旅館・ホテルはUber Eatsなどのデリバリー代行に加入すべきか|手数料の実態と損をしない使い方

こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。

「Uber Eatsや出前館に加盟した方が良いのだろうか」というご質問を、たまにお聞きします。旅館だけでなく、都市部のホテルからも同じご相談をいただきます。手軽に始められ、集客力もありそうに見えるため、迷うのも当然です。

ただ、加入すれば自動的に儲かるというものではありません。まずは、実際にどれだけの費用がかかるのかを正確に把握することから始めましょう。本記事では、手数料の実態から、加入が向く施設・向かない施設、そして加入するなら損をしないための原則までを、特定の業者と利害関係を持たない独立した立場から整理します。

この記事を読むとわかること

  • 1デリバリー代行の手数料は、実際にいくらかかるのか
  • 2なぜ「加入すれば儲かる」とは限らないのか
  • 3それでも代行が意味を持つ場面はどこか
  • 4加入が向く施設・向かない施設
  • 5加入するなら、損をしないための原則

こんなお悩みはありませんか

□ Uber Eatsや出前館に加盟すべきか迷っている

□ 手数料がどれだけかかるのか把握できていない

□ 加入したが、思ったほど利益が残らない

□ 高単価の料理を代行で売ってよいか分からない

□ 代行と自社配達、どちらがよいか判断できない

▶ 本記事で、代行を「使うべきか・どう使うか」の判断基準を手に入れましょう。

第1章
デリバリー代行の手数料は、実際にいくらかかるのか
デリバリー代行の手数料を把握する
まず実際の費用を正確に押さえる
要点

主要なデリバリー代行の販売手数料は売上の35%前後(税別)が標準です。出前館のようにサービス手数料と配達代行手数料に分かれ、自社配達で配達分を抑えられる仕組みもあります。初期費用は5万円程度かかります。

主要なデリバリー代行サービス(Uber Eats、出前館、menuなど)の販売手数料は、いずれも売上の35%前後(税別)が標準です。たとえば1万円の注文があれば、3,500円ほどがプラットフォームに支払われ、手元に残るのは6,500円ほど、という計算になります。

この35%の中身は、サービスによって構造が異なります。たとえば出前館では、サービス手数料(おおむね10%)と配達代行手数料(おおむね25%)に分かれており、自店のスタッフが配達を担えば、配達代行分を抑えることができます。この仕組みは、後ほど述べる「損をしない使い方」の鍵になります。

手数料以外にも、出店時の初期費用(注文用タブレットの貸出、メニュー撮影、受付システムの設定などで通常5万円程度)や、料理を入れる包装の費用がかかります。これらを合わせて、収支を考える必要があります。

→ では、この手数料が利益にどう効くのか。次章で「儲かるとは限らない」構造を図とともに見ます。

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ここまで読了:約2分 / 残り約9分

第2章
なぜ「加入すれば儲かる」とは限らないのか
手数料が利益を削る構造
手数料35%が薄い利益をさらに削る
要点

加入すれば儲かるとは限りません。手数料35%が、もともと薄い利益をさらに削り、価格にも転嫁しきれません。顧客もブランドも自館に残らず、寡占で交渉余地も狭まっています。

手数料が、もともと薄い利益をさらに削る

料理の原価率は、一般に30〜35%程度です。ここに手数料の35%が加われば、原価と手数料だけで売上の7割前後が消えてしまいます。残った3割から人件費や容器代、諸経費を支払うと、利益はごくわずかか、場合によっては赤字になります。質を売りにする旅館・ホテルの料理は原価額が高めですから、この影響を特に強く受けます。下の図は、提供形態ごとに施設へ上乗せされる利益を比べたものです。代行は手数料の分だけ、利益が大きく削られているのが分かります。

料理1品(売価1,000円)を「追加で」売ったときの利益

厨房や建物の費用は、宿泊事業のためにすでに支払っています。料理を1品「追加で」作って売るとき、新たに増えるのは食材費や容器代などだけです。その増える費用だけを売価1,000円から引いて、施設にいくら利益が上乗せされるかを比べました。
上乗せ
¥450
上乗せ利益 450
人件費ほか 250
食材 300
上乗せ
¥500
上乗せ利益 500
配達 80
食材 300
上乗せ
¥250
上乗せ利益 250
手数料 350
食材 300
自社レストラン
(店内提供)
自社で仕出し
(宅配)
代行サービス
(Uber Eats等)
▲ 網かけは厨房・建物などの固定費。宿泊事業と分け合うため、追加で売っても増えません。
食材 容器・包材 配達 人件費ほか 手数料 上乗せ利益

※ 数値は構造を示すための仮定値です。
※ 自社仕出しは手数料も接客も不要で、上乗せ利益が最も厚くなります。代行サービスは手数料35%が利益を大きく削ります。

手数料を、価格に転嫁しきれない

以前は、手数料の分を販売価格に上乗せし、店頭価格の1.5倍ほどで売るのが一般的でした。しかし近年は、注文者が使いやすいよう、店頭価格との差を一定の範囲内に抑えるよう求める流れが強まっています。手数料を価格に乗せきれず、乗せれば「割高だ」と敬遠され、乗せなければ赤字になる、という板挟みに陥りやすくなっています。

顧客とブランドが、自館の資産にならない

代行を通じた注文では、お客さまの情報はプラットフォーム側に蓄積され、自館の財産にはなりません。リピートもアプリの中で完結し、宿のファンづくりにはつながりにくいのが実情です。さらに、2026年には海外大手の一社が日本市場から撤退し、サービスの寡占が進みました。競合が減ったことで加盟店の交渉余地はむしろ狭まり、価格のルールや手数料はプラットフォーム側の方針に左右されます。収益の主導権を相手に委ねる形になる点は、理解しておくべきです。

なお、原価率と限界利益の考え方については、当サイトの料飲の原価率の記事で詳しく解説しています。

→ ここまで慎重論を述べました。とはいえ代行が一律に悪いわけではありません。次章で意味を持つ場面を見ます。

進捗:第2章/全6章 ■■■□□□□□□□ 33%

ここまで読了:約4分 / 残り約7分

第3章
それでも、代行が意味を持つ場面はある
代行が有効に働く場面
目的を絞れば代行は有効に使える
要点

代行を一律に否定はしません。低リスクで外販の需要を試す、近隣に認知を広げる、すき間時間の限界利益を取る――こうした明確な目的があれば、加入は合理的な選択になりえます。

ここまでは慎重論を述べてきましたが、代行を一律に否定するつもりはありません。次のような目的であれば、加入は合理的な選択になりえます。

初期投資を抑えて、需要を試せる

自社で配達体制を一から組むには、人手も仕組みも必要です。代行であれば、配達の仕組みを自前で持たずに、少ない初期投資で「自館の料理に外販の需要があるのか」を試すことができます。本格的に取り組む前の実験の場として使うのであれば、リスクは限定的です。

プラットフォームの集客力で、認知を得られる

デリバリーのアプリには、多くの利用者が集まっています。まだ自館を知らない近隣の人に料理を知ってもらう入り口として、一定の集客効果が期待できます。

すき間時間の限界利益を取りにいける

特に都市部のビジネスホテルでは、朝食やチェックアウトの対応が一段落した後、夕方のフロント業務が忙しくなるまでの時間帯に、厨房や人員のすき間が生まれがちです。この待機時間を使い、ランチ向けの料理を提供するのは一つの方法です。固定費はすでに宿泊事業のために支払っていますから、手数料を引いても限界利益(追加でかかる費用を差し引いた利益)がプラスになる料理であれば、取り組む価値があります。出前館のように自社配達で配達代行分を抑えられる仕組みを併用すれば、手数料の負担も軽くできます。

→ 意味を持つ場面が分かったところで、自館が向くかどうか。次章で条件を点検します。

進捗:第3章/全6章 ■■■■■□□□□□ 50%

ここまで読了:約6分 / 残り約5分

第4章
加入が向く施設・向かない施設
自館の条件を点検する
加入の是非は施設の条件で分かれる
要点

加入の是非は条件で分かれます。都市部で単品を出せる、すき間に余力がある、まず需要を試したい、自社配達できる施設は向きます。高単価・高原価の会席が中心の施設は、手数料に利益を食われます。

以上を踏まえると、加入の是非は施設の条件によって分かれます。下表を目安に、自館の状況を点検してください。

加入を検討する価値がある施設加入を避けた方がよい施設
都市部で、ランチや丼・弁当など単品を出せる高単価・高原価の会席や旅館料理が中心
昼や閑散時間に厨房・人員の余力がある厨房が宿泊対応で常時逼迫している
まず低リスクで外販の需要を試したい収益の柱として安定収入を期待している
自社配達で配達代行手数料を抑えられる配達まですべて任せるしかない
新規客への認知・露出を主目的にできる宿の格やブランドの毀損を避けたい高級宿

整理すると、代行は「収益の柱」ではなく「需要検証と認知の道具」と位置づけると、判断を誤りません。高単価の会席料理を代行で売ろうとすると手数料に利益を食われますが、原価率の低い単品をすき間時間に出すのであれば、限界利益を取りにいけます。一方、法事・慶弔・法人といった予約型で高単価の需要は、即時配達のプラットフォームとはもともと相性が悪く、自館が直接受ける方が理にかなっています。

→ 加入を決めるなら、損を避ける勘どころがあります。次章で五つの原則を示します。

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ここまで読了:約8分 / 残り約3分

第5章
加入するなら、損をしないための原則
損をしない使い方の原則
出す料理・価格・撤退基準を設計する
要点

加入するなら、出す料理を原価率の低い単品に絞る、手数料込みで売れる価格にする、自社配達を併用する、撤退基準を決めておく。そして代行は「入り口」と捉え、自社チャネルへ軸足を移すのが本筋です。

加入を決めた場合に、損を避けるための原則を挙げます。

第一に、出す料理を絞ることです。手数料を引いても利益が残る、原価率の低い単品やセットに限定し、原価率の高い会席をそのまま載せるのは避けます。第二に、価格設計です。手数料を織り込んでも注文される価格帯に収まる商品を選びます。第三に、自社配達の併用です。配達を自店で担える範囲では、配達代行手数料を抑えられます。第四に、撤退の基準をあらかじめ決めておくことです。一定期間試して採算が合わなければ、続けないという判断ができるようにしておきます。

そして最も大切なのは、代行を「入り口」と捉えることです。代行で需要があると確かめられたら、手数料のかからない自社のチャネル(仕出し・宅配)へ軸足を移していくのが、収益を残す本筋です。自社で仕出し・宅配を育てる方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

→ 以上を踏まえ、代行とどう向き合うべきか。最後に結論を整理します。

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ここまで読了:約10分 / 残り約2分

第6章
結論 ― 代行は「目的」を見極めて使う
目的を見極めて代行を使う
収益の柱ではなく、入り口・補完として
要点

デリバリー代行は手数料の構造上、収益の柱にはなりにくいものです。本命は自社の仕出し・宅配。代行はその前段の実験、あるいは補完と位置づけるのが、最も損の少ない使い方です。

デリバリー代行は、手数料の構造上、旅館・ホテルにとって収益の柱にはなりにくいものです。しかし、外販の需要を低リスクで試したい、近隣に認知を広げたい、すき間時間の限界利益を取りたい、という明確な目的があれば、使う価値はあります。大切なのは、「儲かりそうだから」と漠然と加入するのではなく、何のために使うのかを決めたうえで、出す料理と価格、撤退基準まで設計しておくことです。

そして、旅館・ホテルが本命とすべきは、厨房・調理人・地域での信用という既存資源を活かした、自社の仕出し・宅配です。代行はその前段の実験、あるいは補完と位置づけるのが、最も損の少ない使い方だと考えます。なお、遊休厨房を使ったゴーストキッチンという選択肢については、別の記事で改めて検討します。

進捗:第6章/全6章 ■■■■■■■■■■ 100%

ここまで読了:約11分 / 残り約0分

よくあるご質問

Qデリバリー代行の手数料はいくらかかりますか。

A販売手数料は売上の35%前後(税別)が標準です。出前館はサービス手数料(約10%)と配達代行手数料(約25%)に分かれ、自社配達なら配達分を抑えられます。ほかに初期費用5万円程度や包装費もかかります。

Q加入すれば儲かりますか。

A収益の柱にはなりにくいのが実情です。原価率30〜35%に手数料35%が重なると売上の約7割が消え、利益はわずかです。ただし需要検証・認知・すき間時間の限界利益という目的を絞れば、有効に使えます。

Qどんな施設が代行に向いていますか。

A都市部で単品(丼・弁当など)を出せて、昼や閑散時間に厨房の余力があり、自社配達で手数料を抑えられる施設が向いています。高単価・高原価の会席が中心の施設や、ブランド毀損を避けたい高級宿は慎重に判断すべきです。

Q高単価の会席料理を代行で売ってもよいですか。

Aおすすめしません。原価額の高い会席は手数料に利益を食われます。代行に出すなら原価率の低い単品に絞り、会席のような高単価・予約型の需要は自館で直接受ける方が理にかなっています。

Q自社配達と代行配達では、どちらが得ですか。

A自社で配達できる範囲なら、配達代行手数料(出前館で約25%)を抑えられる分、自社配達が有利です。ただし配達の人手と体制が必要なので、すき間時間の余力と配達できる商圏があることが前提になります。

用語の整理

この記事で出てきた主な用語

デリバリー代行

Uber Eatsや出前館など、出前を代行するプラットフォーム。販売手数料は売上の35%前後が標準です。

サービス手数料/配達代行手数料

出前館などで手数料が分かれている区分。配達代行手数料(約25%)は自社配達なら抑えられます。

限界利益

売上から、その売上のために追加でかかった費用だけを引いた利益。すき間時間の活用では、手数料を引いてもこれがプラスかが判断軸になります。

価格転嫁

手数料分を販売価格に上乗せすること。近年は店頭価格との差を抑える流れで、転嫁しきれなくなっています。

寡占

少数の事業者が市場の大半を占める状態。代行の寡占が進み、加盟店の交渉余地は狭まっています。

さいごに

デリバリー代行への加入について、手数料の実態から、儲かるとは限らない理由、それでも意味を持つ場面、向く施設・向かない施設、そして損をしないための原則まで、整理してきました。いかがだったでしょうか。

デリバリー代行は、手軽に見えて、手数料が利益を大きく削る仕組みです。一方で、目的を絞れば有効に使える場面もあります。大切なのは「儲かりそうだから」と漠然と加入せず、何のために使うのかを決めること。そのうえで、本命である自社の仕出し・宅配へ軸足を移していくのが、最も損の少ない道です。

読了後の3ステップ ― 今日からできること

1. 使う目的を一つに決める

需要検証・認知・すき間時間の限界利益のうち、何のために使うのかを明確にしましょう。

2. 出す料理を絞って試算する

原価率の低い単品に絞り、手数料35%を引いても利益が残るかを、実際の数字で試算しましょう。

3. 撤退基準を決めておく

一定期間で採算が合わなければやめる、という基準をあらかじめ決め、ずるずる続けない仕組みにしましょう。

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青木康弘

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株式会社アルファコンサルティング 代表 青木康弘
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