こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。
「2分の1の補助が出ます」。そう聞くと、心が動きます。ですが、この「2分の1」には、あまり知られていない続きがあります。
補助金は、投資の主役ではありません。今回は、補助金の知られざる一面と、それを踏まえた投資の判断についてお話しします。
- 1「補助金が出るなら、やろう」が危ない
- 2「2分の1」の、知られざる続き
- 3そもそも、補助金は効果を約束しない
- 4補助金に合わせると、投資がふくらむ
- 5投資の是非は、補助金と切り離して決める
- 6では、どう考えるか
「補助金が出るなら、やろう」が危ない
- 最も多いつまずきは、順番の取り違え
- 必要な投資が先にあり、補助金は後。逆にすると本末転倒になる

補助金のご相談で、いちばん多いつまずきが、順番の取り違えです。「この補助金が使えるから、この投資をしよう」。一見、賢いようでいて、これは順番が逆です。本来は、自館に必要な投資が先にあって、それに使える補助金がある、という順番です。補助金を入り口にすると、補助金のために投資する、という本末の転倒が起こりかねません。
「2分の1」の、知られざる続き
- 残り半分は自己負担。消費税は補助の対象外で、実質の負担はさらに増える
- 受け取った年に課税され、付加価値を年3%増やすなどの「宿題」もつく

補助金の魅力は、費用の半分を国が負担してくれることです。2分の1なら、半額で投資ができる。ですが、その先に、案外知られていないことが、いくつもあります。
まず、当たり前のようでいて大事なのが、残りの半分は自分で負担するということです。その投資が本当に必要なものでなければ、半額とはいえ、不要なものに自分のお金を出すことになります。補助金は、投資を「お得」にはしますが、「正しく」はしてくれません。
さらに、見落としがちなのが、消費税です。補助金の計算は、原則として、消費税を除いた金額(税抜)に対して行われます。消費税の分は、補助の対象に入りません。たとえば、補助の対象となる経費が1,000万円なら、実際に支払うのは、消費税を含めて1,100万円です。このうち後で戻ってくるのは、税抜1,000万円の半分、500万円だけ。つまり、消費税の100万円は、まるごと自己負担になります。準備すべきは1,100万円、戻りは500万円、と覚えておくとよいでしょう。
意外に思われるかもしれませんが、補助金は、受け取ると税金がかかります。会計の上では、補助金は収入として扱われ、受け取った年の利益に上乗せされて、法人税などの課税の対象になります。つまり、もらった額が、まるごと手元に残るわけではありません。圧縮記帳という手続きを使えば、その税金を先の年に送ることはできますが、免除されるわけではありません。この処理を知らずにいると、補助金をもらった年に、思わぬ税の負担が生じることがあります。
補助金は、もらって終わりではありません。たとえば、ものづくり系の補助金では、付加価値額(おおまかには、利益と人件費と減価償却を足したもの)を、3年から5年かけて、毎年平均で3%以上増やす、という計画を立て、その達成を求められます。賃上げの目標が課されることもあります。これらを達成できないと、補助金の一部の返還を求められることがあります。設備を入れて終わり、ではなく、その後に成果を出す宿題が、セットでついてきます。
そもそも、補助金は効果を約束しない
- 補助が出ても、その投資が成果を生むとは限らない
- 費用は軽くなるが、投資が当たるかどうかは別の話
もう一つ、冷静に見ておきたいことがあります。補助金が出たからといって、その投資が成果を生むとは限らない、ということです。
設備を入れても、すぐに利益に結びつくとは限りません。効果が出るまでに時間がかかることも、思ったほど使われないこともあります。補助金の効果をめぐっては、国の内部からも、本当に生産性の向上につながっているのか、という疑問の声が上がったことがあるほどです。補助金は、投資の費用を軽くしてくれますが、その投資が当たるかどうかは、まったく別の話です。
補助金に合わせると、投資がふくらむ
- 上限や対象に合わせて、投資の規模がふくらみやすい
- ふくらんだ投資は、立替も税金も宿題も、すべて大きくする
こうした負担や不確かさがあるのに、補助金には、投資をふくらませる力があります。対象になる経費や、上限の額が決まっているため、せっかくだから上限まで、これも対象になるなら、と、つい規模が大きくなりがちです。
本当は小さく始めれば十分なのに、補助金に合わせて、身の丈を超えた投資をしてしまう。あるいは、本当に必要なものではなく、補助の対象になるものを選んでしまう。ふくらんだ投資は、立替の負担も、もらった後の税金も宿題も、すべて大きくします。
投資の是非は、補助金と切り離して決める
- 補助金抜きで「やる」と判断できる投資だけが、本当にやるべき投資
- 売上・利益の増加と回収年数を、冷静に見極める
では、どう考えればよいか。大事なのは、投資をするかどうかを、補助金とは切り離して、先に決めることです。
その投資で、売上や利益がどれだけ増えるか。かけたお金を、何年で回収できるか。たとえば温泉旅館の利益の水準は、施設にもよりますが、おおむね売上の2割から3割ほど。そこから投資を回収するには、相応の年数がかかります。仮に補助金がまったくなかったとしても、その投資をする価値があるか。まず、これを冷静に見極めます。補助金を抜きにして「やる」と判断できる投資だけが、本当にやるべき投資です。
ご相談を受けてきた中での私の所感ですが、補助金を抜きにして考えたとたん、「やめておこう」となる投資は、少なくありません。それは、もともと必要のなかった投資だった、ということです。補助金には、そうした投資にまで、つい手を伸ばさせてしまう力があります。
では、どう考えるか
- 必要性の判断→負担を差し引いても見合うか確認→使える補助金を探す、の順
- 補助金から入らず経営から入るのが、いちばん損のない進め方
順番を、整理しましょう。まず、自館に必要な投資を、補助金抜きで見極める。その投資が、税金や宿題の負担を差し引いても、なお見合うかを確かめる。やると決めたら、次に、それに使える補助金があるかを探す。あれば使い、なければ自己資金や融資で進める。この順番なら、補助金に振り回されることはありません。
私どもは、特定の業者と利害関係を持たない立場で、補助金ありきではない投資の判断、その投資対効果の見極めから、税務や資金繰りまで見据えた進め方、使える制度の選定までをお手伝いします。補助金から入るのではなく、経営から入る。それが、結局はいちばん損のない進め方です。
さいごに
いかがだったでしょうか。「2分の1」という言葉の裏には、自己負担、税金、宿題、そして効果の不確かさがあります。補助金は、投資を後押ししてくれる、ありがたい制度です。ですが、主役ではありません。補助金が出るかどうかではなく、その投資が自館に必要かどうか。そこを先に決めることが、何より大切です。
弊社アルファコンサルティングでは、補助金の活用はもちろん、その前提となる投資の判断や、事業計画づくりからお手伝いしています。補助金を入り口にせず、経営の視点から、いちばん損のない進め方を一緒に考えます。
投資や補助金のご相談は、初回無料です。どうぞお気軽にお問い合わせください。
- 省力化投資補助金|人手不足に使える補助金
- デジタル化・AI導入補助金|OTA依存・予約管理に
- 小規模事業者持続化補助金|小さく試すための補助金
- 新事業進出補助金|新事業と採択率の実際
- 観光庁・環境省の補助金|高付加価値化とインバウンド対応に
- 自治体の補助金の探し方|採択数を確かめてから申請する
- 補助金の費目設計|流用できない経費の組み立て方
- 補助金の共同申請(コンソーシアム)|地域で組む申請の勘どころ
- 補助金の実施期間と後払い|立替資金とスケジュールの注意点
- 補助金の実地検査とは|採択後に来る検査と処分制限
- 補助金の返還リスク|採択後に続く「宿題」と返さない設計
