こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。
「口コミの点数は悪くないのに、なぜか予約が伸びない」。経営者の方からよく伺うお悩みです。実際、点数4.2でも予約が伸び悩む宿があり、点数3.9でも稼働率の高い宿が同じ温泉地に存在します。これはどういうことなのでしょうか。
結論から申し上げると、口コミの点数は宿の評価のごく一部分しか測っていないからです。点数だけを見て一喜一憂していると、本当の課題を見落とし、経営判断を誤ることになりかねません。
今回は、生成AIを使って口コミを5つの視点から分析し、点数の裏に隠れた改善ポイントを可視化する方法をご紹介します。パソコンが得意かどうかは関係ありません。スマートフォンで操作できる無料のAIで、今日から試していただける内容です。
- 1口コミの「点数」が実は何を測っていないのか
- 2Web制作会社やOTA代行会社の「合理」が宿の利益とずれる理由
- 3口コミを5つの視点で読み解くAIプロンプト(全文・コピー可)
- 4リピーター像と「競合にあって自館にないもの」の抽出法
- 5AIの分析を自館の打ち手へ翻訳する考え方
点数だけ見ていると、なぜ判断を誤るのか
- 口コミ点数は「過去の平均値」にすぎず、予約に直結する要素の多くを測っていない
- 変えられない要因(立地・泉質)を敗因にしている限り打ち手は出ない
- 問うべきは「なぜ負けているか」ではなく「どこなら勝てるか」
OTA(オンライン旅行予約サイト)の口コミ点数は、お客様が宿を出た後にどう感じたかという過去の平均値にすぎません。確かに大切な指標ではあります。GoogleやOTAの点数は検索順位や表示の優先度、予約成約率に直結し、わずか0.2ポイントの変動でも予約数が大きく変わることがあります。
しかし点数が測っていないものがあります。予約サイトの写真が宿の魅力を正しく伝えているか。検索から予約完了までの導線がスムーズか。価格と提供価値のバランスが取れているか。こうした要素は、点数という一つの数字には現れません。
私がこれまで500件以上の旅館・ホテルのご相談を受けてきた中での所感ですが、競合施設について経営者の方に伺うと「あの宿は立地がいいから」「温泉の質が違うから」という答えが返ってくることが多いものです。間違いではありませんが、立地も泉質も今から変えられません。変えられないものを負けている理由にしている限り、打ち手は永遠に出てきません。問うべきは「なぜ負けているか」ではなく「どこなら勝てるか」です。
この分析は、出入りの業者には頼みにくい
ここで一つ、率直に申し上げておきたいことがあります。この5つの視点による分析は、ふだんお付き合いのある業者に依頼しても、なかなか本当のことが出てこない性質を持っています。業者が不誠実だからではありません。それぞれの立場には、それぞれの合理があり、その合理が必ずしも宿の利益と一致しないからです。
Web制作会社:自社の納品物は否定できない
まずWeb制作会社です。自館のサイトを制作した会社に「このサイトは集客できているか」と尋ねても、仮に集客が悪くても、それをそのまま伝えてはくれないのが普通です。当たり前の話で、サイトに問題があると指摘することは、自分たちが納品した成果物に問題があると認めるのと同じだからです。誰しも自分の仕事を自分から否定はしにくいものです。
もう一つ、現実的な事情があります。サイトの改修は相応に手間がかかります。写真の差し替え、導線の組み替え、文言の磨き上げ——こうした細かな修正一つひとつに、制作会社は工数を割かなければなりません。多数のクライアントを抱える制作会社が、一館ごとの細かい改善要望にいちいち対応しきれないのも無理からぬところです。結果として、サイトは納品された時点の状態のまま、磨き上げられずに時間が過ぎていきます。
OTA運用代行会社:施策が広告宣伝に偏りやすい
次にOTAの運用代行会社です。こちらの課題は、施策が広告宣伝に偏りがちになることです。代行会社の収益は、OTAの運用そのものから生まれます。そして運用する立場からすると、対象を少数の大手OTAに絞った方が、管理の手間が少なく効率的です。さらに大手OTAは、広告宣伝費を積めば積むほど表示が増え、効果が出やすい構造になっています。
この二つを重ねると、代行会社にとって最も合理的なのは、できる限り少数のOTAに絞り、その上で高い広告宣伝費を投下するやり方になります。代行会社の収益を最大化するという観点では、これは理にかなっています。しかし——宿にとってそれが最善かというと、必ずしもそうではありません。本来なら複数の販路を持ち、公式サイトからの直販を育て、広告に頼りすぎない集客の土台をつくった方が、長期的には手数料負担も軽くなり、経営は安定します。代行会社の合理と、宿の利益最大化は、ここで静かにすれ違うのです。
だから、中立の第三者の目が要る
繰り返しますが、これは業者が悪いという話ではありません。Web制作会社もOTA運用代行会社も、それぞれの立場で合理的に動いているだけです。問題は、その合理が宿の利益と一致する保証がどこにもない、ということです。
私どもアルファコンサルティングは、特定のOTAや予約システム、Web制作会社、運営会社と利害関係を持っていません。サイトを作ってもいなければ、OTAの運用で報酬を得てもいません。だからこそ、「このサイトは集客できていない」「この写真は撮り直した方がよい」「OTAを絞って広告費を積む今のやり方は、御館の利益にはつながっていない」といったことを、依頼者の利益だけを基準に率直に申し上げられます。中立であることは、それ自体が一つの価値だと考えています。
以下でご紹介するAIの分析も、この中立性を補ってくれる道具です。AIは、誰が作ったサイトかも、どのOTAと付き合っているかも気にしません。データだけを見て、淡々と弱点を指摘します。経営者がご自身でこの分析を回せるようになることには、大きな意味があります。
口コミ点数が測っていない5つの視点
- 口コミと予約サイトを5つの視点で横断分析する
- 感覚論(なんとなく負けている)を具体論(写真の質が弱い)に変えるのが目的
勝てる急所を見つけるために、口コミと予約サイトを次の5つの視点で分析します。これらをAIに横断的に読み込ませることで、人間の目では見えにくかった構造的な弱点が浮かび上がってきます。
写真と実体験のギャップ
公式サイトやOTAに掲載した写真が訴求している魅力と、実際の宿泊体験との間にどれだけ差があるか。写真が良すぎると期待値が上がりすぎ、かえって低評価につながることもあります。
口コミの質
点数ではなく、書かれている内容の充実度と信頼性です。同じ点数でも、語られている体験の中身がまったく違うことがあります。何が繰り返し褒められ、何が繰り返し惜しまれているか。ここに改善の手がかりがあります。
予約導線
お客様が「泊まりたい」と思ってから予約を完了するまでの流れがスムーズか。導線のどこかに詰まりがあれば、興味を持った方が離脱してしまいます。
値付け
価格と体験価値のバランスです。口コミの中の「この内容でこの値段なら」「少し高く感じた」といった声から、適正価格帯の方向性が見えてきます。
AIによる総合評価
上の4つを統合し、AIに5段階で総合評価させたものです。これにより「なんとなく負けている」という感覚が、「写真の質だけが明らかに弱い」「点数は同じでも語られる内容が薄い」といった具体的な課題に変わります。感覚論を具体論に変えること。これが分析の目的です。
AIに読み込ませるデータを準備する

分析の前に、AIに渡すデータを揃えます。難しい作業ではありません。次の3つを用意してください。
一つ目は、自館の口コミです。OTAやGoogleに投稿された直近200件程度を、コピーするか画面を保存して用意します。二つ目は、競合施設の口コミと予約サイトの画面です。同じ温泉地で意識している宿を1〜2軒選びます。三つ目は、双方の料金表やプラン一覧です。
5つのプロンプトと、見えてくるもの
- 5つのプロンプトはコピーしてそのまま使える
- 「Aホテル」を自館名に置き換えるだけ
- 答えが浅ければ「改善策を具体的に」と重ねて問い、精度を上げる
ここからが実践です。AIに投げる質問文(プロンプト)を5つご紹介します。そのままコピーして使えるよう、施設名を「Aホテル」とした形で記載します。実際に使うときは自館の名称に置き換えてください。
① 写真と実体験のギャップを指摘させる
写真で期待させているのに口コミで触れられていない点、逆に写真に写っていないのに高く評価されている点が浮かび上がります。撮り直すべき写真の優先順位が見えてきます。
② 口コミの質を評価させる
どの口コミが具体的で参考になり、どれが感想止まりかを仕分けてくれます。改善のヒントになる声と、過度に気にしなくてよい声を切り分けられます。
③ 予約導線のリスクと伸び代を洗い出させる
OTAに依存しすぎている構造や、公式サイトからの予約が取りこぼされている箇所など、導線上の弱点が見えてきます。
④ 価格と価値のミスマッチを抽出させる
「割高に感じた」「この内容なら納得」といった声を集約し、値上げできる余地があるのか、逆に価値が価格に追いついていないのかを判断する材料になります。
⑤ 5つの視点を統合して総合評価させる
最後に5つを統合し、今いちばん手をつけるべき課題を1つに絞ってくれます。あれもこれもと手を広げず、最優先の一手から着手できます。
いずれのプロンプトも、出てきた答えが物足りなければ「それぞれの改善策を具体的に教えて」と重ねて問えば、一般論から自館で今すぐ使える具体策へと精度が上がっていきます。何を知りたいか、どう使うつもりかを明確に指定するほど、AIの答えは深くなります。問いが曖昧なままでは、AIも曖昧な答えしか返しません。
リピーターの人物像と「自館にないもの」を炙り出す

5つの視点に加えて、もう一段踏み込む2つの問いがあります。これは自館の口コミと競合の口コミを比べることで、ターゲット像と改善点を同時に見える化する方法です。
リピーター像を抽出する
たとえば花結びの口コミでこの問いを投げると、上のような人物像が浮かび上がります。誰がリピーターになるのかが具体的にわかると、その層に向けた設計ができるようになります。
競合にあって自館にないものを列挙させる
花結びと、体験型コンテンツが充実した競合かすみ亭を比較すると、上のような要素が浮かびます。なぜ新規客がリピートにつながりにくいのか、その手がかりが得られます。
分析結果を打ち手に翻訳する
ここで一つ、大切なことをお伝えします。AIは問題と原因、改善策を見える化してくれますが、最終的に何をどう変えるかを決めるのは経営者ご自身です。
「写真が弱い」という分析が出たとして、何をどう撮り直すかは経営者にしか判断できません。「客室露天風呂が競合との差だ」とわかっても、それを設けるのか、別の強みで勝負するのかは、自館の客層やコンセプト、投資余力に照らして決める話です。
AIが整えてくれた素材を、自館の客層・動線・人員・コンセプトに引き直して設計図に落とし込む。この作業を私は「翻訳力」と呼んでいます。他の宿の成功事例をそのまま真似ても機能しないのは、この翻訳の工程を省いているからです。同じAIの分析を得ても、翻訳できる経営者とそうでない経営者では、数年後に埋めがたい差が生まれます。
感覚で語っていた競合分析を、今月から根拠に基づいた具体論に変えていただければと思います。
おわりに
いかがだったでしょうか。口コミの点数という一つの数字の裏には、写真・口コミの質・予約導線・値付け・総合印象という5つの視点が隠れています。AIを使えば、これらを横断的に分析し、勝てる急所を具体的に特定することができます。
弊社アルファコンサルティングでは、先ほど申し上げたとおり、特定のOTAや予約システム、Web制作会社、運営会社と利害関係を持たない独立した立場から、依頼者の利益を最優先に、口コミ分析や競合分析の進め方をご支援しています。サイトを作った会社にも、OTAの運用を任せている会社にも、それぞれの立場ゆえに言いにくいことを、第三者の目で率直にお伝えできるのが私どもの役割です。観光経済新聞でのコラム連載は17年になり、現場で積み上げてきた知見をもとに、自館に合った改善の設計図づくりをお手伝いします。
「自館の口コミを分析してみたいが、どこから手をつければよいか」「競合との差をどう埋めればよいか」といったご相談に対応しています。初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
お客様に、選ばれ続けるために。
魅力は十分にあるのに、それがうまく届いていない。価格を下げる前に、できることはまだあります。弊社アルファコンサルティングが、お客様に選ばれ続ける打ち手をご一緒に考えます。初回のご相談は無料です。
無料相談はこちら