複合観光施設の事業再構築FS|部門別に解きほぐし、保有形態を組み替えた事例

赤字は、合計してはいけない。

地域に古くから根づく屋外アクティビティ施設・スキー場・宿泊棟・飲食施設・温浴施設──観光と地域生活を支えるために整備された複合観光施設群が、長年、年間およそ9千万円規模の収益マイナスを出し続けていました。所有者からは「いっそ全部畳んでしまったほうが楽ではないか」という声まで出始めていた、そんなご相談でした。

けれども施設群を一括りに見ているうちは、答えは出ません。当社が引き受けたのは、「全部赤字」に見えていた現場を、部門ごと・機能ごとに分解し直し、続けるか撤退かの二項対立から議論を引き上げるという作業でした。出てきたのは、「誰が、どの形で、どの期間保有するか」というまったく別の問いだったのです。

雪山の麓に建つ山小屋風の宿(イメージ)
地域の観光と生活を支えてきた複合観光施設群。「全部畳む」の前に、もう一度、構造を解きほぐすところから始めました。
※写真はイメージです。事例の施設とは関係ありません。
OVERVIEW
依頼者
複合観光施設群を保有・運営する事業体
対象
屋外アクティビティ施設・スキー場・宿泊棟・飲食施設・温浴施設・関連商業施設(計6部門)
業務内容
事業構造の分解診断/正常収益力の算定/撤退・継続シナリオの定量比較/保有形態の組み替え検討/契約スキーム別の論点整理
当社の役割
事業再構築FS全体設計、部門別PLの組換・正常化、シナリオシミュレーション、ケーススタディ調査、契約論点の整理、最終報告書作成
実施時期
2021年(中間報告・最終報告の二段階で実施)
主な成果物
正常収益力の算定資料/撤退・継続シナリオ別5年累計収支シミュレーション/保有形態別の論点比較/契約条項に盛り込むべき主要論点の整理
活用の方向
意思決定者の選択肢検討資料/関係者間の合意形成資料/後続のスポンサー選定・契約交渉の基礎資料

※ 守秘の観点から、地域・施設名は伏せ、数値は施設が特定されない範囲に丸めて記載しています。アプローチと比率の動きは、実際の取り組みに基づいています。

6部門事業構造の
分解単位
9,000万円年間の収益
マイナス規模
5通り撤退・継続
シナリオ比較
撤退/継続の議論から
保有形態の組み替えへ

01.「もう全部畳んでしまおうか」という相談から

ご相談を受けた時点で、関係者の間にはすでに重い空気がありました。施設群はいずれも建設から20年近くが経過し、ハード設備の更新時期が一斉に近づいていました。温浴施設に至っては、建替えに数億円規模の費用が必要と試算されていました。これに加えて、毎年9千万円規模の収益マイナスが資金繰りを圧迫している。新たな設備投資など到底できる状況ではない、というのが、相談の出発点でした。

そこで持ち上がったのが、「いっそ全部畳んでしまえば、赤字も投資負担もなくなる」という、ある種の解決策です。論理としては筋が通っています。けれども関係者の誰の表情にも、納得感がありませんでした。施設群は単に赤字を生む箱ではなく、地域の観光・雇用・住民の生活基盤の一部にもなっていたからです。

当社がまずお伝えしたのは、「全部畳む」という選択肢を否定したわけではなく、その判断を下すための材料が、まだ揃っていないということでした。一括りで眺めている赤字を、まず分解する。話はそこからです。

02.合計してはいけなかった ── 部門別に解きほぐす

最初に取り組んだのは、施設群6部門それぞれの正常収益力(基準収益力)の算定です。会計の組替えを行い、部門間で重複している経費(光熱水費・除雪費・人件費等)を実態に合わせて再配分しました。たとえば、ある部門に計上されていた光熱水費の一部は、実際には別の部門で発生していた費用です。委託料の中には、内製化したほうが本来は安く済む業務も混じっていました。

このような細かい組替えは、コンサルティングの世界ではあまり華やかな仕事ではありません。けれども、この作業を飛ばしたまま「赤字は▲9千万円」と一括りで議論を始めても、解像度は決して上がらないのです。

FIG.01

部門別の年間損益分解

赤字部門 黒字部門
単位:百万円/年(概算) 屋外アクティビティ施設▲16百万円スキー場(冬季)▲27百万円温浴施設▲22百万円宿泊棟▲8百万円飲食施設▲5百万円関連商業施設+1百万円-30-20-100

合計の収益マイナス約9千万円は、どの部門も均等に赤字を出していたわけではありませんでした。スキー場と温浴施設で半分超を占め、宿泊・飲食はそれより小さく、関連商業施設は黒字を維持していました。一括りで見ていた赤字を分解することが、最初の作業でした。数値は施設が特定されない範囲に丸めて表示しています。

組替えた数字を部門別に並べたとき、それまで「一律に赤字を垂れ流している」と見えていた施設群の表情が、はっきりと分かれて見えてきました。

赤字の半分超を占めていたのは、スキー場(冬季)と温浴施設の2部門でした。スキー場は冬場のみの稼働で、リフト・圧雪車・除雪等の固定費が重く、近隣にもっと規模の大きい競合スキー場が存在する地理的条件のもとで、構造的に黒字化が難しい部門です。温浴施設は近隣に競合温泉施設が複数開業した後、利用客数が落ち込み続けていました。

一方、宿泊棟と飲食施設の赤字は、合わせても2部門合計よりずっと小さい規模でした。関連商業施設に至っては、わずかながら黒字を維持していました。

同じ▲9千万円でも、部門ごとに病巣の深さも、打ち手の余地も、まったく違っていたのです。

03.施設どうしが、互いを支えていた

部門別に赤字を可視化した次に、当社が時間をかけて整理したのは、施設間の相互利用関係でした。屋外アクティビティ施設で遊んだ客が温浴施設で汗を流して帰る。スキー場利用者が宿泊棟に泊まり、飲食施設で食事をする。一つひとつの施設は単独の事業体に見えても、現場では客の動線が複雑に絡み合っていました。

過去2年分の月次データを部門ごとに突き合わせ、入口利用と付属利用の関係を一枚の表にまとめました。たとえば屋外アクティビティ施設の利用客は、その後にレストランや温浴施設を高い確率で使っていました。スキー場利用客の宿泊棟への流入も無視できない規模でした。

この発見は、意思決定の構造を一変させました。たとえばスキー場を畳めば、冬場の人件費・除雪費・圧雪車維持費が消えます。これだけ見れば年間2千万円台の改善が見込めます。けれどもスキー場の利用客が宿泊棟・飲食施設・温浴施設にもたらしていた売上が、同時に消えるのです。シミュレーションでは、その喪失額は年間1千万円規模に達しました。

どの部門を畳むかは、その部門単独の損益だけでは決められません。隣の部門への影響を、必ず差し引かなければなりませんでした。
屋外アクティビティ施設の現場(イメージ)
同じ「赤字」でも、部門ごとに病巣の深さも、打ち手の余地も違いました。分解する作業は地味ですが、ここで解像度が決まります。
※写真はイメージです。

04.「全部畳む」が最善とは限らなかった

ここまで揃ったところで、ようやく撤退・継続のシナリオ比較に進むことができました。考えられるパターンを五通りに整理し、それぞれについて5年累計の収支を試算しました。解体工事費・清算費用といったイニシャルコスト、そして他施設への売上影響(マイナス要因)とその部門の赤字削減効果(プラス要因)、すべてを織り込んだ正味の影響額です。

FIG.02

撤退シナリオ別の5年累計収支

現状維持 部分撤退 全部撤退
単位:百万円/5年累計(解体・清算コスト織り込み) 0-100-200-300-400-500▲448成行(現状維持)▲321スキー場撤退▲395宿泊・飲食撤退▲330温浴施設撤退▲92全部撤退

解体・清算コストと、施設間の集客連鎖喪失(他施設の売上減)も織り込んだ5年累計の収支です。全部撤退は赤字幅は最小になりますが、解体費・人件費清算等の高額なイニシャルコストが必要で、地域便益・雇用への影響も最大化します。部分撤退は組み合わせ次第で大きな改善幅を生む一方、宿泊・飲食を畳むと他施設の集客にマイナスが波及し、効果が限定的という非対称が見えます。数値は施設が特定されない範囲に丸めて表示しています。

定量比較の結果は、関係者の予想を二重に裏切るものでした。

一つ目の意外性は、「全部畳む」が必ずしも最善ではないということです。確かに全部撤退すれば5年累計の赤字は最も小さくなります。けれどもその裏で、解体工事費・人件費清算等で1億円弱のイニシャルコストが必要で、しかも地域の観光拠点・住民便益・雇用がすべて失われるという定性的影響を伴います。

二つ目の意外性は、部分撤退の効果が、部門によってまったく異なることです。スキー場(冬季)の撤退と温浴施設の撤退は、いずれも他施設への波及を織り込んだうえで5年累計の赤字幅を1億円以上圧縮できる現実解として浮上しました。一方、宿泊棟・飲食施設の撤退は、解体工事費が大きいうえに他施設の集客連鎖を断ち切る影響も大きく、撤退効果は限定的でした。

「全部畳む」でも「全部続ける」でもなく、機能ごとに違う処方箋を当てる。そして処方箋は、撤退だけではないはずでした。

05.問いそのものを、置き換える ── 保有形態の組み替え

ここまでの分析を関係者と共有したとき、一人の方から「撤退と継続の中間はないのか」という問いが投げかけられました。これが、本案件における最も重要な転換点になったと、当社では考えています。

施設運営事業は、本来3つの機能に分解できます。土地建物を保有する「所有」、事業全体の収支責任を負う「経営」、現場のサービスを提供する「運営」──この3層です。一般的な複合観光施設の運営委託では、3層すべてをオーナーが抱え込み、現場業務だけを運営者に委ねる形になっていることが多く、結果として、運営者にはサービスを良くしても収益を伸ばしても直接の見返りが薄い構造になっています。

言い換えれば、改善のインセンティブが、運営者側に十分に渡っていなかったのです。これは個別の運営者の問題ではなく、契約スキーム自体に内在する構造の問題でした。

そこで当社が組み立てたのが、保有形態(スキーム)を組み替えるという第三の道です。撤退するかどうかの議論を一旦脇に置き、機能をどう切り分けて、誰に持たせるかを先に決める。これが、新しい論点でした。

FIG.03

保有形態別 ── 所有・経営・運営リスクの分布

オーナー負担 一部負担 限定的
縦軸:施設運営事業の3機能 / 横軸:保有形態(スキーム) 指定管理(現状)マネジメント契約定期借家(長期)売却(民間譲渡)所有経営運営オーナー負担オーナー負担オーナー負担負担なしオーナー負担一部負担限定的負担なし一部負担限定的負担なし負担なし

施設運営事業は「所有」「経営」「運営」の3機能に分解できます。現状の指定管理スキーム(委託)では、オーナー側がほぼすべてのリスクを抱えこむ構造になっていました。マネジメント契約に移れば経営の一部を運営者に渡せ、定期借家ならさらに経営リスクも移転できます。売却は最も身軽になる代わりに、施設の使い方を地域側でコントロールできなくなります。撤退するかどうかではなく、機能をどう切り分けて誰に持たせるか、という選択肢が見えてきました。

マトリクスを並べてみると、現状の指定管理(運営委託)契約では、所有・経営・運営の3層すべてのリスクをオーナー側が抱え込む構造であることが、視覚的にはっきりと見えてきました。マネジメント契約に移行すれば、経営の一部を運営者と分け合えます。定期借家(リース)契約に移れば、経営リスクも運営者に渡せます。売却すれば、すべてのリスクと所有権が運営者に移ります。

この検討の過程で、他の地方自治体や民間で実施された「公的施設の民間譲渡」「指定管理から長期定期借家への切替え」「公募プロポーザルによるオペレーター選定」等の類似事例も併せて整理しました。なかでも示唆深かったのは、20年の定期借家契約を結んで運営者からの追加投資を引き出し、施設の魅力を再生させた事例でした。設備の老朽化が進む施設では、所有者の予算では到底まかなえない大規模リノベが必要になることがあります。これを運営者の投資で実現するには、運営者が長期的な収益確保を見通せる契約スキームが不可欠だったのです。

関連商業施設の物販棚(イメージ)
所有・経営・運営の3層をどう切り分けて、誰に持たせるか。撤退と継続の二項対立の外側に、もう一つの選択肢がありました。
※写真はイメージです。

06.契約条項に、何を盛り込むか

保有形態を組み替えるとなれば、当然、新しい契約書が必要になります。当社が最終報告書の後半で時間を割いたのは、契約条項に盛り込むべき主要論点の整理でした。スキームの絵を描くだけでは現場は動きません。契約書のどこに何を書くかまで踏み込まなければ、絵に描いた餅で終わります。

契約条項で盛り込むべき主要論点(抜粋)
論点盛り込むべき内容の方向性
公募・選定要件提出資料を簡素化し、企画書の華やかさよりも運営体制・収支計画の実現性を評価する設計に
契約期間運営者が中長期的な収益見通しを立てられる期間設定(賃貸借・マネジメント契約では10〜30年も珍しくない)
原状回復義務通常損耗分は原則対象外、運営者が設置した独自仕様部分の扱いを明文化
賃料・委託料の増減経済情勢に応じた賃料改定の可能性を契約に組み込む(普通借家・マネジメント契約)
中途解約の違約金契約形態ごとの違約金水準を明示し、無責任な解約と長期コミットメントのバランスを取る
FF&E・建物修繕積立金家賃・委託料とは別に修繕積立金を確保し、運営者の判断で適時の修繕が可能な仕組みに
運営状況の管理と情報共有変動家賃や成果連動報酬を採用する場合の業績報告・立入確認の権利を明記

これらの論点は、教科書的な契約書のチェックリストではありません。本案件で部門別損益の分析を行うなかで、「ここを契約書で押さえていなかったから、運営者が改善に動けなかった」と判明した、いわば負傷の現場検証から導き出された処方箋でした。

経営判断の本質は、「事業を続けるか畳むか」ではなく、「どの機能を、誰が、どの期間、どの責任分担で持つか」を組み替える設計にあります。撤退か継続かの議論で消耗していた時間は、本来、契約条項の設計に向けられるべき時間でした。

─── ある複合観光施設の話、として読まれているかもしれません。けれども

同じ構造の悩みは、観光地のホテル群、温泉旅館グループ、リゾート複合施設、地域開発事業など、規模も主体も異なるさまざまな現場で繰り返し見聞きしてきました。「赤字だから畳む」「資金注入してでも続ける」の二項対立に閉じ込められている経営判断は、本当に多いのです。

当社が伴走してきた案件の多くは、その二項対立の外に新しい問いを立てることから始まっています。次の章では、本記事のような事例とご縁のあった方々の代表的なご相談を、立場ごとに整理しておきます。

07.この報告書が、その後に動かしたもの

最終報告書は、関係者の意思決定の土台となりました。重要なのは、報告書が単一の結論を強要しなかった点だと考えています。「全部撤退すべき」「全部続けるべき」のいずれかを推奨するのではなく、複数のシナリオを定量的に並べ、保有形態の組み替え案を併せて提示する形式を取りました。

意思決定の土俵を組み替える資料に

「撤退か継続か」の議論の場が、「どの機能をどう切り分け、誰に渡すか」というスキーム設計の場へと自然に移っていきました。議論の質が変わったとき、停滞していた合意形成が動き出しました。

後続のスポンサー選定・契約交渉の基礎資料に

運営を引き受ける民間事業者を募集する際の公募要件、契約期間、原状回復・修繕積立金の扱い等の論点が、報告書の中で先に整理されていたため、選定プロセスの設計と契約交渉に時間を要しすぎることなく着手できました。

金融機関との対話材料に

運営者の事業計画を見るときの「どこに改善余地があるか」「どの数字が信頼できるか」を、金融機関側でも判断できる定量資料として共有されました。中立的な第三者がまとめた数字であることが、対話のスタート地点として機能しました。

類似案件への展開可能な型に

本案件で確立した「部門別正常収益力→施設間相互利用→シナリオ比較→保有形態の組み替え→契約論点」というプロセスは、その後の温泉旅館グループや観光複合施設の再構築FS、事業再生案件にも繰り返し用いることになる、当社の業務の型となりました。

本業務で得られたのは、ある複合観光施設の▲9千万円という数字を改善する手筋だけではありません。事業の構造を「足し算された結果」ではなく「掛け合わされた関係」として捉え直す視点──これが、本案件を経て当社のなかに残った、いちばん大きな財産でした。

事業分析・意思決定の現場(イメージ)
立場の異なる関係者が、同じ数字を前提に議論を始める。事業再構築の最初の一歩は、いつもここから始まります。
※写真はイメージです。

08.こんなご相談を、これまで頂戴してきました

本記事のような複合施設の事業構造分析・再構築FSに限らず、観光・宿泊産業の事業構造の組み替えや再生に関するご相談は、立場の異なるさまざまな方からお預かりしています。代表的な五つの立場と、よく頂戴するご相談の輪郭を、参考までに整理しておきます。

複合観光施設・大型旅館をご経営の方

施設全体で赤字が続いており、どこから手を付けるべきか分からない。資金注入してでも続けるのか、縮小すべきなのか、判断材料が欲しい。

事業構造の部門別分解、正常収益力の算定、撤退・継続シナリオの定量比較、保有形態の組み替え可能性まで、意思決定者が腹落ちできる定量資料を整えます。「全部畳む」を選ばずに済む道があるかどうかを、一緒に丁寧に見ていきます。

温泉地・観光地の組合、地域経営にあたる方

地域の中核施設の経営が立ち行かなくなりつつあり、地域全体への影響が大きい。畳むか続けるかの単純な議論で消耗している。

関係者(経営者・金融機関・自治体・地域団体)の利害が交錯する案件で、共通の数字を前提に議論を始められる定量資料を整える業務に、繰り返し関与してきました。中立的な第三者として、特定の関係者の代弁者にならない立場で関与いたします。

不動産デベロッパー・PE・地域金融機関の方

取得検討中の観光複合施設・大型旅館の事業性を、内部稟議に耐える定量資料として整理したい。スキーム別の事業性比較も併せて欲しい。

事業構造の分解診断、正常収益力の算定、保有・経営・運営スキーム別の事業性比較、投資回収シミュレーションまで対応します。中立的な第三者としてのレポートにより、社内稟議・投資委員会・出融資判断会議で使える資料をご提供します。

事業承継・再生の局面にあるオーナーの方

先代から引き継いだ施設群の構造が古く、将来が見通せない。事業承継か売却か、それともリノベか、選択肢を整理したい。

事業承継・再生の早期段階で、選択肢の棚卸し(自力再生・スポンサー受入・事業承継・売却)と、各選択肢の事業性評価を整理します。意思決定の前提となる選択肢の網羅性と、各選択肢の比較可能性を、丁寧に整えます。

自治体・第三セクター・公的施設の運営にあたる方

経年劣化と毎年の赤字補填で、施設の将来が見通せない。民間譲渡・指定管理見直し・長期賃貸借への切替えを含め、選択肢を整理したい。

公共性を保ちながら民間活力を引き出す保有形態の検討、契約スキームの組み替え、PPP・PFI・DBO等の事業手法の比較まで、議会説明や住民説明に耐える定量資料を整える業務に伴走します。

もし以上のいずれかが、ご自身や所属組織の現在の状況に近いと感じられましたら、次の章でご紹介する業務メニューも参考にしていただけるかもしれません。

09.事業構造の再構築FSという仕事の核心

本業務を通じて、複合観光施設・大型旅館・観光地全体の再構築FSに対する当社の型は、次の五段階で整理されることになりました。その後の類似案件でも繰り返し用いている、いわば当社の作業の背骨です。

PHASE 01
事業構造を「合計」から「分解」に置き換える

施設・部門・機能ごとに会計を組み替え、それぞれの正常収益力を算定。重複経費の再配分、非経常事項の除外を丁寧に行うことが、後続の意思決定の解像度を決めます。

PHASE 02
部門間・施設間の相互利用関係を可視化する

客動線・利用連鎖を月次データから把握。一つの部門の撤退が、隣の部門の売上にどのように波及するか、影響を定量的に推計できる土台を作ります。

PHASE 03
撤退・継続シナリオを複数並べて比較する

解体・清算コスト等のイニシャルコスト、他部門への影響(プラス・マイナス両面)を織り込んだ5年累計収支を、複数のシナリオで横並びに比較します。

PHASE 04
保有形態(スキーム)の組み替え可能性を検討する

所有・経営・運営の3機能の切り分けを軸に、売却・賃貸借(リース)・マネジメント契約・運営委託・指定管理など、複数のスキームを並べて事業性と実現可能性を評価します。

PHASE 05
契約条項に盛り込むべき主要論点まで具体化する

スキームの絵を描いて終わらせず、公募要件、契約期間、原状回復、賃料増減、中途解約、修繕積立金等の契約条項を具体的に整理。後続のスポンサー選定・契約交渉に直接接続できる形にします。

この型のいちばん大事な点は、データの取得や手法の精緻さではありません。意思決定者と関係者が、同じ前提と同じ選択肢を共有して議論を始められる状態をつくること──これに尽きます。中立的な第三者として、特定の答えに誘導しない関与を保つことが、長期的にはむしろ最も合理的な意思決定につながると考えています。

10.ご相談いただける業務メニュー

当社が観光・宿泊産業向けに提供している業務のうち、本記事のテーマに関わるものを、ご相談の進め方の見当がつくよう整理しました。「自分の状況なら、どこからご相談できるか」をイメージしていただくための、ごく簡易な見取り図です。

FEASIBILITY STUDY

事業構造分析・再構築FS

本記事と同種の業務です。部門別の事業構造分解、正常収益力算定、シナリオ比較、保有形態の組み替え検討まで一貫して実施します。

こんな場面で
施設群・複合事業の構造が複雑で、どこから手を付けるか分からないとき
主な成果物
分析報告書、シナリオ比較、提言書、関係者向けプレゼン資料
進め方
初回相談で対象と論点を整理 → ご提案 → 実施
EARLY TURNAROUND

事業再生(早期段階)

業績不振の早期段階で、選択肢の棚卸し(自力再生・スポンサー受入・事業承継・売却)と各選択肢の事業性評価を整理します。

こんな場面で
将来が見通せず、まず取りうる選択肢を整理したいとき
主な成果物
現状分析、選択肢比較、優先順位と次のアクション整理
進め方
初回相談で現状と緊急度を確認 → 簡易診断or本格関与のご提案
SCHEME DESIGN

保有形態・契約スキーム設計

運営委託契約・賃貸借契約・マネジメント契約・指定管理等、スキーム別の事業性比較と契約論点の整理を行います。

こんな場面で
現状の契約スキームを見直したいとき、新規の契約を結ぶ前に論点を整理したいとき
主な成果物
スキーム比較表、契約論点整理、契約書のレビュー支援資料
進め方
初回相談で現状と目的を確認 → ご提案
RENOVATION PLAN

リノベーション計画策定

築年数の経った既存施設の改修・業態転換に向けて、現状診断・改修方針・投資計画・投資回収シミュレーションを作成します。

こんな場面で
既存施設の改修・業態転換を、投資回収の見通しとともに検討したいとき
主な成果物
現状診断書、リノベ計画書、投資回収シミュレーション
進め方
初回相談で施設の状況と目指す方向を確認 → 現地視察を含むご提案

いずれも、案件の規模・複雑度・関係者の数によって関与の形を柔軟に調整しています。「自分の案件はどのメニューに当てはまるか分からない」「複数にまたがっている気がする」というご相談も多く頂戴しており、その整理自体を初回相談でお手伝いしています。

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事業再構築の現場でいちばん難しいのは、「畳むか続けるか」の二項対立から議論を引き上げることです。一括りで眺めている赤字を部門ごとに分解し、機能ごとに切り分け、保有形態を組み替える──地味な作業ですが、これが意思決定の質を決めます。中立的な第三者として、特定の答えに誘導しない立場で関与することが、結果として最も合理的な経営判断につながると考えています。

株式会社アルファコンサルティング 代表 青木康弘
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  • 現状の事業構造・赤字構造の整理(複合施設・グループ経営いずれの規模でも構いません)
  • 取りうる選択肢の棚卸し(再生・縮小・スキーム変更・スポンサー受入・事業承継・売却)
  • 類似案件・参考事例のご紹介
  • 想定スキーム(FS・事業再生・リノベ・スキーム設計等)のラフな見当と進め方
  • 次のアクションへ進むうえでの優先順位の整理

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