借入・債務償還年数 ― 黒字なのに資金繰りが楽にならない理由

こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。本記事は、「数字で読む旅館・ホテル経営」シリーズの一編として、損益計算書の陰に隠れがちな貸借対照表、とりわけ借入金と債務償還年数を取り上げます。コロナ後、黒字割合は大きく回復しました。しかし、その裏で借入はむしろ増え、金利は上がり始めています。観光経済新聞のコラム連載で見てきた財務再建の現場を交えながら、「黒字なのに資金繰りが楽にならない」の正体を、数字で解き明かしていきます。

はじめに ― 「黒字なのに、楽にならない」の正体

書類と資料を前に自館の財務を見つめる経営者

「売上はコロナ前に戻った。黒字も出ている。それなのに、なぜか資金繰りは一向に楽にならない」——ここ数年、相談の場でこの言葉を何度も聞きました。決算書の上では利益が出ているのに、手元の現金は増えず、毎月の返済に追われる。この感覚のずれの正体は、損益計算書(P/L)だけを見て、貸借対照表(B/S)を見ていないことにあります。

利益が回復しても、コロナ期に膨らんだ借入はそのまま残っています。むしろ、ゼロゼロ融資などで積み上がった借入は、返済が本格化する局面に入りました。損益計算書は回復しても、貸借対照表はまだ癒えていない——これが、いまの旅館・ホテル業界の偽らざる姿です。本記事では、借入の重さを測る物差しと、金利上昇局面での向き合い方を、一つずつ整理していきます。

この記事を読むとわかること

  • 1P/Lは回復してもB/Sは癒えていない ― 借入比率が約7割という現実
  • 2債務償還年数とは何か、「10年・20年」の目安をどう読むか
  • 3金利が1〜2%上がると何が起きるか ― 黒字でも詰まるしくみ
  • 4再投資の原資が積み上がらない構造と、その備え方
  • 5返済が重いと感じたときの選択肢 ― 無理のない計画の立て方
目次 タップで開閉

本記事の数値は、日本旅館協会「営業状況等統計調査」と、中小企業庁・内閣府などの公表統計によります。旅館協会の調査対象は旅館・観光ホテルで、ビジネスホテル・シティホテルは含まれません。債務償還年数などの一部の数字は、これらの公表値をもとにした私自身の試算であることを、その都度お断りします。

第1章

P/Lは回復、B/Sは未回復 ― 借入比率という現実

複数の財務資料を見比べて自館の財務を確かめる場面
要点 黒字割合は約7割まで回復しました。しかし長短借入金は総資本の約67%を占め、むしろ前年から増えています。利益の回復と財務の健全さは、まったく別の話です。

シリーズの基礎編で見たとおり、黒字の旅館ホテルはコロナ最悪期の32.0%から、直近では約7割まで回復しました。損益計算書の上では、業界は立ち直ったように見えます。ところが、貸借対照表に目を移すと、景色は一変します。長短借入金は総資本の約67%を占め、直近ではむしろ前年から増加に転じました。支払利息も総売上の1.9%へと上昇しています。

【図表B-1】長短借入金が総資本に占める割合(横軸0〜100%)

コロナ期
(令和3年度)
70.4%
直近
(令和7年度)
約67%

売上が回復しても借入比率は7割近いまま。直近は前年から増加に転じ、支払利息も上昇(総売上比1.9%)。出典:日本旅館協会「営業状況等統計調査」。

総資本の3分の2を借入が占めるということは、自己資本が極めて薄いということです。少しの赤字でも債務超過に陥りやすく、外部環境の変化に弱い体質を意味します。「黒字に戻った」ことと「危機に強い体質になった」ことは、別物なのです。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘

青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)

業界の回復を伝えるニュースは、ほとんどが損益計算書の話です。黒字割合、稼働率、単価——どれもP/Lの指標です。私が回復局面でいちばん心配しているのは、経営者がP/Lばかり見て、B/Sの借入を見ていないことです。借入は減るどころか増え、利息は上がり始めている。売上が戻ったいまこそ、攻めの投資の前に、まず足元の借入を直視すべき局面だと考えています。

→ では、その借入の重さは、どんな物差しで測ればよいのか。債務償還年数という指標を見ていきます。

進捗:第1章/全7章 ■□□□□□□ 14%

第2章

債務償還年数とは ― 借金を何年で返せるか

明細と電卓で返済年数を試算する手元
要点 債務償還年数は、借入を利益と減価償却で何年で返せるかを表す、最も重要な財務指標の一つです。単位が「年」で直感的に分かるため、自館の返済負担を測る物差しになります。

借入の重さを測る代表的な指標が、債務償還年数です。これは「いまの借入を、毎年の返済原資で何年かけて返せるか」を表します。単位が「年」なので、利益率などの%指標より直感的に理解できるのが特徴です。

【図表B-2】債務償還年数の考え方

債務償還年数(年)
= 借入金 ÷ 返済原資

※返済原資 = 税引後利益 + 減価償却費
(運転資金を差し引いて計算することもある)

例:借入1億円 ÷ 返済原資1,000万円 = 10年
例:借入1億円 ÷ 返済原資500万円 = 20年

分母の返済原資は、毎年生み出すキャッシュフロー、すなわち税引後利益に減価償却費を足したものです。減価償却費を足すのは、これが実際には現金として社内に残る費用だからです。一過性の特別利益や雑収入は、毎年は生じないため除いて計算します。借入が同じでも、毎年の稼ぐ力(返済原資)が小さいほど、返済年数は長くなるのです。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘

青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)

債務償還年数は、銀行が融資先を評価するときに必ず見る指標です。だからこそ、経営者の側も自館の数字を把握しておくべきです。私がかつて協会の公表値から試算したところ、旅館業界の平均的な姿は、債務償還年数で20年近くに達していました。これは、借入に対して毎年の稼ぐ力が薄く、完済までに長い時間がかかる体質であることを意味します。まずは自館の数字を計算してみることから始めてください。

→ では、その年数は何年なら安全で、何年なら危険なのか。「10年・20年」の目安を読み解きます。

進捗:第2章/全7章 ■■□□□□□ 28%

第3章

「10年・20年」の目安をどう読むか

要点 銀行は債務償還年数10年を一つの目安にします。ただしこれは法的基準ではなく慣行で、設備投資の重い宿泊業では業界特性が考慮されます。数字の一人歩きに注意が必要です。

債務償還年数には、よく知られた目安があります。多くの銀行が10年を一つの基準とし、これを超えると返済力にやや懸念ありと見る傾向があります。再生計画の場面では、計画終了時点で10年以内に収めることが、一つの到達目標とされることもあります。

【図表B-3】債務償還年数の目安と業種比較(横軸0〜20年)

銀行の一般的な目安
〜10年
製造業(中小・平均)
約10.6年
宿泊・飲食
(中小・平均)
約11.6年
旅館業界
(協会値からの試算)
20年近く

破線は銀行の目安10年。宿泊・飲食は中小企業庁調査で約11.6年と全業種でも長い部類。旅館業界の「20年近く」は協会公表値からの筆者試算で、コロナ禍で利益が落ちた影響も含む。出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査」、日本旅館協会の公表値をもとに試算。

ただし、この10年という目安を、機械的に当てはめてはいけません。10年は法律で定められた基準ではなく、金融機関の慣行にすぎません。そして、設備投資が経営の前提となる宿泊業では、製造業などより長くなるのが当然です。中小企業庁の調査でも、宿泊業・飲食サービス業の債務償還年数は約11.6年と、全業種のなかでも長い部類に入りますが、これは業界特性として一定の理解が得られる範囲です。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘

青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)

「10年を超えているから危ない」と機械的に判断するのは、私は危ういと考えています。旅館・ホテルは、大きな建物に多額の設備投資をして、長い年月をかけて回収する装置産業です。製造業の物差しをそのまま当てはめれば、ほとんどの旅館が不健全に見えてしまう。大切なのは、年数の絶対値より、その年数が短くなる方向に動いているか、長くなる方向に動いているかという変化の向きです。

なお、正常な償還年数の目安としては、おおむね15年以内、あるいは既存建物の残存耐用年数の範囲内、という見方もあります。自館の建物があと何年使えるのか、その期間内に返し切れる借入なのかという視点で見ると、より実態に即した判断ができます。

→ 借入の重さが分かったところで、いま最も警戒すべき変化、金利上昇に進みます。

進捗:第3章/全7章 ■■■□□□□ 42%

第4章

金利上昇という時限爆弾

金利上昇を伝える新聞の見出し
要点 借入が総資本の7割近い体質では、金利の小幅な上昇でも利益が大きく削られます。黒字でも返済と利息で資金繰りが詰まる、それが「黒字倒産」のリスクです。

いま、最も警戒すべき変化が金利です。長く続いた低金利の局面が転換し、借入金利は上昇に向かいつつあります。借入が重い旅館・ホテルにとって、これは小さくない脅威です。金利が1〜2%上がるだけで、支払利息が利益を大きく削るからです。

【図表B-4】借入5億円のとき、金利上昇で増える年間利息(試算)

500万
1,000万
1,500万
金利1%
のとき
金利2%
のとき
金利3%
のとき

借入5億円の場合、金利1%なら年500万円の利息が、3%なら年1,500万円に。差額の1,000万円が、そのまま利益から消える。これは単純化した試算で、実際は元金の減少に応じて変わる。

図表B-4は単純化した試算ですが、借入5億円の宿で金利が1%から3%へ上がれば、年間の利息負担は500万円から1,500万円へと、1,000万円も増えます。これは、中規模旅館の年間の税引後利益に匹敵する規模です。利益が出ていても、その利益がまるごと利息の増加で消えることが起こりうるのです。

注意点

「黒字倒産」は他人事ではない

損益計算書が黒字でも、借入の元金返済と利息の支払いで現金が流出し、手元資金が尽きれば事業は続きません。これが黒字倒産です。借入比率が高く、返済原資の薄い宿ほど、このリスクは現実味を帯びます。

売上が戻ったいまのうちに、金利が上がった場合の返済シミュレーションを行い、手元資金がどこまで持つかを確かめておくことを、強くお勧めします。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘

青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)

私が経営者の方にお伝えしているのは、いまの好調を前提にした追加投資の前に、まず金利が上がる前提での返済シミュレーションを作ってください、ということです。インバウンドや円安の追い風は、自館ではコントロールできません。一方、金利上昇はかなりの確度で見えている変化です。見えているリスクに備えるのは、攻めの投資より優先順位が高い。売上が戻ったいまこそ、借入の圧縮と手元資金の確保に着手すべき局面だと考えています。

→ 金利のリスクと並んで見落とされがちなのが、再投資の原資が積み上がらない構造です。

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第5章

再投資の原資が積み上がらない構造

要点 黒字でも、建て替えに必要な自己資金はなかなか貯まりません。中規模旅館では、毎年の利益をすべて貯めても建て替え資金に約8年かかる計算です。返済と再投資の二重苦が、業界の宿命です。

借入の重さは、返済負担としてだけでなく、次の設備投資の原資が貯まらないという形でも、経営を縛ります。旅館・ホテルは、老朽化した建物や設備を定期的に更新しなければ、競争力を保てません。しかし、その原資はなかなか積み上がらないのが実態です。

協会の統計から試算すると、中規模旅館の償却前の税引後利益は年5千万円ほど。仮に借入をいっさいせず、毎年の利益をすべて貯め続けたとしても、建て替えに必要な自己資金(4億円規模)を貯めるには約8年かかる計算になります。現実には既存の借入返済と並行するため、自己資金だけで建て替えるのはほぼ不可能で、再び借入に頼らざるを得ません。

【図表B-5】中規模旅館が建て替え資金(4億円)を自己資金で貯めるには

年間の
返済原資
約5千万円
必要な
建て替え資金
約4億円

4億円 ÷ 5千万円 = 約8年(借入ゼロでも)

毎年の利益をすべて貯めても約8年。現実には既存借入の返済と並行するため、自己資金のみでの建て替えはほぼ不可能。出典:日本旅館協会の公表値をもとに試算。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘

青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)

この「返済しながら、次の建て替え資金も貯めなければならない」という二重苦こそ、旅館・ホテル業の構造的な難しさです。だからこそ、私は大規模な建て替えをいきなり目指すのではなく、部分改装で延命しながら、その間に財務体質を整えることをお勧めしています。建物の残存耐用年数と借入の返済計画を一枚の絵にして、いつ・どの規模の投資が必要で、その原資をどう作るかを、長期で描いておくことが大切です。行き当たりばったりの投資が、最も借入を重くします。

→ では、すでに返済が重いと感じている場合、どんな選択肢があるのか。次章で整理します。

進捗:第5章/全7章 ■■■■■□□ 71%

第6章

返済が重いと感じたときの選択肢

書類を前に再生計画を協議する場面
要点 返済が重いときの選択肢は、返済条件の見直しから、債務の劣後化・株式化、再生計画の策定まで複数あります。大切なのは、実現性のない計画に追い込まれないことです。

すでに返済が重いと感じている場合でも、打てる手は複数あります。代表的な選択肢を整理します。なお、これらは専門的な手法であり、自館に何が適するかは財務状況によって大きく異なります。実行にあたっては、金融機関や専門家と相談しながら進める必要があります。

① 返済条件の見直し(リスケジュール)

毎月の元金返済を一時的に減らす・猶予するなど、返済の条件を組み替える方法です。資金繰りに一時的な余裕を作り、その間に収益力の回復を図ります。一時しのぎではなく、立て直しの計画とセットで考えることが重要です。

② 債務の劣後化(DDS)

借入の一部を、返済順位の低い「資本に近い借入」に組み替える手法です。金融機関の評価上は純資産に近いものとみなされ、債務超過の解消や格付けの改善につながります。ただし金利が高くなる傾向や、財務制限条項が付くことがある点に注意が必要です。

③ 債務の株式化(DES)

借入を株式に振り替え、借入金そのものを圧縮する手法です。債務超過の解消や利息負担の軽減につながりますが、金融機関が株主となるため経営の自由度が下がる、課税が生じうるなどのデメリットもあります。慎重な判断が必要です。

④ 公的機関を活用した再生計画

中小企業活性化協議会などの公的機関を活用し、再生計画を策定する方法です。第三者が関与することで金融機関の合意を得やすくなります。ただし相談先の選び方には注意が必要で、その点は後述します。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘

青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)

私が財務再建の現場で繰り返し見てきたのは、理想的な債務償還年数から逆算して、実現性の乏しい返済計画を作らされ、かえって苦しむケースです。机上では筋の通った計画でも、現場の実態に合っていなければ達成できず、未達のたびに金融機関との関係が悪化します。近年は旅館・ホテルの業種特性が理解されるようになり、無理を強いられるケースは減りましたが、計画の出発点が「自館の実力」なのか「逆算された理想値」なのかは、必ず確かめてください。

もう一点、相談先の選定には注意が必要です。公的機関であっても、地域金融機関のOBが多く関与し、金融機関寄りの誘導になる例も見聞きします。どの選択肢が自館にとって最善かを、特定の立場に偏らない第三者の目で事前に診断してから、相談先を選ぶことをお勧めします。

返済が重い、相談先に迷っている、という方へ

初回相談は無料です(オンライン相談可)

▶ 相談先の選定・計画策定を相談する

進捗:第6章/全7章 ■■■■■■□ 85%

第7章

自館の財務を診断する手順

要点 借入比率・債務償還年数・金利上昇耐性・建物の残存耐用年数。この4点を順に確かめれば、自館の財務がどれだけ余裕を持っているかが、数字で見えてきます。

本記事の内容を、自館で実践する手順としてまとめます。

【図表B-6】財務診断の4ステップ

STEP 1
借入比率を出す
STEP 2
債務償還年数を算出
STEP 3
金利上昇耐性を試算
STEP 4
残存耐用年数と照合

まず貸借対照表から借入比率(長短借入金 ÷ 総資本)を出し、業界の約67%と比べます。次に債務償還年数を算出し、10年・15年といった目安や建物の残存耐用年数と照らします。さらに、金利が1〜2%上がった場合の利息増加額を試算し、それでも返済が回るかを確かめます。最後に、建物があと何年使えるかと借入の返済期間を並べ、建物の寿命より先に借入を返し切れるかを確認します。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘

青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)

財務の数字は、経営者にとって最も向き合いたくない部分かもしれません。けれども、B/Sの時計から目をそらしている間も、針は進み続けます。大切なのは、悪い数字でも直視して、いまの実力に見合った無理のない計画を組むことです。理想値から逆算した計画ではなく、自館が本当に達成できる計画を。それが、金融機関との信頼関係を保ち、結果として最も早く財務を立て直す道だと、私は考えています。

自館の財務の余裕度を診断したい方へ

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進捗:第7章/全7章 ■■■■■■■ 100%

よくある質問

Q黒字なのに資金繰りが楽になりません。なぜですか?

A損益計算書の黒字と、手元現金は別物だからです。利益が出ていても、借入の元金返済で現金は流出します。とくに借入比率が高いと、返済が利益を上回り、資金繰りが楽になりません。P/LだけでなくB/Sと資金繰り表で確かめてください。

Q債務償還年数が15年でした。危険な水準ですか?

A銀行の目安10年は超えていますが、設備投資の重い宿泊業では珍しくありません。重要なのは絶対値より変化の向きです。短くなっているなら改善基調、長くなっているなら要注意。建物の残存耐用年数の範囲内で返せるかも併せて確認してください。

Q金利が上がりそうです。いま何をすべきですか?

A金利が1〜2%上がった場合の利息増加額を試算し、それでも返済が回るかを確かめてください。回らないなら、売上が戻っているいまのうちに借入の圧縮と手元資金の確保に着手します。固定金利への切り替えが選択肢になることもあります。

Q返済が重く、リスケを考えています。デメリットはありますか?

A返済条件の見直しは資金繰りに余裕を作りますが、その間は新規融資を受けにくくなるなどの影響もあります。一時しのぎで終わらせず、収益力を回復させる計画とセットで進めることが重要です。実行前に専門家に相談することをお勧めします。

QDDSやDESは、中小の旅館でも使えますか?

A使える場合がありますが、いずれも専門的な手法で、メリットとデメリットの見極めが必要です。DDSは金利が高くなる傾向や財務制限条項、DESは経営の自由度低下や課税などの論点があります。自館に適すかは財務状況次第なので、専門家との検討が前提です。

Q再生計画は、どこに相談すればよいですか?

A中小企業活性化協議会などの公的機関がありますが、相談先により立場の偏りが生じることもあります。どの選択肢が自館にとって最善かを、特定の立場に偏らない第三者の目で事前に診断してから相談先を選ぶと、結果的に望ましい方向に進みやすくなります。

Q無理のない返済計画とは、具体的にどういうものですか?

A理想的な債務償還年数から逆算した計画ではなく、自館が実際に達成できる売上・利益から組み立てた計画です。計画の出発点が「理想値」か「自館の実力」かを見極めることが大切です。達成できない計画は、未達のたびに金融機関との関係を損ないます。

用語集 ― 借入・財務に関する主な用語

用語意味
債務償還年数借入金を、税引後利益+減価償却費(返済原資)で何年で返せるか。銀行は10年を一つの目安とする
長短借入金比率長期・短期借入金の合計が総資本に占める割合。旅館業界は約67%と高い
返済原資(キャッシュフロー)税引後利益+減価償却費。毎年返済に充てられる現金の目安
黒字倒産損益は黒字でも、返済や仕入で現金が尽き、事業が継続できなくなること
リスケジュール返済条件の見直し。元金返済の減額・猶予などで資金繰りに余裕を作る
DDS(債務の劣後化)借入の一部を返済順位の低い資本性借入に組み替える手法。格付け改善につながる
DES(債務の株式化)借入を株式に振り替え、借入金を圧縮する手法。経営の自由度低下などの留意点がある
残存耐用年数建物・設備があと何年使えるか。借入の返済期間と照らす目安になる

さいごに ― B/Sの時計を見る経営へ

財務資料を前に第三者の専門家と将来を語り合う場面

いかがだったでしょうか。本記事では、損益計算書の陰に隠れがちな借入金と債務償還年数を、業界の数字とともに見てきました。黒字割合は回復しても、借入は総資本の約7割を占めたまま、むしろ増えています。金利は上がり始め、再投資の原資は積み上がらない。利益のP/Lだけを見て安心していると、財務のB/Sに仕掛けられた時限爆弾を見落とす——これが、本記事を通じてお伝えしたかったことです。

大切なのは、悪い数字から目をそらさず、いまの実力に見合った無理のない計画を持つことです。理想値から逆算した計画ではなく、自館が本当に達成できる計画を。売上が戻っているいまこそ、攻めの投資の前に、まず足元のB/Sの時計を見る。その一手間が、金利上昇の局面でも倒れない宿と、黒字なのに行き詰まる宿とを分けます。

相談の前に ― まず自分の手で確かめる3ステップ

ステップ1:借入比率と債務償還年数を出す(所要時間:1〜2時間)

貸借対照表から借入比率を、損益計算書から返済原資を計算し、債務償還年数を算出します。業界の借入比率約67%と比べてみてください。

ステップ2:金利が上がった場合を試算する(所要時間:1時間)

金利が1〜2%上がったときの利息増加額を計算し、それでも返済が回るか、手元資金がどこまで持つかを確かめます。

ステップ3:建物の残存耐用年数と照らす(所要時間:半日)

建物があと何年使えるかと、借入の返済期間を並べ、建物の寿命より先に借入を返し切れるかを確認します。

この三つを自分の手で進めると、相談の中身が一段と具体的になります。数字の解釈や打ち手に迷ったところから、ご相談いただいて構いません。

アルファコンサルティングは、借入比率・債務償還年数の客観評価、金利上昇を見据えた財務シミュレーション、無理のない再生計画の策定支援、そして相談先選定の事前診断をお引き受けしています。私たちは特定の金融機関・運営会社・建設会社と利害関係を持たない独立した立場から、特定の業者に都合のよい計画ではなく、依頼者にとって何が最善かという基準で助言します。金融機関との交渉そのものを代行するのではなく、依頼者が無理のない計画を持って臨めるよう、その土台づくりを支えるという関わり方です。これまでお引き受けした案件は通算四百六十件を超え、青木は観光経済新聞で2009年からコラムを連載し、財務再建の現場を見続けてきました。

ご相談の多い依頼

  • 借入比率・債務償還年数の客観評価 ― 自館の財務の余裕度の診断
  • 金利上昇を見据えた財務シミュレーション ― 返済余力と手元資金の検証
  • 無理のない再生計画の策定支援 ― 自館の実力から組み立てる計画づくり
  • 相談先選定の事前診断 ― どの選択肢・どの相談先が自館に適すかの見極め
  • 建物の残存耐用年数を踏まえた長期投資・返済計画の設計

「黒字なのに資金繰りが楽にならない」「借入が重く、金利上昇が不安だ」「返済計画を見直したいが、どこに相談すべきか分からない」――こうしたご相談をお受けしています。ご相談は無料です。

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