ホテル旅館業が11月に最優先で取り組むべき業務は「食中毒防止(ノロウィルス対策)」
こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。
だんだん肌寒くなってきましたね。11月に入ると、ホテル旅館で最優先で必ず取り組まなければならないことがあります。紅葉シーズンのお客様受け入れや忘新年会の営業じゃありませんよ。分かりますか?そう、食中毒対策です。
▼目次
食中毒の患者数は11月から増加して12月にピークを迎える
厚生労働省が公表している全国の食中毒発生状況を見ると、9月に底を打った患者数は10月以降に急増していくことが分かると思います。患者発生のピークは12月です。食中毒のことに詳しくない人は、「梅雨の時期は湿気っぽいから食中毒が多いだろう」、「夏は物が腐りやすいから食中毒が多いはずだ」という意見を言うことがありますが、実際は違います。冬場から春先にかけてが最も危ない時期なのです。
冬場の食中毒の原因のほとんどはノロウィルスによるもの
それでは、食中毒の病因物質は何が多いでしょうか?実は、冬場はノロウィルスによるものが圧倒的に多いのです。平成28年12月の状況を見ると、食中毒患者の総数3,379人のうち、3,145人がノロウィルスを原因とするものでした。実に、全体の93%がノロウィルスによるものと分かります(棒グラフの濃いエンジ色がノロウィルスによる食中毒の患者数、薄いエンジ色がそれ以外の病原物質による食中毒の患者数)。
旅館で発生する食中毒の大部分はノロウィルスによるもの
次に旅館業における食中毒の発生状況を見てみましょう。下表は平成29年1月から10月までの食中毒発生状況の速報です。発生月日や発生場所は全国各地に渡りますが、旅館で発生した食中毒の病因物質の大部分はノロウィルスによるものでした。したがって、ホテル旅館においては、ノロウィルス対策を重点的に行う必要があると言えるでしょう。
(出典:厚生労働省「平成29年食中毒発生状況(速報)」より旅館で発生した食中毒のみ抽出)
板前任せではうまくいかないホテル旅館の食中毒対策
以前、ある店舗の食中毒の原因について調べる機会がありました。その店舗は過去に食中毒を出したことから、保健所の指導のもと調理人に対しては厳しく衛生管理を指導していました。ところが、そんな中で再び食中毒を出してしまったのです。
その原因は、実はオーナーの孫でした。オーナーの息子家族が冬休みを利用して帰省していたのです。オーナー経営のホテル旅館は一族にとって家のようなもの。ついつい気が緩みがちになります。その孫が厨房やレストランに出入りしたことが原因となりました。ちょうど学校でノロウィルスが流行っており、その病因に感染した孫から盛り付け中の食材に移ったのです。
年末の最中だったこともあり、忘新年会は全てキャンセル、事態を重く見た企業や団体はその後も利用することはありませんでした。
この教訓から学べることは、食中毒対策を板前任せにしているだけではダメだということです。ホテル旅館は不特定多数の人が出入りしますし、板前以外も料理に接する機会が多い業種です。様々な部署、持ち場で対策が必要となります。どのような対策が必要か考えて見ましょう。
料飲サービススタッフを原因とする食中毒を発生させないために注意するポイント
料飲サービススタッフ(中居、接待係、宴会サービス係)は、調理スタッフと比べて、食中毒に対する意識が弱いケースが多いです。年末年始の繁忙期には次のことに注意させましょう。
ユニフォームは定期的に洗浄する
ユニフォームは定期的に洗浄しましょう。または前掛けや袖口留めを使用して、食材が衣類につかないようにしましょう。病原物質に汚染された食材が衣類に付着して汚染が拡大する恐れがあります
サービススタッフの体調チェックは毎日必ず行う
厨房スタッフだけでなく、料飲サービススタッフも発熱や下痢などをしている場合は出勤させないようにしましょう。特に、サービススタッフに、バイキング会場の準備や先出し料理の配膳をさせているホテル旅館は注意しましょう。
厨房のヘルプに入る時には、ユニフォームを着替えて、マスク、手袋、帽子をつける
年末年始の忙しい時期に、サービススタッフがヘルプとして厨房に入ることがあると思います。その際には、必ず作業着に着替えるよう指導しましょう。忙しいことが言い訳にならないように徹底することが大切です。
バイキング会場が食中毒の原因にならないように注意するポイント
バイキング会場の食中毒防止法は、厚生労働省が出している「HACCPの考え方を取り入れた 食品衛生管理の手引書 〜ホテルでの着席・ビュッフェを中心としたスタイルによる食事提供において〜」に詳しく書かれています。
作り置きの時間と温度の管理
着席スタイルの宴会と同様に、調理終了後から提供するまでの時間と保管温度の管理が重要となります。保管する場合は危険温度帯(10℃から60℃)を避けて保管するか、提供する時間も含めて概ね2時間以内を目安に喫食いただけるようにしましょう。
提供時間と温度の管理
提供してから2時間以内に喫食いただくことが望ましいです。定期的に容器などを触り温度を確認するほか、提供されてから長い時間放置されていないか確認しましょう。
衛生的な陳列
陳列する場所は衛生的な場所であることを確認しましょう。料理ごとの間隔を確保し、相互汚染が無いように衛生的に陳列しましょう。特にアレルゲンを含む食品は注意が必要です。
(出典:厚生労働省 ホテル 事業者が 実施する「HACCP の考え方を取り入れた 食品衛生管理の手引書」〜ホテルでの着席・ビュッフェを中心としたスタイルによる食事提供において〜)
調理スタッフ(板前)が衛生管理を徹底できているか見極めるチェックポイント
食中毒が発生しやすい時期だからこそ、調理スタッフ(板前)には、再度注意喚起しましょう。特に、中途採用の調理スタッフは前の職場のやり方に慣れているケースが多く、いい加減な職場を経験してきた場合、食中毒を発生させるリスクがあります。しっかりと当館のルールを守ってもらうようにしましょう。厨房に詳しくない経営者、運営者でもチェックできるポイントについて紹介しましょう。
食材に日付は書いてあるか?
食材を管理する上で最も注意しなければならないのが日付管理です。いつ届いたのか、賞味期限はいつなのか、開封したのはいつなのか、開封したらいつまでに使い切らなければならないかなどを徹底的に管理しなければなりません。
食材管理のミスでよくあるのが開封日を書き忘れていて賞味期限内だと思い使用したが腐っていたという事例です。賞味期限だけでなく開封日を書いておくことで食材の劣化に対応することができます。
全ての冷蔵庫に温度計は設置してあるか?また表示温度、保管方法は適正か?
食材の敵といえば温度です。食材には適した保存温度があり、それを守らなければ賞味期限内でも劣化してしまいます。全ての冷蔵庫に温度計は設置されているか確認しましょう。
また、業者から納品された食材が長時間置き去りにされていないかチェックしましょう。特にダンボールなどは雑菌の宝庫であり、最も避けておきたいものとなっています。食材が届いたらダンボールから出して、ダンボールは食材の近くに置かないことを徹底してください。
手洗いなど徹底されているか?
手洗いは料理を出す業界で働く人の基本中の基本です。厨房に入る手前に手洗い場を設けて雑菌が厨房内に入らないようにしましょう。出勤時だけでなく、トイレや休憩から帰ってきた時も、都度手洗いを徹底しているかチェックしましょう。
経営者、運営者が見ている時だけ、衛生管理を表面的にやっている厨房は、「あの板前は、○○社長がいる時は真面目にやっているふりをしているけど、いないときはいい加減だ!タバコを吸った後に手も洗わない」とスタッフの陰口や不満が聞こえてくるものです。そのような不満の声がないか耳を傾けてみることも大切です。
いかがでしたか?
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