浅草・雷門旅館|ビジネスホテルから日本旅館へ。客室単価3倍を実現した業態転換の舞台裏
浅草のシンボルといえば、誰もが雷門を思い浮かべるでしょう。その雷門の隣に、日本旅館としてリニューアルオープンされたのが「雷門旅館」です。昭和22年に創業し、ビジネスホテルとして40年余り営業されてきた施設を、創業72年を機に全面建て替え。あえて日本旅館という業態を選んだ判断は、業態転換を検討する施設や、これからホテル・旅館業を始める方にとって示唆に富む事例です。弊社(株)アルファコンサルティングは、開業のお手伝いをさせていただきました。取締役・戸部政俊様に、成功の秘訣を伺います。
ビジネスホテル時比
(令和元年12月時点)
(令和元年12月時点)
高単価・少室数へ
この記事の目次
施設概要
| 施設名称 | 雷門旅館 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都台東区浅草1-18-2 |
| 客室数 | 13室 |
| 客室面積 | 17㎡〜72㎡ |
| 付帯施設 | レストラン、スターバックスコーヒー(テナント) |
| webサイト | http://www.kaminarimon.co.jp/ |
原点回帰の決断 ― なぜ再び日本旅館へ
昭和22年に「雷門旅館」として創業、昭和54年に洋式ホテルへ転換。そして創業72年を機に、再び日本旅館へと原点回帰。きっかけは、浅草を訪れる客層の変化と、東京オリンピック開催の決定でした。
ビジネスホテルとして40年ほど雷門の地で経営してきたのですが、浅草を訪れるお客様の層が大きく変わりました。近年は訪日外国人観光客(インバウンド)がたくさんいらっしゃるようになりましたので、観光向けの旅館としてリニューアルオープンしようと考えるようになりました。
折しも、オリンピックが東京で開催されることが決まったこともあり、新しい形の宿を追求しようと決断しました。東京都内に数多くある洋式ホテルではなく、日本の魅力を伝えていきたいと思い、あえて日本旅館という業態にしたのです。

浅草のように客層が大きく変わる立地では、これまでの業態のまま走り続けるか、思い切って転換するかが分かれ道になります。私がご相談を受けてきた中での所感ですが、ビジネスホテルから旅館への転換は、客室単価を引き上げられる一方で、運営・接客・調達のすべてが別物になります。雷門旅館様は、立地のポテンシャルとマーケットの変化を冷静に読み、早い段階から備えられていました。
そうですね。また、洋室を増やしたもう一つの理由は、バリアフリー・ルームとして提供して、さまざまな障がいをお持ちのお客様、ご年配のお客様にぜひご利用いただきたかったからです。当館ホームページからご予約いただけます。


差別化とマーケティング ― スイートと動画活用
下町の和風旅館でありながら、スイートを設けました。62㎡と72㎡の広さがあり、雷門と仲見世を見下ろすこともできる絶好のロケーションです。最高のロケーションを、広々としたお部屋でくつろいでいただけるようこだわりました。
台湾の著名ユーチューバー「Alan Channel」に宿泊体験動画を提供してもらいました。当館の魅力やお部屋の様子、ロケーションがよくお分かりいただけると思いますので、ぜひご覧ください。






インバウンド個人客は、予約前に動画で施設の雰囲気を確かめる傾向が強くあります。海外の発信力あるクリエイターに実際に泊まってもらい、ありのままを見せる手法は、テキストや写真だけでは伝わらない空間の質感を届けられる点で有効です。広告費を抑えながら認知を広げる、小規模施設らしい賢い一手だと思います。
予算とスケジュール ― 余裕を持った備え
正直に申し上げて、銀行から得られた融資枠ぎりぎりで、何とか建設することができました。設計は「べにや無可有(山代温泉)」など旅館設計にも実績のある竹山聖先生に依頼しました。当初の仕様は予算オーバーするものでしたが、設計士の先生の工夫もあり抑えることができました。
もちろんすべて良い材料を使っているのですが、予算内に収まるよう建設会社の協力もあって工事費を抑えられました。当初銀行に提示した予算内に収めることができたのです。銀行に融資を申し込むときに、余裕を持って多めに申し込みしていたのが良かったと考えています。
当初は、元号が平成から令和になる5月のオープンを目指していました。それには間に合いませんでしたが、東京オリンピック開催が決まったときに建て替えようかという話になり、当時から社長(実母)と私とで建て替えの構想をスタートさせ、設計事務所の選定や施設コンセプトの検討に必要な情報収集を重ねて準備してきました。余裕を持ったスケジュールで取り組んだのが良かったのだと思います。


工事費の超過は、ホテル開発で最も多い失敗要因の一つです。雷門旅館様は融資申込時に余裕を持って多めに申請し、設計・施工の協力を得て当初予算内に着地させました。スケジュールも数年前から構想を温め、慌てて進めない体制をとっていました。
雷門旅館様のように、立地のポテンシャルを活かした業態転換には、事業計画・資金調達・採用・マーケティングを一体で設計することが欠かせません。弊社は特定の金融機関や業者と利害関係を持たない独立した立場から、依頼者の利益を最優先にご支援しています。
事業計画・開業支援について相談する最大の壁 ― 銀行融資と人材採用
銀行の理解が得られず、資金調達には大変苦労しました。旅館業にはポテンシャルがあることを地道に説明したのですが、旅館業は水商売だと思われる方が多くて……。テナントとして全棟貸しするなら融資すると言われることもありました。なかなかご理解いただけなかったです。
稼働率が目標どおり達成できるのか、かなり追及されました。銀行には、当館が目指すビジョンやコンセプト、事業上の優位性を懸命に説明しました。そうしてようやく、地元の金融機関が融資してくれることになったのです。
同感です。当館はモダンなスタイルで、親近感を感じてもらえるような設えにするという思いを伝えたら、ようやく分かっていただけました。






旅館業への融資は、宿泊主体型ホテルに比べて金融機関の理解を得にくいのが実情です。稼働率や単価の根拠、立地の優位性を、数字とコンセプトの両面で示せるかが鍵になります。雷門旅館様のように前例のない取り組みでは、事業計画の説得力がそのまま資金調達の成否を左右します。私たちが日頃から、金融機関が求める計画書の水準を意識して資料づくりを支援しているのも、このためです。


人材採用は、非常に苦労したことの一つでした。採用通知を出した方の辞退が相次いだときは精神的に辛かったです。自分たちが否定されたような気持ちになりました。また、求人広告を出した当初は多くの応募がありましたが、途中から応募が途絶え、この調子で開業できるのかと心配の日々でした。
アルファコンサルティングさんが開業支援の一環として採用活動を手伝ってくれるようになってからは応募も増え、何とか開業日までにスタッフを集めることができました。
設計・調達の苦労 ― 小さな旅館ゆえの神経戦
当社が作りたいと思っている旅館を理解してくださる設計事務所を探すのに、非常に苦労しました。さまざまな設計士の先生のもとへ足を運び、作品も自分の目で確かめました。私たちの価値観やイメージに共感していただける設計士を探し歩いたのです。依頼しようとした設計士が実際に手がけた旅館にも泊まりに行きました。こうした活動を通じて、依頼する設計士を決めました。
サイズ選びには苦労しました。小さな旅館なので、配置するもののサイズが違うと運営がかなり非効率になります。調達は慎重に慎重を重ねました。たとえばレストラン会場の家具は、何度も現地に足を運び、メジャーで計って、これなら大丈夫だと確信を持って発注しました。これはかなり苦労したところです。
稼働率の設定について、銀行に理解してもらうのに苦労しました。稼働率の設定とその根拠づけ、そしてスイートがあることを理解してもらうのに苦労しました。東京の下町で前例がなかったものですから。






小規模旅館では、家具一つのサイズが動線や運営効率を左右します。戸部様が現地で何度も採寸されたお話は、規模の小さい施設ほど一つひとつの判断が効いてくることをよく表しています。事業計画も同じで、前例のない立地・業態では、稼働率の根拠を一から積み上げて示す必要があります。
業態転換の成果 ― 単価3倍と客層の変化
単価は大きくアップしました。ビジネスホテルとして営業していた頃と比べて、平均客室単価(ADR)は3倍以上になりました。それに伴い客層も変わりました。以前はビジネスマンが多かったのですが、現在はファミリー層やインバウンドのお客様が中心となっています。これは想定外だったのですが、ウォークイン(飛び込みの当日宿泊)も増えました。


業態転換の核心は、同じ立地で客室単価を引き上げ、客層を入れ替えたことにあります。ビジネス客中心からファミリー・インバウンド中心へ。少室数・高単価のモデルへ移行したことで、1室あたりの収益力が大きく変わりました。ADR3倍という数字は、立地のポテンシャルを業態の転換によって引き出した結果といえます。
アルファコンサルティングの支援内容
多くのことを教えてくださってありがとうございました。まだ一部しか活用できていないのですが、口コミ対策は非常に効果がありました。教えていただいた口コミ対策のテクニックで、口コミ点数は高得点を得ることができました(令和元年12月6日現在、じゃらん総合評価5.0点、楽天総合評価4.8点と高評価を獲得)。
また、OTA広告の選び方も教えてくれて、お金をかけずに集客できています。自社予約ホームページもいろいろとアドバイスをいただき、良いものになりました。SaaSサービス活用による業務効率化の手法も教えてもらい、時間帯ごとの担当者間の引き継ぎ作業が効率的かつ正確にできるようになりました。SNSによる集客も、教えてもらったやり方で今後やっていきたいと思います。
自力で求人広告を出していたときはPV数が伸び悩んでいたのですが、アルファコンサルティングさんにアドバイスをいただいてから、閲覧数も応募数も伸びていきました。集客やSNSマーケティングに関する資料を提供いただき、旅館スタッフにも集客やWeb対策、SNS対策の重要性や具体的な取り組み方を理解してもらえたのも良かったです。
- 宿泊データ分析 ― 客層・年齢・エリアなど定量データに基づく分析と方向性の定義
- レベニューマネジメントに関する助言 ― マーケットデータに基づく料金コントロール
- 人材採用サポート ― 募集要件や求人票の作成、人材選定に関する助言
- OTAマーケティング対策 ― 口コミ対策、広告選定、プラン立案
- SNSマーケティング支援 ― 各種SNSの活用
- 自社予約サイト ― 直販比率の向上、SNSとの連動
- プロジェクトマネジメント支援 ― 円滑に開業するためのサポート
- SaaSサービス活用 ― 業務効率化の推進
今後の目標 ― 創業100年に向けて
当館や浅草・雷門の魅力をお伝えできるプランづくりをしていきたいと思います。アルファコンサルティングさんが教えてくれた他社の取り組み事例などを参考にしながら、魅力的なプランをつくり、売上をさらに伸ばしていきたいと考えています。手応えは感じているので、さらに高い目標を目指していきたいです。
今年で創業72年を迎えることができました。創業100年に向けて、多くの人に愛される旅館を目指していきたいと思います。


- マーケットの変化を先読みして転換時期を決める
- 客層の変化やインバウンド需要、イベント開催など、外部環境の転換点を捉えて建て替え時期を設定したことが奏功しました。
- 立地のポテンシャルを単価設計に反映する
- 雷門の隣という唯一無二の立地を、少室数・高単価のモデルとスイート設置で収益力に変えました。結果としてADRは3倍超に。
- 金融機関には数字とコンセプトの両面で示す
- 前例のない業態・立地では、稼働率の根拠とビジョンを丁寧に示すことが資金調達の成否を分けます。融資枠は余裕を持って申請し、予算内に着地させました。
- 採用・マーケティングは開業前から手を打つ
- 人材採用と口コミ・OTA・SNS対策を開業前から並行して進めたことが、開業直後の高評価(じゃらん5.0・楽天4.8)につながりました。






業態転換は、建物を新しくするだけでは成り立ちません。立地の読み、単価設計、資金調達、採用、集客のすべてが噛み合って初めて成果が出ます。雷門旅館様の事例は、その全体像をよく示していると思います。これから業態転換や新規開業をお考えの方は、どの要素が自社にとって難所になりそうか、早い段階で見極めておくと良いでしょう。
業態転換を検討する方からよくある質問
業態転換・新規開業のご相談について
いかがだったでしょうか。雷門旅館様の事例は、立地のポテンシャルを業態転換によって収益力に変えた好例です。ビジネスホテルから旅館への転換、新規開業、リニューアルをお考えの方にとって、参考になる点が多かったのではないでしょうか。
弊社アルファコンサルティングでは、観光経済新聞コラム連載17年(2009年開始)で培った知見をもとに、事業計画の策定支援、収支シミュレーション、資金調達に向けた資料の作成支援、人材採用、マーケティングまで、開業を一体でご支援しています。特定の金融機関やオペレーター、建設会社などと利害関係を持たない独立した立場から、依頼者の利益を最優先にご提案します。
「自社の立地でも高単価モデルが成り立つのか」「資金調達に向けてどんな計画書が必要か」
そうしたお悩みの段階から、お気軽にご相談ください。


