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こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。
グランピングを始めたい。古い別館をレストランに変えたい。一棟貸しの宿に作り替えたい。新しい挑戦を考えるとき、大きな額を支えてくれる制度として、新事業進出補助金の名前を耳にすることが増えました。かつての事業再構築補助金の後継にあたり、新しい事業への進出を、大きい場合で9,000万円ほどまで使える制度です。
ところが、いざ調べてみると、思っていたほど簡単ではありません。実を言えば、いま挙げたような取り組みの多くは、この補助金では採択されにくいのが実情です。かつての事業再構築補助金とは、性格がはっきり変わりました。今回は、何が対象になるのか、公表されている採択のデータから宿泊業がどんな位置にあるのか、そしてどんな事業なら採択されやすいのかまで、率直にお話しします。
- 1新事業進出補助金とは
- 2ホテル・旅館での使いどころ
- 3ほかの補助金との使い分け
- 4データで見る、宿泊業の採択率
- 5事業再構築補助金とは、別物だと考えてください
- 6では、宿泊業はどうすれば採択されやすいのか
- 7「すでにやっていること」は、対象になりません
- 8「補助金が出るから新事業」は、いちばん危うい
新事業進出補助金とは
- いまと異なる新分野への進出に使う、事業再構築補助金の実質的な後継制度
- 上限は大きい場合9,000万円ほど、補助率おおむね1/2、3〜5年計画。2026年度にものづくり補助金と統合予定

新事業進出補助金は、いまの事業とは異なる新しい分野へ進出する取り組みに使える制度です。中小企業庁が所管し、2024年まであった事業再構築補助金の、実質的な後継にあたります。
支えるのは、既存の宿泊業とは違う新しい市場への挑戦や、付加価値の高い事業です。補助の上限は従業員数によって変わり、大きい場合で9,000万円ほど。補助率はおおむね2分の1です。3年から5年の事業計画を立てて取り組むことが求められます。なお、この制度は2026年度にものづくり補助金と統合される予定で、中身は流動的です。申請の前に最新の公募要領をご確認ください。
ホテル・旅館での使いどころ
- グランピング、別館のレストラン化、一棟貸し、サウナ・スパ、ワーケーション施設などが使いどころ
- 自館の強みを生かした新事業ほど説得力が出るが、「新しさ」を厳しく見られる

宿泊業での使いどころを挙げます。グランピングやキャンプ場の新設、空いていた別館や古民家を生かしたレストランや一棟貸しの宿、サウナやスパといった新しい体験の場、ワーケーション向けの施設。いずれも、いまの宿泊業に新しい柱を足す取り組みです。
評価されやすいのは、これまで培ってきた自館の強みを生かした新事業です。まったく畑違いのことより、いまある立地や食材、もてなしの蓄積を土台にした挑戦のほうが、計画にも説得力が出ますし、実際にも成功しやすいものです。
ただし、注意があります。この補助金は「新しさ」をとても厳しく見ます。同じグランピングや一棟貸しでも、採択されるかどうかは、それが本当に新しい挑戦と言えるかで変わってきます。ここは、このあとくわしくお話しします。
ほかの補助金との使い分け
- 小さな販路開拓は持続化、省力化・システムは省力化投資やデジタル化・AI
- 新分野への大きな挑戦がこの新事業進出補助金。投資の規模と中身で選ぶ

これまでにお話しした制度と並べると、位置づけが見えてきます。小さな販路開拓なら持続化補助金、省力化やシステムなら省力化投資補助金やデジタル化・AI導入補助金、そして新しい分野への大きな挑戦なら、この新事業進出補助金です。投資の規模と中身で、選ぶ制度が変わります。
データで見る、宿泊業の採択率
- 採択率は第1回37.2%・第2回35.4%。宿泊・飲食は平均を下回り、製造業と約20ポイント差
- 申請する金額が大きいほど採択率が高く、小さく手堅い申請は不利になりやすい
ここで、これまでの公募結果を見てみましょう。数字は、宿泊業にとってなかなか厳しいものでした。新事業進出補助金は、2025年に二回の公募が行われています。採択率は、第1回が37.2%、第2回が35.4%。どちらも3者に1者ほどで、けっして甘くありません。
これを業種別に見ると、差がはっきりします。最も高いのは製造業で、第1回が51.9%、第2回が48.3%。いっぽう宿泊業・飲食サービス業は、第1回が24.4%で全業種の最下位、第2回は28.6%とやや持ち直しました。ただ、どちらの回も全体の平均を下回り、製造業とは20ポイントほどの差が開いたままです。
なぜ差がつくのか。この補助金が重んじるのは、新しい市場と高い付加価値です。製造業は、新しい製品を開発して新しい顧客に売る、という形を描きやすい。いっぽう宿泊業は、人によるおもてなしが中心で、いまの事業との違いを打ち出しにくい。そこが、採択率の差に表れています。
もう一つ、見落とせない傾向があります。申請する金額が大きいほど、採択されやすいことです。どちらの回も、5,000万円ほどの大きな申請では採択率が5割前後に達する一方、1,000万円に満たない小さな申請は2割台にとどまります。しかも低い金額帯は、第2回のほうがさらに厳しくなりました。小さく手堅く申請しようとすると、宿泊業は業種でも金額でも不利になりやすい、ということです。
※第1回(2025年・応募3,006件)・第2回(2025年・応募2,350件)公募の事務局公表資料にもとづく数値です。将来の公募回の傾向を保証するものではありません。最新は事務局資料・公募要領でご確認ください。
事業再構築補助金とは、別物だと考えてください
- 事業再構築は幅広く認められたが、新事業進出ではフランチャイズ・民泊等が採択ゼロ
- 技術・新市場・高付加価値を見る、ものづくりに近い性格に変わった
かつての事業再構築補助金を思い出すと、判断を誤ります。あの制度は、コロナ禍の緊急支援という色が濃く、「自社にとって新しい展開」であれば幅広く認められました。民泊、エステ、室内ゴルフ、フランチャイズへの加盟。そうした取り組みが、数多く採択されました。
ところが新事業進出補助金では、様子がまるで違います。第1回では、フランチャイズ事業の採択はゼロでした。民泊やセルフエステ、ゴルフシミュレーションといった分野も、採択はありませんでした。他社が作ったやり方をそのまま持ち込む、いまの事業をオンラインに移す、といった「やり方を変えるだけ」の挑戦は、もう通らないと考えたほうがよいでしょう。
この制度が見ているのは、もっと踏み込んだ新しさです。技術やノウハウの裏づけ、新しい市場、高い付加価値。どちらかといえば、ものづくりに近い性格の補助金になっています。賃上げや投資規模の条件も引き上げられました。事業再構築のときの感覚で申請すると、まず外れます。
では、宿泊業はどうすれば採択されやすいのか
- 採択例は強みを「かたちのある商品」に変えた事例(醸造・加工食品・体験商品等)が多い
- 立地・食材・もてなしを土台に、新しい市場へ新しい価値を届ける構想を描けるかが分かれ目
では、宿泊業に勝ち目はないのか。そうではありません。採択された宿泊業・飲食サービス業の事業計画を見ると、ヒントがあります。
目立つのは、自館の強みを「かたちのある商品」に変えた事例です。実際に採択されたものを見ると、クラフトビールの醸造、業務用スープや冷凍麺の製造、地域の素材を生かした加工食品やお土産づくりなどが並びます。料理やもてなしの蓄積という、人のサービスだけでは差を出しにくいところに、製造やプロダクトの要素を足すことで、新しい市場と高い付加価値を示している点が共通します。
考え方はこうです。いまある立地、食材、もてなしの蓄積という強みを土台にして、これまで手がけていない新しい市場へ、新しい価値を届ける。単に客室をきれいにする、よくある業態をそのまま導入する、では新しさが足りません。自館にしかできない挑戦を、どう新しい市場に結びつけるか。ここを描けるかどうかが、分かれ目になります。
「すでにやっていること」は、対象になりません
- 自社にとって新しい製品・サービスで新顧客層向けに限られ、既存・過去の事業は対象外
- 採択後に既存事業と判明すれば、取消や返還につながりかねない
もう一つ、強く注意しておきたいことがあります。この補助金は「新しさ」をとても厳しく見ます。申請の前に、ここを必ず確かめてください。
対象になるのは、自社にとって新しい製品やサービスで、新しい顧客層に向けたものに限られます。しかも、すでに取り組んでいる事業は対象になりません。過去に一度でも手がけたものを再び始める、いまある商品を組み合わせただけ、提供のしかたを変えただけ、というものも、新しさが認められません。
ですから、すでに始めてしまっている事業を、後から補助金の対象にしようとしても通りません。それどころか、申請の段階で見抜かれれば不採択になりますし、もし採択された後に、実は前から手がけていた事業だとわかれば、採択の取り消しや返還につながりかねません。
ご相談を受けてきた中での私の所感ですが、事務局は、申請された事業が本当に新しいものかどうかを、過去の事業の実態と照らし合わせて、たいへん厳しく確認します。近ごろは、その確認がいっそう細かく、網羅的になっているとも聞きます。ですから、本当に新事業だと胸を張って証明できるものに限って、申請すべきです。新しさへの理解が浅いまま申請して、外してしまう施設が少なくありません。
こうした新しさを、なぜその事業が新しいのかという形で、第三者にもわかるように計画書に描けるか。そこが採択の決め手になります。計画書の作り方は、別の記事でくわしくお話ししています。
「補助金が出るから新事業」は、いちばん危うい
- 補助金は投資の半分ほどの後払い。同額の自己負担と、その先の運転資金が要る
- 補助金がなくても挑む価値があるか、撤退ラインをどこに引くかを先に決める
大きな額が動くだけに、いちばんお伝えしたいことがあります。補助金が出るから新事業を始める、という順番だけは避けてください。
ご相談を受けてきた中での私の所感ですが、補助金に背中を押されて大きな投資に踏み切り、採択された後の資金繰りで苦しんだ施設を、いくつも見てきました。補助金は、投資額の半分ほどを後から補うものにすぎません。9,000万円といっても、同じだけの自己負担と、その先の運転資金が要ります。新事業が軌道に乗らなければ、借入だけが残ります。
補助金がなくても、その新事業に挑む価値があるか。うまくいかないなら、どこで線を引いて退くか。これを先に決めておくことです。順番さえ間違えなければ、この補助金は新しい挑戦の力強い後押しになります。私どもは特定の業者と利害関係を持たない立場ですので、その新事業に踏み出すべきかどうかも含めて、中立にご相談に乗れます。
さいごに
いかがだったでしょうか。新事業進出補助金は、新しい挑戦を大きく後押ししてくれる制度です。ただ、大きな額が動くぶん、採択された後をやり遂げられる計画か、補助金がなくても挑む価値のある事業か、という見極めが欠かせません。順番を間違えなければ、これほど心強い制度はありません。
弊社アルファコンサルティングでは、特定の金融機関や業者と利害関係を持たない立場から、その新事業に踏み出すべきかどうかの見極めから、事業計画づくり、採択された後の実行や報告まで、推進役としてお手伝いしています。補助金ありきではなく、その投資が本当に実を結ぶかを一緒に見極めるのが、弊社の持ち味です。
新事業や補助金の活用について、初回のご相談は無料です。どうぞお気軽にお問い合わせください。
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