目次
こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。
補助金は、採択されてお金が振り込まれたら終わり。そう思っていると、思わぬところでつまずきます。補助金には「検査」があります。そして、本当に怖いのは、書類の細かい不備ではありません。やってもいない工事を、やったことにしてしまうことです。
これは、思っている以上に簡単に見抜かれます。今回は、どんな検査があり、なぜ不正がこれほど発覚しやすいのか、そして補助金で買ったものに何年もの縛りがかかることまで、率直にお話しします。
- 1検査は、一度ではない
- 2本当に怖いのは、「やっていない」が一目でわかること
- 3「自分のところには来ない」という油断
- 4数十年、勝手に処分できない
- 5見つかれば、返すだけでは済まない
- 6だから、正直に。そして信頼できる相手を
検査は、一度ではない
- 実施中の中間監査、報告後の確定検査、受領後の会計検査院の検査と、段階がある
- 確定検査を通って初めて、補助金の額が確定する

補助金の道のりは、採択で終わりではありません。検査は、いくつかの段階で行われます。
事業の実施中には、中間監査があります。事務局の担当者が現地を訪ね、計画どおりに進んでいるかを確認します。事業が終わって実績報告書を出したあとには、確定検査があります。これを通って、ようやく補助金の額が確定します。そして、補助金を受け取ったあとも、国の会計検査院による検査が、ときに数年が経ってから入ることがあります。一度きりではない、と知っておいてください。
本当に怖いのは、「やっていない」が一目でわかること
- 未実施の工事・未購入の設備を実施・購入したと報告するのが最大の禁じ手
- 完了報告・工事台帳・固定資産台帳の突合と現地確認で、容易に見抜かれる

補助金でいちばんやってはいけないのは、実際にはやっていない工事や買っていない設備を、やった・買ったことにして報告することです。一部だけ、というのも同じです。そして、これは驚くほど簡単に見抜かれます。
理由は、つき合わせれば、すぐにわかるからです。工事の完了を報告する書類。工事の台帳。そして、決算書に添える固定資産台帳。この三つを並べて見比べ、現地を確認すれば、報告どおりに工事が行われたのか、補助金をもらいながら実際には手をつけていないのではないか、ほとんど一目でわかってしまいます。検査に慣れた人なら、なおさらです。
ある補助金では、業務用の冷蔵庫を買う計画で申請しながら、実際には購入も納品もされていなかった、広告宣伝を行う計画なのに、チラシ一枚作っていなかった、という例が、不正として公表されています。「事業を実施した事実がないのに請求する」ことは、明確な不正にあたり、交付の取消しと返還の対象になります。
ご相談を受けてきた中での私の所感ですが、ここは絶対に手を出してはいけないところです。一部でも実態と違う報告をすれば、それは不正です。発覚しやすいうえに、見つかったときの代償が、あまりにも大きいからです。
「自分のところには来ない」という油断
- 検査は全件ではないが、不正があると関係先へいもづる式に広がる
- 頼んだ業者やコンサルが別案件で不正なら、真っ当な自社にも調査が及びうる
検査は、すべての事業者に来るわけではありません。件数はそれほど多くありません。だから、「自分のところには来ないだろう」と考えている方も、少なくないと思います。ですが、この考え方には、大きな落とし穴があります。
検査は、いもづる式に広がるからです。ある事業者で不正や不備が見つかると、そこに関わった人や会社をたどって、調査が横に広がります。同じ地域の事業者。同じ工事会社。同じ設計事務所。そして、同じコンサルティング会社。こうした関係先の申請が、まとめて調べられることがあります。
あるリスキリング系の助成金では、特定の業者が関与した案件をたどった結果、178社・およそ19億円もが、返還の対象になったと報じられています。また、申請を支援していた専門家が不正に関わって処分を受け、その事務所が手がけたすべての案件が調査対象になった、という例もあります。書類のつくりがどれも似通っている、という理由で目をつけられることさえあります。
つまり、自分が真っ当にやっていても、頼んだ業者やコンサルが別の案件で不正に関わっていれば、その流れで自分のところにも調査が及ぶことがあります。確率が低いから心配ない、というのは、大きなリスクを抱えることと同じです。ちょっとしたきっかけで、近くの、あるいは遠くの誰かの問題から、自分のところに調査が来る。そう考えて、油断しないことです。
数十年、勝手に処分できない
- 単価50万円以上の取得財産は、法定耐用年数の間、売却・廃棄・転用が制限される
- 処分には事前の承認が必要で、補助金の一部返還を求められることもある
もう一つ、見落とされがちな、しかし重い縛りがあります。補助金で買ったものは、長いあいだ、自由に手放せません。
補助金で取得した、単価50万円以上の機械や器具、そして建物などは、決められた期間のあいだ、勝手に売る・譲る・捨てる・転用する、といったことができません。この期間は、便宜的に5年や10年とされることもありますが、基本は、その財産の法定耐用年数です。建物のように耐用年数の長いものでは、数十年に及ぶこともあります。
この期間内に、古くなった、使わなくなった、建て替えたいといった理由で処分するときは、事前に事務局へ申請して承認を得る必要があり、補助金の一部を返すよう求められることもあります。補助金で建てたもの、買ったものは、自分のものでありながら、長ければ数十年、自由には処分できない。このことを、取得する前に頭に入れておいてください。
見つかれば、返すだけでは済まない
- 全額返還に加え、年10%超の加算金、原則5年の名称公表が科されうる
- 悪質と判断されれば、詐欺罪や補助金の法律違反として刑事告発もありうる
では、不正や違反が見つかると、どうなるか。受け取った補助金を返すだけでは、済みません。
まず、補助金は全額の返還を求められます。そこに、年に10%を超える高い利率の加算金が上乗せされることがあります。さらに、事業者の名前が、原則として5年間、公表されます。この情報はインターネットに長く残り、取引先や金融機関の信用を損ね、その後の事業に重くのしかかります。悪質と判断されれば、詐欺の罪や、補助金の法律の違反として、刑事告発されることもあります。一度の不正が、事業そのものを揺るがしかねません。
だから、正直に。そして信頼できる相手を
- 実態どおりに正直に申請・実施することが、いちばん確実な備え
- 「実質無料」等で不正を勧める業者に乗ると巻き込まれる。誰に頼むかも身を守る要点
ここまで、厳しい話を続けてきました。ですが、伝えたいことは単純です。実態どおりに、正直に申請し、実施する。これに尽きます。
補助金がつくからと、計画を大きく見せたり、やっていないことをやったことにしたり。そうした誘惑にかられる場面があるかもしれません。ですが、それは必ずリスクとして返ってきます。「実質無料」「キャッシュバック」といった甘い言葉で不正を勧めてくる業者も、世の中にはいます。そうした相手に乗ってしまうと、いもづる式の調査に巻き込まれます。誰に頼むか、ということも、身を守るうえでとても大事です。
私どもは、特定の業者と利害関係を持たない立場で、実態に沿った計画づくりと、採択後の実施から検査の備えまで、推進役としてお手伝いします。正直に進めることが、結局はいちばん確実に、補助金を手元に残す道です。
さいごに
いかがだったでしょうか。補助金は、採択されて終わりではなく、中間監査、確定検査、そして会計検査院の検査まで、長く付き合っていくものです。やっていないことは、書類のつき合わせと現地で、すぐに見抜かれます。検査は全件には来ませんが、いもづる式に広がります。そして、買ったものには数十年の縛りがかかることもあります。だからこそ、実態どおりに、正直に。それが、いちばん確実な備えです。
弊社アルファコンサルティングでは、補助金の申請から、採択後の実施、検査の備えまで、推進役としてお手伝いしています。正しく、無理のない計画で進めることで、安心して事業に集中していただけます。
補助金の活用について、初回のご相談は無料です。どうぞお気軽にお問い合わせください。
- 省力化投資補助金|人手不足に使える補助金
- デジタル化・AI導入補助金|OTA依存・予約管理に
- 小規模事業者持続化補助金|小さく試すための補助金
- 新事業進出補助金|新事業と採択率の実際
- 観光庁・環境省の補助金|高付加価値化とインバウンド対応に
- 自治体の補助金の探し方|採択数を確かめてから申請する
- 補助金の費目設計|流用できない経費の組み立て方
- 補助金の共同申請(コンソーシアム)|地域で組む申請の勘どころ
- 補助金の実施期間と後払い|立替資金とスケジュールの注意点
- 補助金の実地検査とは|採択後に来る検査と処分制限
- 補助金の返還リスク|採択後に続く「宿題」と返さない設計
