こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。
 
ホテル旅館は「とにかくネットエージェントで集客すべき」という考え方が強い業界ですが、様々なホテル旅館をお手伝いして、内情を知っている私の立場からすると、「ホテル旅館によって集客の実態は全く異なりますよ!」と言いたくなります。
 
業界全体の傾向として、ネットエージェント(OTA:オンライントラベルエージェント)の比率が高まっているのは事実ですが、旅行代理店(リアルエージェント)だけで安定した売上を上げている旅館や、インバウンド客だけで稼働率90%以上を維持し続けているホテル、メディア系の代理店から効率よく集客しているリゾート旅館などやり方は様々です。直接予約のリピートのお客様だけで半数以上占める高級旅館もあります。
 
ベストな集客のやり方は、ホテル旅館によって全く異なります。他社に遅れまいとネットエージェント(OTA:オンライントラベルエージェント)に手数料や広告費を払うだけでなく、自社にとって最適な集客方法は何か知ることが大切です。今回のコラムでは、ホテル旅館がエージェント手数料を節約しながら集客するヒントを紹介しましょう。

 

「実際に来てみると素晴らしいホテル旅館でした!」と言われるホテル旅館は広告宣伝のやり方に問題があります

広告宣伝が下手なホテル旅館を見極める簡単な方法があります。口コミに、「来館前はあまり期待していませんでしたが、実際に来館してみると素晴らしいホテル旅館で感激しました」と書かれているかどうかです。
 
「来てくれたお客様が自館の価値を分かってくれた」と満足してはいけません。来館前に付加価値を伝えることができず、ハード設備やサービスに見合った宿泊代金を頂くことができていないという見方もできるからです。稼働率が下がってくると、宿泊単価を思い切り下げて集客しようという考えになりがちですが、思ったほど集客できないのは広告宣伝の予算と内容に問題がある可能性があります。

 

広告宣伝費・エージェント手数料を下げながら集約する5つのヒント

 

1.広告媒体ごとに専用プランを設けよう

新聞広告・折り込み広告の効果を測定するならば媒体ごとに専用プランを設けると良いでしょう。例えば、○○新聞に掲載するならば「○○新聞限定特別プラン、お電話でのお申込みの際は○○新聞を見た旨お知らせください」と紙面に掲載すれば広告効果を把握することができます。
 
より正確に把握するならば、コールトラッキングシステムを導入すると良いでしょう。電話アクセス件数把握のための予約専用番号を代表電話番号と別に設けることで、日別・時間帯別の電話件数を把握することができます。インターネット広告のように1件あたりの獲得費用を算出することも容易なので、無駄な広告を廃止する見極めがしやすくなります。
 

2.営業部とネット販売課を統合しよう

旅行代理店や地元団体顧客への訪問営業を主たる業務とする営業部と、ネットエージェントや自社サイト(電話予約含む)の個人客への販促を主たる業務とするネット販売課は、組織統合した方が良いでしょう。
 
大型のホテル旅館では、営業部が広告宣伝費と客室在庫の大半を握っていて、かつ社内での発言力が強い傾向にあります。そのような館では団体客に優先的に客室在庫を割り当ててしまい、ネット経由の個人客や直接予約客に対して十分な部屋数を提供できないという問題を抱えていることが多いです。
 
宿泊日まで2週間を切ると、旅行代理店から客室在庫が返却されてくることになりますが(返室)、何の罪悪感もなく、知らんぷりを決め込むホテル旅館の営業マンは少なくありません
 
広告宣伝費や客室在庫を各販売チャネルにどう割り当てるかはホテル旅館の業態によって異なりますし、毎年構成比は変わっていきます。営業部とネット販売課を統合して、同じ目標・予算で取り組んだ方が広告宣伝費の削減につながるでしょう。
 
統合する際には、ネットを担当するスタッフの役職を引き上げてあげることが重要です。団体営業を担当している営業マンが部長扱いで、ネット販売を担当しているスタッフが主任扱いというのでは、社内の力関係で負けてしまいます。売上予算に応じた役職を与えることをお勧めします。

 

3.SNSを団体客にも活用しよう

facebook等のSNSはインターネット経由の個人客向け販促策というイメージを持ちがちですが、実際には団体向け(特に地元客)の販促にも有効です。SNSを日常的に利用する中高年ユーザーは、団体セールスのターゲットである社会的地位の高い人が多いと言えます。SNSを活用することで地元政財界の有力者や一定地位の人に直接アピールできます。居住地や性別、年齢でターゲットを絞ることもできるので、「仙台市内に住む35歳〜60歳までの男女」だけに広告を出すことも可能です。

 

4.自社の販促物を他人にチェックしてもらおう

折り込みチラシや新聞広告はホテル旅館の優劣がつきやすいです。ネット広告や観光雑誌のタイアップ広告は観光業界に慣れた代理店が制作することが多いが、折り込みチラシや新聞広告は旅館・ホテルのPRに慣れていない地元の印刷会社が制作することもあるからです。
 
たかが写真ひとつでも、お客さまの旅館・ホテルに対するイメージと集客効果には大きな差がつきます。ハード設備の立派さや料理の豪華さばかりがアピールされ、どのような人向けの施設なのか、どのような楽しみ方があるのか伝わらなければ、お客さまの気持ちを掴むことはできません。
 
自社の販促物がイマイチであると感じているならば、デザインや内容について、利害関係のない人やターゲット顧客層に近い人に忌憚のない意見を求めることをおすすめします。否定的な意見が多ければ広告宣伝費が無駄に使われているということです。経営者や運営者自らがデザインを抜本的に変える決断をすることをお勧めします。現場任せにしていては、変更後の影響や業務の流れが変わることを恐れて変革することはできません。
 
身近に、有能なデザイン制作会社やライター、カメラマンがいなければ、インターネットの外注サービス(クラウドソーシング)で探すと良いでしょう。ランサーズやクラウドワークスというサイトが有名であるが、最近では様々なサイトが誕生して人気を集めています。インターネットで簡単に公募ができ、低価格で依頼できます。大手の利用はもちろんのこと、山間の小規模なホテル旅館でも有効に使えるでしょう。やり方次第では、地元のチラシ制作会社の数分の1以下の費用で魅力的な販促物を作ることも可能です。苦手意識を持たず試して見ましょう。

 

5.「何でも屋のホテル旅館」にならないようにしよう

顧客ターゲットを明確化すると集客力アップにつながるというのはマーケティングの定石ですが、実践できているホテル旅館は少ないです。ターゲットを絞りすぎると客数が減るのではないかという不安から、あえて何でも屋として売っているという経営者の意見も良く聞きます。確かに中堅規模以上の施設でターゲットを絞りすぎるのはリスクが大きいですが、どのターゲットを優先的に狙っていくのか決めないのもリスクと言えます。
 
ターゲットを絞りきれていないホテル旅館は、パンフレットやチラシ、新聞広告、ホームページ等から受ける印象と実際の施設、サービスに一貫性がありません。例えば、「旅行代理店のチラシを見ると高級旅館のイメージだったけど、実際に行ってみると一般的な団体旅館だった」、「新聞広告を見るとファミリー向けの旅館の印象だったけど、実際に行ってみると分煙すらされておらず、従業員も子供にそっけなかった」と感じるお客さまが多ければ集客に逆効果です。高額の広告宣伝費を投じても効果は限定的でしょう。
 
ターゲットの絞り込みは現場任せにせず、経営者や運営者が決めましょう。立地や周辺観光地、館内設備、施設のグレード、従業員のスキル、資金力などを総合的に分析すれば、ターゲットにできる顧客層は自ずと見えて来ます。成功したホテル旅館をそのまま真似ても上手くいきません。自館にあったターゲットを決めよう。ターゲットを決めることで物事の判断もしやすくなります。ブッフェ会場をどのような演出にするか、アメニティのグレードや内容をどうするか、従業員のユニフォームをどのようなデザインにするかというのは、人によって答えがバラバラになりがちですが、ターゲットを決めておけば方針を統一しやすいでしょう。