補助金と投資判断|「2分の1」の誘惑と知られざる自己負担

費用とコインのイメージ
目次
  1. 「補助金が出るなら、やろう」が危ない
  2. 「2分の1」の、知られざる続き
  3. そもそも、補助金は効果を約束しない
  4. 補助金に合わせると、投資がふくらむ
  5. 投資の是非は、補助金と切り離して決める
  6. では、どう考えるか

こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。

「2分の1の補助が出ます」。そう聞くと、心が動きます。ですが、この「2分の1」には、あまり知られていない続きがあります。

補助金は、投資の主役ではありません。今回は、補助金の知られざる一面と、それを踏まえた投資の判断についてお話しします。

▶ この記事でわかること
  • 「補助金が出るなら、やろう」が危ない
  • 「2分の1」の、知られざる続き
  • そもそも、補助金は効果を約束しない
  • 補助金に合わせると、投資がふくらむ
  • 投資の是非は、補助金と切り離して決める
  • では、どう考えるか

「補助金が出るなら、やろう」が危ない

市況を確認する様子

補助金のご相談で、いちばん多いつまずきが、順番の取り違えです。「この補助金が使えるから、この投資をしよう」。一見、賢いようでいて、これは順番が逆です。本来は、自館に必要な投資が先にあって、それに使える補助金がある、という順番です。補助金を入り口にすると、補助金のために投資する、という本末の転倒が起こりかねません。

「2分の1」の、知られざる続き

費用を計算する様子

補助金の魅力は、費用の半分を国が負担してくれることです。2分の1なら、半額で投資ができる。ですが、その先に、案外知られていないことが、いくつもあります。

まず、当たり前のようでいて大事なのが、残りの半分は自分で負担するということです。その投資が本当に必要なものでなければ、半額とはいえ、不要なものに自分のお金を出すことになります。補助金は、投資を「お得」にはしますが、「正しく」はしてくれません。

さらに、見落としがちなのが、消費税です。補助金の計算は、原則として、消費税を除いた金額(税抜)に対して行われます。消費税の分は、補助の対象に入りません。たとえば、補助の対象となる経費が1,000万円なら、実際に支払うのは、消費税を含めて1,100万円です。このうち後で戻ってくるのは、税抜1,000万円の半分、500万円だけ。つまり、消費税の100万円は、まるごと自己負担になります。準備すべきは1,100万円、戻りは500万円、と覚えておくとよいでしょう。

もらった年に、税金がかかる 意外に思われるかもしれませんが、補助金は、受け取ると税金がかかります。会計の上では、補助金は収入として扱われ、受け取った年の利益に上乗せされて、法人税などの課税の対象になります。つまり、もらった額が、まるごと手元に残るわけではありません。圧縮記帳という手続きを使えば、その税金を先の年に送ることはできますが、免除されるわけではありません。この処理を知らずにいると、補助金をもらった年に、思わぬ税の負担が生じることがあります。
補助金には、「宿題」がついてくる 補助金は、もらって終わりではありません。たとえば、ものづくり系の補助金では、付加価値額(おおまかには、利益と人件費と減価償却を足したもの)を、3年から5年かけて、毎年平均で3%以上増やす、という計画を立て、その達成を求められます。賃上げの目標が課されることもあります。これらを達成できないと、補助金の一部の返還を求められることがあります。設備を入れて終わり、ではなく、その後に成果を出す宿題が、セットでついてきます。
図解:補助金と投資の判断
― 「2分の1」の実像と、損をしない順番
① 「半額でお得」は、本当か
見かけのイメージ
補助対象経費 1,000万円
− 補助金 500万円(1/2)
自己負担 500万円
「半額でできる。お得だ」
実像
消費税100万円は補助の対象外。準備するのは税込 1,100万円
後で戻るのは 500万円だけ → 実質の自己負担は 600万円
受け取った500万円に 税金(もらった年の収入扱い)
付加価値を 年3%増やす「宿題」(未達で返還も)
効果は 不確実。すぐ利益に結びつくとは限らない
入金は後払い。いったん全額を立替
準備する額と、戻る額(補助対象経費1,000万円・補助率1/2の例)
準備する額(税込)
自己負担 500万
後で戻る 500万
税100
実際に手元から出ていく(戻り後の実質負担)
自己負担 500万
税100
(500万は戻る)
→ 実質の自己負担は 600万円。消費税100万円分、「半額」より重くなります。
補助金は投資を「お得」にはしますが、「正しく」はしてくれません。不要な投資なら、半額でも損です。
② 損をする順番/損をしない順番
✕ 補助金から入る
補助金が出る
それに合わせて投資を決める
不要・過剰な投資になりやすい
◯ 経営から入る
自館に必要な投資かを判断(補助金は抜きで)
やると決める
使える補助金があれば使う/なければ自己資金・融資
補助金がまったくなくても「やる」と判断できる投資だけが、本当にやるべき投資です。
③ 補助金をもらった「後」に待つもの
立替
後払い。入金は数か月〜1年超。全額を先に用意。
課税
もらった年の収入扱い。圧縮記帳で繰り延べ(免除ではない)。
宿題
付加価値を年3%増やすなどの目標。未達で返還も。
検査・縛り
採択後に検査。買った財産は法定耐用年数まで処分に制限。
金額・補助率は説明のための一例です。税務の扱いや要件・期間は補助金の制度によって異なります。投資の判断や税務については、税理士など専門家にご確認ください。

そもそも、補助金は効果を約束しない

もう一つ、冷静に見ておきたいことがあります。補助金が出たからといって、その投資が成果を生むとは限らない、ということです。

設備を入れても、すぐに利益に結びつくとは限りません。効果が出るまでに時間がかかることも、思ったほど使われないこともあります。補助金の効果をめぐっては、国の内部からも、本当に生産性の向上につながっているのか、という疑問の声が上がったことがあるほどです。補助金は、投資の費用を軽くしてくれますが、その投資が当たるかどうかは、まったく別の話です。

補助金に合わせると、投資がふくらむ

こうした負担や不確かさがあるのに、補助金には、投資をふくらませる力があります。対象になる経費や、上限の額が決まっているため、せっかくだから上限まで、これも対象になるなら、と、つい規模が大きくなりがちです。

本当は小さく始めれば十分なのに、補助金に合わせて、身の丈を超えた投資をしてしまう。あるいは、本当に必要なものではなく、補助の対象になるものを選んでしまう。ふくらんだ投資は、立替の負担も、もらった後の税金も宿題も、すべて大きくします。

投資の是非は、補助金と切り離して決める

では、どう考えればよいか。大事なのは、投資をするかどうかを、補助金とは切り離して、先に決めることです。

その投資で、売上や利益がどれだけ増えるか。かけたお金を、何年で回収できるか。たとえば温泉旅館の利益の水準は、施設にもよりますが、おおむね売上の2割から3割ほど。そこから投資を回収するには、相応の年数がかかります。仮に補助金がまったくなかったとしても、その投資をする価値があるか。まず、これを冷静に見極めます。補助金を抜きにして「やる」と判断できる投資だけが、本当にやるべき投資です。

ご相談を受けてきた中での私の所感ですが、補助金を抜きにして考えたとたん、「やめておこう」となる投資は、少なくありません。それは、もともと必要のなかった投資だった、ということです。補助金には、そうした投資にまで、つい手を伸ばさせてしまう力があります。

では、どう考えるか

順番を、整理しましょう。まず、自館に必要な投資を、補助金抜きで見極める。その投資が、税金や宿題の負担を差し引いても、なお見合うかを確かめる。やると決めたら、次に、それに使える補助金があるかを探す。あれば使い、なければ自己資金や融資で進める。この順番なら、補助金に振り回されることはありません。

私どもは、特定の業者と利害関係を持たない立場で、補助金ありきではない投資の判断、その投資対効果の見極めから、税務や資金繰りまで見据えた進め方、使える制度の選定までをお手伝いします。補助金から入るのではなく、経営から入る。それが、結局はいちばん損のない進め方です。

さいごに

いかがだったでしょうか。「2分の1」という言葉の裏には、自己負担、税金、宿題、そして効果の不確かさがあります。補助金は、投資を後押ししてくれる、ありがたい制度です。ですが、主役ではありません。補助金が出るかどうかではなく、その投資が自館に必要かどうか。そこを先に決めることが、何より大切です。

弊社アルファコンサルティングでは、補助金の活用はもちろん、その前提となる投資の判断や、事業計画づくりからお手伝いしています。補助金を入り口にせず、経営の視点から、いちばん損のない進め方を一緒に考えます。

投資や補助金のご相談は、初回無料です。どうぞお気軽にお問い合わせください。

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