- 地域のイベント頼みをやめ、自力で集客する意味
- 閑散期を埋める「年間イベントカレンダー」の作り方と実例
- イベント企画を形にする5つのステップ
- 効果検証で見るべき数字(1組あたりの集客費用)
- すぐ使える7つの着眼点と、最新のトレンド
- 生成AIで年間カレンダーを作る、具体的なプロンプト
こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。今回は、集客イベントの企画の進め方をお話しします。
個人のお客様を増やす施策として有効なのが、季節ごとの集客イベントです。紅葉が終わった晩秋からクリスマス明けにかけてなど、集客に苦戦する時期は地域によって決まっています。地域のイベントや催事に頼るだけでは、稼働は安定しません。自力でイベントを企画できるようになれば、閑散期でも売上を確保できます。
人材や資金に限りのある中小の旅館・ホテルでも取り組める進め方を、年間カレンダーづくりから5つのステップまで整理して紹介します。図表や事例、チェックリストもつけましたので、読み終えたらすぐ動き出せるはずです。
なぜ、自力でイベントを企画するのか
イベント企画というと、旅館やリゾートホテル、シティホテルを思い浮かべがちです。しかし、これからは宿泊主体型ホテルにとっても重要なテーマになります。都市部を中心にホテルは供給過剰になりつつあり、差別化できない施設は選ばれにくくなっているからです。
地域の祭りやイベントに参加する手もありますが、地元施設の負担は小さくありません。実行委員会へのスタッフ動員を求められ、人手不足のなかで負担が重くなりがちです。一時的に稼働は上がっても、自館の力としては残りません。
自力で企画できれば、開催時期も内容も自分で決められます。閑散期にぶつけることも、自館の強みを打ち出すこともできます。イベント企画が上手な施設は、年間の稼働が安定します。
まず、年間イベントカレンダーを作る

個別のイベントを企画する前に、ぜひ取り組んでほしいのが、年間イベントカレンダーづくりです。一年のどの時期に、どんなイベントを行うかを一枚にまとめた計画表です。
なぜ年間で考えるのか。理由は三つあります。第一に、閑散期を埋めるには、思いついたときに単発で動くのではなく、一年を見渡して、売上の落ち込む時期に意図的にイベントを配置する必要があるからです。第二に、季節イベントは告知を3〜4ヶ月前に始めたいため、逆算すると年間計画がないと間に合わないからです。第三に、限られたスタッフと予算を、どの時期に重点配分するかを見通せるからです。
作り方はむずかしくありません。過去の稼働データから繁忙期・閑散期を月単位で把握し、各月にテーマと主なイベントを割り当てます。繁忙期は放っておいても埋まるので、閑散期にこそ手厚く置くのがコツです。最後に、告知を始める時期を逆算して書き込みます。
上の表は一例です。自館の立地や客層、地域の行事によって、繁忙期も閑散期も変わります。大切なのは、自館の数字をもとに、閑散期を埋める計画を一年分、先に描いておくことです。カレンダーができたら、各イベントを次の5ステップで具体化していきます。
イベント企画の5ステップ

ステップ1 テーマ(お題)を決める
最初に、全体を貫くテーマを必ず決めます。季節の行事、地域の行事、エリアのイメージからモチーフを探すとよいでしょう。テーマを決めずに会議を始めると、平凡な思いつきしか出てきません。
ステップ2 企画を幅出しする
テーマに沿って、幹部スタッフで具体的な企画を出し合います。この段階では、実現可能性や予算は気にしません。数を出すことが大事です。着眼点は次の章で紹介します。
ステップ3 責任者とPMを決める
企画が出そろったら、項目ごとに実施責任者を決めます。責任者は、準備・スタッフ教育・資材調達・当日の現場リーダーを担います。人手に余裕がなければ、2〜3名から始めて構いません。
あわせて、全体をまとめるプロジェクトマネージャー(PM)を置くと、成功率が上がります。PMは、幅出しの取りまとめ、責任者へのスケジュール管理、部門間の調整を担います。イベント準備は日常業務の合間に進めるため、お客様対応で忙しくて手が回らなかった、となりがちです。PMがスケジュールを管理し、遅れている責任者を督促します。
ステップ4 計画的に告知する
自社サイト、SNS、リスティング広告、チラシなどで、計画的に事前告知します。季節イベントは、告知が直前になるほど集客力が落ちます。できれば3〜4ヶ月前から準備を始めます。
OTA(予約サイト)の特集ページは、周知の効果はありますが、過度な期待は禁物です。どこも似た写真やプランになりがちで、立地や知名度で劣る施設は埋もれます。イベントを通じて自館の独自性を高めることが大切です。集客コストの考え方は集客コスト構造改革の記事も参考にしてください。
ステップ5 効果を検証する
イベントはやりっぱなしにしません。終わったら中心メンバーで集まり、良かった点・悪かった点を、根拠となる数字とともに振り返ります。特に大事なのが、広告チャネルごとの集客力と、1組あたりの集客費用です。「このイベントを何で知りましたか」というアンケートを取れば、どのチャネルが効いたか分かります。たとえば次のような結果が出たとします。
次回は、効果の高いチャネルに予算を寄せ、開催期間を延ばして売上につなげます。この振り返りを重ねるほど、企画の精度は上がっていきます。
企画の7つの着眼点と、最新のトレンド
幅出しのときに使える着眼点を7つ紹介します。人材や資金に限りがあっても取り組めるものばかりです。

最新のトレンドも取り入れたいところです。近年は、体験そのものを売るイベントが人気です。館内を巡る謎解きや宝探し(あるホテルでは開業30周年に館内を巡る謎解きを実施しました)、テーブルごとに景品が当たるビンゴ大会(料理と組み合わせ、ファミリーからシニアまで楽しめます)などです。夜の時間を使うナイトタイムの企画や、SNSでハッシュタグ投稿を促し抽選でプレゼントするUGC連携も効果的です。口コミを増やす工夫はこちらの記事にまとめています。インバウンド向けには、茶道・書道・着付けといった和の文化体験を組み込む施設も増えています。異業種の集客から学ぶ視点はグランピングの記事も参考になります。
季節ごとのテーマ例を早見表にしました。自館の立地や強みに合わせて選んでみてください。
事例――クリスマス(閑散期)に当てはめる

7つの着眼点を、旅館が特に苦戦しやすいクリスマスに当てはめてみます。
料理
クリスマスは西洋料理がイメージされるため、和食中心の旅館は苦戦しがちです。特別ディナーが難しくても、特別デザート、スパークリングワイン、ローストビーフの追加など、部分的にクリスマスらしさを出せます。宿泊プランにするなら、レイトチェックアウト、特別アメニティ、花のプレゼント、客室のランクアップ、子ども向けのお菓子などを盛り込みます。
コンサート・ライトアップ
12月中旬からクリスマスソングのミニコンサートを。プロにこだわらず、アマチュアや地元の大学のクラブに頼めば、開催日を多く設定できます。会場にはキャンドル(LEDでよい)を置き、屋外のライトアップは11月から2月の長期で行うと、投資効果が高まります。
SNS連携
周辺でクリスマスイベントやライトアップがあれば、旅館名のハッシュタグで投稿してもらい、抽選で宿泊券やギフト券をプレゼントします。お客様自身の発信が、次の集客につながります。
なお、年末年始の忘年会・新年会といった宴会需要については、別の記事で詳しく扱っています。
生成AIと便利ツールを活用する
企画の経験が少なくても、いまは生成AIや外部ツールが助けになります。

生成AIは、テーマ出し、プラン作り、告知文の作成に使えます。SNSの投稿文やチラシの下書き、ショート動画の構成案づくりにも使えます。過去の予約データを読み込ませて、季節ごとの需要傾向を整理させることもできます。
生成AIで年間カレンダーのたたき台を作る
先ほどの年間イベントカレンダーも、生成AIを使えば短時間でたたき台ができます。コツは、自館の前提(業態・立地・客層・閑散期)をできるだけ具体的に伝えることです。次のように、段階を追って指示するとよいでしょう。
ただし、生成AIは自館や地域の細かい事情までは知りません。地元の祭りの日程や、過去に当たった企画、施設の制約などは、人が確認して直す必要があります。出力はあくまでたたき台と考え、最後は自館の判断で仕上げてください。過去の稼働データや地域の行事をプロンプトに与えるほど、精度は上がります。
便利ツールも知っておくとよいでしょう。消費者にアイデアを尋ねられるアンケートツール(ミルトークなど)を使えば、冬のイベントで貰うと嬉しいものは、といった問いに、短時間で回答を集められます。チラシのデザインは、クラウドソーシング(クラウドワークスなど)で外注できます。地元に適当な業者がいなくても、複数のデザイン案を募れます。
すぐ始めるためのチェックリスト
最後に、すぐ動き出すためのチェックリストを用意しました。上から順に進めれば、企画の骨格ができます。
おわりに
いかがだったでしょうか。集客イベントは、まず年間カレンダーで全体を設計し、各イベントをテーマ決め・幅出し・責任者とPM・告知・効果検証の5ステップで進める。この流れで取り組めば、人材や資金に限りがあっても形になります。地域のイベントに頼るのをやめ、自力で閑散期に売上を作れる施設を目指してください。
弊社アルファコンサルティングでは、集客イベントの企画から効果検証まで、施設の規模や立地に合わせてお手伝いしています。特定の広告媒体や予約システムと利害関係を持たない立場から、率直に申し上げます。
