ホテル旅館の後継者(若旦那や若女将)が安心して事業承継するためのポイント

後継者として決断力を身につけよう

家業として受け継ぐことが多いホテル旅館は、難しい局面での決断やリーダーシップを経験した人材が後継者となるとは限りません。

止むに止まれぬ事情で、子女や兄弟、親戚、養子が跡継ぎとなるケースは少なくありません。そのような場合に課題となるのが、決断力(意思決定力)をどう身につけるかと言うことです。

もともと、後継者自身が経営者に向いていないと認識している場合には、自分が決めたことに自信を持つことができません。経験も浅いため、明確な判断基準もありません。経営課題に向き合う態度が遠慮がちであり周囲の意見に振り回されてしまいます。

もし、売上げや利益が下がったり、銀行への借入金返済が滞ったりすると、金融機関は経営の細かい所まで口出ししてきます。後継者の自信のなさが透けて見えてしまうため、先代に対する態度よりも厳しくなりがちです。そうすると、後継者は反論もできず、どうして良いか分からなくなって思考停止してしまいます。

金融機関は取引先の再生を願っているばかりではありません。ホテル旅館の再生の見込みがなければ借入金の回収を図ろうとします。味方のときもあるが敵のときもあります。金融機関と方針や意見が食い違うことは度々あります。

関係者の意見が食い違ったときに最終的に決めなければならないのは経営者です。代表者である経営者のみが、意思決定の権限を持っています。ホテル旅館の存否に関わる最終判断をするのは経営者しかいません。決断力は一朝一夕で身につくものではありません。自分の考えをもち、意見をしっかりと伝え、行動が起こせるよう、トレーニングしておきましょう。
 

お互いの価値を認めよう

家庭でも会社でも身内については過小評価しがちです。外では立派な会社の社長と思われても、家庭では子供からだらしのない親父と見えるのです。外では頼もしい後継者と思われても、親にとっては心配な子供のままに見えるのです。

家庭での記憶は親子の絆を強めるものですが、お互いの素性を分かりすぎているために過小評価をしてしまいがちです。先代、後継者ともお互いの価値を客観的に認め合うことが大切です。

 

人脈を引き継ごう

先代が継承すべき重要な財産に人脈があります。先代が作ってきた人間関係は、後継者にとって価値がなく煩わしいものに感じますが、ゼロから作りあげるのは非常に難しいものです。特に地元の政財界や有力企業オーナー、専門家とのつながりは、一般の人が容易に作れるものではありません。

ホテル旅館の経営に関係のない人脈も引き継いだほうが良いでしょう。本業以外のビジネスを始める時に助けになるからです。例えば、食材の調達を行うために自社農場を作ろうと検討する場合、農協や地元農家の人脈があると立ち上げのヒントが得やすいと言えます。医院や介護施設の人脈があると、将来、介護施設や高齢者向け施設への転用を図る際にヒントが得られるでしょう。今の段階で要否を判断せず、名刺交換だけでもしておいたほうが良いでしょう。

 

名刺管理をしよう

先代から引き継いだ人脈をタイミング良く活用するには、名刺管理がポイントとなります。最近では便利な名刺管理アプリがいくつか出ているので紹介しよう。代表的なものとして、「名刺Eight」、「CamCard」等が挙げられます。アプリの中には、名刺をスマホで撮影して登録ボタンを押すと、オペレーターが無料で手打ち登録してくれるものもあり、正確で便利なものとなっています。「社長人脈」や「先代人脈」といったタグを付けておけば管理しやすいでしょう。取得した名刺の総数も管理することができます。先代の人脈を何百人引き継げるか目標を定めるのも良いでしょう。

<<主な名刺管理アプリ>>

  • 名刺エイト:日本国内で主流な名刺管理アプリ。名刺データを手入力しているためミスが少ない。企業として使うならば、sansanというサービスを提供している。
  • CAMCARD:世界で最も利用者の多い名刺アプリ。海外取引の多い方はこちらもおすすめ。

 

オーナー一族以外の役員を作ろう

家業として代々受け継ぐホテル旅館では、役員がオーナーの一族ばかりと言うのは珍しくありません。社長、女将を中心として、両親である会長、大女将、後継者である若旦那や若女将によって役員を占めることがほとんどです。血の繋がりのないプロパー役員中心のホテル旅館は大手を除けばごく少数でしょう。

一族で経営や営業、運営、財務等の広範な専門分野について円滑な対応のできる人材が揃っていれば良いが、残念ながら一族によって得手不得手があります。一族だけで役員を固めてしまうと、どうしても弱点をもったホテル旅館となってしまいます。社交的で強気な一族中心のホテル旅館は、営業面は強いものの借入金は多くなりがちです。内向的で保守的な一族は、借入金で大きな失敗はないものの、商品やサービス面で長年代わり映えのしない旅館となりがちです。

事業承継を円滑にすすめるのでしたら、後継者の弱みとなりやすい分野については、一族以外で専門性のある人材に役員を任せたほうが良いでしょう。特に、総支配人や財務担当役員については一族以外で信用できる人材に任せることをおすすめします。

総支配人が一族以外であれば、後継者が苦手な分野や日常業務の執行についてフォローしてくれます。経験の浅い後継者の良き相談相手となり、旅館・ホテルの運営が問題なくできるでしょう。一族のコミュニケーションを取りやすくなるというメリットもあります。一族で直接議論を交わしたり、業務指示をしたりするのはやりにくいものです。社長から後継者に直接指示や提案しても、親子関係があると感情的に反発されることもありえます。血の繋がりのないプロパー役員経由で後継者に伝えるのであれば、冷静に受け止めてくれるでしょう。

 

後継者の方針・計画を明示しよう

次期社長に就任した後継者が悩みやすいことの一つに、取り組み施策がなかなか行動につながらないことがあります。社長になる前は、意気軒昂として様々な課題を解決したいと考えていても、実際に就任してからスタッフに指示すると思ったように改善成果に結びつかないことに気づきます。幹部社員は新しい取り組みに躊躇し、現場スタッフは無意識のうちに古いやり方を踏襲します。このような状況から脱却するためには、後継者の方針・計画を明示し徹底させることが必要です。

方針や計画は、着任後すぐに発表することが望ましいですが、半年から1年位かけて幹部社員や現場スタッフと人間関係をつくってからでも遅くはありません。大胆な改革をするならば、自分の味方となってくれる人が必要です。個人面談を行い、後継者の考え方に賛同してくれる有能なスタッフに目をつけて改革を手伝ってもらうと良いでしょう。

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