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こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。
補助金のご相談をお受けしていて、いちばんよく耳にする勘違いがあります。採択されれば、あとはそのお金を自由に使える、というものです。私は観光経済新聞のコラムで十七年ほど補助金について書いてきましたが、この勘違いを申請の前にほどいておかないと、採択された後で思わぬ落とし穴にはまります。やっかいなのは、その落とし穴の多くが、申請書の書き方しだいで避けられたはずのものだ、という点です。
採択でいただけるのは、「総額いくら」というまとまったお金ではなく、「どの費目に、いくら」と細かく区切られた予算です。しかも、いったん採択された費目と金額は、後から自由に動かせません。ですから、申請のときに経費をどう組んでおくかで、採択された後の進めやすさが大きく変わってきます。今回はそのお話です。
- 1採択は「お金がもらえる権利」ではありません
- 2補助金の経費は「費目」ごとに区切って申請します
- 3費目をまたいだ流用は、原則として認められません
- 4計画変更の申請は、思いのほか重い手続きです
- 5だからこそ、申請の段階で経費を組み立てておきます
- 6「どんな事業をするか」から逆算して費目を組みます
採択は「お金がもらえる権利」ではありません
- 申請どおりに事業を進め、報告し、認められた分だけが後から振り込まれる仕組み
- 補助金適正化法により、用途変更や計画変更には報告・承認の義務がともなう

補助金は、申請のときに出した事業計画と経費の明細どおりに事業を進め、その結果を報告して、認められた分だけが後から振り込まれる仕組みです。採択はゴールではなく、むしろここからが始まりです。
ここを取り違えると、採択の通知が届いてから「思っていたようには使えない」と気づくことになります。当初と違う設備を買いたくなった、ある費目が余ったので別の用途に回したい。こうした変更は、そのままでは認められないのが原則です。国の補助金は「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(補助金適正化法)にもとづいて運用されていて、申請した用途以外に使うことや、計画を途中で変えることには、報告や承認の義務がともなうからです。この「後から動かしにくい」という性質が、いくつかの落とし穴を生みます。代表的なものを順に見ていきましょう。
補助金の経費は「費目」ごとに区切って申請します
- 経費を用途ごとの「費目」に分け、それぞれにいくらかかるかを示して申請する
- 費目ごとに上限や条件がある場合がある(例:ウェブサイト関連費は4分の1程度まで)

補助金の申請では、かかる経費を用途ごとの「費目」に分け、それぞれにいくらかかるかを示します。呼び方は制度によって多少違いますが、宿泊業でよく使う費目をまとめると、おおむね次のようになります。
[図表1]宿泊業の補助金申請でよく使う経費の費目(例)
※費目の区分・名称・上限は制度や公募回によって異なります。申請の前に、最新の公募要領で必ず確認します。
気をつけたいのは、費目ごとに上限や条件が決められている場合があることです。たとえばウェブサイト関連費は、補助を受ける金額のうち一定の割合(多くの制度で四分の一ほど)までしか認められないことがあります。予約サイトやネット広告に多く使いたいと思っても、その費目だけを大きく積むことはできません。こうした決まりを知らずに組むと、申請の段階でつまずきます。
費目をまたいだ流用は、原則として認められません
- 採択されたのは費目ごとの金額であって、ひとまとまりの総額ではない
- 余った費目分はそのまま対象外、別費目の超過分は自己負担になる
ある費目が見積りより安くすんで、お金が余ったとします。その余りを、足りなくなった別の費目に回す。一見すると当たり前のやりくりですが、これは基本的にできません。採択されたのは費目ごとの金額であって、ひとまとまりの総額ではないからです。
たとえば、機械装置等費が予定より三十万円安くすみ、いっぽうで工事の外注費が三十万円超えたとします。手元では帳尻が合っているように見えても、補助金の上では、機械装置等費で余った分はそのまま対象から外れ、工事費の超過分は自己負担になります。費目という箱は、それぞれ別々のものだと考えてください。
計画変更の申請は、思いのほか重い手続きです
- 軽い変更を超える内容には事前の承認が必要で、承認まで先に進めない
- 計画の根っこに関わる変更は、そもそも認められないこともある
「では、変更の申請をすればいい」と思われるかもしれません。たしかに、一定の範囲を超える変更には、事務局へあらかじめ申請する手続きが用意されています。ただ、この手続きが実際にはなかなか大変です。
まず、軽い変更を超える内容には事前の承認が必要で、承認が下りるまで先に進めません。その間も、補助事業の期限は迫ってきます。内容によっては、そもそも認められないこともあります。採択された計画の根っこに関わる変更は、別の事業に作りかえるのと変わらない、と見られてしまうからです。
ご相談を受けてきた中での私の所感ですが、採択された後、この変更の申請に振り回されて消耗してしまう施設は少なくありません。本来なら開業の準備や工事の段取りに集中したい時期に、書類のやりとりに追われてしまう。これは、申請のときに気をつけていれば防げたはずの手間です。
だからこそ、申請の段階で経費を組み立てておきます
- 小手先の工夫ではなく、やりたい事業を正直に書くのが採択にも実行にも近道
- 型番より目的、周辺費目の拾い出し、費目制限の趣旨理解、発注段取りの事前準備が勘どころ
ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。これは、申請をわざと曖昧にして後で都合よく動かす、という話ではありません。補助金は、お金をもらう手続きというより、行政との約束です。採択を審査する人も、後から現地を見にくる検査の人も、結局は「この施設は約束どおりに事業をやり遂げてくれるか」を見ています。ですから小手先の工夫は通用しませんし、その必要もありません。やりたい事業をそのまま正直に書くのが、採択にも、その後の実行にも、いちばんの近道になります。そのうえで、申請の後まで手がけてきて見えてきた勘どころをお伝えします。
型番を決め込むより、何のために買うのかを書く
設備をメーカー名や型番まで細かく書けば審査に通りやすい、と思っている方は多いのですが、これはむしろ逆です。審査する人が知りたいのは型番ではなく、なぜその設備が要るのか、それで何がよくなるのか、ということです。そもそも採択される前の段階で、業者と値段の交渉まで終えて正確な見積りを固めるのは、現実にはなかなかできません。
仕様や狙いは、事業の目的に沿ってはっきり書く。そのうえで、まだ決めきれない型番などは、確定ではないとわかる形で、根拠のある概算として示しておく。何のために買うのかさえしっかり書けていれば、採択された後にやむをえず同じ性能の別の機種へ変えることになっても、当初の狙いに沿った変更だと無理なく説明できます。型番を細かく書き込むことより、目的がはっきりしていることのほうが、採択にも、その後の実行にも効いてきます。
目立つ設備より、その周りに見落としが潜んでいます
経費で見落としが多いのは、目立つ設備そのものではなく、その周りにある地味な費目です。古い設備を撤去する費用、運搬や据え付け、専門家への委託、什器の手当て。本体に気を取られて、こうした費目がすっぽり抜けてしまいます。
これも現場でよく感じることですが、申請書を作るとき、設備のカタログは熱心に見ても、「その設備を据え付けて、古いものを片づけて、スタッフが使いこなせるようになるまで」の流れを頭の中で動かしてみる方は、意外と少ないものです。本当に必要になる経費は、その流れのなかに隠れています。使うかどうかわからない費目をとりあえず立てておくのではなく、事業を進める一部始終を一度頭の中で動かしてみて、実際に要る経費を漏れなく拾い出す。回り道のようで、これがいちばん確かです。
費目の制限は、制度が何をしたいのかの裏返しです
費目には、それぞれ決まりごとがあります。さきほどのウェブサイト関連費の上限も、その一つです。なぜ上限があるのか。補助金が後押ししたいのは販路を広げることであって、広告にお金を使うこと自体ではないからだ、と考えると納得がいきます。
そう読めると、書き方が変わってきます。ネット集客に力を入れたいときも、「広告を打ちたい」ではなく、「ウェブを通じて、誰に、何を売り、どう予約につなげるのか」を書く。撮影した写真や動画、整えた予約の入り口といった、後々まで自社に残るものとして組み立てていきます。上限をかいくぐる工夫ではなく、制度が応援したいことに自社の計画を寄せていく。そのほうが通りやすいですし、採択された後の事業にもつながります。
発注の段取りは、申請の前に決めておきます
補助事業では、交付が決まる前に発注したものは、原則として対象になりません。そのいっぽうで、事業に使える期間は驚くほど短く、長くても一年弱、制度によっては数か月で報告の期限がやってきます。採択されてから業者を探していては、とても間に合いません。相見積りを取れる業者や、図面やイメージを用意してくれる設計事務所と、申請の前からつながっておく。これが見積りの確かさにも、短い実施期間を乗りきる段取りにもつながります。
もう一つ、申請の後まで関わって初めて見えてくることがあります。採択を審査する人と、後で現地を見にくる人は、別の人だということです。採択の知らせにほっとしていると、検査のときになって「これは最初の目的と少し違いますね」と問われることがあります。申請書を書く段階で、この後から見にくる人の目を頭の片隅に置いておけるかどうか。ここで、採択された後の苦労がずいぶん変わってきます。
「どんな事業をするか」から逆算して費目を組みます
- 事業の中身を決め、必要なお金を洗い出し、最後に費目へ振り分けると後の変更が減る
- 費目に合わせて事業を後から考えると、実行の段で必ず無理が出る
ここまでの話は、つきつめると一つのことに行き着きます。費目から先に埋めるのではなく、まず「誰に、何を、いつ届けるのか」という事業の中身を決める。そのうえで必要なお金を洗い出し、最後に費目へ振り分ける。この順番で考えると、採択された後で「やっぱり変えたい」と思う箇所が、ぐっと減ります。
逆に、補助金の費目に合わせて事業を後から考えると、実行の段になって必ず無理が出ます。補助金をもらうこと自体が目的になってしまい、肝心の事業が回らない。これがいちばん避けたい結末です。経費の内訳は、事業計画そのものを映したものだとお考えください。
さいごに
いかがだったでしょうか。ここまで見てきた落とし穴は、どれも申請の段階で気をつけていれば避けられるものばかりです。補助金は、申請のときの経費の組み方で、採択された後の進めやすさがほとんど決まります。費目は後から動かしにくく、変更の手続きにも手間がかかります。やりたい事業の中身から逆算して費目を決めておく。回り道のようでいて、これがいちばん確かな進め方です。
弊社アルファコンサルティングでは、特定の金融機関や業者と利害関係を持たない立場から、補助金の計画づくりをご一緒しています。申請のための書類を整えて終わり、ではありません。採択された後、事業を実際に動かし、投資を回収していくところまで見据えて、経費の組み立てから一緒に考えます。実施期間中の段取りや報告、事業を軌道に乗せるところまで、推進役としてお手伝いできるのが弊社の持ち味です。
補助金の活用や経費の組み立てについて、初回のご相談は無料です。どうぞお気軽にお問い合わせください。
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