こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。新しい施設の開業や、大規模なリニューアルを検討するとき、必ず作るのが事業計画です。その計画は、これから先10年、20年、30年と続く返済や投資回収を支える土台になります。ところが、私がこれまで数多く拝見してきた事業計画の中で、「その地域に、10年後・20年後・30年後、どれだけ人が来て、どれだけ人が住んでいるのか」を正面から織り込んだものは、ほとんどありませんでした。本記事では、立地する地域の将来性という、見落とされがちで、しかし経営を根底から左右する論点を、最新の人口推計とともに整理します。
はじめに ― その事業計画は、何年先まで見ていますか

ホテルや旅館の投資回収は、長期化しています。かつては5年、10年で回収できる案件も例外的にありましたが、いま新築では25年から30年、既存施設のリニューアルでも10年から15年を超える計画が珍しくありません。これは、投資の成否が、数十年先のその地域の姿にかかっていることを意味します。
それにもかかわらず、多くの事業計画は足元の業績の延長線で描かれます。融資を受けるための計画はおおむね10年から15年ですが、その期間の先にある市場の縮小、つまり商圏人口がどう変わるかを前提に置いた計画を、私はほとんど見たことがありません。固定費の重い装置産業であるホテル・旅館では、売上計画を保守的に見積もると返済計画が成り立たなくなるため、あえて市場縮小に目を向けない事情もあるのでしょう。
ただ、ここで強調しておきたいのは、これは「悲観のための話」ではないということです。後で詳しく見るように、地域の将来性は一様ではありません。都市部やインバウンドが多く訪れる地域は、影響を受けにくく、過度に悲観する必要はありません。一方、交流人口の乏しい地方は、厳しい現実に向き合う必要があります。大切なのは、自館の立地がどちらなのかを直視し、それに見合った計画を持つことです。
この記事を読むとわかること
- 1なぜ事業計画に「地域の将来性」を織り込む必要があるのか
- 22026年時点の最新推計 ― 地域でこれほど違う将来人口
- 3悲観すべき立地と、そうでない立地の分かれ目
- 4客層別・事業別に見た、需要変化への具体的な備え方
- 5将来人口を売上計画に落とし込む、具体的な計算手法
目次 タップで開閉
本記事の人口データは、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」および総務省「人口推計」によります。これらは2023年から2025年にかけて公表された最新の値です。投資回収や収支に関する記述には、これらの公表値をもとにした私自身の見立てが含まれることを、その都度お断りします。
投資回収の長期化と、地域の将来性
かつて好立地の案件では、5年から10年で投資を回収できることもありました。しかし、建築費の高騰と単価競争の激化により、いまや状況は一変しています。新築のホテルでは投資回収に25年から30年、既存施設のリニューアルでも10年から15年を超える計画が、珍しくなくなりました。
この長期化が意味するのは重大です。回収に30年かかる投資は、30年後にその地域がどうなっているかに、成否が懸かるということです。観光地の旅館であれば、30年後にその地域へどれだけの観光客が訪れているか。都市のシティホテルであれば、その地域にどれだけの人が住み、どれだけの企業が活動しているか。地域の人口動態と経済の活力が、投資の回収可能性を直接左右します。
【図表P-1】投資回収期間の長期化(横軸:回収年数)
(例外的)
リニューアル(現在)
(現在)
建築費高騰と競争激化により回収期間は長期化。30年の回収を見込む投資は、30年後の地域人口を前提に判断する必要がある。年数は一般的な目安。
青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)
私が事業計画を拝見していて最も気になるのは、回収期間が30年なのに、需要の前提が「今のまま横ばい」で組まれている計画です。30年先まで人の数も来訪者も変わらない、という暗黙の前提は、現実にはまず成り立ちません。地域の将来性をどう読むか。この一点を深く捉えている事業者は、実はとても少ない。だからこそ、ここに正面から取り組むことが、競合と差をつける大きな機会にもなると考えています。
▶ 関連記事:事業計画の作り方 ― 融資を引き出す計画の組み立て方
→ では、その地域の将来人口は、実際にどう変わるのか。2026年時点の最新推計を見ていきます。
進捗:第1章/全7章 ■□□□□□□ 14%
2026年の最新推計 ― 地域で違う将来人口


国立社会保障・人口問題研究所が2023年末に公表した最新の地域別推計(令和5年推計)は、衝撃的な地域差を描き出しています。2020年から2050年までの30年間で、総人口が増加するのは東京都(+2.5%)ただ一つ。残る46道府県はすべて減少します。最も減少率が大きい秋田県は-41.6%と、人口が4割以上失われる見通しです。宮城県を除く東北の県を含む11県では、減少率が30%以上に達します。
【図表P-2】2020→2050年 総人口の増減率(地域差)
など
中央の縦線が増減ゼロ。右が減少、左が増加。増加は東京都のみで、地域差が極端に大きい。出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」。
さらに重要なのは、市区町村レベルで見ると差がいっそう鮮明になることです。全国1,728市区町村のうち、95.5%にあたる1,651市区町村で、30年間に総人口が減少します。2050年には557市区町村(32.2%)で高齢化率が50%を超え、住民の半分以上が65歳以上になります。そして68.4%の市区町村では、増え続けると思われがちな高齢者人口さえ、すでに減少局面に入ります。同じ県の中でも、県庁所在地と周辺の町村ではまったく異なる未来が待っているのです。








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「日本全体で人口が減る」という話は、もう誰もが知っています。けれど経営に効いてくるのは、全国平均ではなく、自館が立つその市区町村の数字です。同じ県でも、中心市は微減にとどまる一方、車で30分の町は3割減、という例はいくらでもあります。平均の議論で安心も悲観もせず、自分の足元の数字を見ること。それが出発点です。
なお、ここで挙げた数字は2023年から2025年にかけて公表された最新の推計です。古い計画を使い回している場合は、まず最新の数字に当て直すことをお勧めします。
→ この極端な地域差は、立地によって取るべき戦略がまるで違うことを意味します。次章で整理します。
進捗:第2章/全7章 ■■□□□□□ 28%
悲観すべき立地、そうでない立地


ここが本記事の核心です。人口減少と聞くと、業界全体が一様に縮小するかのように受け取られがちですが、実態はまったく違います。影響の受け方は、立地によって正反対と言えるほど分かれます。
【図表P-3】立地タイプ別に見た、人口減少の影響
影響を受けにくい立地
・東京圏など人口が維持・増加する都市部
・インバウンドが多く訪れる観光地
・国内外の交流人口が厚い地域
→ 過度な悲観は不要。需要を取り込む攻めの投資も検討余地
厳しい現実に向き合うべき立地
・人口減少率の大きい地方
・日本人観光客もインバウンドも乏しい地域
・ビジネス客の流入が少ない地域
→ 慎重な投資判断と、需要縮小を前提とした計画が必要
交流人口とは、その地域を訪れる人(観光客・ビジネス客など)の数。住む人が減っても、訪れる人が多ければ宿泊需要は支えられる。
都市部で人口が減らない地域や、インバウンドが多く訪れる観光地は、商圏人口の減少という逆風を受けにくく、過度に悲観する必要はありません。むしろ需要を取り込む投資が報われやすい立地です。一方で、人口が大きく減り、日本人観光客も外国人観光客もビジネス客も乏しい地方は、厳しい現実に向き合う必要があります。住む人が減り、訪れる人も少なければ、宿泊・宴会・レストランのいずれの需要も先細りしかねません。
ここで、政府の観光立国政策に触れておきます。外国人観光客を増やし、その流れを地方へ広げるという方針は、地方にとって大きな希望です。ただし、それが各地域のホテル・旅館を実際に支え続けられるかは、地域ごとに個別の検証が必要です。政策に期待しつつも、自館の立地に本当にその恩恵が届くのかを、楽観も悲観もせず冷静に見極めることが欠かせません。








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大切なのは、住む人の数(定住人口)と、訪れる人の数(交流人口)を分けて考えることです。地方でも、強い観光資源があってインバウンドや国内客が集まる地域は、住民が減っても宿泊需要は維持できます。逆に、定住人口に依存し、訪れる人の少ない地域は、人口減がそのまま経営の縮小につながります。
かつて金融機関に再生計画を出すとき、周辺環境(市場後背地、交通アクセス、観光資源、観光入り込み客数の変化)を詳しく分析し、外部環境が横ばいか改善傾向にあると示すことが求められた経験があります。外部環境が悪化しているのに売上計画だけ右肩上がりでは、説得力を持ちません。立地の将来性を直視することは、金融機関を納得させるうえでも要になります。
→ 立地の見極めができたら、次は客層別・事業別の具体的な備え方です。まず宿泊・宴会から。
進捗:第3章/全7章 ■■■□□□□ 42%
宿泊・宴会の需要変化への備え
「高齢化社会だから、シニア層を狙えば売上は維持できる」——よく聞く考え方ですが、これは危うい思い込みです。実際には、地域によっては、ターゲットの中心となる世代すら減ってしまうからです。たとえば、ある県では今後15年間で総人口が15%減るなか、60代人口は約3割も減ると見込まれる一方、50代の減少は1割程度にとどまる、といった具合に、同じシニアでも世代で動きが大きく異なります。
対照的に、都市部では特定の世代が大きく増えます。東京都では今後、50代が3割以上増えると見込まれます。これは団塊ジュニア世代が当該年齢に達するためです。子育てが一段落し、時間と経済的なゆとりが生まれるこの層は、宿泊・宴会の有望なターゲットになり得ます。自館の主要顧客がどの地域から来ているかによって、狙うべき世代はまったく変わるのです。
団体向けの宿泊宴会も、内容と規模が変わります。20代から40代の減少により、1件あたりの参加人数(グループサイズ)は小型化します。毎年・隔年で利用してくれる団体も、参加人数は徐々に減っていくでしょう。会場のサイズやレイアウトを変えやすいようリニューアルし、1組あたりの規模縮小を件数の増加でカバーしていく発想が求められます。








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「シニアを狙う」と一口に言っても、その地域でシニアが増えるのか減るのかを確かめないと、戦略になりません。自館の宿泊台帳から、お客さまが主にどの地域・どの世代から来ているかを把握し、その地域でその世代が今後どう増減するかを推計と照らす。この一手間で、的外れな投資を避けられます。会場を大型のまま維持するか、小回りの利く構成に変えるかも、この見極め次第です。
→ 続いて、人口減少の影響が最も大きく出る婚礼と、客層が変わるレストランを見ます。
進捗:第4章/全7章 ■■■■□□□ 57%
婚礼・レストランの客層変化への備え


人口減少の影響が最も大きく表れるのが、婚礼事業です。最新の推計では、2040年代までに若年女性人口(20〜39歳)は、減少幅の大きい自治体で9割以上、減少が緩やかな都市部でも2割以上減るとされます。婚礼の需要は、この層の人数にほぼ直結します。地方都市で婚礼を手がける施設は、自地域の若年女性の将来人口を踏まえて、投資を慎重に判断する必要があります。
注意点
「融資が下りた=計画が実現できる」ではない
競合に対抗するため借入をして独立型チャペルを新設したものの、その後の地域の人口減で施行組数が落ち込み、返済の目処が立たなくなった——こうした例が実際に起きています。金融機関は足元の決算を見て融資を判断するのであって、融資が下りたことは将来の実現を保証するものではありません。
投資プランは、競合対策を考える前に、商圏の施行組数が将来どう変わるかを予想することから始めましょう。若年女性人口の予測、婚姻率、挙式施行率(概ね5〜6割)を組み合わせれば、自地域の将来の挙式件数の概数が見通せます。収支予想の結果、投資回収に7年以上かかるなら、本当に必要な投資か再検討するのが賢明です。
レストラン部門への影響は、立地と客層で分かれます。有名温泉地や、後背地に恵まれた立地では、レストラン売上は宿泊客数に比例する傾向があるため、宿泊需要さえ維持できれば大きくは落ちません。問題は、狭い商圏で地元客向けに営業しているレストランです。地元客向けのランチ・ディナーバイキングは、ファミリー客の利用が多いため、20代から40代が大きく減る地域では売上を落としやすい。メニュー構成やコンセプトが将来の人口変化に耐えうるか、点検が必要です。
ここでも、都市部で増える団塊ジュニア世代が有望です。小規模な法事・慶事の会席、同窓会、自治会の集まりなどのニーズを取り込むため、テーブル間のパーテションや、グループで使える個室を設えるのが有効です。さらに、人口減少地域では地元の飲食店が後継者難で次々に廃業します。その法事・慶事や会合の受け皿になれれば、一定の客数増が見込めます。需要の縮小を嘆くだけでなく、空いた需要を拾う視点が活路になります。








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婚礼は、装置産業の怖さが最も出やすい分野です。チャペルや専用会場は投資が大きく、回収にも時間がかかる。だからこそ、競合との見栄えの勝負に走る前に、そもそもこの地域で何組の結婚式が行われ続けるのかという土台の数字を押さえてほしいのです。需要そのものが細る市場で設備を競っても、消耗戦になります。婚礼を縮小し、宴会や法事・慶事の件数を取りにいくほうが、費用対効果が高い場合も少なくありません。
▶ 関連記事:設備投資の三本柱 ― 投資判断と資金計画
→ では、こうした将来人口を、実際の売上計画にどう落とし込むのか。具体的な計算手法を示します。
進捗:第5章/全7章 ■■■■■□□ 71%
将来人口を売上計画に落とし込む手法


5年以上の事業計画を作るなら、売上計画に将来人口の影響を織り込むことをお勧めします。最も簡便な方法は、現状の宿泊客の世代別構成比に、各世代の人口増減率を掛け合わせるやり方です。手順を具体例で見ていきましょう。
【図表P-4】将来宿泊客数の試算(簡便法・10年後の例)
| 世代 | 現状客数 | 10年後の 人口増減率 | 将来客数 |
|---|---|---|---|
| 30代以下 | 2,000人 | -10% | 1,800人 |
| 40代 | 3,000人 | -20% | 2,400人 |
| 50代 | 2,000人 | +10% | 2,200人 |
| 60代 | 2,000人 | -20% | 1,600人 |
| 70代以上 | 1,000人 | +20% | 1,200人 |
| 合計 | 10,000人 | -8% | 9,200人 |
世代別構成比は宿泊台帳から把握。増減率は社人研の市区町村別推計から、自館の代表的な出発地を参照。この例では人口要因だけで10年後に宿泊客数が8%減と試算できる。数値は計算例。
まず自館の宿泊客の世代別構成比を、宿泊台帳から大まかに把握します。次に、各世代の今後10年の人口増減率を、社人研の市区町村別推計から、自館の代表的な顧客の出発地を参照して当てはめます。これを掛け合わせて合計すれば、将来の宿泊客数が試算できます。上の例では、人口要因だけで10年後に宿泊客数が8%減と見込まれます。もちろん景気や観光需要、自館の競争力でも売上は変わりますが、人口要因による増減を切り分けて把握できるのが、この手法の価値です。








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金融機関などへ提出する売上計画には、人口要因による影響を、この算式を用いて言及しておくことをお勧めします。人口減少は、景気や競争環境の変化と違い、近い将来にほぼ確実に起こることが分かっている数少ない変数です。だからこそ、それを直視して織り込んだ計画は、外部の関係者に対して「この経営者は将来を冷静に見ている」という信頼を与えます。逆に、人口減を無視した右肩上がりの計画は、かえって計画全体の信ぴょう性を損ないます。
進捗:第6章/全7章 ■■■■■■□ 85%
自館の立地の将来性を診断する手順
本記事の内容を、自館で実践する手順としてまとめます。
【図表P-5】立地の将来性 診断の4ステップ
まず宿泊台帳から、主要な顧客がどの地域から来ているか(商圏)を把握します。次に社人研の市区町村別推計で、その商圏の10年後・20年後・30年後の人口を確認します。さらに、定住人口が減っても補える交流人口(観光・ビジネスの来訪)が見込めるかを見極めます。最後に、世代別構成比に増減率を掛けて将来の売上を試算し、投資回収期間と照らします。この4ステップで、自館の立地が「悲観不要」なのか「慎重を要する」のかが、数字で見えてきます。








青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)
この4ステップは、特別なツールがなくても、公表データと自館の宿泊台帳だけで始められます。完璧を目指す必要はありません。大まかでも、将来人口を一度きちんと見据えた事業者と、見ないまま投資した事業者とでは、10年後の景色がまるで変わります。難しいのは、出発地の特定や複数商圏の重ね合わせ、観光需要の見立てといった応用の部分です。そこで手が止まったら、ご相談いただければと思います。
進捗:第7章/全7章 ■■■■■■■ 100%
よくある質問
Q人口が減るなら、地方のホテル・旅館はもう将来性がないのでしょうか?
A一概には言えません。地方でも、強い観光資源があり国内外からの来訪(交流人口)が見込める地域は、住む人が減っても宿泊需要を維持できます。逆に、観光・ビジネスの来訪が乏しく定住人口に依存する地域は厳しくなります。自館がどちらかの見極めが先決です。
Q自館の商圏の将来人口は、どこで調べられますか?
A国立社会保障・人口問題研究所が市区町村別・年齢階級別の将来推計を公表しています(令和5年推計が最新)。まず宿泊台帳から主要な顧客の出発地を把握し、その地域の数字を確認するとよいでしょう。
Q高齢化が進むのだから、シニア向けに特化すれば安泰では?
A地域によっては60代すら減るため、単純なシニア特化は危険です。一方、都市部では団塊ジュニアが50〜60代の厚い層になります。自館の顧客がどの地域から来て、その地域でどの世代が増減するかを確認したうえで狙う世代を決めるべきです。
Q婚礼設備への投資を検討中です。判断の目安はありますか?
Aまず商圏の若年女性人口の将来推計から、施行組数がどう変わるかを予想してください。若年女性人口・婚姻率・挙式施行率(概ね5〜6割)で概算できます。収支予想で投資回収に7年以上かかるなら、本当に必要な投資か再検討するのが賢明です。
Q観光立国でインバウンドが地方に広がれば、人口減はカバーできますか?
A地域によります。政府の方針は心強いものですが、その恩恵が自館の立地に実際に届くかは個別の検証が必要です。すでにインバウンドが多い地域は期待できますが、来訪の少ない地域では政策に過度に頼らず、地域の実情に即した計画を立てるべきです。
Q融資が下りた事業計画なら、将来も安心と考えてよいですか?
Aいいえ。金融機関は主に足元の決算を見て融資を判断します。融資が下りたことは、将来の計画達成を保証するものではありません。実際、融資を受けて投資したものの、地域の人口減で需要が落ち、返済が行き詰まる例があります。将来人口を自ら織り込んだ計画が必要です。
Q将来人口を売上計画に反映する、簡単な方法はありますか?
Aあります。自館顧客の世代別構成比に、出発地の各世代の人口増減率を掛け合わせる簡便法です。これで人口要因による宿泊客数の増減を試算できます。金融機関への計画にこの算式を添えると、将来を直視した計画として説得力が増します。
用語集 ― 商圏・人口に関する主な用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 商圏 | 自館の顧客が住む・訪れる地理的な範囲。宿泊業では主要な顧客の出発地が目安になる |
| 商圏人口 | 商圏内に住む人の数。売上予測の基礎となり、将来推移の把握が重要 |
| 定住人口 | その地域に住んでいる人の数。地元客・近隣需要の土台となる |
| 交流人口 | その地域を訪れる人(観光客・ビジネス客など)の数。定住人口が減っても交流人口が厚ければ宿泊需要を支えられる |
| 市場後背地 | 施設の背後に控える需要の供給源となる地域。後背地の人口・経済が立地の将来性を左右する |
| 将来推計人口 | 社人研が公表する地域別・年齢別の将来人口の推計。市区町村単位で確認できる(令和5年推計が最新) |
| 団塊ジュニア | 1970年代前半生まれの人口の多い世代。今後、都市部で50〜60代の厚い層となり、有望なターゲットになり得る |
さいごに ― 地図の上に、時間軸を重ねる


いかがだったでしょうか。本記事では、事業計画に欠かせないにもかかわらず見落とされがちな「地域の将来性」を、最新の人口推計とともに見てきました。投資回収が30年に及ぶいま、いまの地図ではなく、30年後の地図の上で投資を考える必要があります。そして、その地図は地域ごとに、同じ県の中でさえ、大きく異なります。
繰り返しになりますが、これは悲観のための話ではありません。都市部やインバウンドの厚い地域は、過度に恐れる必要はなく、むしろ攻めの好機があります。一方で、交流人口の乏しい地方は、現実を直視した慎重な計画が要ります。自館がどの立地にあるのかを見極め、それに見合った計画を持つこと。それが、人口減少という確実に訪れる未来に対する、最も誠実な備えです。
アルファコンサルティングは、商圏の将来人口を踏まえた立地の将来性診断、将来人口を織り込んだ売上計画・事業計画の策定支援、投資回収の妥当性検証をお引き受けしています。私たちは特定の金融機関・運営会社・建設会社と利害関係を持たない独立した立場から、特定の業者に都合のよい計画ではなく、依頼者にとって何が最善かという基準で助言します。これまでお引き受けした案件は通算四百六十件を超え、青木は観光経済新聞で2009年からコラムを連載し、各地の宿泊施設が立地と向き合う現場を見続けてきました。
相談の前に ― まず自分の手で確かめる3ステップ
ステップ1:自館の商圏を把握する(所要時間:1〜2時間)
宿泊台帳から、主要な顧客がどの地域から来ているかを大まかに把握します。複数の出発地があれば、上位のものを書き出します。
ステップ2:商圏の将来人口を確認する(所要時間:半日)
社人研の市区町村別推計で、その地域の10年後・20年後・30年後の人口と、世代別の増減を確認します。
ステップ3:将来の売上を試算する(所要時間:半日)
世代別構成比に増減率を掛け合わせ、人口要因による将来の宿泊客数を試算し、投資回収期間と照らします。
この三つを自分の手で進めると、相談の中身が一段と具体的になります。商圏の絞り込みや交流人口の見立てで迷ったところから、ご相談いただいて構いません。
ご相談の多い依頼
- 立地の将来性診断 ― 商圏人口・交流人口の客観評価
- 将来人口を織り込んだ売上計画・事業計画の策定支援
- 投資回収の妥当性検証 ― 回収期間と将来人口の整合性チェック
- 客層・事業構成の見直し支援 ― 需要変化に耐える構成への転換
- 金融機関向け資料づくり ― 将来人口を踏まえた説得力ある計画書
「新規開業やリニューアルを検討しているが、地域の将来性が不安だ」「投資回収が長期になるが、計画は妥当か」「将来人口を踏まえた事業計画を作りたい」――こうしたご相談をお受けしています。ご相談は無料です。
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