こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。今回はホテル旅館のオーナー(土地建物の保有者)がオペレーター(運営委託会社)を選ぶ際に失敗しないためのチェックポイントについて紹介したいと思います。

私は観光経済新聞で執筆しているコラムで、「ホテル旅館を自社で開発運営するよりも、運営は他社に任せて不動産賃貸業に切り替える方が、融資審査が通りやすい」ことを紹介しました(下記引用文参照)。実際に、高利回りが期待できるホテル旅館に投資したいという不動産業の方は今でも多いです。ホテル旅館業について知識と経験が乏しいために、代わりにオペレーター(運営委託会社)へ運営を依頼することになります。

運営委託は銀行からお金を借りやすくする手段として有効
「あえて運営委託形式にする」:旅館・ホテルを自社で開発・運営するよりも、運営は他社に任せて不動産賃貸業に切り替える方が、融資審査が通りやすいケースもある。前者が旅館・ホテル業の事業性について詳細に審査されるのに対して、後者は地代家賃を安定的に払ってくれる借主さえいれば事業計画を信用してもらいやすいからだ。実際に、旅館・ホテル業に新規参入する法人に対して、運営を他社がやることを条件に、金融機関が開発資金を全額融資するケースは散見される。
(中略)
後継者難に悩む旅館・ホテルオーナーにとって、運営委託によって存続を図るというのは一考の価値がある。子息が異業種に就職したり、結婚したりして現業に関われなくても、不動産オーナーという立場であれば常駐しなくても済むため兼業が可能だ。金融機関からは不動産賃貸業と見てもらえるため、開発リニューアル投資に対しても融資を出してもらいやすい。
直営にこだわりたいという法人は多いと思うが、名を取るよりも実を取ることも時には必要だろう。開発リニューアル融資を円滑に得る手段の一つとして検討することをおすすめしたい。

— 観光経済新聞コラム 「逆境をチャンスに旅館の再生プラン」青木康弘

 

オペレーター(運営委託会社)に騙されるホテル旅館オーナー

ただし、オペレーター(運営委託会社)は玉石混交の世界です。また、業歴の長いオペレーター(運営委託会社)であっても完全に信用することはできません。自社に有利な契約条件を持ちかけてくるからです。ホテル旅館業をやったことがないオーナーは簡単に騙されてしまいます。
「最初に提案されていた話と違う」
「こんなはずじゃなかった、騙された」
と後々苦労することになります。今回は、オペレーター(運営委託会社)の見極め方と失敗しないためのポイントを紹介していきましょう。

 

こんなホテル旅館のオペレーター(運営委託会社)は気をつけよう

賃貸借契約(リース契約)よりもマネジメントコントラクト契約(運営委託契約、MC契約)を求めてくる

ホテル旅館のオーナー企業とオペレーター(運営委託会社)で交わす契約は様々ですが、代表的なものはMC契約(マネジメントコントラクト契約)と賃貸借契約(リース契約)です。MC契約は、オペレーター(運営委託会社)からブランドと支配人、ノウハウを受け入れる一方、売上げやGOP(償却前営業利益に近い概念)の数%をオペレーター(運営委託会社)へ報酬として支払う契約形式です。外資系の著名なホテルチェーンで良く利用される契約形態であり、契約方式自体は何の問題もないですが、能力のないオペレーター(運営委託会社)の「リスク回避」のために利用されることがあります(不動産オーナーとしては大きなリスクを負う)。

なぜかというと、オペレーター(運営委託会社)は売上げ、GOPに対して数%の報酬は確実にもらえるからです。賃貸借契約だとオーナーに家賃を払った後に、運営会社が赤字になってしまうリスクがありますが、MC契約だと業績が良くても悪くても報酬がもらえます。赤字になるリスクは賃貸借契約よりも格段に低くなります。

もちろん、MC契約の場合は当初計画した売上げ、利益を達成できないとオーナーから契約解除を求められることがあります。しかしながら、派遣していた支配人の給与や持ち込んだ備品類の心配だけすれば良く、賃貸借契約のように敷金が帰ってこなかったり、原状回復を求められたりということもありません。夜逃げ同然で逃げることも現実には可能です。

強気の収支計画を提案してくる

高い売上げ、利益を目標とするのは良いことですが、オペレーター(運営委託会社)が契約前の提案として、高い収支計画を提案してきた場合は疑ってかかった方が良いでしょう。例えば、地域水準よりも大幅に高い客室単価や稼働率を提示した場合です。地域ごとの客室単価や稼働率は、観光庁のホームページにある「宿泊旅行統計調査」を見ると最新のデータを知ることができます。また、代表的なホテルの平均客室単価(ADR)や稼働率は、週刊ホテルレストランで定期的に特集されています。ビジネスホテルの地域別の室単価や稼働率は、全日本シティホテル連盟(ビジネスホテルの業界団体)の開示資料をみると良いでしょう。

<<出店地域のホテル稼働率・室単価を調べる方法>>

  • 宿泊旅行統計調査」:観光庁が公表している国内の宿泊旅行の実態等の調査
  • 「全国61都市ホテル客室稼働率速報」:週刊ホテルレストランで毎月公表しているシティホテルの稼働率速報
  • 「客室利用率調査」:全日本シティホテル連盟が毎月公表しているビジネスホテルの稼働率調査。客室単価の調査もしている。インターネットでは公表していないので協会に直接問い合わせると良いでしょう。雑誌「週刊ホテルレストラン」では毎月の公表値を見ることができます。

高い稼働率や室単価が期待できる提案に乗せられて、実際にオープンして見ると散々たる結果だった、と後悔しないように疑ってかかるべきでしょう。

収支計画に必要な費用が盛り込まれていない

収支計画を良く見せる方法として、必要な経費を盛り込んでいないというケースがあります。ホテル旅館を営業するのであれば、24時間の営業体制を築くための人件費、水道光熱費、アメニティ費、清掃外注費、旅行代理店への手数料、リース料など必ず必要となる経費があります。悪質なオペレーター(運営委託会社)の提案にはこのような必要な経費がきちんと盛り込まれていないことがあります。当然のことながら、実際に営業して見ると当初提案を受けた時の想定よりもはるかに利益水準が低いという結果となるリスクがあります。

特に悪質なのが、オペレーター(運営委託会社)に対する運営委託報酬が含まれていないケースです。最初の提案では高い家賃が期待できると糠喜びさせて、実際には別に運営委託報酬を請求するという悪質なケースもあります。

 

長期(20年)の契約を求めてくる

長期の家賃保証や借り上げ保証というのは、アパート業界にもある話ですが、オペレーター(運営委託会社)の実力によって期待収益が大きく異なるホテル旅館の場合は、長期契約は必ずしもオーナーにとって有利な話ではありません。長期の契約を結んでいる場合には、オペレーター(運営委託会社)が怠慢な運営をしていても中途解約することは容易ではありません。

オペレーター(運営委託会社)によっては契約書に一方の申し出だけでは中途解約できないようにするケースもあります。もし長期の契約が前提となる場合には、中途解約や家賃改定の条件はしっかりとチェックすることをお勧めします。

 

修繕や投資区分があいまい

ホテル旅館は他の不動産と比べて、建物付属設備や内装の修繕や再投資が安定した収支を維持するポイントとなりますが、費用負担をオペレーター(運営委託会社)とオーナーのどちらが負担するかとなると揉めるケースが多いです。オーナーにとっては自分が保有している不動産の価値を維持するという動機付けがありますが、オペレーター(運営委託会社)にとっては目先の収入を減らすことになるので、できれば修繕投資はやりたくありません。このような対立をあらかじめ防止するためにも、契約書に資産区分や修繕区分は明示しておいた方が良いでしょう。

今回紹介したチェックポイントは、最近流行しているゲストハウスやホステル、カプセルホテル、キャビン型ホテル、マンションホテル、民泊マンションなどの新しい業態でも、同じトラブルが発生する可能性がありますので参考にしてください。

(追加記事)最近ホテルオーナーより、委託したオペレーターから家賃が支払われない、提示された収益が上がらない、逃げられてしまった、銀行返済に困っているなどの相談を良く受けるようになりました。そのため下記サポート事業を強化しております。相談無料ですので、お心当たりのある会社様はお気軽にご相談ください。

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