応じて分類する区分。正常先・要注意先・要管理先・破綻懸念先など。融資条件を左右する |
| 債務償還年数 | 借入金を返済原資(税引後利益+減価償却費)で何年で返せるか。10年以内が正常先の目安(慣行) |
| ストレステスト | 地価下落・金利上昇など不測の事態が経営に及ぼす影響を試算する検証。金融庁が地銀に活用を求めている |
| リスケジュール | 返済条件の見直し。元金返済の減額・猶予などで資金繰りに余裕を作る |
| 折り返し融資 | 既存融資の返済が進んだ分、改めて同程度を融資すること。運転資金の継続的な確保に使われる |
| 監督指針 | 金融庁が金融機関の監督にあたって示す指針。ストレステストなどリスク管理態勢の整備を求めている |
| 簡易キャッシュフロー | 税引後利益+減価償却費。返済に充てられる現金の目安として審査で重視される |
| 経営者保証ガイドライン | 経営者の個人保証に関する自主的なルール。3要件を満たせば保証なし融資や既存保証の見直しを検討できる可能性がある |
さいごに ― 対話の質が、資金繰りを左右する


いかがだったでしょうか。本記事では、銀行担当者が旅館・ホテルに抱きやすい五つの誤解と、2026年に強まった金融機関の融資姿勢を見てきました。最後にお伝えしたいのは、銀行との対話の質が、宿の資金繰りを大きく左右するということです。
担当者が業界に詳しくないことを嘆くのではなく、こちらから業界の実態を、数字とストーリーで伝える。理想ではなく実力に即した計画を出し、守るべき経費の根拠を示し、業界水準との比較で自館の数字を説明する。この一手間が、融資を断られる宿と、味方になってもらえる宿とを分けます。とりわけ融資環境が引き締まる局面では、その差はいっそう大きくなります。
アルファコンサルティングは、銀行への説明資料づくり、実態に即した事業計画や財務シミュレーションの作成、業界水準との比較による経営診断をお引き受けしています。私たちは特定の金融機関・運営会社・建設会社と利害関係を持たない独立した立場から、特定の業者に都合のよい計画ではなく、依頼者にとって何が最善かという基準で助言します。金融機関との交渉そのものを代行するのではなく、経営者が自分の言葉で自館の実態を説明できるよう、その土台づくりを支えるという関わり方です。これまでお引き受けした案件は通算四百六十件を超え、青木は観光経済新聞で2009年からコラムを連載し、数多くの金融機関とのやりとりの現場を見てきました。
ご相談の多い依頼
- 銀行への説明資料づくり ― 業界特性を踏まえた根拠資料の作成支援
- 実態に即した事業計画の策定支援 ― 理想値ではなく実力からの積み上げ
- 財務シミュレーション ― 金利上昇・突発的な設備投資を織り込んだ検証
- 業界水準との比較による経営診断 ― 債務償還年数・人件費率・原価率の客観評価
- 相談先選定の事前診断 ― どの選択肢・どの相談先が自館に適すかの見極め
「銀行の指導が業界の実態に合わない気がする」「融資審査に向けて事業計画を整えたい」「銀行への説明資料を作りたい」――こうしたご相談をお受けしています。ご相談は無料です。
ご相談は無料/相談から実行まで同じ担当者が対応/全国対応
描いた構想を、
ともに、かたちに。
こうしたい、こう変えたい——経営者が描いた構想を、ともにかたちにしていくのが弊社の役割です。数多くの経営に寄り添ってきた立場から、依頼者の望むかたちを、いちばんに考えます。
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