旅館・ホテルを買うときの失敗しない進め方|売り手・仲介に損をさせられないために
旅館・ホテルのM&Aは、情報を持つ者が得をし、持たない者が損をする取引です。
不動産のような相場がないため、案件情報・価格・契約条件のすべてで、売り手や仲介との「知っている量」の差が、そのまま損得につながります。
この記事では、案件の見極めからデューデリジェンス、契約、運営権、買収後の立て直しまで、買い手が損をさせられないための着眼点を、順を追って整理します。
こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。特定の金融機関や仲介会社と利害関係を持たない立場から、買い手の方が損をしないための実務を、これまで見てきた実例をもとに、できるだけ率直にお話しします。
この記事を読むとわかること
- 1旅館・ホテルのM&Aで、買い手が「損をさせられる」構造と、その避け方
- 2案件情報のルートを確認し、怪しいブローカーを見抜く方法
- 3デューデリジェンスで簿外債務・不正・回収不能の売掛金を暴く着眼点
- 4譲渡契約・運営権で、引き渡し後に泣かないための確認事項
- 5買収後の立て直しと、中立的な専門家の使い方
こんなお悩みはありませんか
以下の項目に2つ以上当てはまる方は、本記事を最後までお読みになることをお勧めします。
□ 仲介会社から勧められた案件を、そのまま信じてよいか不安がある
□ 提示された価格や情報が、本当に妥当なのか判断できない
□ デューデリジェンスで、何をどこまで調べればよいか分からない
□ 譲渡契約や運営権の契約に、不利な条件が潜んでいないか心配だ
□ 買収後にどう立て直すか、見通しが立っていない
□ 相談している相手が、本当に自分の味方なのか確信が持てない
▶ 二つ以上当てはまる方は、この記事を最後までお読みいただくことをお勧めします。

旅館・ホテルのM&Aでは、情報を持つ売り手・仲介と、持たない買い手の間に情報の非対称があります。この差が、買い手の損につながります。
まず、買い手がなぜ損をしやすいのか、その構造を理解しておきましょう。
情報を持つ者と、持たない者
M&Aの取引では、売り手と仲介会社が、対象となる宿のことを知り尽くしています。財務の実態、建物の傷み具合、従業員の状況、取引先との関係。これらの情報は、すべて売り手の側にあります。一方、買い手は、提示された資料と、限られた時間の中で得た情報だけで、買うか買わないかを判断しなければなりません。
この情報の非対称、つまり持っている情報の量の差が、買い手の損を生む根本的な原因です。売り手は、都合の悪い情報を積極的には出しません。仲介会社は、取引がまとまって初めて報酬を得るため、案件を前に進めようとする力が働きます。買い手だけが、自分の身を守るために、自ら情報を取りにいかなければならないのです。
買い手の顔ぶれは変わってきた
買い手の顔ぶれは、時代とともに変わってきました。いま旅館・ホテルを買っているのは、旅館・ホテル業を本業とする国内の事業会社、外資系の投資ファンド、そしてアジア系の投資家など、多岐にわたります。とりわけ目立つのが、豊富な資金力を持つ大手の投資ファンドです。傘下に運営会社を持ち、地方の老舗旅館から都市部のビジネスホテル、大型リゾートまで、業績不振や後継者不足で手放された施設を次々と取得し、再生させる動きが活発です。一社で全国に100棟を超えるホテルを保有するファンドもあります。
つまり、買い手の側には、場数を踏んだプロが揃っています。そうした相手と同じ案件を競ったり、あるいは自分が買い手として交渉のテーブルに着いたりするには、買い手自身が、損をしないための目を持つ必要があります。
「良い案件」も「危ない案件」も増えている
後継者がいないために宿を手放す、いわゆる後継者不在型の売却が増えています。これは、買い手にとって悪い話ばかりではありません。しっかりとした宿が、まっとうな理由で売りに出されるケースが増えているからです。
しかし同時に、業績が行き詰まり、簿外の問題を抱えたまま売り急ぐ宿も、市場には混ざっています。良い案件と危ない案件が入り混じっているからこそ、買い手は、その見分けがつく目を持たなければなりません。そして、その目を持つために最も避けたいのが、仲介会社に任せきりにすることです。

青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)
旅館・ホテルのM&Aは、不動産の売買と違って明確な相場がありません。だからこそ、情報を多く持つ側が有利になり、持たない買い手が損をしやすい。この構造を知っておくだけで、身構え方が変わります。
→ まずは入り口、持ち込まれた案件情報をどう見極めるかから始めましょう。
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持ち込まれた案件は、売り手と直接つながっているかを確かめます。複数のブローカーが介在する案件は、情報の欠落や真偽の疑わしさに注意が必要です。
買い手の失敗は、案件と出会った最初の段階から始まっています。持ち込まれた情報を鵜呑みにしないことが、第一歩です。
ブローカーが複数介在する案件に注意
M&Aに関わるのは、まっとうな会社ばかりではありません。高額の報酬を狙って、ブローカーが介在することがあります。とりわけ厄介なのが、複数のブローカーが間に入っているケースです。
口づてに伝わってきた持ち込み情報は、買収を検討するのに必要な情報が欠けているばかりか、情報そのものの真偽すら疑わしいことがあります。中には、実在しない案件の持ち込みすらあります。こうしたブローカーに振り回されると、時間も費用も無駄になります。
ルートを確認する
振り回されないためには、案件のルートを確認することです。接触してきた仲介会社が、売り手と直接つながっているのかを、聞き取りによって確かめましょう。
確かめ方は、難しくありません。売却に至った経緯、売り手が希望する条件、スケジュール、施設の現況。こうしたことを質問してみるのです。間に複数のブローカーが介在していると、これらの問いにすぐ答えられません。即答できるかどうかで、相手が売り手と直接つながっているかを、ある程度察知できます。
相手の素性を制度で確かめる
仲介会社そのものの信頼性を確かめる手段もあります。中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」です。これは、適切なM&Aのための指針を守ると宣言した支援機関を登録する制度で、登録された機関は専用のデータベース(ma-shienkikan.go.jp)で検索できます。接触してきた相手がこの制度に登録しているかは、相手を見極める一つの目安になります。なお、弊社アルファコンサルティングも、この制度の登録機関です。
→ ルートを確認したら、次は買い手最大の防御、デューデリジェンスです。
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デューデリジェンス(買収前の調査)は、買い手にとって最大の防御です。簿外債務・粉飾・回収できない売掛金・現場の不正を、買う前に暴きます。
案件が本物だと確かめたら、次は中身の調査です。これがデューデリジェンス、買収前の調査であり、買い手にとって最大の防御になります。
何を調べるのか
デューデリジェンスでは、財務、法務、労務、物件の状態など、多方面から対象の宿を調べます。中でも、買い手が損をしないために絶対に外せないのが、財務の調査です。表に出ている決算書の数字が、実態を正しく表しているとは限らないからです。
簿外債務と粉飾を見抜く
決算書に載っていない債務を、簿外債務といいます。表からは見えないこの負債を抱えたまま買収すると、買ったあとに思わぬ請求が表に出てきます。財務の調査では、この簿外債務がないかを、丁寧に確かめます。
なお、買収のスキーム(手法)によっては、この簿外債務を引き継がずに済む方法があります。会社そのものを買う株式譲渡ではなく、事業の一部を個別に引き継ぐ事業譲渡という手法です。事務手続きは煩雑になりますが、簿外負債を引き継がないという大きなメリットがあります。どのスキームが適しているかは、専門家に相談して進めるとよいでしょう。
回収できない売掛金に注意
資産として計上されている売掛金が、実は回収できないものだった、ということもあります。月の売上に比べて売掛金が過大であったり、何年も残高が動かない項目があったりする場合は、注意が必要です。売掛金として計上されていた宿泊代金が、取引先がすでに倒産していて回収不能、ということがあるからです。
なお、かつては宿泊料の債権の時効は1年とされていましたが、2020年の民法改正でこの短期の時効は廃止され、現在は原則として5年です。とはいえ、何年も動かない古い売掛金は、時効の問題以前に、相手の事情で実際には回収が難しいことが多いものです。回収できるかどうかは年数だけで判断せず、相手先の状況も含めて確かめましょう。こうした疑わしい債権がある場合は、簿価と実際に回収・支払いできる額との差額を清算する、という取り決めを契約に盛り込んでおくと安心です。
現場に潜む不正
財務の調査は、現場の不正を明らかにすることもあります。実際にあった例を一つ。長く勤めていた売店の担当者が、数百万円を横領していたのです。これは、買収にあたっての財務調査の過程で、初めて発覚しました。幸い、全額を返納させることができ、事なきを得ましたが、気づかぬうちに不正の温床になっている宿は、決して少なくないと思われます。買い手にとって、こうした調査は、自らを守るための欠かせない手続きなのです。
調査は万能ではない ― 「さらりと言われたこと」を聞き逃さない
ここで、誤解のないように申し添えたいことがあります。デューデリジェンスをやれば、すべての問題が防げるわけではありません。むしろ、調査をしていたのに、肝心なことを見逃してしまう。これが、買い手の失敗として、最も多いと言ってもよいでしょう。
なぜ見逃すのか。一つの理由は、重要なことが、軽い調子で伝えられるからです。M&Aの仲介会社は、買い手に対して、良いことを中心に伝える傾向があります。都合の悪いことも、できるだけ問題がないように、過小に見せて伝えます。しかし、まったく伝えないわけではありません。後になって「聞いていない」と問題にされては困るので、重要なことも、重要でないかのような口ぶりで、さらりと一度は触れておくのです。
これが、買い手にとって最も危ういところです。「言うことは言った」という体裁は保たれているので、後から責任を問うのは難しい。それでいて、軽く流されたために、買い手はその重大さに気づけない。冒頭で紹介した借地の話も、まさにこの形でした。「更新がそろそろですが、まあ問題ないでしょう」という、ひとことだったのです。
ですから、買い手の側は、商談の中で売り手や仲介が「さらりと触れたこと」「あえて軽く扱ったこと」にこそ、神経を尖らせる必要があります。借地・借家の条件、係争や近隣とのトラブル、大口取引先との関係、設備の更新時期、許認可の更新。こうした、ひとことで流されがちな事柄は、後で営業の根幹を揺るがすことがあります。気になる言葉が出たら、その場で流さず、書面で裏を取り、必要なら契約に条件として書き込む。中立的な専門家を同席させ、見逃しを防ぐ目を増やすことも有効です。



青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)
「決算書はきれいでした」という買い手ほど、後で簿外債務に泣かされます。きれいに見えることと、問題がないことは、まったく別の話なのです。
→ 簿外を暴いたら、次は契約の諸条件を確認します。
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譲渡契約では、従業員の雇用・業者取引・代金の支払い方法を確認します。引き渡し後に泣かないための要所です。
調査を終え、いよいよ契約という段階でも、気を抜けません。不動産の取引と違い、M&Aの契約には、さまざまな条件が付くことがあります。分厚い契約書を隅々まで読みこなすのは大変ですが、いくつかの点は、最低限よく確認しておきましょう。
従業員の雇用をどうするか
まず、買収後の従業員の雇用です。かつては、いったん全員を解雇したり、同じ条件で雇って1年後に継続するか見極めたり、というケースが多くありました。しかし現在は、人手不足が深刻ですから、原則として雇用を継続することをお勧めします。
ここで注意したいことがあります。買収後に従業員を選抜するつもりだと知れ渡ると、優秀なスタッフが、物件の引き渡し前に辞めてしまうのです。そうなると、正常な運営ができなくなります。また、退職金を売り手と買い手のどちらが負担するのかも、よく確認しておきましょう。曖昧にしておくと、引き渡し後にスタッフから退職金を求められるリスクがあります。
業者取引の継続条件
売り手が、地元での評判が悪くなるのを避けるために、買収後も地元の業者との取引を続けるよう、契約に盛り込むよう求めてくることがあります。もしこの条件に応じるのであれば、その取引が、スタッフの不正の温床になっていないか、取引価格が割高になっていないかを、契約に調印する前に確認しておくことが望ましいでしょう。
譲渡代金の支払い方法
譲渡代金の支払いは、株式や物件の引き渡し時に一括、というのが一般的です。しかし、もし交渉できるのであれば、代金の一部を留保して、数ヶ月後に支払う、という条件のほうが望ましいでしょう。すべての代金を支払ってしまうと、買収後に問題(瑕疵)が見つかっても、売り手と話し合いがしにくくなるからです。一部を留保しておけば、問題が見つかったときに対応の余地が残ります。
→ 物件の買収と並んで注意したいのが、運営権の譲渡です。
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安く見える運営権の譲渡には、不利な賃貸借条件がそのまま付いてきます。契約書を早く開示させ、精査することが欠かせません。
買収には、宿を建物ごと買う場合のほかに、運営する権利だけを引き継ぐ場合があります。この運営権の譲り受けには、特有の罠があります。
なぜ運営権が手放されるのか
近年、異業種から旅館・ホテル業へ参入する動きが相次ぎました。しかし、業績が振るわず、開業してすぐに運営権を手放すオペレーター(運営会社)が増えています。こうして手放された運営権が、買い手のもとに持ち込まれることがあります。
危険なのは賃貸借の条件
ここで注意したいのが、賃貸借の条件です。家賃や敷金が高すぎたり、契約期間の短い定期借家契約だったりと、運営する側に不利な条件が付いていることが多いのです。これは、物件を確保したいばかりに、前のオペレーターが、オーナーの無理な要求を受け入れてしまった結果でしょう。
そして、こうした物件の運営権を譲り受けると、その不利な賃貸条件も、そのまま引き継ぐことになります。表面的な譲渡の条件だけを見て飛びつくと、あとで重い負担に苦しむことになりかねません。
契約書を早く開示させ、精査する
そうならないために、賃貸借契約書がどうなっているかを、早い段階で開示してもらい、詳細を確認することが望ましいでしょう。もし不利な条件であれば、賃料などの引き下げを求めるか、あるいは、前のオペレーターが営業をやめるまで静観するという判断もあります。実は、休業になってから話を進めたほうが、オーナーとの条件の交渉は有利になりやすいのです。無計画なオペレーターの尻拭いをさせられないよう、注意しましょう。
MC契約の紛争のもと
運営を専門会社に委ねるマネジメント・コントラクト契約(MC契約)を引き継ぐ場合も、契約の中身をよく見ておく必要があります。後々の紛争の原因になりやすいのは、報酬や家賃の決め方、中途解約の定め、そして修繕・設備投資の責任をどちらが負うか、という点です。MC契約では、売上やGOP(償却前営業利益に近い概念)の数パーセントを運営会社へ報酬として支払うのが一般的ですが、その条件が妥当かどうかを見極めることが大切です。
→ 買収が成立したら、いよいよ立て直しが始まります。
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ここまで読了:約10分 / 残り約4分


買収は買って終わりではありません。資金は意向表明の前に準備し、改革プランは早くから練っておきます。
買収は、契約をして代金を払えば終わり、というものではありません。買ったあとに、その宿をどう立て直し、価値を出していくか。ここでこそ、買い手の力量が問われます。
資金は、意向表明の前に準備する
その前に、資金の準備について触れておきます。買収しようとする宿の業績が芳しくない場合、譲渡代金を金融機関から調達するのが難しいことがあります。買う意向を表明する前に、取引している金融機関に、融資してもらえそうかを相談しておくとよいでしょう。
とりわけ、供給過剰が懸念される都市部や、観光客が落ち込んでいる地域では、金融機関の融資姿勢は慎重です。対象となる物件が、旧耐震の建物だったり、借地の上に建っていたり、区分所有だったりする場合は、担保としての評価額が低く抑えられ、代金の一部しか融資を受けられないこともあります。資金の調達が難しそうだと予想される場合は、自己資金を準備しておくことが望ましいでしょう。
改革プランは早くから練る
業績が悪化した宿を買う場合は、買う意向を表明する段階から、具体的な改革のプランを練っておきましょう。契約を結んだら、支配人の候補者を中心に、予約・調理・購買といった主力の部門からメンバーを選び、改革を実行するためのチームを送り込むことになります。
このとき、売り手に配慮して既存の体制をそのまま残すことは、業績の改善には逆効果になるので注意しましょう。赤字の原因を突き止め、思い切って改革していくことが必要です。
本館との相乗効果を、具体的に検証する
すでに宿を経営している買い手が、もう一つの宿を買い増す場合には、本館との相乗効果が期待できるかを、よく検証しておくことが望ましいでしょう。業態や運営の手法が異なる宿を買う場合には、本部の機能の統合、食材やメニュー、広告宣伝、人材の採用・育成、システムの共通化が可能かどうかを確かめておきましょう。
これらがバラバラだと、経費を二重に負担することになり、また人事の異動もしにくいために、人材の不足に陥りやすくなります。買った宿の様子も把握しにくく、気づかぬうちに業績が悪化していることがあります。相乗効果への期待は、曖昧なままにせず、各持ち場のシフト表を想定して作ってみるなど、現場の段取りのレベルまで具体的に落とし込んでおくことが大切です。
→ 最後に、この一連の判断を誰とともに進めるかを考えます。
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買い手の利益を守るには、特定の業者と利害関係を持たない、中立的な専門家のセカンドオピニオンが有効です。
ここまで、旅館・ホテルを買う側が損をしないための実務を見てきました。最後に、その進め方を整理します。
第一に、案件情報を鵜呑みにしないことです。持ち込まれた話のルートを確認し、デューデリジェンスで中身を調べ、契約の諸条件をよく確認する。この一つひとつが、買い手自身を守ります。とりわけ、売り手や仲介が軽い調子でさらりと触れたことにこそ、神経を尖らせてください。調査をしていても、重大なことを軽く扱われると、人は見逃してしまうからです。
第二に、地元経済との関係を大切にすることです。M&Aがタブーだった時代は終わりましたが、第三者が買ったことがきっかけで、地域のほかの宿や観光業に迷惑がかかってしまうのは、本末転倒です。買い手・売り手だけでなく、地域の観光業にとってもプラスとなるM&Aを目指したいものです。
第三に、仲介会社に任せきりにせず、中立的な立場の意見を得ることです。仲介会社は、取引をまとめることで報酬を得ます。その立場は、必ずしも買い手の利益とは一致しません。利益相反のない、中立的な立場から、案件の妥当性についてセカンドオピニオンを得ることが、買い手の損を防ぎます。
弊社アルファコンサルティングでは、特定の金融機関・オペレーター・仲介会社と利害関係を持たない独立した立場から、買い手の皆さまをご支援しています。案件が妥当かどうかの検証、投資採算の財務シミュレーション、デューデリジェンスの支援、買収後の改革プランの策定支援まで、依頼者の利益を最優先にお手伝いします。契約や法的な手続きが必要な局面では、弊社が信頼する弁護士と連携して、ご相談にあたります。
買い手に必要なのは、売り手や仲介と同じだけの情報と、それを冷静に読み解く目です。その目を、中立的な専門家とともに持つことが、後悔しない買収への近道になります。
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よくあるご質問
Q仲介会社が出してくる情報は、どこまで信じてよいですか。
A仲介会社は取引をまとめることで報酬を得るため、案件を前に進める力が働きます。提示された情報は出発点として受け止めつつ、案件のルートを確認し、デューデリジェンスで自ら裏を取ることが大切です。中立的な立場のセカンドオピニオンを得ると、より安心です。
Qデューデリジェンスでは、何を調べればよいですか。
A財務・法務・労務・物件の状態を多面的に調べます。とくに買い手を守るうえで重要なのが財務調査で、簿外債務がないか、売掛金が回収可能か、現場に不正がないかを確かめます。専門家とともに進めることをお勧めします。
Qデューデリジェンスをやれば、もう安心ですか。
A残念ながら、調査をしても見逃すことはあります。とくに、重要な事実が軽い調子でさらりと伝えられると、その重大さに気づけません。仲介会社は買い手に良いことを中心に伝え、都合の悪いことは過小に見せがちですが、後で問題にされないよう、ひとことは触れていることが多いものです。商談で軽く流された事柄こそ、その場で流さず書面で裏を取り、必要なら契約条件に書き込むことが大切です。
Q従業員はそのまま引き継げますか。
A人手不足の今は、原則として雇用を継続することをお勧めします。買収後に選抜するつもりだと知れ渡ると、優秀なスタッフが引き渡し前に辞めてしまい、正常な運営ができなくなります。退職金の負担をどちらが持つかも、契約前に明確にしておきましょう。
Q運営権だけを買うのは危険ですか。
A危険というより、注意が必要です。運営権を引き継ぐと、不利な賃貸借条件もそのまま引き継ぐことになります。賃貸借契約書を早めに開示してもらい、家賃や契約期間、修繕の責任などを精査することが欠かせません。不利なら引き下げを求めるか、静観する判断もあります。
Q自己資金は、どれくらい用意すべきですか。
A一概には言えませんが、業績が芳しくない宿や、旧耐震・借地・区分所有といった物件は、融資が一部しか出ないことがあります。買う意向を表明する前に金融機関へ相談し、不足が見込まれるなら自己資金を準備しておくことが望ましいでしょう。
用語の整理
この記事で出てきた主な用語
デューデリジェンス
買収する前に、対象の宿の財務・法務・労務・物件などを調べること。買い手がリスクを見抜くための、最大の防御になります。
事業譲渡と株式譲渡
株式譲渡は会社そのものを買う手法で、簿外債務も引き継ぎます。事業譲渡は事業を個別に引き継ぐ手法で、簿外負債を引き継がずに済む利点があります。
簿外債務
決算書に載っていない隠れた債務。買収後に表に出ると、買い手が思わぬ負担を負います。
運営権(MC契約)
宿を所有せず、運営する権利だけを引き継ぐ形。マネジメント・コントラクト契約では、売上やGOPの数パーセントを運営会社へ報酬として支払います。
PMI
買収後の統合のこと。改革プランの実行や、本館との機能統合を通じて、買った宿の価値を高めていく取り組みを指します。
さいごに
旅館・ホテルを買う側の実務について、案件情報の見極めから、デューデリジェンス、譲渡契約の確認、運営権の引き継ぎ、買収後の立て直しまで、整理してきました。いかがだったでしょうか。
M&Aで損をするのは、売り手だけではありません。情報を持たない買い手は、知らないうちに不利な条件を呑まされ、簿外のリスクを抱え込むことがあります。けれど、正しい手順を踏み、自ら情報を取りにいけば、買い手も自分の身を守れます。次の三つから始めてみてください。
一つめは、案件情報を鵜呑みにしないことです。持ち込まれた話のルートを確かめ、本物の案件かどうかを見極めましょう。二つめは、デューデリジェンスで中身を調べ、軽く流された言葉を聞き逃さないことです。決算書の数字をそのまま信じず、簿外債務・回収不能の売掛金・現場の不正を調べるとともに、売り手や仲介がさらりと触れた一言にこそ注意を払いましょう。三つめは、中立的な立場の専門家に検証してもらうことです。仲介会社に任せきりにせず、利益相反のない目で、案件の妥当性を確かめましょう。
弊社アルファコンサルティングでは、特定の金融機関・オペレーター・仲介会社と利害関係を持たない独立した立場から、買い手の案件検証、投資採算のシミュレーション、デューデリジェンスの支援、買収後の改革プランの策定支援を行っています。法的な手続きが必要な局面では、弊社が信頼する弁護士と連携して、ご相談にあたります。依頼者の利益を最優先に、お手伝いします。
初回相談は無料です。旅館・ホテルの買収を検討し始めた段階で、どうぞお気軽にご相談ください。
読了後の3ステップ ― 今日からできること
1. 案件情報のルートを確かめる
持ち込まれた案件が、売り手と直接つながっているかを確認しましょう。間にブローカーが複数挟まっていないか、希望条件や施設の現況がすぐ出てくるかで、ルートの確かさが見えてきます。
2. 調べるべき項目を書き出す
財務・税務・法務・労務・物件のうち、自分で調べきれる範囲と、専門家の手を借りる範囲を整理しておきましょう。
3. 中立の目で提案を点検する
仲介会社から受けている提案があれば、価格と条件をメモにまとめ、利害関係のない第三者の目で妥当性を確かめてみてください。
上記をふまえて「専門家の目で確かめたい」と思われたら、弊社の初回無料相談をご活用ください。


M&Aで買い手がやられるのは、派手な粉飾より、さらりと軽く伝えられた重大事項を見逃すことです。情報を持つ側と持たない側の差を、中立の立場から埋める。それが、買い手が損をしないための最初の一歩になります。
株式会社アルファコンサルティング 代表 青木康弘あわせて読みたい関連記事
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- 案件情報・ルートの妥当性の確認
- デューデリジェンスの着眼点の整理
- 譲渡契約・運営権の条件の点検
- 買収後の立て直しプランの相談
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