こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。

ホテルや旅館で、動画を使った発信が増えています。YouTubeショートやInstagramのリール、近ごろは中国や東南アジアで人気のRedNote(小紅書)でも、ホテルや旅館の発信が目立つようになりました。静止画より臨場感があり、朝の情景や館内の空気、人の温かさが伝わります。海外のお客様にも、映像なら言葉を超えて届きます。

「動画は難しそう」「インフルエンサーに頼まないと効果がない」「お金がかかる」と感じている方も少なくありません。けれども、いまはスマホと生成AIがあれば、誰でも手軽に作れる時代になりました。私自身、実際にいくつかのAIツールを試してみました。今回はその実感も交えて、お金をかけずに動画を作る方法と、AIに任せてよいこと、人が決めるべきことをお話しします。

ホテル・旅館の動画を始めたい方へ この記事のポイント
  1. まずは一つの場面に絞る。スマホと無料アプリで十分です。→ ポイント①へ
  2. 古い写真を、動く映像によみがえらせる。実際に試した実感を。→ ポイント②へ
  3. 文章から動画も作れる。ただし移り変わりは速い。特定ツールに頼りすぎない。→ ポイント③へ
  4. 動画でも、人が決めるべきことがある。肖像権と、誠実さと、品格。→ ポイント④へ

気になるポイントだけ、つまみ読みでも役立つように作っています。

霧に包まれた森を望む客室露天風呂と、行灯の灯る縁側に椅子を配した和の高級宿の室内
動画なら、朝の情景や館内の空気、人の温かさまで伝わる

ポイント① まずは、一つの場面に絞る

動画を始めるとき、いちばん大事なのは、施設のすべてを見せようとしないことです。一つの場面に絞ります。ホテルなら、朝食ビュッフェのライブキッチンや、バーテンダーの所作、コンシェルジュの笑顔。旅館なら、朝の湯けむりが漂う露天風呂や、女将の一言。印象に残る場面を一つ選ぶと、構成がはっきりし、見る人の記憶にも残ります。

撮影はスマホで十分です。自然光を生かせば、明るく柔らかい映像が撮れます。長く撮る必要はなく、数十秒のカットをいくつか用意すれば、素材としては足ります。

撮ったあとは、無料の編集アプリでまとめます。「CapCut」や「VN Video Editor」といったアプリは操作がやさしく、映像を選ぶだけで音楽やタイトルを自動で入れてくれます。型(テンプレート)を使えば、初めてでも短い時間で見栄えのする一本に仕上がります。

老舗の温泉旅館で観光客に接客する仲居・女将
「女将の一言」「コンシェルジュの笑顔」のような一場面こそ、見る人の記憶に残る
図表1 動画づくり、3つの道 ── 自館に合う入り口を選ぶ
道1 スマホで撮って、AIで仕上げる

・難易度:低 ── 今日から。素材は本物の自館

・編集(字幕・カット・BGM候補)をAIアプリが補助。まずはここから

↓ 慣れてきたら
道2 古い写真を、AIで動かす

・創業当時の外観や白黒の記念写真が「息づく映像」に

・歴史と物語のある施設の発信に向く。本稿の主役

↓ さらに先へ
道3 文章から、AIが動画を生成する

・進化と入れ替わりがもっとも速い領域

・特定のツールに頼りすぎない構えで、試しながら付き合う

順に難易度が上がります。すべてをやる必要はなく、道1だけでも発信は始められます。

ポイント② 古い写真を、動く映像によみがえらせる

近ごろは、写真から動画を作るAIも出てきました。館内の写真を読み込ませると、まるでカメラが動いているような映像に変わります。とくに歴史あるホテルや老舗旅館なら、創業当時の写真や白黒写真を生かすのも一案です。

私が実際に試した実感をお伝えします。中国発の「Kling AI」は、写真から動画を作る品質が高く、とくに白黒写真の復元が見事でした。古い写真の人物が、自然に瞬きをしたり、表情を変えたりします。報道写真を扱う展示でも使われたほどの品質です。GoogleのAIである「Veo」も、写真の高解像度化や、自然な動きの付与が高品質でした。

こうした技術を使えば、館内に残る古い記念写真や、創業当時の外観を、息づく映像としてよみがえらせることができます。「歴史と物語のあるホテル・旅館」として、印象深く発信できるでしょう。

丸窓から緑が望める和室で、畳に座布団が並び障子と木調家具で整えられた落ち着いた客室
趣のある一室や創業当時の写真は、ホテルでも旅館でも、物語を伝える格好の素材になる

自館の魅力は、どの一場面で見せるのがよいでしょうか。ホテルも旅館も、考え方は同じです。

動画・SNS発信の進め方を相談する
図表2 古い写真が、動く映像になるまで ── 5つの手順
1現場素材を選ぶ
創業当時の外観、白黒の記念写真、趣のある一室写っている人の同意と、写真の権利の確認もこの段階で
2AI高解像度化する
古い写真の粗さや傷をAIが補正。ここまでで素材として十分使える
3AI動きを付ける
瞬き・表情・カメラワーク。写真から動画を作るAIに依頼本文で触れたとおり、白黒写真の復元品質は実用水準に達している
4「演出」の線を引く
事実の記録ではなく演出であることを、どう正直に伝えるかを決める。施設の品格に合うかも、ここで判断
5現場サイト・SNSへ
「当時の写真をAIで動かした映像です」の一文を添えて公開

ポイント③ 文章から動画も作れる。ただし、移り変わりは速い

短い文章(プロンプト)を入れるだけで、SNS映えする動画を自動で作るAIもあります。ナレーションや効果音、音楽まで自動で入り、すぐに投稿できる手軽さです。

▸ プロンプトの例(入力)── 文章から宿の動画を作る
# 場面:朝靄のなか、湯けむりの立ちのぼる露天風呂。岩のふちに沿って、カメラがゆっくり横に動く。# 雰囲気:静かで上質。鳥の声と、湯の音だけ。文字は入れない。# 長さ:15秒。SNSの縦型動画で。
送信 ▶
▸ 生成結果(イメージ)
AI数分ほどで、湯けむりがゆらめく15秒の縦型映像が生成されます。場面・雰囲気・カメラの動きを言葉で細かく指定するほど、思い描いた映像に近づきます。

ただ、ここで一つ、正直にお伝えしておきたいことがあります。この分野は、移り変わりがとても速いのです。私が試した当時に評価していたOpenAIの「Sora」は、2026年3月にサービスの終了が発表されました。運用にかかる費用が大きすぎたことが理由とされています。それほど、栄枯盛衰の激しい世界です。

ですから、特定のツールに飛びつくよりも、「一場面に絞る」「自館の個性を映す」という本質を押さえるほうが、ずっと大切です。ツールは、いまなら無料枠のあるVeoやKling AIなど、手元で試せるものから始めれば十分です。流行を追いかける必要はありません。

海外のお客様にも届ける

動画ができたら、SNSへ投稿します。国内のSNSだけでなく、RedNote(小紅書)にも出したいところです。中国・台湾・東南アジアでは、旅行情報をこのアプリで探す人が多く、ホテルや旅館の動画を出せば現地の旅行者に直接届きます。外国語が得意でなくても、映像なら魅力が伝わります。必要なら、外国語のナレーションをAIで付けるのもよいでしょう。

緑の中庭を望む和室で、座布団に座りお茶を楽しみながら向かい合う外国人の二人
映像は言葉を超える。海外のお客様にも、和の魅力がそのまま届く

ポイント④ 動画でも、AIに任せてよいことと、人が決めること

動画づくりでも、AIに任せてよいことと、人が決めるべきことがあります。これは、ハブ記事でお話しした生成AIの線引きと、同じ考え方です。撮った素材の編集、古い写真の高解像度化、SNS用の短い動画の素案づくり、多言語のナレーション。こうした作業は、AIに任せてかまいません。一方で、人が決めるべきことが三つあります。

① 実在の人物、とりわけお客様やスタッフを、本人の同意なく動画化しないこと。肖像権にかかわります。実際、VeoやSoraでは、実在の人物の写真を動画にしようとすると、ポリシー上できないという警告が出ました。AIの側も、ここに一線を引いているのです。
② 古い写真を動かした映像は「演出」であって、事実の記録ではないと、正直に伝えること。歴史を語るときに、見る人を欺いてはいけません。
③ どの映像を世に出すか、施設の品格に合うかを決めるのは、最後は人だということ。

図表3 動画の役割分担 ── どこで線を引くか
生成AIに任せてよい ──「下ごしらえの仕事」
撮った素材の編集古い写真の高解像度化SNS用の短い動画の素案多言語のナレーション
↓ 下書き・素材を渡す
人が決め、責任を負う
本人の同意なく人物を動画化しない(肖像権)「演出」だと正直に伝える世に出すか ── 品格の最終判断

本文で触れたとおり、VeoやSoraも実在の人物の動画化には警告を出します。AIの側も、ここに一線を引いています。

青木康弘青木康弘私自身、白黒の写真を動かしてみて、技術よりも「どこまでやるか」の判断のほうが難しいと感じました。施設の品格は、一度崩すと取り戻せません。

AIは、優秀な下書き役。
世に出すかどうかは、人が決める。

よくある質問

Q. 動画づくりに、特別な機材や費用は要りますか。

A. 要りません。スマホと自然光、無料の編集アプリ(CapCutなど)で十分です。写真から動画を作るAIにも、無料や低コストの枠があります。

Q. どのAIツールを使えばよいですか。

A. この分野は移り変わりが速いので、特定のツールに頼りすぎないことです。一時は注目されたSoraも、2026年に終了しました。いまなら、無料枠のあるVeoやKling AIなどから試すのがよいでしょう。

Q. 古い写真を動かして使っても、問題ありませんか。

A. 自館の写真なら活用できますが、二つ注意があります。実在の人物(お客様や元スタッフ)を無断で動かさないこと。そして、復元した映像は演出であり、事実の記録ではないと、正直に伝えることです。

Q. 何から始めればよいですか。

A. まず、一つの場面に絞ることです。朝食のライブキッチン、バーの所作、朝の露天風呂、女将の一言など、印象に残る場面を一つ。完璧を目指さず、短い動画を一本作ってみることから始めましょう。

さいごに

いかがだったでしょうか。動画づくりは、もう専門家やインフルエンサーだけのものではありません。スマホと生成AIがあれば、誰でも始められます。ただし、ツールは次々と移り変わります。流行を追うよりも、自館の個性を一場面に映すという本質と、人が決めるべき一線さえ押さえておけば、流行のツールが移り変わっても、長く役立ちます。

弊社アルファコンサルティングでは、特定のツールや業者と利害関係を持たない中立の立場から、動画やSNSによる発信の進め方を、ホテル・旅館それぞれの施設に合わせてお手伝いしています。

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