ホテル旅館の問題解決スキルを高めよう
ホテル旅館を運営する方のお悩みは本当に様々です。問題解決に積極的な方は、他のホテル旅館の運営者に聞いたり、集合セミナーに参加したり活発に動かれているでしょうが、他社事例をそのまま自社に当てはめてもうまく行きません。
そもそも論の話ですが、自社のどこに問題があるのか分からないというケースもあります。うまくいっていないのは漠然と理解しているのですが、具体的にどこに課題がどこにあるのか、うまく把握できないのです。
問題はよく分かっていて、自社が取り組むべき課題の棚卸ができている場合であっても、優先順位がつけられなかったり、課題解決に向けたプロセスを整理できていなかったりするケースもあります。
地域によっては、観光客増加の恩恵によって問題点が見えにくくなっていますが、風向きが変わると一気に問題が噴出して来ます。
ある程度、検討のための時間と資金の余裕があるうちに、自力で問題解決を図るテクニックを身につけましょう。
▼目次
問題解決のためのベンチマーク(判断基準)を作ろう
経理担当者や顧問税理士から説明を受ける試算表や決算書が、正直よく分からないという意見をよく聞きます。簿記会計の勉強をすれば理解できるようになりますが、ホテル旅館の仕事が忙しくて勉強する時間を取るのはなかなか難しいでしょう。
一方で、決算書や試算表は、ホテル旅館の経営状況を掴むためには大変有効なものです。根詰めて簿記会計を覚える必要はありません。使いこなし方を覚えましょう。
決算書や試算表から経営課題を発見するコツは、
「判断のためのベンチマーク(基準値)をつくること」です。
過去5年くらいの決算書や業界平均を参考にして、自社の実力相応の売り上げ、経費の内訳を作って見ましょう。今まで通りの運営をした時に、どれくらいの売り上げや経費の内訳になるかという考えで作ればOKです。業界平均は下記サイトを参考にすると良いでしょう。
業界平均を把握するための参考サイト
TKC
TKCとは税理士のための全国組織で、毎年『TKC経営指標』という業界平均の指標を開示しています。こちらのホームページで速報版の一部が公開されているので参考にして見てください。
日本旅館協会
言わずと知れた日本旅館協会ですが、ホームページで加盟旅館の業界平均を毎年公表しています。資料のタイトルは、「営業状況等統計調査」というものです。最新版はこちらのホームページで公表されているので参考にしてください。
日本ホテル協会
国内シティホテルの業界団体である日本ホテル協会も加盟ホテルの業界平均を公表しています。資料のタイトルは、「全国主要ホテル経営実態調」というものです。残念ながらインターネットで公表されていませんので、日本ホテル協会本部に訪問して購入すると良いでしょう。日本ホテル協会のホームページはこちらです。本部は、東京都千代田区大手町2丁目2−1 新大手町ビルヂング本館 3Fにあります。
実力値、業界平均を参考にベンチマーク(基準値)を作ろう
売り上げや経費の実力値を作ったら、売り上げは5%程度上げた値、経費はそれぞれ1〜5%程度下げた値を出して見ましょう。また、それぞれの経費項目について売り上げに対する割合を出しておきましょう。
これが
「ベンチマーク(基準値)」
となります。
このように基準値を作っておくと、決算書や試算表を見た時に判断が簡単にできるようになります。
ベンチマーク(基準値)を実際に使ってみよう
例えば、消耗品費が業界平均よりも高い場合には次のような分析をしましょう。
- 最近1年間の取引業者ごとの年間支払額を合計する
- 年間支払額の大きい取引業者から、納品書・請求書を参考にして、単価を品目毎にリスト化する
- 日々の使用量が多いものをサンプル抽出して、インターネットの業販サイトで単価を比較する。また、同じ商品を扱っている地元業者を複数探し、見積もり依頼をする
- 取引業者で仕入れている単価がインターネットの業販サイトの単価、他の業者の単価よりも高ければ状況を説明して再見積もりを依頼(値下げ交渉)
- 少なくとも年1回は、見積もりを複数社で取り直して単価が上がらないようけん制をかける(業者によっては長く取引していると、定期的に値上げをしてくるケースがある)
- 再見積もりによってベンチマーク(基準値)を達成できるか試算してみる
もちろん、消耗品費の内訳の一つである、客室アメニティは安ければ良いというものではありません。
業態やホテル旅館のグレード、競合館とのバランスによって、どの程度経費をかけるか異なりますが、問題のあたりをつけるという意味では有用と言えるでしょう。