ホテル旅館の不正・金銭横領・不祥事の実態と対策

皆さんこんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。

今回は、ホテル旅館の不正や金銭横領、不祥事の実態や対策についてお話ししたいと思います。この業界で働いている方、経営されている方ならばよくご存じだと思いますが、お金が盗まれたり、不正な業者との取引が行われたり、暴力事件などが少なくない業界です。知らない間にお金が横領されていた!警察に呼ばれた!などと被害に合わないために日頃から対策を講じておくことが大切です。

 

業績不振は不正の温床となる組織風土も原因

不正対策はスタッフのモチベーションアップにもつながります。問題を起こすスタッフは、経営者の見えないところで不正を働いたり暴力的な行動を起こしたりするものですが、他のスタッフは見ています。経営者が知らないだけで、社内では噂が広まっていることが多いです。経営計画を作ったり、アクションプランを作ってもスタッフが言うことを聞かない、やる気が起きない原因の一つに不正が生まれやすい会社風土があるかもしれませんね。

 

スタッフの横領事件が起きやすいのは売店

私がホテル旅館のコンサルタント業を行ってきた中で、最も金銭トラブルが起きた部門は売店でした。経営者の目の届きにくい売店では、レシートを求めないお客様の売上についてレジを通さずポケットに入れるという手口や、売上取り消ししてレジの現金を引き出す手口によって横領が行われていました。いずれも、棚卸を行っていれば商品在庫の過不足や粗利率の変動によって気づくことができるのですが、不正が起きやすいホテル旅館はやっていないことが多いです。

売店の担当者が数百万円横領していたという事例も実際にありました。財務調査(財務デューデリジェンス)によって発覚して、全額返納させることができたので結果的には事なきを得ましたが、気づかず不正の温床となっているホテル旅館は多いと思われます。

他のケースでは、会社の部門別の業績管理を正確に把握することを目的として、売店の棚卸を毎月末にするという方針を示したところ、突然売店担当者が退職したこともあります。理由も告げずに突然に。粗利率や月末在庫が異常値であったことから不正が疑われましたが、本人が退職してしまったため返納を求めることはできませんでした。日頃から内部管理をしっかりと行っていれば不正は未然に防げたでしょうし、横領されたお金を取り戻せたかもしれません。

売店部門の不正は、日々の仕入れ・販売日計表の提出や月末棚卸の実施、操作記録(ログ)機能付きのレジ導入によってある程度防止することはできます。ただし、悪意をもって不正に手を染めるスタッフは現金や物品を盗もうとあらゆる手段を考えるので、すべて防止するのは不可能でしょう。

 

不正・金銭横領・不祥事対策は道徳教育も大切

ホテル旅館業界は様々な家庭環境のスタッフが働いています。家庭で物事の善悪について教育をうけてない人間も残念ながら紛れ込見ます。スタッフの不祥事や無気力が課題になっているのであれば、社内で道徳教育をしっかりと行うことも大切です。

 

あなたのホテル旅館は不正が起きやすい!?評価シートでチェックして見ましょう

自分の会社のスタッフにモラルがあるかどうか推し量るには、簡易的な人事評価シートを作成し各部門の管理職に入力してもらうと良いでしょう。参考までに一般的な評価項目を紹介しましょう。

  1. 働く意識と取り組み
  2. 専門知識・情報の活用
  3. 報告・連絡・相談の実施
  4. 責任感
  5. 正確さ
  6. 部下・後輩の指導・育成
  7. 指揮・命令の徹底
  8. 目標達成への執着

等を項目として設定すると良いでしょう。 スタッフ全員を対象として、部門ごとにABCDの4段階で直属の上司が評価した結果を取りまとめると、自社のモラルの状態がよく分かります。ABCDの評価をつけた理由もコメントしてもらうとよいでしょう。

まず、①〜⑧の項目について、それぞれ構成比を出してみましょう。一般的なホテル旅館であれば、Aが20%、Bが40%、Cが30%、Dが10%程度となるでしょう。部門間で評価にばらつきがある場合には、評価者にヒアリングをして他部門と評価基準があっているか確認すると良いでしょう。

次に、スタッフの道徳心に影響を受けやすい評価項目である、①働く意欲と取り組み、④責任感、⑧目標達成への執着が他の項目と比べてどうか確認してみましょう。他の項目と比べて、C、Dの構成比が高ければ、一般的なホテル旅館と比べてスタッフのモラルが低いといえるでしょう。もしかしたら、すでに不正が行われているかもしれません。。。

最後に、コメント欄をチェックしてみましょう。接客スキルや作業、事務処理能力について肯定的な意見が多いからといって安心してはいけません。責任感、向上心、目標達成について否定的な意見が多ければ、業績をより良くしていくのは困難です。モラルを高めるための道徳教育が必要となります。

今回取り上げた、不正対策、道徳教育については今後のコラムで具体的な対策にを紹介していきたと思います。