この記事でわかること
  • いまの忘年会事情(実施率は頭打ち、予算は過去最高という二極化)
  • 物価高に合わせて見直すべき、宴会プランの予算相場
  • ノンアル時代に合わせたドリンクの作り方
  • チラシやグルメサイトから、GoogleとSNSへ移った集客の最新手法
  • 年間およそ2,000億円の損失を防ぐ、無断キャンセル対策

こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。

そろそろ忘年会・新年会の予約が動き出す時期になりました。市街地や飲食店街が近くにあるなら、宴会需要を取り込む好機です。紅葉シーズンの集客で手一杯で、まだ何も準備できていないという方もいるでしょう。今からでも、二週間ほどあれば十分に間に合います。

ただし、宴会をめぐる環境はこの数年で大きく変わりました。昔ながらのやり方をそのまま続けても、思うように予約は集まりません。今回は、いまの時代に合った忘年会・新年会対策を、需要の見立て、プランの作り方、集客の方法、そして無断キャンセル対策まで、順を追って紹介します。

まず押さえたい、いまの忘年会事情

対策を考える前に、足元の需要を正しく見ておく必要があります。

一つめの変化は、忘年会そのものが「当たり前の行事」ではなくなったことです。ある調査では、2025年に忘年会を実施するという回答は57.2%で、コロナ後の回復が初めて前年を下回りました。職場の忘年会に距離を置く人も増え、参加するかどうかを個人が選ぶ時代になっています。

二つめの変化は、それでも予算はむしろ上がっていることです。物価高を背景に、一人あたりの想定予算は過去最高水準で、4,500〜6,000円あたりが中心になっています。数は伸びにくいけれど、出すお金は増えている。言い換えれば、「数を当てにする」のではなく「選ばれれば、しっかり単価が取れる」市場に変わったということです。

三つめは、小規模・気の置けない仲間内の会が堅調なことです。大人数の宴会一辺倒ではなく、数名から十数名規模の会をていねいに迎える姿勢が、これからはより効いてきます。安売りで数を追うより、「わざわざここで集まりたい」と思わせる価値づくりに軸を移すことをお勧めします。単価をどう設計するかについては、値づけの考え方を扱った記事もあわせてご覧ください。

売れる忘年会・新年会プランの作り方

予算相場を調べてから値づけする

宿泊のお客様は遠方から来るため予算の幅が広いのですが、忘年会・新年会は近隣にお住まいの方が中心なので、地域の相場に強く左右されます。グルメサイトや、宴会に強い地元の飲食店がいくらで提供しているかを必ず調べ、自館の立ち位置を決めましょう。物価高で全体に底上げされているので、数年前の感覚のままだと安すぎる、あるいは高すぎる値づけになりがちです。おおまかな目安は次のとおりです。

利用シーン 一人あたり目安 主な競合
取引先・接待8,000〜12,000円ホテル・料亭
企業・団体の忘年会5,000〜6,000円居酒屋・レストラン
仲間内・サークル4,000〜5,000円居酒屋・チェーン店

地域差が大きいので、必ず自館の商圏で確認してください。会費制・予算制の地域では、幹事が回収しやすいよう税・サービス料込みの切りの良い金額にすると喜ばれます。

旅館・ホテルには、宿泊客向けに磨いてきた本格的な料理という強みがあります。居酒屋と同じ土俵で安さを競うのではなく、その強みを活かせる中〜高単価帯を狙うほうが、結果的に利益も評判も残ります。

ドリンクで差をつける──いまや主役はノンアルへ

料理が良くても、ドリンクの品揃えが古いままだと宴会需要では不利になります。とくに近年、見直しが必要なのがノンアルコールです。

「飲めるけれど、あえて飲まない」という選び方が、若い世代を中心に、いまや50代以上にも広がっています。会の最初の一杯からソフトドリンクを頼む人は珍しくありません。ノンアルコール飲料の市場はこの10年ほどで1.4倍に拡大し、ビール風だけでなく、ワイン・日本酒・ジン・梅酒・サワー風など、味を妥協しない商品が出揃っています。

飲み放題プランでは、こうしたノンアルコールを「お酒が飲めない人への申し訳程度の配慮」ではなく、主役の一つとして充実させることをお勧めします。料理に合うノンアルコールのペアリングや、見た目も楽しいノンアルカクテルを用意すれば、飲まない人が割り勘で損をした気持ちにならず、会全体の満足度が上がります。アルコールも、ビールや焼酎一辺倒から、ハイボール、レモンサワー、そして地酒・クラフト系の人気が高まっています。地元の蔵元の日本酒を揃えるなど、旅館ならではの一杯を用意すると差別化につながります。

浴衣姿の男女が赤と緑の酒器を手に乾杯する様子

客層によって盛り込みか個食かを決める

刺身や天ぷら、牛肉の陶板焼き、土瓶蒸しなどが並ぶ秋の彩り豊かな旅館の会席料理

個人客や仲間内の会を中心に狙うなら、華やかさのある盛り込み料理が向いています。宴会らしい賑わいを演出できます。一方、企業・団体を狙うなら個食が無難です。ただし、旅館の通常コースは品数や量が多すぎることがあります。とくに北陸など普段の献立が充実した地域では、忘年会プランはむしろ少なめでちょうど良いことも多いものです。残食率を見ながら、量と品数を調整しましょう。

飲み放題向けだからといって、安価な揚げ物中心にすると失望を招きます。お客様はなぜ、移動の手間をかけてまで旅館・ホテルを選んだのか。その期待に応える一品があれば、忘年会で得た好印象は次の宿泊予約にもつながっていきます。料理の原価をどう管理するかは、料飲原価率の記事で詳しく解説しています。

集客は「チラシ」から「Googleとスマホ」へ

ここが、最も大きく様変わりした部分です。かつては、チラシを刷って新聞に折り込み、グルメサイトに載せるのが王道でした。いまは、お客様が会場を探す入り口そのものが変わっています。

かつての主役 いまの主役
チラシ・新聞折込Googleビジネスプロフィール(MEO)
ぐるなび・食べログ掲載Instagram(リール・写真)
ポスティング・DMLINE公式アカウント(既存客・幹事)
(手段が乏しかった)Google広告・地域の予約サイト

地方の宴会は地元商圏が中心なので、チラシや新聞折込、地域のフリーペーパーが今も一定の効果を持つ場合があります。主役を入れ替えつつ、補助的に併用するのが現実的です。

タブレットとスマートフォンに表示された予約システムの画面

最優先はGoogleビジネスプロフィール(無料)

いま、宴会の会場を探す人の多くは、スマートフォンで「地名+忘年会」「地名+宴会」と検索し、地図に並ぶ候補を見比べています。ここで上位に表示されるかどうかを左右するのが、Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)の整備です。来店の直前に最も見られる「看板」であり、しかも無料で使えます。

具体的には、営業時間や住所、電話番号、宴会プランの価格帯を正確かつ最新に保つこと。料理や個室、宴会場の写真を10枚以上載せること。そして口コミには、良いものにも厳しいものにもていねいに返信することです。これらは検索順位に直接効いてきます。広告費をかけずに来店が大きく伸びた事例も報告されており、まず最初に手をつけるべき施策です。口コミを増やす具体策は、口コミの増やし方の記事にまとめています。

Instagramで「行きたい」を生み、LINEで固定客をつかむ

Instagramは、盛り込み料理や個室の雰囲気を見せるのに向いています。とくに短い動画(リール)は、写真より多くの人に届きやすい傾向があります。制作費をかけずに始められるので、宴会プランの料理を一品ずつ紹介するだけでも効果があります。

LINE公式アカウントは、一度利用してくれた幹事やお客様への再アプローチに向いています。忘年会シーズンの少し前に案内を送れば、昨年利用してくれた団体の再予約につながります。ただし配信が多すぎるとブロックされやすいので、週に1〜2回までにとどめるのが目安です。

Google広告と地域媒体は、地方ほど効く

「忘年会+地域名」「宴会+地域名」といったキーワードの広告は、大都市では競争が激しい一方、地方では競合が少なく、少額でも上位に表示されやすいという利点があります。Google広告のアカウントがあればすぐ始められます。グルメサイトへの掲載は、ランチ・ディナーを通年営業するレストランがあるホテルなら検討の余地がありますが、宴会シーズンだけのために月数万円を払うのは、費用対効果が見合わないことが多いので慎重に判断しましょう。

なお、チラシやフリーペーパーを使う場合は、必ずクーポンを付けてください。回収率で広告効果を測れます。チラシの制作はクラウドソーシングのサービスや、最近では生成AIやデザインツールを使えば、以前よりずっと安く早く用意できます。集客にかける費用全体の見直しは、集客コスト構造改革の記事が参考になります。

宴会の集客から予約の仕組みづくりまで、ご相談ください

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忘年会シーズンこそ「無断キャンセル対策」を

見落とされがちですが、忘年会・新年会の時期にこそ備えておきたいのが、無断キャンセル(ノーショー)対策です。予約だけ入って当日に来店も連絡もない無断キャンセルは、業界全体で年間およそ2,000億円の損失とされ、利益率の薄い宿泊・飲食業には重い打撃になります。幹事が複数の店を仮押さえしたまま忘れる、といったことが起きやすいのが、まさに繁忙期の団体予約です。

対策の柱は三つです。

  1. 予約の事前確認(リコンファーム)。数日前に電話やLINE、SMSで日時・人数・内容を確認します。店が準備を進めていると伝わるだけで、無断キャンセルの心理的なハードルが上がります。
  2. キャンセルポリシーの明示。いつから何割の料金がかかるかを、予約時にわかりやすく伝えておきます。
  3. 事前決済・デポジット。大人数や貸切など損失の大きい予約では、代金の一部を前払いしてもらう、あるいは予約金を預かる仕組みが有効です。ネット予約システムを使えば導入できます。

いずれも、お客様を疑うためではなく、双方が安心して当日を迎えるための備えです。とくに高単価の宴会ほど、一件の無断キャンセルが利益を大きく削るので、繁忙期に入る前に整えておくことをお勧めします。

送迎と付加価値で、もう一押し

日帰り宴会を本格的に取りに行くなら、送迎ができると有利です。飲酒運転への取り締まりが厳しくなり、車で来られないお客様が増えているためです。宿泊客の送迎用にバスを持っているなら活用しましょう。保有していない場合のチャーターは費用がかさみますし、近年は運転手の確保自体が難しくなっているので、需要と採算をよく見て判断してください。地元のタクシー会社や運転代行と提携しておくのも、現実的な一手です。

おわりに

いかがだったでしょうか。忘年会の数そのものは伸びにくくなりましたが、予算は上がり、「どこで集まるか」を一人ひとりが選ぶ時代になりました。だからこそ、Googleやスマートフォンで見つけてもらい、ノンアルや本格料理で「ここで集まりたい」と思わせ、無断キャンセルに備えて確実に売上を取り切る。この流れを整えれば、紅葉シーズンの忙しさの中でも、二週間ほどで準備は間に合います。

弊社アルファコンサルティングでは、宴会プランの設計から集客の組み立て、予約・決済の仕組みづくりまで、貴館の商圏と強みに合わせてお手伝いしています。特定の予約システムやグルメサイトと利害関係を持たない立場から、率直に申し上げます。

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