ホテル旅館から見た「訪日外国人バスツアーの内情」教えます

こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。

訪日外国人客数の増加で日本の観光業は注目されるようになり、連日のようにニュースのテーマとなっていますが、訪日外国人バスツアーの実態を取り上げたものは意外に少ないですよね。ホテル旅館から見た本当の所どうなのでしょうか?今回は、皆さんの疑問に答えるべく、お金にまつわるところを中心にホテル旅館の経営者、運営者に直撃調査しました。

 

訪日外国人バスツアーの宿泊料金は?

ホテルの立地する地域や、それぞれの館の受け入れ姿勢によって異なりますが、平均をみると1泊朝食で6,000円〜8,000円、1泊2食8,000円〜12,000円が相場のようです。ただし、料金表の運用方法は、ホテル旅館によって本当に様々です。年間通じて同一料金という太っ腹のホテル旅館もありますし、閑散期の平日しかこのレートで受け入れないところもあります。閑散期の平日以外は、受け入れを断るか、個人客向けの提示価格と同じ価格を提示するというホテル旅館が多いようですね。ちなみに下表は複数のホテル旅館から実際にヒアリングした料金ですが、業界平均ではありませんし、もっと安い価格で受注している激戦地もあります(1泊朝食付きで3,000円台なんてところも)。

 

ホテル旅館が受け入れを断っても、ツアー代行会社がインターネットの予約サイト経由で5室、10室単位で予約を入れてくることがあります。直前になってドタキャンされ泣き寝入りするホテル旅館も。予約サイトによっては、悪質な予約についてはホテル旅館側の意向で取り消しできる場合もあるので諦めずに交渉した方が良さそうですね。

 

訪日外国人バスツアー向け料金は、日本人客や個人旅行者(FIT)向けにネットエージェント(OTA)などで出している料金よりはかなり低いですが、あえて訪日外国人バスツアーを受け入れるホテル旅館には次のような思惑があるようです。

効率的に客室を埋めることができる

大型バス1台あたり平均30名(26名〜40名)で宿泊してくれるので、客室を埋める効率が良いと言えます。26名の場合は13室、40名の場合は20室、客室を提供することになります(1室2名が基本です)。ただし、定員5名の部屋でも2名しか泊まらないので、老人会や日本人団体客と比べると1室あたりの売上は少なめです。

交通の便が悪くても売ることができる

交通の便が悪く、個人客が行きにくいところにあっても、大型バスの移動なので大丈夫。ホテル旅館が送迎を行う必要もありません。

添乗員がお客の相手をしてくれる

添乗員がチェックインの手続きや部屋割り、館内・客室・レストランの案内などを行なってくれるので、ホテル旅館のスタッフの手間がかかりません。訪日外国人バスツアー専門のホテル旅館は、極めて少人数のスタッフで運営しているケースもあります。

古いホテル旅館でも売れる

ホテル旅館の客室を手配するツアー代行会社(ランドオペレーター)は、評判の良い旅館を手配するというのは第一命題ですが、予算が限られているので、予算内で受け入れしてくれるホテル旅館を重宝します。そのため、古くても安ければ売ることができます。

ホテル旅館にとって訪日外国人バスツアーは薄利多売となりますが、ツアー代行会社(ランドオペレーター)はどうでしょうか?こちらも突撃インタビューしましたが、大手を除けばあまり採算の良い商売とは言えないようです。旅行代理店からツアー手配を依頼される時は赤字受注なんていうランドオペレーターもいます。なんで赤字受注するかというと、ツアーの行程で、お土産物屋に立ち寄ってバックマージンで埋め合わせるからです。このやり方は、日本の旅行会社がヨーロッパのパッケージツアーを企画するときのやり方にとてもよく似ていますね。海外の旅行会社は、日本の旅行業のやり方を真似ているのでしょう。

ちなみに、中小規模のランドオペレーターが力を入れているのは、バスツアーの手配ではなく、グループ旅行インセンティブ旅行です。前者は6名〜8名くらいのグループ客向けにマイクロバスやホテルを手配します。ツアーと違って予算の制約が緩い(要は依頼者の懐具合による)ので、お金持ちの家族ツアーの手配を受ければ採算は良さそうですね。後者は、保険会社の表彰ツアーや、企業の日本視察ツアー、社員旅行などです。予算を潤沢に用意できる、好業績の企業からの依頼ならば採算は取れるでしょう。

 

どの国のツアーを積極的に受け入れているか?

ニュース報道をみると、訪日外国人バスツアー=中国人観光客のイメージが強いですが、実際には様々な国からやって来ます。

 

台湾、中国、香港を中心顧客にしているケースが多いですが、地域やホテル旅館の方針、ツアー会社との親しさによって構成比は様々です。最近では、アセアン諸国(東南アジア)が伸長していて、ホテル旅館によっては訪日外国人客の3割を占めるほどになっています。韓国は訪日外国人総数に占める割合は高いですが、個人旅行者(FIT)が主流であるため、ツアー客は少ないと言えます。

訪日外国人バスツアーの怖いところは、相手国内外の政情不安や方針転換によって急にツアーがキャンセルや大幅減になったりすることです。そのため、複数の国に分散して集客した方がリスク低減になるでしょう。

 

1室あたり人数は?

1室あたり2人が基本です。日本のホテル旅館(特に旅館)だと部屋単位ではなく、宿泊者1人あたりの料金設定としているところが多いので、1室に3名以上入れると割高になってしまい、お客からクレームを受けるケースもあるようです。日本のホテル旅館もそろそろ料金体系を整理する時期に来ているのかもしれませんね。

1室あたりの人数の考え方は、国によって様々ですよね。日本は旅館の習慣の影響からか、三世代1室で過ごすということも珍しくないですが、海外では複数の部屋を取ることが主流のようです。シンガポールだと、2室の使い方が特徴的で、1室が夫婦、もう1室が子供とお手伝いさん。お手伝いさんも旅行に連れて行くなんて、なんとも贅沢ですね。

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