中価格帯ビジネスホテルが淘汰される日

粗製濫造の新築ビジネスホテル

この数年、ホテル旅館の新規オープンが急速に進んできましたが、中価格帯のビジネスホテル(バジェット型ホテル、宿泊特化型ホテル、宿泊主体型ホテル)で、付加価値のない粗悪なホテルが増えてきていることは憂慮すべきことです。

粗悪乱造の発端は、皮肉なことで不動産投資のターゲットとして評価されたことによります。以前は、一流の不動産投資家は、大都市のAクラスのオフィスビルやレジデンスを好み、ホテルは高利回り(投資対利益が高い)である一方で、利益の安定感や将来性についてリスクがあることから劣後される傾向にありました。

ところが、この数年で(といってもマーケット自体は2015年がピークでしたが)高い収益が見込め、政府の観光業に対する促進方針もあって将来性が期待できることから、不動産投資家が重点的に投資する先となりました。また、インバウンド需要で活況となったホテル業界を毎日のようにマスコミが紹介したことから、意欲的な異業種企業が相次いで進出することになったのです。

 

利回り重視の財テク案件の持ち込みが急増

ホテル業界に新規参入する企業や不動産投資家は、一般的に利益志向が強いため、高い利回りを求める傾向にあります。そのため、ホテルのコンセプトや商品としての価値向上を二の次にして、単に建築コストをできる限り安価に抑え、工期も短縮して投資回収を急ぐことになります。

銀行には、特色のない単なる財テク目的の投資案件が多数持ち込まれることになります。銀行のホテルに対する融資は慎重姿勢になりつつありますが、収支を比較的容易に計算することができ、担保も確保できることから稟議は通りやすいといえます。

 

中価格帯ホテル受難の時代がやってくる

財テクブームは長くは続かないでしょう。中価格帯ホテルはすでに作りすぎてしまい、供給過剰と言われています。近い将来、似たり寄ったりの中価格帯ビジネスホテル間の激しい競争となるでしょう。画一化されたホテルは清潔感があり機能的であるため、周辺エリアが古いホテルばかりであれば高い集客力を得ることができますが、同一エリアで同一仕様の新築ホテルが乱立すると宿泊需要が落ち込んだ時に一気に価格競争に陥るリスクを孕んでいます。実際にリーマンショック以降にビジネス出張の需要が急減した際には、宿泊料金の値引き合戦に加えて、実質的に宿泊費のキャッシュバックであるクオカードをつけたプランや、たまった宿泊ポイントを現金1万円でキャッシュバックするという販売施策が流行しました。消費者が判別できるような差が少ないために、価格訴求しか集客手段がなくなってしまったのです。

 

都市部のホテルは成熟期へ

都市部のホテルマーケットは成長期から成熟期へ向かっていると言われています。今後、単館ホテルの開発やリニューアルを行うならば、地域性と得意分野を組み合わせて独自性を出していくこととお勧めします。客室の仕様、設備、建築コストに目が行きがちですが、「どのようなコンセプトで、どのようなお客様に訴求するか」、コンセプト作りに時間とエネルギーをかけることが望ましいでしょう。

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