旅館・ホテルの運営権を引き継ぐときの注意|不利な賃貸条件をそのまま継がないために

オンラインのM&Aサイトに並ぶ、数百万円の運営権。その「安さ」の正体をご存じでしょうか。

「不動産がこんなに安く手に入る」と心が動きますが、引き継ぐのは不動産ではなく、不利な賃貸借契約であることが少なくありません。

この記事では、安い運営権に潜む落とし穴と、毎月の家賃や契約の縛りを背負わないための着眼点を解説します。

こんにちは。ホテル旅館コンサルタントの青木康弘です。安い案件ほど、契約の中身を見る必要があります。中立の立場から、引き継ぐ前に確かめるべき点をお話しします。

この記事を読むとわかること

  • 1なぜ「安い運営権」が、たくさん出回っているのか
  • 2運営権とともに引き継ぐ、不利な賃貸借契約の落とし穴
  • 3急がず「待つ」ことで、休業後にかえって有利になる理由
  • 4運営を「任せる」MC契約という仕組みと、その落とし穴
  • 5契約書で後々もめる三つの論点と、修繕積立を積まない運営会社への注意

こんなお悩みはありませんか

以下の項目に2つ以上当てはまる方は、本記事を最後までお読みになることをお勧めします。

□ オンラインのM&Aサイトで、安い運営権譲渡の案件を見て心が動いた

□ 不動産が安く手に入ると思い、運営権の中身を確かめていない

□ 引き継ぐ賃貸借契約の条件を、まだ見ていない

□ 「急がないと他に取られる」と言われ、焦っている

□ 運営をオペレーターに任せれば安心だ、と考えている

□ MC契約の中身や、修繕の責任区分を理解できていない

▶ 二つ以上当てはまる方は、この記事を最後までお読みいただくことをお勧めします。

第1章
なぜ「安い運営権」が、たくさん出回っているのか
安く見える運営権譲渡の正体
安く見える運営権譲渡の正体
要点

オンラインのM&Aサイトに並ぶ、数百万円という安い運営権譲渡。その安さの正体は、不動産ではなく、運営権と賃貸借契約の引き継ぎにあります。

まず、買い手が立ち止まって考えるべきことがあります。なぜ、あれほど安い運営権の案件が、次々と市場に出てくるのか、ということです。

「安さ」の正体 ― 売っているのは不動産ではない

種を明かせば、こうした案件で譲られているのは、不動産そのものではありません。建物はオーナーが持ったままで、買い手が引き継ぐのは、あくまで「その建物で宿泊業を営む権利」と、それにくっついた「賃貸借の契約」です。つまり、安いのは当然で、土地や建物を買っているわけではないからです。

そして、ここが肝心なところですが、運営権とともに、前の運営者が結んだ賃貸借の契約も、そっくり引き継ぐことになります。毎月の家賃を払い続ける義務が、買い手に移るのです。先ほどのマッチングサイトの案件にも、「売却希望価格は数百万円、ただし賃料は月額いくらを毎月支払うこと」と、別建てで家賃の負担が書かれているものがあります。譲渡の値段が安く見えても、その裏には、毎月のしかかる家賃と、契約に潜む条件があるのです。

なぜ手放されるのか ― 多くは「運営の失敗」ではない

近年、異業種から宿泊業へ参入する動きが相次ぎました。しかし、宿泊業の運営は、見た目以上に難しいものです。業績が振るわず、開業してすぐに運営権を手放す例が後を絶ちません。こうして手放された運営権が、安い値段をつけて、次の買い手を探しに出てくるわけです。

ここで、買い手は自分の運営力を過信しがちです。「前の人が失敗したのは運営が下手だったからで、自分なら立て直せる」と。けれど、多くの場合、問題は運営の巧拙ではありません。重い家賃や短い契約期間といった、その物件に最初からついていた契約条件こそが、前の運営者を行き詰まらせた原因なのです。どれだけ運営がうまくても、利益が家賃に消えていく仕組みのままでは、立て直しようがありません。

これは、あなたの身近で起きていること

この話を、自分には縁遠いと感じる方もいるかもしれません。けれど、これは決して特別な世界の話ではありません。いま、民泊が大きなブームになっています。SNSでは、民泊で成功したという人たちの言葉があふれ、「こうすればうまくいく」という指南が盛んに発信されています。手元の数百万円で手軽に始められる副業として、人を惹きつけているのです。

ここで考えたいのは、民泊で本当に成功できるのか、ということです。自分が所有する不動産で営むのなら、話は分かります。しかし、他人の不動産を借りて営む場合は、賃貸借の条件がうまく噛み合わなければ、利益を残すのは難しいのが実際です。家賃が重ければ、稼いでも手元に残りません。

これは、世間で問題になっているワンルームマンション投資と、よく似た構造です。堅い本業を持つ人が、副業として何か始めたい。けれど時間は取れないから、手のかからない不動産がらみの事業を、と考える。まとまった資金があればワンルームマンション投資に、もっと手軽にとなれば、部屋を借りて民泊を、という具合です。そして、仕組みをよく知らないまま、業者やインフルエンサーの「うまくいく」という言葉を信じて飛び込み、気づかぬうちに不利な条件を背負ってしまう。安く見える運営権譲渡に飛びつくことは、これと地続きの危うさをはらんでいます。次の章から、その契約に潜む具体的な落とし穴を、一つずつ見ていきましょう。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘

青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)

オンラインのマッチングサイトを開くと、宿泊業の運営権が数百万円、ときには百万円に満たない値段で並んでいます。「不動産がこんなに安く」と飛びつきたくなりますが、その正体は運営権と賃貸借の引き継ぎです。民泊ブームやワンルーム投資と、よく似た構図だと感じます。

→ では、その安さの裏にある、賃貸借契約の落とし穴を見ていきましょう。

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ここまで読了:約2分 / 残り約12分

第2章
賃貸借契約の落とし穴 ― 不利な条件はそのまま受け継がれる
不利な賃貸借条件はそのまま引き継がれる
不利な賃貸借条件はそのまま引き継がれる
要点

運営権を引き継ぐと、前の運営者が結んだ不利な賃貸借契約もそのまま受け継ぎます。高い家賃や短期の定期借家が潜んでいます。

運営権を引き継ぐとき、最も注意すべきは、賃貸借契約の中身です。なぜなら、不利な条件は、引き継いだ買い手に、そっくりそのまま受け継がれるからです。

危険な二つの条件 ― 高い家賃と、短い期間

とくに警戒したいのが、二つの条件です。一つは、相場より高すぎる家賃。もう一つは、契約期間の短い定期借家契約です。

なぜこうした条件がついているのか。前の運営会社が、どうしてもその物件で開業したいばかりに、オーナーの強気な要求を呑んでしまったケースが多いのです。物件を押さえるために足元を見られ、高い家賃や、オーナーに有利な短期契約を受け入れてしまう。その不利な条件が、運営権とともに、次の買い手へ引き継がれていきます。

定期借家の怖さ ― 期間が来たら、出ていくしかない

短い定期借家契約が、なぜ買い手に不利なのか。定期借家契約は、契約期間が満了すると、更新されることなく確定的に終了する契約です。普通の賃貸借と違い、貸主であるオーナーは、正当な理由がなくても、期間満了をもって出ていってもらうことができます。

つまり、数年で切れる定期借家のもとで運営権を引き継ぐと、買い手は、こういう立場に置かれます。客室を改装し、人を育て、ようやく宿が軌道に乗ってきたころに、契約期間が満了する。オーナーが再契約に応じなければ、それまでの投資を回収しきる前に、出ていかなければなりません。長期にわたって投資を回収する宿泊業にとって、これは大きな枷です。

早い段階で契約書を開示させる

こうした落とし穴を避けるには、賃貸借契約書を、できるだけ早い段階で開示してもらい、詳細を確認することが欠かせません。家賃は相場と比べて妥当か。契約期間と、満了後の再契約の見通しはどうか。敷金や保証金は戻るのか。原状回復の負担はどちらが負うのか。これらを引き継ぐ前に確かめ、不利であれば、家賃の引き下げや契約条件の見直しを求めるか、あるいは引き継ぎそのものを見送る判断が必要です。

→ 不利な条件を避けるために、あえて「待つ」という選択肢もあります。

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第3章
急がず「待つ」という選択肢 ― 休業後のほうが有利になる
要点

焦って引き継ぐより、待つほうが有利なことがあります。施設が休業した後のほうが、条件を有利に交渉できる場合があるのです。

不利な条件を提示されたとき、買い手には、もう一つの選択肢があります。あえて、急がないことです。

なぜ待つほうが有利なのか

前の運営会社が営業を続けているうちは、オーナーには家賃収入が入っています。オーナーは強気でいられ、条件交渉には応じにくい立場です。ところが、前の運営会社が営業をやめ、建物が休業状態になると、状況は変わります。

宿泊施設は、休業している間も、固定資産税や維持費がかかり続けます。家賃収入は途絶え、建物は使われないまま傷んでいきます。オーナーにとって、空いた宿泊施設を抱え続けることは、大きな負担です。この段階になって初めて、オーナーは家賃の引き下げや、より柔軟な契約条件に応じやすくなります。

焦って引き継がない

買い手にとって、「いい運営権がある、早く決めないと他に取られる」という話は、魅力的に聞こえます。しかし、不利な条件のまま急いで引き継ぐくらいなら、前の運営会社が撤退するのを待ち、休業後にオーナーと条件を整えてから引き継ぐほうが、結果的に有利になることが多いのです。無計画なオペレーターが残した尻拭いを、急いで引き受ける必要はありません。急かす声ほど、いったん立ち止まって考えるべきです。

→ 運営を自分でやらず、オペレーターに任せる道もあります。

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ここまで読了:約6分 / 残り約8分

第4章
運営を「任せる」ときの落とし穴 ― MC契約という仕組み
運営を任せるMC契約の落とし穴
運営を任せるMC契約の落とし穴
要点

運営を任せるMC契約は、一見安心に見えて、オペレーター側のリスクを軽くする仕組みです。業績が悪くても報酬は確実に支払われます。

ここまでは、買い手が自ら運営権を引き継ぐ場合の話でした。逆に、買収した宿の運営を自分でせず、専門の運営会社(オペレーター)に委ねる場合や、既にある委託契約を引き継ぐ場合にも、注意すべき落とし穴があります。

MC契約は、誰のリスクを軽くしているか

運営委託の代表的な形に、マネジメント・コントラクト契約(MC契約)があります。オーナーが、運営会社からブランドや支配人、ノウハウを受け入れ、その対価として、売上やGOP(償却前営業利益に近い概念)の数パーセントを報酬として支払う仕組みです。海外の著名なホテルチェーンでも使われる、契約方式そのものは問題のない形です。

しかし、ここに見落とされがちな点があります。MC契約では、運営会社は、業績が良くても悪くても、売上やGOPに応じた報酬を確実に受け取れます。一方、賃貸借契約なら、運営会社はオーナーに家賃を払った後で赤字になるリスクを負います。つまり、MC契約は、運営会社にとって賃貸借よりはるかにリスクの低い仕組みなのです。実力に自信のない運営会社が、自らのリスクを避けるためにMC契約を選んでいることもあります。その場合、リスクの多くは、オーナー側が負うことになります。

「夜逃げ同然」の撤退もありうる

さらに知っておきたいのは、MC契約では、運営会社は撤退しやすい立場にある、ということです。賃貸借契約なら、運営会社は保証金が戻らなかったり、原状回復を求められたりします。けれど、MC契約では、派遣した支配人を引き上げ、持ち込んだ備品を回収すれば、それで撤退できてしまいます。極端に言えば、夜逃げ同然で去ることも、現実には可能なのです。運営を委ねる側は、相手がいつでも身軽に去れる立場にあることを、頭に入れておく必要があります。

ホテル旅館コンサルタント 青木康弘

青木康弘(ホテル旅館コンサルタント)

「運営はプロに任せれば安心」と思いがちですが、MC契約は、業績が悪くてもオペレーターの報酬が確実に入る仕組みです。リスクの多くは、オーナー側に残る。この非対称を知らずに契約すると、後で苦しくなります。

→ MC契約を結ぶなら、契約書のどこでもめやすいかを知っておきましょう。

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ここまで読了:約8分 / 残り約6分

第5章
契約書で、後々もめるのはこの三つ
要点

契約書で後々もめるのは、GOPの定義・割高な業者調達の指定・中途解約の縛りの三つです。早く開示させて精査します。

運営権を引き継ぐにせよ、運営を委ねるにせよ、契約書の中身を読み解くことが欠かせません。私の経験では、後々の紛争の種になるのは、決まって次の三つです。報酬・家賃の決め方、中途解約の定め、そして修繕・設備投資の責任区分です。

「GOPの数パーセント」の、GOPとは何か

MC契約では、売上やGOP(償却前営業利益に近い概念)の数パーセントを、運営会社への報酬として支払います。ここに、見落とされがちな落とし穴があります。そのGOPの定義が、運営会社によってまちまちなのです。何を費用として差し引き、何を差し引かないか。その線引き次第で、GOPの額は変わり、支払う報酬も変わります。報酬の土台になる数字の定義を、契約前に正確に確認しておかなければ、思っていたより多くの報酬を払い続けることになりかねません。

さらに、報酬とは別の形で抜かれることもあります。消耗品や調度品、什器備品について、運営会社が指定する、割高な業者からの調達を求められるケースです。報酬はあくまで数パーセントに見えても、こうした調達を通じて、見えにくい負担が積み重なることがあります。オーナーとして、経営をどこまで運営会社に縛られるのかを、調印前に確かめておきましょう。

中途解約できない、という縛り

二つめは、中途解約の定めです。これがあいまいなまま契約すると、トラブルのもとになります。とくに注意したいのは、長期の契約を結んでいて、運営会社が怠慢な運営をしていても、簡単には解約できない場合です。契約によっては、一方の申し出だけでは中途解約できない、という条項が入っていることもあります。

長期の家賃保証や借り上げ保証は、一見、安定して聞こえます。アパート業界にもある仕組みです。しかし、運営会社の実力によって収益が大きく変わる旅館・ホテルでは、長期契約は必ずしも有利とは限りません。運営がうまくいかなくても、長期契約に縛られて、相手を替えられない。そうならないよう、中途解約や家賃改定の条件を、契約前にしっかり確かめておく必要があります。

→ 契約の論点に加えて、修繕積立の有無にも注意が必要です。

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ここまで読了:約10分 / 残り約4分

第6章
修繕積立を「積まない」運営会社に注意
要点

新興の運営会社の中には、修繕積立を積まないところがあります。目先の収支はよく見えても、建物の価値が落ちていきます。

三つめの紛争の種、修繕・設備投資の責任区分は、買い手にとって特に重要なので、章を改めて述べます。これは、建物の将来価値に直結する話です。

なぜ新興の運営会社が増えているのか

近年、不動産投資家が旅館・ホテルへの投資を活発に行っており、運営会社の新規参入が相次いでいます。背景には、こんな事情もあります。自社で旅館・ホテルを開発・運営するより、運営は別の会社に任せ、自らは不動産を貸す側に回るほうが、金融機関の融資を受けやすいのです。事業の良し悪しではなく、安定した家賃収入で審査されるためです。こうして、運営会社の信用力を頼りに、不動産会社が借入で次々と物件を建てる、という構図が生まれ、都市部のホテルが乱立する一因にもなっています。

問題は、こうして増えた新興の運営会社の中に、経験の浅い会社が混じっていることです。

「見かけの収支」をよく見せる、という誘惑

経験豊富な運営会社であれば、将来の設備更新に備えて、FFE準備金(備品・設備の更新のための積立)をきちんと積み立てておきます。客室や設備は、時間とともに必ず古くなり、いずれ大きな更新が必要になるからです。

ところが、新興の運営会社の中には、この修繕投資の予算を十分に取らない会社があります。なぜなら、修繕積立を減らせば、目先の収支は良く見えるからです。運営会社にとって、修繕投資は目先の収入を減らすもので、できればやりたくない。一方、オーナーにとっては、建物の価値を保つために、欠かせないものです。両者の利害は、ここで真っ向からぶつかります。

10年、20年後に効いてくる

修繕積立を怠った運営の収支は、数年のうちは、むしろ良く見えます。けれど、10年、20年と経つうちに、更新されないまま傷んだ設備が、宿の商品価値を確実に落としていきます。買い手が、目先の収支の良さだけを見て運営を委ねたり、既存の委託契約を引き継いだりすると、気づかぬうちに、自分の資産価値がむしばまれていきます。修繕・設備投資の責任区分は、契約書で明確に定め、必要な額を予算として確保しておくことが大切です。

→ 最後に、この引き継ぎの判断を誰とともに行うかを考えます。

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第7章
運営権を引き継ぐ判断を、誰とするか

ここまで、運営権を引き継ぐ買い手と、運営を委ねる買い手の、両方の落とし穴を見てきました。最後に、その判断をどう進めるかを整理します。

運営権の引き継ぎは、表面的な譲渡の条件だけを見て判断すると、危険です。本当に見るべきは、その奥にある賃貸借契約や委託契約の中身、つまり家賃の水準、契約期間、中途解約の定め、修繕の責任区分です。これらは専門的で、契約書を読み慣れていないと、不利な条項を見落としてしまいます。そして、運営権を持ち込む側は、買い手にとって都合の良い面を中心に説明し、不利な条件は軽く触れる程度にとどめることがあります。「家賃は少し高めですが、立地が良いので」といった一言で流されたことの中に、数年後に効いてくる枷が潜んでいるのです。

買い手の利益を守るには、利益相反のない、中立的な立場の専門家とともに、契約の中身を精査することが有効です。

弊社アルファコンサルティングでは、特定の金融機関・オペレーター・仲介会社と利害関係を持たない独立した立場から、買い手の皆さまをご支援しています。引き継ごうとする賃貸借契約や委託契約の精査、家賃や契約条件が妥当かの検証、運営を委ねる場合のオペレーター選びや契約条件の診断まで、依頼者の利益を最優先にお手伝いします。契約に関わる法的な手続きが必要な局面では、弊社が信頼する弁護士と連携して、ご相談にあたります。

運営権を引き継ぐかどうかは、「自分なら立て直せるか」だけで決めるものではありません。その物件についた契約という土台が、自分の足かせにならないか。そこまで見極めて、はじめて確かな判断ができます。

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ここまで読了:約14分 / 残り約0分

よくあるご質問

Q立地の良い運営権が持ち込まれました。すぐ引き継ぐべきですか。

Aなぜその運営権が手放されたのかを、まず確かめてください。立地が良いのに前の運営会社が撤退したなら、問題は運営の巧拙ではなく、賃貸借契約の条件にあることが多いものです。家賃や契約期間を精査し、不利なら引き下げを求めるか、引き継ぎを見送る判断も必要です。

Q短い定期借家契約は、何が問題ですか。

A定期借家契約は、期間が満了すると更新されず確定的に終了し、オーナーは正当な理由がなくても明け渡しを求められます。数年で切れる契約のもとで運営権を引き継ぐと、宿が軌道に乗ったころに契約が切れ、投資を回収しきる前に出ていかされるおそれがあります。

Q急いで決めないと他に取られる、と言われています。

A急かす声ほど、いったん立ち止まることをお勧めします。前の運営会社が営業中はオーナーも強気ですが、撤退して休業状態になると、固定資産税や維持費の負担からオーナーは条件交渉に応じやすくなります。不利な条件のまま急ぐより、待つほうが有利になることが多いものです。

Q運営をオペレーターに任せれば、安心ですか。

A任せ方によります。MC契約は運営会社のリスクが低く、業績が悪くても報酬を受け取れる仕組みで、リスクの多くはオーナー側が負います。報酬の土台となるGOPの定義、中途解約の条件、修繕の責任区分を、契約前に必ず確認してください。

Q委託契約を引き継ぐとき、特に注意すべき点は。

A修繕・設備投資の責任区分です。新興の運営会社の中には、目先の収支をよく見せるため、FFE準備金(設備更新の積立)を十分積まない会社があります。これを見落とすと、10年、20年後に建物の価値が落ちます。修繕の責任と予算を、契約で明確にしておきましょう。

用語の整理

この記事で出てきた主な用語

運営権の引き継ぎ

建物を所有せず、運営する権利だけを引き継ぐ形。初期費用を抑えられる一方、前の運営会社が結んだ不利な賃貸借条件も引き継ぐことになります。

定期借家契約

契約期間の満了で更新されず確定的に終了する賃貸借。貸主は正当事由がなくても明け渡しを求められ、短期だと借り手に不利になりえます。

MC契約(マネジメント・コントラクト契約)

運営会社にブランド・支配人・ノウハウの対価として、売上やGOPの数パーセントを報酬として支払う委託契約。運営会社のリスクが低い仕組みです。

GOP

償却前営業利益に近い概念。MC契約の報酬の土台になりますが、定義が運営会社によって異なるため、契約前の確認が欠かせません。

FFE準備金

備品・設備を将来更新するための積立。これを十分積まない運営は、目先の収支はよく見えても、長期的に建物の価値を落とします。

さいごに

旅館・ホテルの運営権を引き継ぐときの注意について、不利な賃貸借条件の落とし穴、待つという選択肢、運営を委ねる場合のMC契約の罠、契約書で後々もめる三つの点まで、整理してきました。いかがだったでしょうか。

運営権を引き継ぐ判断は、「自分なら立て直せる」という運営の自信だけでは足りません。その物件についた契約という土台が、自分の足かせにならないかを見極めることが、何より大切です。次の三つを心に留めておいてください。

一つめは、なぜその運営権が手放されたのかを問うことです。問題が運営にあるのか、契約という土台にあるのかを見極めましょう。二つめは、賃貸借契約書を早めに開示させ、家賃と契約期間を精査することです。不利なら引き下げを求めるか、休業後まで待つ選択肢もあります。三つめは、運営を委ねる場合は、報酬の土台・中途解約・修繕の責任を契約で明確にすることです。

弊社アルファコンサルティングでは、特定の金融機関・オペレーター・仲介会社と利害関係を持たない独立した立場から、引き継ぐ契約の精査、家賃や条件の妥当性の検証、オペレーター選びと契約条件の診断を行っています。法的な手続きが必要な局面では、弊社が信頼する弁護士と連携して、ご相談にあたります。依頼者の利益を最優先に、お手伝いします。

初回相談は無料です。運営権の引き継ぎを検討し始めた段階で、どうぞお気軽にご相談ください。

読了後の3ステップ ― 今日からできること

1. 「運営権」と「不動産」を切り分ける

安い案件を見たら、それが不動産の取得なのか、運営権と賃貸借の引き継ぎなのかを、まず切り分けて確認しましょう。

2. 賃貸借契約書を早く開示させる

家賃の額、契約期間、定期借家かどうか、中途解約の条件を、引き継ぐ前に契約書で確かめてください。

3. 焦らされても立ち止まる

「急がないと他に取られる」と言われても、条件を確かめるまでは立ち止まる。待つことで有利になる場合もあります。

上記をふまえて「専門家の目で確かめたい」と思われたら、弊社の初回無料相談をご活用ください。

青木康弘

安く見える運営権の譲渡ほど、不利な賃貸借契約が丸ごと付いてきます。安さに飛びつく前に、契約の中身を中立の立場で点検する。それが、毎月の家賃と縛りに苦しまないための備えになります。

株式会社アルファコンサルティング 代表 青木康弘

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