日本のおもてなしは過剰か ― フランスのリゾートに学ぶサービスの「引き算」

こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。

「おもてなしを、どこまでやるべきか」。いま、ホテル・旅館の経営者の間で、これほど真剣に議論されているテーマはありません。日本の宿泊業はサービス過剰ではないかという問いは、もはやタブーではなくなりました。人手不足が深刻化し、現場の担い手が外国人スタッフ中心になり、無人ホテルが高い利益率を上げ、インバウンドのお客様が増えている。こうした変化が重なって、サービスの水準をどこまで保ち、どこを思い切って省くべきか、誰もが頭を悩ませています。

この問いを考えるうえで、示唆に富む事例があります。本記事では、当社のパートナーであり、レベニューマネジメント(価格戦略の立案)やITシステム開発でご協力いただいているデータサイエンティストの生駒清文さんに、フランスのスキーリゾートの運営を寄稿していただきました。徹底的に合理化された欧州のリゾートの姿は、「サービスとは何か」を根本から問い直す材料になります。

まずは生駒さんの寄稿をお読みください。そのうえで、日本のホテル・旅館がそこから何を取り入れられるのかを、私なりの視点で受けて考えます。

生駒清文さん

生駒 清文(いこま きよふみ)さん

東京大学工学部卒、カーネギーメロン大学大学院理学修士。日系証券会社・IBM・KPMG・新生銀行などで数量分析やコンサルティングを行う傍らシステム開発も手がけ、AIはカーネギーメロン在学中から長年取り組む。現在はデータサイエンティストとしてクライアント企業を支援。アルファコンサルティングでは、レベニューマネジメント(価格戦略)やITシステム開発・導入のパートナーとして協力。

この記事を読むとわかること

  • 1フランスのリゾートが「DIY運営」で低価格を実現する仕組み
  • 2なぜ欧州では「サービスは有料」という認識が当たり前なのか
  • 3日本の宿泊業が抱える「サービス過剰」という構造的な課題
  • 4おもてなしのうち「残すべきもの」と「手放せるもの」の見分け方
  • 5自館に合ったサービス水準を設計するための考え方
目次 タップで開閉

→ ここから3つの章は、生駒さんの寄稿です。フランスのリゾートの実際を、生駒さんご自身の言葉でお読みください。

第1章

【寄稿】フランスのリゾートに見る合理性

フランス ヴァルディゼールにて

生駒清文さんの寄稿

ホテル旅館コンサルタントの青木さんにお声がけいただき、寄稿します。データサイエンティストの生駒清文です。AIやITというと高価なイメージがありますが、皆さんがイメージする予算額より「かなり安く」対応できることも多いものです。レベニューマネジメントや使いやすいITシステムづくり、AI・ITを活かした最先端のホテルづくりにご関心があれば、お気軽にご相談ください。

さて、本題です。ヨーロッパ人は誰しも長期のバカンスを楽しんでいるというイメージがあるかと思いますが、その費用はどうやって捻出しているのでしょうか。フランスのスキーリゾートの事例を見てみましょう。

フランスのリゾートでは、ホテルよりもアパート(レジデンス)を利用するのが一般的です。PierreやOdalysなど大規模に展開しているチェーンもあり、ホテルと同じようにwebサイトで簡単に予約できます。日本でも馴染みのあるBooking.comのようなOTA(ネット予約サイト)から予約できるものもあります。もちろん、リゾートマンションの1室を個人オーナーがAirbnbなどで貸し出すケースもあります。

富裕層が利用する5つ星クラスから庶民が利用する2つ星クラスまで、いろいろな種類があります。2〜3つ星クラスであれば1週間利用しても1部屋10万円以下と比較的安く滞在できます。私が使うのもこのクラスです。2〜3人用の客室もありますが、多くは4〜6人用ですから、人数で割ればリーズナブルで、庶民も1週間のスキーバカンスを楽しめるというわけです。そのかわり、合理化も徹底しており、あらゆるものがDIY(Do It Yourself)となっています。

5つ星クラスの室内例(Pierre & vacancesより引用)
2つ星クラスの室内例(Pierre & vacancesより引用)

→ では、その「徹底した合理化」とは具体的にどんなものか。生駒さんの寄稿が続きます。

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第2章

【寄稿】徹底的な合理化運営を行うフランスのリゾート

生駒清文さんの寄稿

まず、1週間単位の滞在が基本なので、チェックイン・チェックアウトは土曜日か日曜日です。それ以外の日が全く駄目というわけではないですが、例外的な扱いとなります(5つ星クラスは日程に柔軟に対応してくれます)。そもそも空港連絡バスも土日以外はほとんど動いていません。逆に土日はロンドン発のユーロスターが乗り入れてきます。施設によっては、チェックアウトの事務処理能力の関係で、チェックアウト時間をあらかじめ予約しておく必要があります。チェックイン時には、宿泊料金とは別に数万円ほどのデポジットを支払います。もちろんカードで構いません。

部屋に入ったら、備品のチェックを自分で行います。客室に置かれた備品リストを見ながら不足がないか確認していくのですが、何がどこにあるかまでは書いていないので、ひとつひとつ探します。不足があればここで申し出ておかないと、自分がなくした・壊したという扱いになり、デポジットから差し引かれます。私の経験では、なにか1つくらいは足りないことが結構ありました。

タオルやシーツなどのリネンは支給されますが(別料金のこともあります)、ロビーで受け取って自分で部屋に持っていき、自分でベッドメイクします

施設内にレストランはありませんが、部屋にキッチンとダイニングがありますから、自炊するか、外のレストランで食事をすることになります。ご存じのように欧州のレストランは高いので、基本は自炊です。1人1食千円に収まるでしょう。スキー場内にもピクニックテーブルや休憩室(という言葉よりはるかにスタイリッシュな施設)がたくさんあり、ランチボックスを持参する人も多いです。リゾート価格ではありますが、スーパーマーケットやパン屋が朝から開いていて、食材調達に不自由しません。フランスらしくワインの品揃えも豊富です。

キッチンに調味料や洗剤の類は一切なく、トイレットペーパーなどの補充もないので、まずはスーパーで食材と一緒に調達します。車で来るフランス人は自宅から持ってくる人も多いです。真冬の外出は大変と思うかもしれませんが、無料のシャトルバスが頻繁に巡回し、高低差のある所にはエレベーターもあります。アーケードも多く、出歩くのは苦になりません。

筆者(生駒さん)調理・撮影

生駒清文さんの寄稿

滞在中は、清掃やリネンの交換はありません。これもDIYです。タオルを洗いたければ自分でコインランドリーへ持っていきます。防犯上、施設スタッフが部屋に入った場合は、誰が何のために入ったというカードが置かれます。

一見すると不便なことが多いように感じますが、逆に考えると、平日はフロント部門・客室部門が最低限の機能でよいわけです。フロントは限られた時間しか開きませんし、ルームサービスもありません。ピザなど外部のデリバリーは使えます。玄関はオートロックで、チェックイン時に暗証番号を教えてもらえるので、いつでも出入りできます。土日は施設スタッフも忙しくなりますが、その分スキー場は宿泊客の移動日で人が少なくなっています。

チェックアウト時は、自分で清掃しなければなりません。食器を洗い、バストイレも洗い流し、部屋は掃除機をかけます。ごみも外の収集場所(巨大なごみ箱がある)に自分で持っていき分別します。チェックアウト時には部屋の状況と備品がチェックされ(結構いい加減だったりしますが)、清掃が不十分と判断されると別途清掃料が発生し、これもデポジットから差し引かれます。問題なければデポジットは返金されます。もちろん富裕層が泊まるところであればそんな必要はありませんが、それらはすべて高額な宿泊料金に反映されています。

このような徹底した合理化によって宿泊料金をリーズナブルに抑え、庶民でも1週間のスキーバカンスを楽しめるようになっているわけです。

また、顧客を富裕層に限定すると、リゾートタウンやスキー場が小規模になってしまいます。フランスのスキー場の麓のリゾートタウンはどこも1シーズンで100万人ほど集客し、リフトで連結されたスキー場を足すと500万人を超えるところもあります。日本は白馬エリア全体でも150万人程度です。これだけの規模になると、さすがに富裕層だけでは埋められないのです。

フランスのリゾートタウン

→ 生駒さんの寄稿は、いよいよ核心の「サービスとは何か」に入ります。

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ここまで読了:約5分 / 残り約10分

第3章

【寄稿】サービスはお金がかかるものという認識

生駒清文さんの寄稿

いまは外国人観光客も富裕層ではなく中間層が中心です。一時期オーストラリア人にブームとなったニセコも、いまやオーストラリア人の中間層は高いといって敬遠するようになりました。富裕層であっても、値段と価値が見合っていないと思われれば二度と来てもらえません。

彼らは過剰なサービスを求めていませんし、細かいことはあまり気にしません。日本ではサービスという言葉が無料の意味で使われますが、海外ではサービスは有料という認識です。無料といっても民間ですから、それは顧客全員が少し割増料金を払っているか、施設スタッフに必要のない負担を強いているかのどちらかです。

割増料金を払っているなら、そんなサービスはいらないから値下げしてくれと考えるのが普通です。外国人は施設スタッフをリスペクトしますし、巡り巡って自分の仕事でも同じように過剰な負担を強いられることにつながるので、スタッフに不要な負担を強いることを求めません。価格以上のサービスを受けたと感じたらチップです。チップは中間搾取なく、直接受け取ったスタッフに渡ります。

逆に、彼らが迷惑に感じるホテルの独自ルールは、国内の商慣習もあるでしょうが、可能なら取り払うべきです。門限があると深夜に空腹でもコンビニに行けないこと、飲食物の持ち込みが禁止なのに自分が食べたい・飲みたいものを提供してくれないことに不満を持ちます。飲食については、日本の宿泊業は外国人の飲食ニーズに対応できていないことが多いと思われます。

日本人の宿泊が休前日に集中してしまうならば、あとの6日を連泊前提で、顧客ニーズにあった合理的なサービスを低価格で提供すれば、効率的に運営しつつ稼働率や収益率を向上させられるのではないかと考えています。

いかがだったでしょうか。皆さんのホテル・旅館運営に少しでも参考になれば幸いです。(寄稿:生駒清文)

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘 青木

生駒さん、ありがとうございました。フランスのリゾートが「サービスを削る」のではなく「お客様と役割を分け合う」ことで低価格と規模を両立している様子が、よく伝わってきます。

ここからは、この寄稿を受けて、日本のホテル・旅館がどこまで取り入れられるのかを、私なりに考えていきます。

→ ここから先は、青木の視点です。生駒さんの指摘を、日本の実務にどう翻訳するかを考えます。

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ここまで読了:約8分 / 残り約7分

第4章

青木の視点 ― 日本の宿泊業は、本当にサービス過剰なのか

清掃を行う旅館スタッフ
要点 生駒さんの指摘する「日本はサービス過剰」という見方は、いま多くの経営者が共有しています。人手不足、担い手の外国人化、無人ホテルの台頭、インバウンドの増加。これらが重なり、おもてなしの水準を見直す議論が現実に高まっています。

「サービス過剰」は、もはやタブーではない

生駒さんの寄稿を読んで、反発を覚えた方もいるかもしれません。「清掃も客にやらせる」「リネンは自分で運ぶ」というフランスの割り切りは、丁寧な対面サービスに誇りを持つ日本の旅館からは、ずいぶん遠い世界に見えます。

しかし、現場で多くの経営者と接していると、「日本の宿泊業はサービス過剰ではないか」という問題意識は、すでに広く共有されていると感じます。これはもう、口にするのがはばかられるタブーではありません。むしろ、どの程度のサービスをすべきかは、経営者の間で常に真剣に議論されているテーマです。

議論を後押しする、四つの変化

なぜいま、この議論が高まっているのか。背景には、四つの構造的な変化があります。

【図表1】サービス水準の見直しを迫る四つの変化

変化現場で起きていること
人手不足の深刻化募集しても人が集まらず、過剰なサービスを支える人員を確保できない
担い手の外国人化現場スタッフが外国人中心になり、暗黙の了解に頼った「察するおもてなし」が伝わりにくい
無人ホテルの台頭省人化した無人・省人ホテルが高い利益率を上げ、サービスの「当たり前」が揺らいでいる
インバウンドの増加過剰なサービスより合理性と分かりやすさを好む外国人客が増えている

これらはいずれも、好むと好まざるとにかかわらず、日本の宿泊業が直面している現実です。おもてなしにこだわり続けるのか、思い切って割り切るのか。生駒さんの言うように、ヨーロッパのホテルのようにDIYやお客様自身の参加を取り入れ、根本的に考え方を変える必要があると考える経営者も、確実に増えています。

ただし、「フランスをそのまま真似る」のは違う

ここで、私の立場をはっきりさせておきます。生駒さんの観察は鋭く、学ぶべき点は多い。しかし、日本の旅館がフランスのリゾートをそのまま真似ればよい、という話ではありません。日本の旅館には、対面のもてなしや、きめ細やかな配慮そのものが価値になっている部分が、確かにあります。それを一律に削れば、自館の強みまで手放しかねません。

大切なのは、すべてのサービスを「過剰か、必要か」で十把一絡げに論じないことです。問うべきは、どのサービスが本当にお客様の価値になっていて、どのサービスが惰性で続いているだけか。この切り分けです。フランスのリゾートは、その切り分けを極端な形で見せてくれる、優れた教材なのです。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘 青木

「おもてなしをやめる」か「続ける」かの二択ではありません。本当に問うべきは、自館のおもてなしの一つひとつが、お客様にとっての価値を生んでいるか、それとも続けること自体が目的になっていないか、です。

次の章で、その見分け方を具体的に考えます。

→ では、「残すおもてなし」と「手放す手間」を、どう見分けるのか。

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ここまで読了:約11分 / 残り約4分

第5章

「残すおもてなし」と「手放す手間」を見分ける

客室に整えられたアメニティ
要点 サービスは「お客様が価値を感じ、対価を払ってもよいと思うもの」と「提供側の都合や惰性で続いているもの」に分けられます。前者は磨き、後者は省人化・DIY化を検討する。この仕分けが、サービス設計の出発点です。

二つの軸で、サービスを棚卸しする

自館のサービスを一度、棚卸ししてみることをお勧めします。判断の軸は二つです。一つはお客様がそのサービスに価値を感じ、対価を払ってもよいと思っているか。もう一つはそのサービスが、自館ならではの強みになっているかです。

この二つの軸で並べると、サービスは大きく四つに分かれます。

【図表2】サービスの棚卸しマトリクス

区分特徴取るべき方針
価値が高く、自館の強み対面の接客、料理、地域案内など、選ばれる理由になっている磨いて、もっと打ち出す
価値は高いが、強みではない清潔さ、快適な寝具など、当然期待される基本品質効率的に、確実に提供する
価値は低いが、続けている誰も気づかない過剰な装飾、使われない備品、形だけの儀礼思い切って省く・簡素化する
手間が大きく、価値が薄いベッドメイク、配膳下膳、チェックイン事務など定型作業省人化・IT化・DIY化を検討

生駒さんの寄稿でフランスがDIY化していたのは、まさに右下の「手間が大きく、価値が薄い」領域です。ベッドメイクや清掃、チェックイン事務は、お客様にとって「誰がやっても結果が同じ」作業であり、そこに人手をかけても選ばれる理由にはなりません。一方、料理や地域の物語を語る接客は、左上の「価値が高く、強み」の領域で、ここは削るどころか磨くべきところです。

日本だからこそ取り入れやすい合理化もある

フランスの全面DIYをそのまま導入する必要はありません。日本の文脈に合わせて、無理なく取り入れられる合理化は多くあります。

  • チェックインの省人化 ― セルフチェックイン端末やスマートロックで、フロントの定型業務を圧縮する
  • 連泊時の清掃の簡素化 ― 連泊のお客様には清掃を任意制にし、希望者だけ対応する(環境配慮としても受け入れられやすい)
  • 配膳・下膳の見直し ― 会場食やビュッフェ、品数の出し方を見直し、サービススタイルそのものを設計し直す
  • 飲食の自由度を上げる ― 持ち込みルールや館内飲食の制限を緩め、外国人客の不満を減らす

重要なのは、これらをやみくもに削るのではなく、価値の仕分けにもとづいて選ぶことです。同じ「清掃の簡素化」でも、高級旅館で一律に導入すれば評価を落としますが、連泊主体のリゾートや素泊まり型のホテルなら歓迎されます。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘 青木

どこを残し、どこを手放すかは、施設によって正反対の答えになります。高級旅館の正解と、連泊型ホテルの正解は違う。だからこそ、一般論ではなく、自館の客層と強みに即して線を引く必要があります。

→ では、その線引きを、自館でどう設計すればよいのか。

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ここまで読了:約13分 / 残り約2分

第6章

自館に合ったサービス水準を、どう設計するか

サービス設計を検討する打ち合わせ
要点 サービス水準の最適解は、立地・客層・業態・人員によって一つひとつ異なります。一般論では決められないからこそ、現状の棚卸しから、省人化・DIY化の設計、連泊型への転換まで、第三者の視点で一緒に組み立てる価値があります。

正解は「ケースバイケース」だからこそ難しい

ここまで読んで、こう思われたかもしれません。「理屈は分かったが、自館では何をどこまで変えればいいのか」。これは当然の疑問です。そして、その答えは、施設ごとにまったく違います

都市部のビジネスホテルなら、チェックインの無人化と清掃の効率化が中心になるでしょう。連泊客の多いリゾートなら、フランス型に近い清掃の簡素化や自炊設備の充実が効きます。高級旅館なら、対面のもてなしは磨きつつ、お客様の目に触れない裏方の作業を徹底的に省人化する、という設計になります。立地・客層・業態・人員、そして自館の強みによって、引くべき線は一つひとつ異なるのです。

だからこそ、この問題は一般論の記事を読むだけでは解けません。自館の数字とお客様の声をもとに、どのサービスが価値を生み、どこに無駄な手間がかかっているかを棚卸しし、優先順位をつけて設計していく作業が必要になります。

当社がお手伝いできること ― 診断から実装まで

アルファコンサルティングでは、このサービス設計の見直しを、診断から実装まで一貫してお手伝いしています。具体的には、次のような流れです。

【図表3】サービス設計見直しの進め方

段階内容
① サービスの棚卸し診断提供中のサービスを価値と手間の二軸で評価し、残すもの・手放すものを仕分ける
② 省人化・DIY化の設計チェックイン・清掃・配膳などの定型業務を、IT導入やオペレーション変更でどこまで効率化できるか設計する
③ 連泊・長期滞在型への転換休前日以外の需要を取り込む商品・料金・運営の設計(生駒さんの指摘する論点)
④ 価格戦略との連動レベニューマネジメントの観点から、サービス水準に見合った料金設計を組み立てる
⑤ 実装とITツールの導入生駒さんと連携し、自館に合ったITシステムを「かなり安く」導入する

特に④の価格戦略や⑤のIT導入は、本記事に寄稿いただいた生駒さんと連携して進められるのが、当社の強みです。AIやITというと身構えてしまいがちですが、生駒さんが寄稿で触れているとおり、想定されるより「かなり安く」導入できることも多いものです。

関連する取り組みもご覧ください

▶ 省人化・無人化を具体的に検討したい方は:無人ホテル・省人化運営の進め方

▶ コスト全般を見直したい方は:ホテル・旅館の経費削減完全ガイド

自館のサービス水準と省人化の線引きを相談したい方へ

初回相談は無料です(オンライン相談可)

▶ サービス設計の見直しを相談する

→ よくある質問にお答えします。

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完読おつかれさまでした。

よくある質問

本記事の内容に関連して、経営者や支配人の方々からよくいただく質問をまとめました。

Q日本の旅館で、フランスのような全面DIYは現実的ですか?

A全面DIYをそのまま導入するのは、多くの日本の旅館には現実的ではありません。日本の旅館は対面のもてなし自体が価値になっている面があるためです。重要なのは全面導入ではなく、価値を生まない定型作業(清掃・配膳・チェックイン事務など)に絞って省人化・簡素化することです。本記事5章の棚卸しマトリクスをご覧ください。

Qサービスを削ると、口コミ評価が下がるのではないですか?

A一律に削れば下がります。鍵は「何を削るか」です。お客様が価値を感じている接客や料理を削れば評価は下がりますが、誰も気づかない過剰な装飾や、お客様の目に触れない裏方作業の効率化は、評価にほとんど影響しません。連泊時の清掃簡素化のように、環境配慮として歓迎される削減もあります。

Qうちは高級旅館です。それでも合理化の余地はありますか?

Aあります。高級旅館でこそ、対面のもてなしは磨きつつ、お客様の目に触れない裏方の作業(清掃動線、配膳の段取り、予約事務など)を徹底的に省人化する余地が大きいものです。表に見えるおもてなしと、見えない手間を切り分けることが、高級旅館の合理化の要点です。

Q人手不足で現場が回りません。何から手をつけるべきですか?

Aまず、現在のサービスを価値と手間の二軸で棚卸しし、「手間が大きく価値が薄い」作業を特定してください。そこが省人化・IT化の最も有力な候補です。やみくもな人員削減ではなく、価値の仕分けにもとづいて優先順位をつけることが、現場の納得感にもつながります。

QITシステムの導入は費用が高そうで踏み切れません。

A寄稿者の生駒さんも触れているとおり、想定される予算より「かなり安く」導入できることが多いものです。大がかりなシステムを一度に入れる必要はなく、チェックインの省人化など効果の大きいところから段階的に導入できます。自館の規模と課題に合った無理のない設計をご提案できます。

Q連泊型への転換は、どんな施設に向いていますか?

Aリゾート立地で、休前日に需要が集中し平日が埋まらない施設に特に向いています。生駒さんの指摘どおり、平日6日を連泊前提の合理的なサービスで埋められれば、稼働率と収益率の両方を改善できます。ただし商品設計・料金設計・運営体制をセットで組み替える必要があり、ここは個別の設計が要ります。

用語集 ― 本記事の主な用語

本記事に登場した用語を、業界経験の浅い方にも分かるようにまとめました。

用語・略称意味
DIY(Do It Yourself)お客様自身が清掃・ベッドメイク・備品準備などを行う運営方式。提供側の人手を抑え、低価格を実現する
レジデンス(アパートメント型施設)キッチン・ダイニングを備えた長期滞在型の宿泊施設。フランスのリゾートで一般的な形態
デポジットチェックイン時に預ける保証金。破損や清掃不備があれば差し引かれ、問題なければ返金される
レベニューマネジメント需要予測にもとづき客室料金を機動的に調整し、収益を最大化する価格戦略の手法
省人化IT導入やオペレーション変更により、サービスの質を保ちつつ必要な人手を減らすこと。無人化はその極端な形
サービスの棚卸し提供中のサービスを「お客様の価値」と「かかる手間」の二軸で評価し、残すもの・手放すものを仕分ける作業

さいごに ― おもてなしを磨き、手間を手放す

いかがだったでしょうか。生駒さんの寄稿が見せてくれたフランスのリゾートは、「サービスを削った冷たい施設」ではありませんでした。お客様と役割を分け合うことで、低価格と規模を両立させた、合理的な仕組みです。サービスは有料であるという前提に立てば、削るところは堂々と削り、残すところに資源を集中できる。その割り切りに、日本の宿泊業が学べる点は多いと感じます。

もう一度申し上げますが、これはおもてなしを否定する話ではありません。日本の旅館の対面のもてなしには、確かに価値があります。問われているのは、そのおもてなしの一つひとつが、本当にお客様の価値を生んでいるかです。磨くべきおもてなしと、惰性で続いているだけの手間を見分け、前者に資源を集中し、後者は思い切って手放す。人手不足とインバウンドの時代に、これは避けて通れない経営判断になっています。

そして、どこを残しどこを手放すかは、施設ごとにまったく違います。立地、客層、業態、人員、そして自館の強み。これらを踏まえて線を引く作業は、一般論では決して解けません。

アルファコンサルティングでは、このサービス設計の見直しを、現状の棚卸し診断から、省人化・DIY化の設計、連泊型への転換、価格戦略との連動、ITツールの実装まで、一貫してお手伝いしています。本記事に寄稿いただいた生駒さんと連携し、レベニューマネジメントの設計や、自館に合ったITシステムの導入も「かなり安く」進められるのが、当社の強みです。メンバーは全員が宿泊施設の役員を経験しており、相談から実行まで担当が変わらないチーム制で進めます。これまでお引き受けした案件は通算四百六十件を超えます。

私たちは、特定のシステム会社や運営会社と利害関係を持たない、独立した立場です。だからこそ、特定の商品を売り込むのではなく、依頼者である施設にとって何が得かを基準に、サービス水準と省人化の線引きを一緒に設計できます。青木は観光経済新聞で2009年から17年にわたってコラムを連載し、業界の構造変化と現場の実態の両方を見てきました。

「自館のサービスが過剰か見極めたい」「省人化・IT化をどこまで進めるべきか相談したい」「連泊型への転換を検討したい」「レベニューマネジメントやITシステムを安く導入したい」——こうしたご相談をお受けしています。ご相談は無料です。

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