こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。
ホテル・旅館の経営課題を尋ねると、いまや真っ先に挙がるのが人手不足です。労働人口の減少に加え、接客や調理の担い手が医療・福祉など他分野へ流れる構図は、今後さらに強まります。採用の巧拙が、そのまま業績を左右する時代です。
今回は、この採用と人づくりの仕事に、生成AIをどう使うかをお話しします。先にお断りしておくと、AIが人を連れてきてくれるわけではありません。AIが変えるのは、採用にかける手間と速さ、そして伝える力です。順に見ていきましょう。
- 求人原稿 ──「代わり映えしない求人」から抜け出す。スタッフの本物の声を、AIが原稿にする。→ ポイント①へ
- 応募対応 ── 返信の速さが、採用力になる。24時間以内返信の体制づくり。→ ポイント②へ
- 給与と働き方 ── 相場の下調べはAI、決定は人。→ ポイント③へ
- 受け入れと教育 ── 定着は、入口の体験で決まる。→ ポイント④へ
気になるポイントだけ、つまみ読みでも役立つように作っています。
ポイント① 求人原稿 ──「代わり映えしない求人」から抜け出す
中小規模の施設の求人を見ていると、職種名と給与と勤務時間だけが並んだ、どこも同じ顔の原稿が少なくありません。求職者の目に留まらないのは、施設に魅力がないからではなく、魅力が言葉になっていないからです。
ここで生成AIが効きます。おすすめは、働いているスタッフの声から始めることです。AIは書き手ではなく、本物の声を原稿に仕立てる編集者役。この流れを図にすると、次のようになります。
「この仕事のどこが好きか」「入る前と後で印象が変わったことは」。雑談でかまいません
話し言葉から、求人で使える言葉を拾い出して整理する
求人サイト向け/自社採用ページ向け/SNS向け。職種名の見直し案も複数出させて比べる
給与・勤務条件の正確さと、脚色がないことを確認するのは人の仕事
素材が自館の現実なら、原稿は自館にしか書けないものになります。AIだけで書いた原稿は、どこも同じ顔に戻ります。
「客室係」「接客係」といった従来の職名は、仕事の中身が伝わりにくく、間口も狭く見えます。「サービススタッフ」「運営スタッフ」のように幅を持たせた名称の案も、AIに複数出させて比べるとよいでしょう。
ポイント② 応募対応 ── 返信の速さが、採用力になる
見落とされがちですが、いま採用の成否を分けているのは、応募が来てからの速さです。求職者は複数の施設に同時に応募しています。返信が遅い施設は、面接の前に候補から外れます。
・応募メールに気づくのが翌日、文面を考えて返すのが2〜3日後
・その間に、応募者は返信の早い他施設で面接が決まる
・受付返信/面接日程の調整/合否連絡/お断り ── 文面はAIで下書き済み
・担当者は日時を入れて送るだけ。応募の熱が冷めないうちに面接へ
お断りの連絡も、ていねいな文面なら施設の印象を守ります。今日の不採用者は、明日のお客様かもしれません。
自館の採用力、どこから上げるか。求人の見直しからご一緒します。
採用の進め方を相談するポイント③ 給与と働き方 ── 相場の下調べはAI、決定は人
採用条件の土台になるのが、給与水準です。他業種の給与は、宿泊業を上回るペースで上がっています。私は観光経済新聞の連載で人材戦略を繰り返し取り上げてきましたが、そこでお勧めしてきたのが、少なくとも半年に一度、地域と他業種を含めた相場を点検することです。この相場情報の収集と整理に、AIが使えます。求人媒体の公開情報を集めて比較表にまとめる、といった下調べを任せれば、点検が習慣になります。
仕事内容・職場の魅力・条件の骨子を、AIに一度だけ伝える
フルタイムの原稿しか出していない施設は、それだけで応募の間口を狭めています。ただし、給与と待遇の決定は、人件費と損益を見渡した経営判断。AIの下調べは材料です。
ポイント④ 受け入れと教育 ── 定着は、入口の体験で決まる
せっかく採用しても、受け入れの体制がなければ、早期離職につながります。入社案内、館内のルール、部署ごとの仕事の手順書。こうした文書づくりに、AIが効きます。古いマニュアルをAIに読み込ませて現状に合わせて改訂する、ベテランの口頭説明から手順書を起こす、といった進め方です。外国人スタッフを迎えるなら、これらの多言語化もAIで一気に進められます。
教育用の文書が揃っている施設は、新人の立ち上がりが速く、教える側の負担も軽い。採用と定着は、別の仕事ではなく地続きです。

採用の線引き ── 合否の判断は、AIにさせない
AIによる人物評価は、もっともらしく見えて偏りや誤りを含み得ます。人を選ぶ判断は、公平性と説明の責任を伴う、人の仕事です。
もう一つ、スタッフの声や職場の写真をAIで作り出さないことです。求人で伝えるのは本物だけにしてください。脚色された魅力で採った人は、現実との落差で辞めていきます。
青木康弘採用は販促と似ていて、速さと正直さが効きます。求人原稿を盛った施設ほど、早期離職に悩んでいます。本物の声だけで作るほうが、結局は定着につながります。魅力の言語化と速さはAIで。
人を選ぶ判断と、本物は、人が守る。
よくある質問
Q. 求人原稿をAIに書かせると、どこも同じ文面になりませんか。
A. AIだけで書けば、そうなります。スタッフの本物の声を素材にし、AIは編集者役に徹すること。素材が自館の現実なら、原稿は自館にしか書けないものになります。
Q. 応募者の情報をAIに入れても、大丈夫ですか。
A. 応募者の個人情報の扱いには細心の注意が要ります。氏名などは伏せる、入力内容が学習に使われない設定や法人向け契約を使う、が基本です。文面のテンプレート作成なら、個人情報を入れずに済みます。
Q. 書類選考をAIにやらせるのは、ありですか。
A. お勧めしません。要件との照合の補助までにとどめ、合否の判断は必ず人が行ってください。偏りのリスクと、応募者への説明責任の問題があります。
Q. 何から始めればよいですか。
A. 応募対応の返信テンプレートづくりからです。半日で揃い、応募者への返信速度がその日から変わります。次に、スタッフの声を集めた求人原稿の改訂に進むとよいでしょう。
さいごに
いかがだったでしょうか。生成AIは、人を連れてきてはくれません。けれども、魅力を言葉にし、応募に速く応え、受け入れの文書を揃えるという、採用力の土台を確実に底上げします。そして、人を選ぶ判断と、待遇の決定と、本物の魅力。これらは、これからも人の仕事です。
弊社アルファコンサルティングでは、特定の求人媒体や人材会社と利害関係を持たない中立の立場から、採用力の強化と定着の仕組みづくりを、ホテル・旅館それぞれの施設に合わせてお手伝いしています。
初回相談無料です。人手不足と採用にお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
