働き方改革したら利益が減った!と悩まないための本音で考えるホテル旅館の働き方改革(1)

みなさんこんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。先日、都内某所でホテル旅館経営者向けの勉強会講師を担当させて頂きました。テーマは「働き方改革」。今年4月に働き方改革関連法が施行されたこともあり、参加者の関心も高いと感じました。

もちろん、罰則規定もある法律なので守らなければならないのですが、ホテル旅館経営者の本音としては、「全部守っていたら潰れちゃうよ!」という切実な声も多かったです。何しろコスト増につながる規制ばかりですから、今までと同じやり方をしながら法律を守ろうとすると間違いなく経費アップ、利益ダウンになります。

働き方改革関連法

2019年4月1日より順次施行されている、働き方改革の推進を目的とした、労働関係法を改正するための法律。時間外労働の上限規制や有給休暇取得の義務化、勤務間インターバル制度、同一労働同一賃金など、ホテル旅館業にとって影響の大きいものばかり。特に、時間外労働や有給休暇に関する規制に違反すると、厳しい罰則規定がある。

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そこで、今回コラムでは、利益を減らさずに働き方改革法に対応するためのポイントを解説したいと思います。「ルールは守りたいし、頑張っているスタッフに還元したいけど先立つものがない」と悩む方の参考になれば幸いです。

勤務シフトを見直す

労働時間の短縮に最も効果が高いのは、勤務シフトの見直しです。実は、勤務シフトは多くのホテル旅館の経営者やオーナーが実態を掴むことができておらず、経費垂れ流しになっていると実感します。

本来繁閑に合わせて柔軟に組み立てていかなければならないものですが、忙しい時も暇な時もスタッフ数が変わらなかったり(むしろ、忙しいときにスタッフが少ないことも!)、現場から「人が足りない」と言われるのを恐れてシフト作成者がスタッフを入れすぎたりというのはクライアント先ではよく見る実態です。

これでは無駄な人件費がかかる上に、働き改革も進みません。1日単位、1ヶ月単位、1年単位の3つのステップで、勤務シフトの現状分析と改善に取り組んでみましょう。

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1日単位の勤務シフトは、時間帯別の必要人数を算出することで現状分析が可能です。グラフ化すれば繁閑に応じた要員数を視覚的に把握することができます。繁閑の差が大きいと、人員数が膨らみがちになるので注意が必要です。解決するには、ピーク時間に行なっている仕事の廃止・時間帯変更、マルチシフト化の実施、IoT活用による業務の効率化等に取り組むと良いでしょう。

1ヶ月単位の勤務シフトは、シフト予定表の形式が妥当か、残業時間が過大となっていないか、退勤時間を管理しているか確認することで現状分析が可能です。シフト予定表に出退勤の予定時間が明記されていないと、労働時間に無駄が発生しやすいので注意が必要です。解決するには、月の総労働時間予算の上限設定、仕事の繁閑に合わせた出退勤時間の設定等に取り組むと良いでしょう。

1年単位の勤務シフトは、月ごとの総労働時間と売上(または宿泊客数)のバランスをチェックすることで現状分析が可能です。解決するためには、毎月の売上(または宿泊客数)に合わせた総労働時間の投入、閑散期の集客イベント実施やダイナミックプライシングによる月ごとの売上の平準化等を取り組むと良いでしょう。

仕事の進め方、役割分担を見直すための5つのポイント

勤務シフトの見直しに次いで労働生産性向上に有効なのが、仕事の進め方や役割分担の見直しです。この改革は、特に、大型のホテル旅館、チェーン展開しているホテル旅館では極めて有効な施策となります。著名な大型旅館、チェーンホテルでも非効率さに現場スタッフが悲鳴をあげているのを見ることがあるので、是非取り組んでみましょう。

改革は、①簡素化、②移管、③自動化、④標準化、⑤集約化の5つのステップで進めると良いでしょう。

①簡素化

簡素化とは、不要な業務を捨てることです。例えば、報告書や帳票の削減、売上貢献度の低い顧客へのサービス縮小などが挙げられます。取捨選択にあたっては、経営判断が必要となるケースが少なくないので、役員クラスが関与することが望ましいでしょう。

営業部門が強いホテル旅館は、少しでも多くの売上を獲得するために、無理な受注をしがちです。本当に利益貢献しているか把握するために簡単なABC分析などを行い、労力に対して実入りが少ないならば思い切って「低価格プランを積極的に販売したり、過度な値引き交渉には応じたりすることはやめる」と方針転換することも大切です。

②移管

移管とは、業務を他部署へ移したり、複数人で対応したり、社外にアウトソーシングしたりすることです。例えば、レストランのメニューブック作成や労務管理、レベニューコントロールを本部に移管することなどが挙げられます。特にチェーン展開しているホテル旅館は、本部のサポート体制をいかに構築できるかが生産性向上のポイントになります。慣れない店舗スタッフに仕事を押し付けるのはやめましょう。

全社的にみて生産性向上が期待できる場合は移管した方が良いですが、単なる労働時間の玉突きになるのであれば先に業務の簡素化に取り組みましょう。

③自動化

自動化とは、手順が決まった定型作業を人の手を使わずに処理することです。最近では、RPA(Robotic Process Automation)と呼ばれる自動化ツールの導入が増えてきています。RPAを導入すると、複数のシステムからデータをコピーして、分析作業を行い、レポート出力する作業を自動化することが可能となります。例えば、毎月の業績管理や労務管理、在庫管理、多店舗管理などに必要なレポートを自動出力することが可能となります。

RPAは様々なサービスが提供されていますが、フロント会計システムや予約サイトコントローラー、会計システム、タイムカード、労務管理システムなどの連携が必要になります。導入を検討される場合は、連携可能かよくチェックすると良いでしょう。自社でカスタマイズが難しい場合は、システムに詳しい会社に相談することをお勧めします。もちろん、弊社でも対応可能ですので、もしご質問やご相談があればお気軽にどうぞ。

④標準化

標準化とは、誰が対応しても同じ結果になるよう業務のやり方を均質化することです。例えば、お出迎えからお見送りまで各段階で行うべきサービス内容を細かく決めておきトレーニングすることが挙げられます。ホテル旅館のスタッフ教育は、接客やおもてなしに偏りがちですが、基本的なトレーニングを施した後は、むしろ業務の進め方やサービスの仕組み化の方が重要となります。接客スキルが高いスタッフが揃っていても、業務が標準化されていないと口コミ評価も上がりませんし、人件費コントロールが難しく利益が残りませんので注意が必要です。

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⑤集約化

集約化とは、重複している業務の集約を行うことです。例えば、予約係が料理に関するデータを入力しているのに、別のスタッフが手書きで調理場向けの指示書を作成したり、調理場で独自の帳票を作成したりという無駄を省くことが挙げられます。予約係が一元管理して、適宜レポート出力機能によって情報共有する方が効率的となります。

各部署、担当者で重複する仕事をしているというのは、業歴長いホテル旅館によく見られる問題です。中には、「入力作業をやらないと暇になってしまう(その時間帯に他にやることがない)」、「予約台帳の記入は古いスタッフがやっており、他の人が手出しできない(自分の職を守るために手放さない)」という理由で、問題が放置されていることがあるので決意をもって改革に取り組むことが大切と言えます。

いかがだったでしょうか?ご参考になれば幸いです。続きもアップしてきますので是非見てください。

最近、ホテル旅館の働き方改革についてご相談を受けることが多くなりました。人手不足解消の目的から働き方改革したいけど具体的な進め方がわからないという方はお気軽にご相談ください。

 

働き方改革したら利益が減った!と悩まないための本音で考えるホテル旅館の働き方改革(2)

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