来年4月から、ホテル・旅館向けの補助金はどうなるのか?
国の観光予算は、来年度も大きく増える見込みです。ただし、補助金の申請のしかたは変わってきています。公募が始まってから準備したのでは間に合わない補助金も増えています。今年のうちにやっておくことを、わかりやすくまとめました。
こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。
8月末、観光庁などから来年度(2027年4月〜)の予算の要求額が発表されました。弊社はこれまで500件を超えるホテル・旅館のご支援をしてきましたが、補助金で採択される施設には共通点があります。公募が始まる前に、何に投資するか、そしてどんなお客様をどうやって呼ぶか(マーケティング)が決まっていることです。
この記事では、来年度の補助金を活用するために、今から何をしておけばよいかをお伝えします。
この記事を読むとわかること
- 1来年度の観光予算はどのくらい増えるのか
- 2補助金の「もらい方」がどう変わったのか
- 3来年度に使えそうな補助金(外国人観光客を地方に呼ぶ補助金も)
- 4今から来年4月までにやっておくこと
- 5気をつけたい「危ない補助金申請」
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毎年8月末、国の各省庁は「来年度はこれだけの予算が必要です」という要求額を発表します(概算要求)。観光庁の要求額は約1,905億円でした。
このうち約1,800億円は、日本を出国する人から1人1,000円を集めている「出国税」(国際観光旅客税)を使う予算です。今年度の1,300億円から、500億円増える見込みです。
図表1 出国税を使った観光予算
※ 観光庁「令和9年度 観光庁関係予算概算要求概要」(2026年8月28日)
ただし、この1,800億円はまだ何に使うかが決まっていません。12月に国が決めることになっています。
また、人手不足への対策(人材の育成や確保)の予算も増やす方向です。
国がもう一つ力を入れているのが、外国人観光客を地方に呼ぶことです。国は2030年までに、地方に泊まる外国人を今の約2.2倍(年間1.3億人泊)に増やす目標を立てています。そのための体験メニューづくりなどを、補助金で後押ししています。
→予算が増えるのは良いニュースですが、補助金の「もらい方」は変わってきています。

数年前まで、客室の改修などに使える大型の補助金がありました(高付加価値化事業、令和6年度で終了)。今回の要求を見る限り、同じような補助金は見当たりません。代わりに増えているのが、地域全体で取り組む補助金です。
図表2 補助金の「もらい方」の変化
これまで
旅館・ホテルが自分で申請する
客室の改修や設備の入れ替えなどを、施設ごとに申請していました。
これから
市町村やDMOと一緒に申請する
市町村やDMO(観光協会などが中心となった地域の観光づくりの組織)がまとめて申請し、そこに旅館・ホテルが参加する形が増えています。
たとえば観光地の混雑対策の補助金は、今年度100億円と前年度の8倍以上に増えました。この補助金を申請できるのは市町村やDMOで、旅館・ホテルは単独では申請できません。空き旅館の撤去や再生の補助金も、市町村が計画をつくることが前提です。
一方で、自分で申請できる補助金もあります。人手を減らすための機械やシステムの導入を支援する補助金で、来年度は国が年度初めから予算を用意する方向です。これまでのように「年末に追加の予算が出るか」を待つ必要が少なくなりそうです。

「うちは小さいから関係ない」と思わずに、まずは自分で申請できる補助金と、地域と一緒に申請する補助金の両方を知っておくことが大切です。
→では、来年度に使えそうな補助金を具体的に見ていきましょう。


発表された資料と、これまでの予算の動きから、来年度に使えそうな補助金を整理しました。金額や条件は、12月以降に正式に決まります。
人手を減らす機械・システムの補助金
新しい事業に挑戦する補助金
外国人観光客を地方に呼ぶ、体験・コンテンツづくりの補助金
観光地づくりの補助金
年度の途中で追加されることがある補助金
図表3 来年4月から変わること
外国人材の新しい制度が始まる
技能実習に代わる「育成就労」制度が始まります。1年以上働くと、本人の希望で職場を移れるようになります。
食品の消費税が1%に
売店で売るお菓子などの土産は8%から1%に下がる予定です。館内の食事は10%のままです。法律はまだ成立していません。
東京都の宿泊税が変わる
宿泊料金の3%に変わります。1人1泊1万3千円未満は対象外です。
どの補助金が使えるか、無料でご相談いただけます
「客室を直したい」「人手不足をなんとかしたい」など、考えている投資をお聞かせください。来年度に使えそうな補助金と、今からやっておくことをお伝えします。
補助金について無料で相談する→では、来年4月までに何をしておけばよいのでしょうか。


図表4 来年4月までのスケジュール
今〜10月 やりたい投資と、呼びたいお客様を書き出す
この3年で直したいところ、入れたい設備に加えて、どの国・どんなお客様を、どうやって呼ぶかを考えます。
10〜11月 市役所・町役場やDMOに相談
市町村は秋に来年度の予算を組みます。地域と一緒に申請する補助金は、この時期に話をしておかないと間に合いません。
12月 国の予算が決まる
どの補助金にいくら使われるかが決まります。自分の投資に合う補助金を絞り込みます。
1〜3月 見積もりと計画書の準備
工事や設備の見積もりを複数の業者から取り、計画書の数字を固めます。
4月以降 申請
公募が始まったら申請します。受付期間は1か月前後と短いことが多いです。
注意補助金が決まる前に工事を発注しない
多くの補助金は、国から「この内容で補助します」という通知(交付決定)が届く前に発注・契約したものは対象外です。「繁忙期の前に工事を終わらせたい」と先に発注して、補助金をもらえなかったという話は少なくありません。また、補助金が入るのは工事が終わった後です。それまでの資金繰りは、早めに取引銀行に相談しておきましょう。
図表5 今のうちに準備しておきたいこと
- ✓呼びたいお客様と売り方を決める
どの国・地域の、どんなお客様に来てほしいか。予約サイト、旅行会社、SNSなど、どこで売るか。 - ✓GビズIDを取る
補助金をネットで申請するためのIDです。届くまで時間がかかることがあります。 - ✓この3年分の決算書を手元に用意する
計画書には、利益や人件費の数字を書くことになります。 - ✓社員の給料をどれだけ上げられるか考えておく
給料を上げる計画があると、審査で有利になる補助金が多いです。 - ✓見積もりを複数の業者から取る
設備の内容があいまいだと、計画書の説得力が弱くなります。 - ✓機械を入れると、どの仕事が何時間減るかを書き出す
人手がどれだけ減り、その人に何をしてもらうかが審査で見られます。


外国人観光客を地方に呼ぶ補助金では、旅館・ホテルだけでなく、地域全体で「何を体験してもらい、どう売るか」が問われます。多くの場合、一つの旅館だけでは申請できず、いろいろな団体と組む必要があります。
組む相手を探し、役割を決め、計画にまとめるまでには数か月かかります。公募が始まってから相手を探したのでは、まず間に合いません。今のうちに構想を練っておきましょう。
図表6 体験・コンテンツづくりで決めておくこと
誰を呼ぶか
どの国・地域の、どんなお客様か(家族連れ、富裕層、アウトドア好きなど)。
何を体験してもらうか
温泉、食、農業・漁業体験、祭り、自然など、地域ならではのもの。
誰と組むか
DMO、市町村、交通事業者、体験事業者、飲食店、ガイドなど。それぞれの役割を決めます。
どう売るか
海外の予約サイト、旅行会社、SNSなど。料金と販売の窓口も決めておきます。
図表7 相談のときに気をつけたいこと
「補助金をください」から始めない
まずは「観光客が集中して困っている」「空き旅館が増えている」など、地域の困りごとを話しましょう。
組合の仲間と一緒に相談する
1軒よりも、旅館組合など何軒かで一緒に相談するほうが、役所も動きやすくなります。
10〜11月までに相談する
市町村の予算は秋に決まります。公募が始まってからでは、市町村の予算がなく申請できません。




役所の担当者にとって、新しい事業は仕事が増える話です。地域の困りごとと、自分たちにできることをセットで伝えると、話が進みやすくなります。
→最後に、補助金で絶対に気をつけていただきたいことをお伝えします。


補助金の申請をサポートする業者の中には、採択件数を増やすために、問題のある申請を勧めるところもあります。不正と判断された場合、責任を問われるのは業者ではなく、申請したホテル・旅館です。
図表8 こんな話には注意
「実質、自己負担ゼロでできます」
業者から代金の一部を戻してもらう(キックバック)話は、不正受給にあたるおそれがあります。
見積もりを高めに出してもらう
実際より高い見積もりや、業者どうしで相談した形だけの相見積もりは不正です。
使う予定のない設備を計画書に書く
実態と合わない計画で申請するのは、採択されたあとに大きな問題になります。
重要不正受給には重い罰則があります
補助金は全額返還となり、さらに年10.95%の加算金がかかります。悪質な場合は、補助金適正化法により5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(両方の場合もあり)となることがあります。事業者名が公表され、その後の補助金に申請できなくなることもあります。
弊社は、観光関係の補助金で高い採択率を維持してきました。ただ、採択の件数を目標にはしていません。採択されたあと、その投資で本当に経営が良くなることを大切にして計画をつくっています。その結果として、採択率も高くなっていると考えています。




補助金は、計画書をうまく書けば通るものではありません。施設の実情に合った計画だからこそ採択されます。来年度に向けた準備を、今から一緒に始めませんか。
この記事の主な出典・参考
- 観光庁「令和9年度 観光庁関係予算概算要求概要」(2026年8月28日)
- 観光庁「令和8年度 観光庁関係予算概要」
- 中小企業庁「令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等のポイント」
- 出入国在留管理庁 育成就労制度に関する資料
- 東京都主税局 宿泊税に関する資料
- 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(e-Gov法令検索)
- 令和9年度税制改正大綱、国税庁の消費税率に関する資料
※ 2026年9月27日時点の発表資料をもとにしています。予算の金額や補助金の条件は、今後変わることがあります。
よくある質問
Q20室くらいの小さな旅館でも、補助金は使えますか?
A使えます。人手を減らす機械やシステムの補助金、小規模な事業者向けの補助金などは、小さな旅館でも申請できます。地域と一緒に申請する補助金も、施設の大きさより、地域の計画に入っているかどうかが大切です。
Q客室の改修に使える補助金は、来年度もありますか?
A客室改修に使われてきた大型の補助金は終了しており、今のところ同じような補助金は見当たりません。ただ、省力化や新しい事業への投資とあわせて改修できるケースもあります。投資の中身によって使える補助金が変わるので、早めにご相談ください。
Q発表された予算は、そのまま決まりますか?
A決まりません。12月に国の予算案がまとまるまでに、金額が変わることがあります。どの補助金にいくら使われるかも、12月にならないとわかりません。
Q補助金の申請を、すべて任せることはできますか?
A申請は施設ご自身の名前で行うもので、ネットでの申請もご本人が手続きします。弊社がお手伝いするのは、投資計画づくりと、計画書などの書類づくりです。計画の中身を経営者ご自身が説明できるようにしておくことが、採択にもつながります。
Q外国人のお客様をほとんど受け入れたことがありません。それでも大丈夫ですか?
A大丈夫です。補助金を使って、外国語の案内や体験メニューを地域と一緒に整えるところから始められます。まずは、どの国のお客様に来てほしいか、地域にどんな魅力があるかを整理するところから考えてみてください。
Q役所の担当者があまり乗り気ではありません。
A担当者にとっては仕事が増える話なので、まずは地域の困りごとから話してみてください。それでも難しい場合は、県の観光の担当部署や、いくつかの市町村をまとめているDMOに相談する方法もあります。
さいごに
いかがだったでしょうか?
来年度の観光予算は大きく増える見込みで、設備投資や人手不足対策を進めるチャンスです。ただし、地域と一緒に申請する補助金が増え、公募が始まってから準備したのでは間に合わないことも多くなっています。
今年のうちに投資の中身と、どんなお客様をどう呼ぶかを決めて、市役所・町役場やDMOに相談しておくことが、来年度の補助金を活用する第一歩です。
弊社アルファコンサルティングでは、観光関係の補助金で高い採択率を維持しながら、不正受給につながる申請にならないよう細心の注意を払って、計画づくりをお手伝いしています。投資計画やマーケティングの計画づくりから、市町村やDMOとの話し合いに使う資料づくり、計画書などの書類作成支援まで、まとめてご相談いただけます。設備業者や建設会社、金融機関などと利害関係のない独立した立場から、お客様の利益を第一に考えてご提案します。
初回相談無料です。「考えている投資に使える補助金があるか知りたい」「外国人観光客を呼ぶ体験づくりを地域で進めたい」という段階でも、お気軽にご相談ください。
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