ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。前回に引き続き、ホテル旅館のM&Aで失敗しないポイントを解説しましょう。前編を見ていない方はこちらから先に見て下さい。

譲渡契約の諸条件に注意する

不動産取引と異なり、M&A取引では様々な諸条件が付くことがあります。分厚い譲渡契約書を隅々まで読みこなすのは難しいですが、譲受後の従業員の地位や業者取引、売上債権の精算有無、譲渡代金の支払い方法は最低限よく確認しておきましょう。

譲受後の従業員の雇用については、昔は、引き継ぎせずに一旦全員解雇したり、同条件で雇用して一年後に継続するか見極めしたりというケースが多くありました。現在では、人手不足が深刻化していることもあり、原則雇用継続することをおすすめしたいと思います。譲受後に選抜することが知れ渡ると優秀なスタッフが物件引渡し前に退職してしまい、正常な運営ができなくなってしまうので注意しましょう。また、退職金の支払いを売主、買主どちらが負担するかよく確認しておいたほうが良いでしょう。曖昧なままにしておくと、引渡し後にスタッフから退職金を支払ってくれと言われるリスクがあるので注意しましょう。

業者取引については、売主が地元での風評悪化を避けるために、譲受後も地元業者との取引を継続することを契約に盛り込むよう依頼してくるケースがあります。もしこの条件に応じるのであれば、スタッフの不正の温床になっていたり、取引価格が割高であったりしていないかどうか契約調印前に確認しておくことが望ましいでしょう。

売上債権の清算有無については、もし月商に比べて売上債権、買入債務が過大であったり、数年間残高に変更がないものがあったりする場合には、簿価と実際の回収・支払額との差額を清算するというという文言を契約に盛り込んでおいた方が良いでしょう。売掛金に計上してあった宿泊代金が、取引先がすでに倒産して回収不能ということがあるからです。ちなみに、宿泊料金の時効は1年なので一昨年以上前から計上されている売掛金はほぼ回収見込みないと考えた方が良いでしょう。

譲渡代金の支払い方法については、株式もしくは物件の引き渡し時一括というのが一般的ですが、交渉できるのであれば一部留保し、数ヶ月後に支払いという条件の方が望ましいでしょう。全て代金を支払ってしまうと、譲受後に瑕疵が見つかっても売主と交渉しにくいからです。

案件の持ち込みルートに注意する

M&Aに関与するのはまっとうな会社ばかりではありません。高額の報酬を狙ってブローカーが介在するケースもあります。厄介なのが複数のブローカーが関与するケースです。口頭伝承に基づく持ち込み情報だと、購入検討に必要な情報が欠落しているばかりか、情報そのものの真偽が疑わしいと言えます。実在しない案件の持ち込みすらあります。このようなブローカーに振り回されないためにルート確認をしっかりと行いましょう。

ルート確認するには、接触してきた仲介会社が売り手と直接つながりがあるか聞き取りにより確認すると良いでしょう。間に複数のブローカーが介在していると、売却に至った経緯や希望する条件、スケジュール、施設の現況などすぐに回答が得られないので察知することができます。

運営権の譲渡に注意する

異業種からホテル旅館業への進出が相次いでいますが、業績低迷から開業してすぐに運営権を手放すオペレーターが増えてきました。このようなケースで注意したいのが賃貸借条件です。家賃や敷金が高すぎたり、短期の定期借家契約だったりとオペレーターに不利な条件が多いと言えます。物件を確保したいために、オーナーの無理な要求を受け入れたことが原因でしょう。

このような物件の運営権を譲り受けると、不利な賃貸条件もそのまま継承することになります。賃貸借契約書がどのようになっているか早い段階で情報開示してもらい、詳細確認することが望ましいでしょう。もし不利な条件であれば賃料などの引き下げ交渉を行うか、現オペレーターが営業を止めるまで静観することが望ましいでしょう。休業になってから商談した方がオーナーとの条件交渉が有利になります。無計画なホテル旅館の尻拭いをさせられないよう注意しましょう。

事前に資金の準備をしておく

買収対象となるホテル旅館の業績が芳しくない場合は、譲渡代金を金融機関から調達するのが難しいケースがあるので注意が必要です。意向表明する前に取引金融機関に対して融資してもらえそうか相談しておくと良いでしょう。

供給過剰が懸念される都市部や観光入り込み客数が落ち込む地域においては、慎重な融資姿勢となっています。対象物件が旧耐震や借地上の建物、区分所有物である場合は担保評価額が低く抑えられるため譲渡代金の一部しか融資が受けられないこともあります。譲受契約締結後にトラブルにならないよう、資金調達が難しいことが予見される場合には自己資金を準備しておくことが望ましいでしょう。

引き継ぎ後の改革プランを練っておく

業績悪化した旅館・ホテルを譲受する場合には、意向表明の段階から具体的な改革プランを練っておきましょう。譲受契約を締結したら、支配人候補者を中心に、予約、調理、購買等の主力部門からメンバーを人選して、改革プランを実行するための統合推進チームを派遣することになります。売主に配慮して既存の体制を残すことは、業績改善に逆効果となるので注意しましょう。赤字原因を突き止め大胆に改革していくことが必要と言えます。

本館との相乗効果が得られるようにする

買収先の選定にあたっては、本館との相乗効果が期待できるか検証しておくことが望ましいでしょう。業態や運営手法の異なる館を買収する場合には、本部機能の統合や食材・メニュー、広告宣伝、人材採用・育成、システムの共通化が可能かどうか検証しておきましょう。バラバラだと経費を二重に負担することになり、また人事異動しにくいために人材難に陥りや少なります。買収先のモニタリングもしにくいため、気づかぬうちに業績悪化していることがあるので注意しましょう。

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