こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。
ホテル・旅館の売上を伸ばすうえで、販売促進は欠かせない仕事です。けれども、これまで多くの施設では、販促を旅行会社や運用代行会社に任せきりにしてきました。手数料を払い続けても、自館にノウハウは残りません。
生成AIは、この構図を変える切り札になり得ます。マーケティングの専門知識がなくても、販促の企画から文章づくりまで、自社で進められるようになるからです。今回は、生成AIを使った自社販促の進め方を、順を追ってお話しします。私自身、生成AIが登場した2023年から、観光経済新聞の連載でプラン文章やSNS発信へのAI活用を紹介してきました。3年間の実践で見えてきた「自走させる形」を、本稿でお伝えします。
- まずは、年間の販促カレンダーから。繁閑を見える化し、手を打つ時期を決める。→ ポイント①へ
- 宿泊プランの企画を、AIと練る。プロンプトと生成結果の例を紹介。→ ポイント②へ
- 媒体別の文章を、一気に展開する。OTA・SNS・チラシ・検索対策まで。→ ポイント③へ
- 価格の決定と事実の確認は、人が握る。販促の線引き。→ ポイント④へ
気になるポイントだけ、つまみ読みでも役立つように作っています。

・企画も文章も、旅行会社・運用代行会社まかせ
・手数料を払い続けても、ノウハウは自館に残らない
・提案の中身を吟味する力も、育ちにくい
・カレンダーづくり、プラン企画、媒体別の文章を自社で
・ノウハウとデータが、自館に積み上がる
・外部と組むときも、対等に中身を吟味できる
外部との付き合いをやめる、という話ではありません。任せきりにしない力を自館に持つ、という話です。
ポイント① まずは、年間の販促カレンダーから
販促の出発点は、思いつきのプラン企画ではなく、一年の見取り図を持つことです。祝日や連休、地域の祭りやイベントを週単位で整理し、自館の宿泊実績と照らし合わせて、繁忙期と閑散期の傾向をつかみます。
この基礎作業こそ、生成AIの出番です。地域のイベント情報をAIに整理させ、自館の月別の宿泊データを読み込ませれば、季節ごとの需要の傾向が、表やグラフの形ですぐに見えてきます。どの週に手を打つべきか、どの時期は値引きせず強気でよいか。販促の優先順位が、データに基づいて決められるようになります。
| 月 | 地域・世間の動き | 自館の繁閑 | 打ち手の方向 |
|---|---|---|---|
| 2月 | 冬イベント/受験シーズン | 閑散 | 平日プラン強化。早めに企画・発信 |
| 5月 | 大型連休/地域の祭り | 繁忙 | 値引き不要。単価と満足度で勝負 |
| 6月 | 連休明け/梅雨入り | 閑散 | 雨の日企画・記念日需要を掘る |
| 10月 | 行楽シーズン/運動会・学会 | 繁忙 | 直前枠の取りこぼし防止に集中 |
地域のイベント整理と自館データの突き合わせをAIに任せると、この見取り図づくりが短時間で形になります。閑散月こそ、早めの企画が効きます。
ポイント② 宿泊プランの企画を、AIと練る
カレンダーで「手を打つべき時期」が見えたら、次はプランの企画です。ここでも生成AIが力を発揮します。たとえば、次のように依頼してみます。
たたき台が数秒で出てきます。気に入った案を選んで、「③をもっと具体的に」「ターゲットを夫婦に絞って」と続ければ、企画はどんどん磨かれていきます。さらに地域の周年や記念年と組み合わせるよう依頼すれば、地域色のあるプランも提案してくれます。
リゾート型の施設なら、敷地内外のアクティビティを年齢層ごとに整理しておくと、販促の幅が広がります。過去の予約傾向をAIに分析させれば、どの年齢層にどのプログラムが響くのかを、データに基づいて予測することもできます。

自館の販促を、どこから自走させるか。ご一緒に考えます。
自社販促の進め方を相談するポイント③ 媒体別の文章を、一気に展開する
プランが決まったら、それを伝える文章づくりです。ここが、生成AIのもっとも得意とするところです。一つのプランから、OTAの掲載文、自社サイトの案内、SNSの投稿文、チラシやリーフレットの下書きまで、媒体ごとの文章を一気に展開できます。「OTA向けに200字で」「Instagram向けに絵文字も使って」「チラシ用に見出しと本文を分けて」と、媒体の特性を添えて依頼するだけです。
プランの中身・ねらい・ターゲットを、AIに一度だけ伝える
同じ内容を媒体ごとに書き分ける手間が、大きく減ります。インフルエンサーと連携する場合の候補整理にも使えます。
検索対策(SEO)の観点でも、AIは役立ちます。お客様がどんな言葉で検索するかを想定したタイトルや説明文の案を出させれば、自社サイトやプランページの見つかりやすさを高められます。InstagramやTikTokといったショート動画では、構成案づくりやトレンドの言葉の抽出にも使えます。インフルエンサーと連携する場合も、自館の客層と親和性の高い候補の整理に役立ちます。

ポイント④ 販促でも、AIに任せること、人が決めること
ここまでくると、販促のかなりの部分をAIに任せられることがお分かりいただけたと思います。けれども、ここでも線引きがあります。ハブ記事でお話しした考え方と、同じです。
値付けは収益の根幹。AIの「2割引」提案を、損益の見通しなしに採用してはいけません。
一つめは、価格と割引率の決定です。AIは「2割引」と気軽に提案してきますが、その割引が損益に与える影響までは責任を持ちません。値付けは収益の根幹であり、原価と稼働の見通しを踏まえた経営判断です。
二つめは、事実の確認です。AIは、実際には提供していない特典や、事実と異なる表現を、もっともらしく書いてしまうことがあります。誇大な表現は、景品表示の問題にもつながりかねません。世に出す前に、必ず人が確かめます。
三つめは、自館らしさを保つことです。AIの文章は整っていますが、放っておくとどの施設も似た文面になります。自館の言葉づかいや大切にしている価値観は、人が軸を持って守ります。
青木康弘OTAへ支払う手数料は、売上の1割を超えることも珍しくありません。自走できる販促は、その依存度を少しずつ下げていくための経営の打ち手でもあります。言葉と素案づくりは、任せてよい。
値付けと事実、自館らしさは、人が握る。
よくある質問
Q. マーケティングの担当者がいなくても、できますか。
A. できます。むしろ専任を置けない施設にこそ、生成AIは向いています。カレンダーづくりから媒体別の文章まで、一人でも回せる体制を作れます。
Q. 旅行会社や代行会社との付き合いは、やめるべきですか。
A. やめる必要はありません。ただ、任せきりにしないことです。自社で企画と文章の力を持てば、外部と組むときも、対等に中身を吟味できるようになります。
Q. AIが提案した割引率を、そのまま使ってよいですか。
A. いけません。割引は損益に直結します。AIの提案はたたき台とし、原価と稼働の見通しを踏まえて、人が決めてください。
Q. 何から始めればよいですか。
A. 年間の販促カレンダーづくりからです。地域のイベントと自館の実績をAIに整理させ、手を打つべき時期を見える化することが、すべての土台になります。
さいごに
いかがだったでしょうか。販促は、もう外部に任せきりにする仕事ではありません。生成AIを使えば、企画から文章まで、自社で自走できます。手数料を払うだけの販促が、ノウハウが自館に積み上がる販促に変わります。ただし、価格の決定と事実の確認、自館らしさは、人が握り続けること。その線引きさえ守れば、販促の生産性は大きく変わります。
弊社アルファコンサルティングでは、特定のOTAや代行会社と利害関係を持たない中立の立場から、自社販促の体制づくりを、ホテル・旅館それぞれの施設に合わせてお手伝いしています。
初回相談無料です。販促の進め方に迷われている方は、どうぞお気軽にご相談ください。